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中学でも分かる⑱『必要十分条件と対偶』

     「必要十分条件」と「対偶」について簡単に解説します。中学でも分かる⑰『固有値』の補足欄でも解説しましたが、数学を学ぶ上で非常に重要な考え方なので、いくつかの例題、および命題と論理の歴史を新たに加え、単独記事として再投稿します。詳しくは高校1年の数学で習います。

    命題の真と偽、反例

     2つの条件 p, qp,  q に対して「pp ならば qq」という命題を考えます。これは「ならば」を意味する記号 →\rightarrow や ⇒\Rightarrow を用いて

    p→q\begin{align*} p \rightarrow q \end{align*}

    または

    p⇒q\begin{align*} p \Rightarrow q \end{align*}

    と表します。このとき、pp をこの命題の仮定、qq を結論といいます。

     例えば「x=1x=1 ならば x2=1x^2=1」という命題は

    x=1→x2=1\begin{align*} x=1 \rightarrow x^2=1 \end{align*}

    と表せます。このとき x=1x=1 は仮定で、x2=1x^2=1 は結論です。

     また、命題が正しいとき、その命題は真であるといい、正しくないとき、その命題は偽であるといいいます。
     例えば、
     x=1x=1 ならば x2=1x^2=1
    という命題は真です。x=1x=1 を x2=1x^2=1 に代入すれば成り立ちます。
     一方、その命題の仮定と結論を入れ換えた
     x2=1x^2=1 ならば x=1x=1
    という命題は、正しくないので偽です。

     ある命題が偽であることを示すには、その命題が成り立たない例を一つあげます、そのような例を反例といいます。反例とは、仮定を満たすが結論を満たさない例のことです。
     すると、先ほどの「x2=1x^2=1 ならば x=1x=1」の反例は x=−1x=-1 となります。x=−1x=-1 は、仮定 x2=1x^2=1 を満たしますが、結論 x=1x=1 を満たしません。

    必要条件と十分条件

     一般に、2つの条件 p, qp,  q に対して、命題 p→qp \rightarrow q が真であるとき、
     pp は qq であるための十分条件
     qq は pp であるための必要条件
    という。

    p十分条件→q必要条件\begin{align*} \underset{\tiny 十分条件}{p}\hspace{-6pt}\rightarrow\hspace{-6pt}\underset{\tiny 必要条件}{q} \end{align*}

    ***

     「必要」や「十分」という日常語の意味から理解しようとすると、多くの場合はかえって混乱するので、上記のように機械的に覚えればよいでしょう。

    <覚え方>
     「~は」の主語だけに着目して、
    ・「~は」が矢印の根元にあれば十分条件
    ・「~は」が矢印の先端にあれば必要条件
    と覚えます。下図のように、矢印の根元は「十」と書けるので十分条件、矢印の先端は「必」とかけるので必要条件、と覚えれば分かりやすいでしょう。

    画像

     例えば、先ほどの「x=1x=1 ならば x2=1x^2=1」という命題を考えます。

    x=1→x2=1\begin{align*} x=1 \rightarrow x^2=1 \end{align*}

    この命題は真です。このとき、
     x=1x=1 は x2=1x^2=1 であるための十分条件
    であり
     x2=1x^2=1 は x=1x=1 であるための必要条件
    となります。

    x=1十分条件→x2=1必要条件\begin{align*} \underset{\tiny 十分条件}{x=1} \rightarrow \underset{\tiny 必要条件}{x^2=1} \end{align*}

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     十分条件や必要条件は、2つの条件の間の論理的な関係を表す言葉なので、なにかある1つの条件だけを取り出して「~は十分条件である」というような言い方は、論理的には適切ではありません。
     ただし、文脈から「何のための条件か」がはっきりしているときには、「p は十分条件である」「q は必要条件である」のように、「~であるための」を省略していうこともよくあります。

