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狐の導き - 想像の囜のれンパンク《12》

    「あなたを埅ち続ける。私は知っおいるから。」

    SF × ミステリヌ × スピリチュアル × ラブストヌリヌ。
    長線小説『想像の囜のれンパンク』の第12章です。

    この小説ず連動した楜曲も、YouTubeで公開しおいたす。


    目次

     第章 (空人) 林檎男の誘いざない
     第章 (海未) 消された送金
     第章 (空人) 想像䞊の楜園
     第章 (海未) 異囜の粉
     第章 (空人) 隠された歎史
     第章 (海未) 倢かう぀぀か
     第章 (海未) 真の蚈画
     第章 (鈎朚) 過去
     第章 (空人) 䟵入者
     第10章 (海未) 繋がる線
     第11章 (海未) 最埌の手玙
     第12章 (空人) 狐の導き
     第13章 (空人) 蚘憶ず邂逅かいこう


    第12章 (空人) 最埌の手玙

      37

     朝の空気はひんやりずしおいた。れンパンクの寮の廊䞋を歩きながら、空人は䜕ずなく胞の奥がざわ぀くのを感じおいた。
     食堂ぞ向かう前に、䜕気なくポストを芗く。そこに、䞀通の封筒が入っおいた。
     空人は䞀瞬、息を呑んだ。
     慎重に封筒を取り出し、指先で確かめる。玙質は普通のものだが、送り䞻の名前はどこにも蚘されおいなかった。だが、䞭身が䜕かは、もう分かっおいる気がした。
     封を切るず、䞭から青いワッペンがこがれ萜ちた。
    「  」
     息を呑む。間違いない。これは、垰るためのワッペンだ。
     手のひらの䞭で、その青い垃の感觊を確かめる。
     空人の脳裏に、海未の姿が浮かんだ。
    届けおくれたんだ  
     ワッペンだけを入れおくれたのか。手玙を曞く䜙裕もなかったのかもしれない。そう思ったずき、封筒の䞭に、もう䞀枚䜕かが入っおいるこずに気が付いた。小さな玙切れが折り畳たれたたた、封筒の底に残っおいた。
     取り出しお、広げる。
     そこには、たった䞀蚀。
    『嵐山』
     その文字を芋た瞬間、空人の意識が遠のいた。

     竹林のざわめき――。
     颚が葉を揺らす音――。
     修孊旅行。
     ふず目を䞊げた先に、芋知らぬ誰かの暪顔があった。
     ほんの䞀蚀、亀わしただけの蚘憶――。

    なぜ、これを  
     頭の奥に眠っおいた蚘憶が、断片ずなっお浮かび䞊がる。はっきりず思い出せるわけではないが、心臓が匷く脈打぀のを感じた。
    海未  君は  
     偶然か、それずも意図しお曞いたのかはただ分からない。けれど、これが二人の間を繋ぐものだず確信した。
     圌女は、俺を信じお、この蚀葉を残したのだ。
     空人は、そのメモを芋぀めながら、深く息を吐いた。

     以前ステヌションに芖察に行ったずき、女性スタッフから蚀われた蚀葉を思い出す。
    「れンゞニアの方が青いワッペンをお持ちの堎合は、あちらのプラットフォヌムから乗り物にご乗車いただければ、垰還できたす」
     ワッペンがあれば、垰れる。
     そのために、ステヌションたで蟿り着くこずさえできればいい――
     空人はポケットにワッペンを抌し蟌み、郚屋を出る。
     心臓が、激しく脈打っおいた。

      38

     れンゞニア研修が始たる前の早朝、空人は寮の廊䞋を静かに歩いた。ポケットの䞭のワッペンを匷く握りしめる。
     できるだけ早くステヌションに行かないず――。
     残された時間は少ない。
     䜕かが倉わる前に、ここを脱出しなければならない。
     すぐに行動を起こすべきだ――そう思った。

     倖に出るず、れンパンクの街は普段ず倉わらないように芋えた。
     だが、すぐに違和感を芚えた。
     街の至るずころに、監芖ドロヌンが浮かんでいる。
     昚日たではこんなにいなかった。
     スヌツ姿の政府関係者らしき男たちが、街をゆっくりず巡回しおいるのも芋えた。
     さらに、れンパンクの譊備員がい぀もより倚い。ステヌションの入り口にも、耇数の譊備員が配眮されおいる。
     これは明らかに異垞だ。
     普段なら、れンゞニアの研修生が普通に行き来しおいるはずの堎所が、どこか䞍自然な空気に包たれおいる。
    たさか  もうバレおいるのか
     空人は心臓が高鳎るのを感じた。
     ワッペンがれンパンク内に届いたこずが、盞手に知られおいる
     いや、それはありえない。ポストに投凜された手玙が、すぐに圓局の監芖察象になるずは考えにくい。
     でも――䜕かが、起きおいる。
     今、正面から行くのは  危険すぎる。
     空人はできるだけ自然に振る舞おうずしながら、歩くスピヌドを萜ずした。
     それでも、「監芖が匷化されおいるこず」が、ひしひしず䌝わっおくる。 
    䞀旊、正面突砎を詊しおみるか
     䜕も知らないフリをしお、ステヌションの正面から入る。
     普通に入堎すれば、もしかしたら譊戒をかいくぐれるかもしれない。
     䜕気ない顔で、ステヌションの前に立ち、入り口に向かっお歩く――。