    例 x=1x=1 は十分条件、x2=1x^2=1 は必要条件である。

     次に、この命題の仮定と結論を入れ換えた「x2=1x^2=1 ならば x=1x=1」という命題を考えます。

    x2=1→x=1\begin{align*} x^2=1 \rightarrow x=1 \end{align*}

     この命題は偽でした(反例は x=−1x=-1)。
     なお、十分条件や必要条件といえるのは、その命題「p→qp \rightarrow q」が真である場合だけです。命題が偽である場合には、必要条件や十分条件という枠組みは適用できません。

    例題

     次の条件 p, qp,  q について、pp は qq であるための十分条件か、必要条件か、必要十分条件か、必要条件でも十分条件でもないか、最も適するものを1つ選びなさい。なお、文字はすべて実数を表すものとする。
    (1) p:x=3p : x=3        ⁣q:x2=9\!q : x^2=9
    (2) p:ac=bcp : ac=bc      q:a=bq : a=b
    (3) p:x2−3x+2=0p : x^2-3x+2=0   q:x=1, 2\,q : x=1,  2
    (4) p:x>1p : x>1       q:xy>1q : xy>1

    指針
     p→qp \rightarrow q(pp ならば qq)と p←qp \leftarrow q(qq ならば pp)のそれぞれの真偽を調べます。このとき、主語である pp を、つねに右側に置いた方が分かりやすいです。ならば(→\rightarrow)の向きは逆(←\leftarrow)になりますが、「pp は qq であるための〇〇条件」という文の主語である pp を右側に固定して考えることで、判断しやすくなります。
     p→qp \rightarrow q だけが真であれば、pp は qq であるための十分条件。
     p←qp \leftarrow q だけが真であれば、pp は qq であるための必要条件。
     p→qp \rightarrow q と p←qp \leftarrow q の両方が真であれば、pp は qq であるための必要十分条件。
     p→qp \rightarrow q と p←qp \leftarrow q の両方が偽であれば、pp は qq であるための必要条件でも十分条件でもない。
    となります。

    解説
    (1) 「x=3→x2=9x=3 \rightarrow x^2=9」について
     x=3x=3 を x2=9x^2=9 に代入すると、9=99=9 となり成り立つので、この命題は真である。
     「x=3←x2=9x=3 \leftarrow x^2=9」について
     x2=9x^2=9 を解くと x=±3x=\pm3 となるが、x=−3x=-3 のときは、仮定 x2=9x^2=9 は成り立つが結論 x=3x=3 は成り立たない(−3≠3-3\ne3 なので)。
     よって、反例として x=−3x=-3 が存在するので、この命題は偽である。

    x=3 ⇄×〇 x2=9反例  x=−3\begin{align*} \\[-14pt] x=3  &\xrightleftarrows[\normalsize \hspace{1pt}\times]{〇}  x^2=9\\[-2pt] &{\scriptsize \hspace{-6pt}反例   x\!\!=\!\!-3} \end{align*}

     以上より、「x=3p→x2=9q\overset{p}{x=3} \rightarrow \overset{q}{x^2=9}」の方だけが真であるので、pp は qq であるための十分条件である。

    (ポイント)
     以上のように、主語 x=3x=3 の方を右側において、
     x=3→x2=9x=3 \rightarrow x^2=9
    および、「ならば」の矢印の向きを変えた
     x=3←x2=9x=3 \leftarrow x^2=9
    の真偽を調べます。

    (2) 「ac=bc→a=bac=bc \rightarrow a=b」について
     例えば a=1, b=3, c=0a=1,  b=3,  c=0 のとき、仮定 ac=bcac=bc は成り立つが、結論 a=ba=b は成り立たない(1≠31\ne3 なので)。
     よって、反例 a=1, b=3, c=0a=1,  b=3,  c=0 が存在するので、この命題は偽である。
     「ac=bc←a=bac=bc \leftarrow a=b」について
     a=ba=b の両辺に cc を掛けると ac=bcac=bc が得られるので、この命題は真である。

    反例 a=1,b=3,c=0ac=bc ⇄〇× a=b\begin{align*} &{\scriptsize \hspace{-26pt}反例  a\!=\!1, b\!=\!3, c\!=\!0}\\[-2pt] ac=bc  &\xrightleftarrows[\raisebox{-5pt}{\scriptsize 〇}]{\normalsize \times}  a=b \end{align*}

     以上より、「ac=bcp←a=bq\overset{p}{ac=bc} \leftarrow \overset{q}{a=b}」の方だけが真であるので、pp は qq であるための必要条件である。

    (3) 「x2−3x+2=0→x=1, 2x^2-3x+2=0 \rightarrow x=1,  2」について
     x2−3x+2=0x^2-3x+2=0 を因数分解する。
     足して −3-3、掛けて +2+2 になる2つの数は −1-1 と −2-2なので
     x2−3x+2=(x−1)(x−2)x^2-3x+2=(x-1)(x-2)
     よって (x−1)(x−2)=0(x-1)(x-2)=0 から
     x−1=0x-1=0 または x−2=0x-2=0
     すなわち x=1x=1 または x=2x=2 が得られるので、この命題は真である。
     「x2−3x+2=0←x=1,2x^2-3x+2=0 \leftarrow x=1, 2」について
     x=1x=1 を x2−3x+2=0x^2-3x+2=0 に代入すると 0=00=0 となり成り立つ。
     x=2x=2 を x2−3x+2=0x^2-3x+2=0 に代入すると 0=00=0 となり成り立つ。
     よって、この命題は真である。

    x2−3x+2=0 ⇄〇〇 x=1, 2\begin{align*} \\[-14pt] x^2-3x+2=0  &\xrightleftarrows[\raisebox{-5pt}{\scriptsize 〇}]{〇}  x=1,  2 \end{align*}

     以上より、2つの命題はともに真であるので、pp は qq であるための必要十分条件である。

    (4) 「x>1→xy>1x>1 \rightarrow xy>1」について
     仮定 x>1x>1 を満たす xx として、例えば x=5x=5 を考える。
     このとき、y=−1y=-1 とすると xy=5⋅(−1)=−5xy=5\cdot(-1)=-5 となり、結論 xy>1xy>1 は成り立たない(−5<1-5<1 なので)。
     よって、反例として x=5, y=−1x=5,  y=-1 が存在するので、この命題は偽である。
     「x>1←xy>1x>1 \leftarrow xy>1」について
     仮定 xy>1xy>1 を満たす x,yx, y として、例えば x=−3, y=−2x=-3,  y=-2 を考える。
     このとき、結論 x>1x>1 は成り立たない(−3<1-3<1 なので)。
     よって、反例として x=−3, y=−2x=-3,  y=-2 が存在するので、この命題も偽である。

    反例  x=5, y=−1x>1 ⇄×× xy>1反例  x=−3, y=−2\begin{align*} &{\scriptsize \hspace{-18pt}反例   x\!=\!5,  y\!=\!-1}\\[-2pt] x>1  &\xrightleftarrows[\normalsize \times]{\normalsize \times}  xy>1\\[-2pt] &{\scriptsize \hspace{-18pt}反例   x\!\!=\!\!-3,  y\!\!=\!\!-2} \end{align*}

     以上より、2つの命題はともに偽であるので、pp は qq であるための必要条件でも十分条件でもない。

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    必要十分条件

     「pp ならば qq」と「qq ならば pp」の両方の命題を、両向きの「ならば」を意味する記号 ⇄\rightleftarrows や ↔\leftrightarrow や ⇔\Leftrightarrow を用いて

    p⇄q\begin{align*} p \rightleftarrows q \end{align*}

    または

    p↔q\begin{align*} p \leftrightarrow q \end{align*}

    または

    p⇔q\begin{align*} p \Leftrightarrow q \end{align*}

    と表す。
    「pp ならば qq」と「qq ならば pp」がともに真であるとき、すなわち p↔qp \leftrightarrow q が成り立つとき、
     pp は qq であるための必要十分条件
    という。この場合、
     qq は pp であるための必要十分条件
    でもある。

    p必要十分条件↔q必要十分条件\begin{align*} \underset{必要十分 \atop 条件}{p}\hspace{-7pt}\leftrightarrow\hspace{-7pt}\underset{必要十分 \atop 条件}{q} \end{align*}

     またこのとき、
     pp と qq は同値である
    という。

    ***

     例えば、「x=0x=0 ならば x2=0x^2=0」という命題を考えます。

    x=0→x2=0\begin{align*} x=0 \rightarrow x^2=0 \end{align*}

     この命題は真です。x=0x=0 を x2=0x^2=0 に代入すると成り立ちます。
     次に、この命題の仮定を結論を入れ換えた「x2=0x^2=0 ならば x=0x=0」という命題を考えます。

    x2=0→x=0\begin{align*} x^2=0 \rightarrow x=0 \end{align*}

     すると、この命題も真です。x2=0x^2=0 を満たす xx は、x=0x=0 のみだからです。よって、
     x=0x=0 は x2=0x^2=0 であるための必要十分条件
    であり、
     x2=0x^2=0 は x=0x=0 であるための必要十分条件
    です。

    x=0必要十分条件↔x2=0必要十分条件\begin{align*} \underset{必要十分 \atop 条件}{x=0} \leftrightarrow \underset{必要十分 \atop 条件}{x^2=0} \end{align*}

     つまり、
     x2=0x^2=0 と x=0x=0 は同値
    となります。

    逆・裏・対偶

     p→qp \rightarrow q  という命題について、仮定 pp と結論 qq を入れ換えた命題

    q→p\begin{align*} q \rightarrow p \end{align*}

    を逆という。
     また、仮定 pp と結論 qq の両方を否定にした「pp でないならば qq でない」という命題

    p‾→q‾\begin{align*} \overline{p} \rightarrow \overline{q} \end{align*}

    を裏という。条件 pp に対して、「pp でない」という条件を pp の否定といい、条件の記号の上に横棒をつけた p‾\overline{p} という記号で表す。

     さらに、この裏を逆にした

    p‾→q‾\begin{align*} \overline{p} \rightarrow \overline{q} \end{align*}

    を対偶という。

    ***

     以上のことを、まとめておきます。

    <逆・裏・対偶>
     命題 p→qp \rightarrow q について、
     逆は「q→pq \rightarrow p」
     裏は「p‾→q‾\overline{p} \rightarrow \overline{q}」
     対偶は「p‾→q‾\overline{p} \rightarrow \overline{q}」

    ***

     逆と裏は互いに対偶の関係にあり、逆の対偶は裏、裏の対偶は逆です。また、対偶の対偶はもとの命題になります。
     以上を図式化すると次のようになります。

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     例えば、先に述べた「x=1x=1 ならば x2=1x^2=1」という命題について
      逆は「x2=1x^2=1 ならば x=1x=1」
      裏は「x≠1x\ne1 ならば x2≠1x^2\ne1」
     対偶は「x2=1x^2=1 ならば x=1x=1」
    となります。

     ここで、次のような重要な定理があります。

    「命題とその対偶の真偽は一致する。」

     「x=1x=1 ならば x2=1x^2=1」という命題について、この命題は真です。この命題の逆、裏、対偶の真偽は次のようになります。

     命題「x=1x=1 ならば x2=1x^2=1」は真
      逆「x2=1x^2=1 ならば x=1x=1」は偽
      裏「x≠1x\ne1 ならば x2≠1x^2\ne1」は偽
     対偶「x2≠1x^2\ne1 ならば x≠1x\ne1」は真

     すると、元の命題と対偶はどちらも真であり、同じく対偶の関係にある逆と裏はどちらも偽であり、「もとの命題とその対偶の真偽は一致する」ことが分かります。

    対偶による証明

     ある命題を証明するとき、その命題を直接証明するよりも、その対偶を証明するほうが簡単な場合があります。そのようなときは、対偶を証明します。

    例題

     ある整数 nn について、次の命題を証明しなさい。
     「n2n^2 が偶数であるとき、nn は偶数である。」
    証明
     この命題の対偶をとると
     「nn は偶数でないとき、n2n^2 は偶数ではない。」
     偶数ではない数は奇数なので、さらに次のように表せる。
     「nn は奇数のとき、n2n^2 は奇数である。」

     まず、nn は奇数なので、kk を整数 (⋯ ,−2,−1, 0, 1, 2,⋯\cdots, -2, -1,  0,  1,  2, \cdots) として

    n=2k+1 ⋯(∗)n=2k+1 \cdots(*)

    とおける。ここで展開公式
     (a+b)2=a2+2ab+b2(a+b)^2=a^2+2ab+b^2
    を用いると

    n2=(2k+1)2=(2k)2+2⋅2k⋅1+12=4k2+4k+1=2(2k2+2k)+1=2l+1(ただし l=2k2+2k とおいた)\begin{align*} n^2&=(2k+1)^2\\ &=(2k)^2+2\cdot2k\cdot1+1^2\\ &=4k^2+4k+1\\ &=2(2k^2+2k)+1\\ &=2l+1 (ただし  l=2k^2+2k  とおいた) \end{align*}

     すると、kk は整数なので、l(=2k2+2k)l(=2k^2+2k) も整数となり 2l+12l+1 は奇数。よって、n2n^2 は奇数となる。

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    (∗)(*) 例えば、奇数 −5,−3,−1, 1, 3, 5, ⋯-5, -3, -1,  1,  3,  5,  \cdots  は
     −5=2×(−3)+1-5=2\times(-3)+1
     −3=2×(−2)+1-3=2\times(-2)+1
     −1=2×(−1)+1-1=2\times(-1)+1
         1=2×0+11=2\times0+1
         3=2×1+13=2\times1+1
         5=2×2+15=2\times2+1
    ⋮\hspace{30pt}\vdots
    より、2k+12k+1(kk は整数)の形で書けます。

     なお、確認として、22 で割り切れる整数を偶数といいます。また、22 で割り切れない整数を奇数といいます。よって、偶数ではない数は奇数です。
     一般に、偶数と奇数は負の場合も含まれます。例えば −4-4 は偶数、−3-3 は奇数です。また 00 は 22 で割り切れるので偶数です。

    命題と論理の歴史

     古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、「三段論法」という形で、世界で初めて本格的に論理学をまとめました。
     たとえば「すべての人間は死ぬ」「ソクラテスは人間である」という二つの前提から、「だからソクラテスは死ぬ」という結論を引き出す推論のしかたを分析し、前提と結論の結びつきをはっきりさせたのです。

    画像
    Aristotelēs(BC384 - BC322)

     その後、長いあいだ論理学は三段論法を中心に発展してきましたが、十九世紀になると、数学の発展のスピードに追いつかなくなっていきました。

     そこで、ドイツの数学者であり論理学者でもあったゴットロープ・フレーゲが、「記号論理学」という新しい学問を作り上げました。
     これは、日常の言葉で書かれた「〜なら〜である」「〜かつ〜である」「〜または〜である」といった条件の言い回しにくわえて、「すべての(任意の)〜について成り立つ」「〜であるものが少なくとも1つは存在する」といった言い回しを、特別な記号と式を使って厳密に表し、その正しさを機械的な手続きで調べようとする学問です。

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    Friedrich Ludwig Gottlob Frege(1848 -1925)

     この記号論理のおかげで、「必要条件」「十分条件」「対偶」といった条件どうしの関係を、はっきりと形式的に扱えるようになりました。

     二十世紀のはじめには、イギリスの数学者であり論理学者であり哲学者でもあったバートランド・ラッセルとアルフレッド・ノース・ホワイトヘッドは、『プリンキピア・マテマティカ』という大著によって、「すべての数学を論理から組み立てる」ことを目指しました。

    画像
    Bertrand Arthur William Russell(1872 - 1970)
    画像
    Alfred North Whitehead(1861 - 1947)

     この本では、フレーゲの記号論理をさらに発展させて、数の定義や集合の扱い、数学の証明の仕組みなどを、論理の観点から徹底的に分析しました。
     こうした試みは、「数学を定義や、ごく基本的な前提である公理から演繹し、論理のルールによって厳密に組み立てていく」という、二十世紀以降広く受け入れられている数学の考え方に、大きな影響を与えたのです。
     高校で学ぶ「命題」「必要十分条件」「対偶」などは、こうした長い歴史の流れを、高校レベルに合わせて整理し直したものだと言えます。


    バックナンバー

    理数系小説『シュレーディンガーの Φ』


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