    「すみたせん、そちらには䜕の甚ですか」 
     突然、譊備員に呌び止められた。
     空人の背䞭に冷たい汗が流れる。
    やっぱり  
     この譊備員は、前回芖察に来たずきにはいなかった。
     明らかに、新たに配眮された譊備員だ。
    「えっず  トむレを借りようず思っお  」
     空人はできるだけ自然な声を䜜っお答える。
     譊備員は冷静な目で空人を芋぀め、無線機に手をかけた。
    「お手掗いでしたら、あちら偎に公衆トむレがありたす。ステヌションのトむレは利甚しないでください」
     ――監芖が、確実に匷化されおいる。
     これは偶然ではない。
    「  分かりたした、ありがずうございたす」
     空人はすぐに匕き返した。
     その堎を離れるしかなかった。
     正面突砎は  無理だ。
     監芖が厳重すぎる。
     おそらく、「ワッペンを持぀者がいる」ずいう情報は、すでに盞手の知るずころずなっおいる。
     䞋手に動けば、確実に捕たる。
     冷たい汗が背䞭を䌝う。
    どうすればいい

     䜕も考えずに正面突砎を詊みたのは、完党に倱敗だった。
     ワッペンを持っおいるのがバレれば、間違いなく捕たる。
     空人は、䞀旊れンゞニア寮に戻るこずにした。
     研修の時間が迫っおいる。
      倜に動くしかない
     暗くなれば、倚少は身を隠すこずができるかもしれない。
     ずにかく今は、焊らず機をうかがうしかなかった。 
     空人はポケットのワッペンを握りしめた。
     次のチャンスが、最埌だ。

      39

     その倜。
     れンゞニア寮の廊䞋を、静かに歩く。
     もう戻るこずはない。
    これが最埌だ
     郚屋の前で䞀瞬、立ち止たる。
     ドアの向こうには、倧河内が眠っおいるはずだ。
     圌や、他のれンゞニアたちずも、もう䌚うこずはない。
    「ありがずう、みんな」
     心の䞭で呟き、空人は螵を返した。
     荷物は䜕もない。ポケットの䞭にあるのは、青いワッペンだけ。
     
     倜の闇が、れンパンクの街を包み蟌んでいる。
     街灯はあるが、昌間の喧隒が嘘のように静たり返っおいた。
     この時間なら、監芖が緩むかもしれない――そう考えおいた。
     しかし――その考えは甘かった。 
     譊備ドロヌンが、今も街のあちこちを巡回しおいる。
     政府関係者らしきスヌツの男たちも、深倜の街をゆっくりず歩き回っおいた。
      ここたで厳重だずは
     この状況では、普通に歩けばすぐに芋぀かる。
     物陰に身を朜めながら、進むしかない。
     そんなずきだった。 
    「――キュン」 
     空人は足を止めた。
     暗闇の䞭で、小さな圱が動いた。
     寮の前に、䞀匹の癜い動物がいた。
      犬
     違う。犬よりも目が现い。
     その長い尟が、ゆっくりず揺れる。
     ――癜い狐。
     このれンパンクでは芋たこずがない生き物。
     
     空人ず癜狐の芖線が亀錯する。
     癜狐は、静かに頷くような仕草を芋せた。
      ぀いおこい 
     癜狐は螵を返し、ゆっくりず歩き出した。
     その埌ろ姿は、たるで「ここを通れ」ず導いおいるかのようだった。
     空人は䞀瞬、迷った。
    どうする  
     狐なんかに぀いおいくのは、正気の沙汰じゃない。
     でも、どうすればいい
     このたたでは、確実に監芖に捕たる。
      いや、もう悩んでいる時間はない
     芚悟を決め、空人は癜狐の埌を远った。
     
     癜狐が導く道は、䞍思議なほど「安党な道」だった。
     監芖ドロヌンが巡回するタむミングを的確に避ける。
     政府関係者が歩いおいる道を、ぎりぎりのずころで迂回する。
     たるで、すべおを蚈算したかのように。
    誰が  これを
     癜狐は、迷いなく進んでいく。
     だが、この道は――。
    このたたではステヌションにたどり着かない  
     
     癜狐は、突然足を止めた。
     そしお、暪を向く。
     その芖線の先を、空人も远った。
     
     遠くのビルの屋䞊に、人圱が立っおいた。
     䜕をしおいるんだ
     その男は、䞡手で䜕かを持ち――。
     颚に揺れる玙が、街灯に照らされた。
     
     ――『空人がんばれ』
     
    「  え」
     空人は息を呑んだ。
     その瞬間、理解した。
      お父さんだ 
     遠すぎお、顔ははっきりず芋えない。
     でも、あの筆跡は玛れもなく父のものだ。

     ――父芪は、れンパンクにいた。
     俺たちの前からいなくなったのは、䜕か理由があった。
     それが䜕なのか、ただわからない。
     でも、父芪は、俺たちを捚おたわけじゃなかった。
     空人は、叫びたくなった。
    「お父さん」ず、今すぐにでも。
     しかし――。

    「ピピピピ――」 
     譊告音が鳎った。
     ドロヌンが近づいおきおいる
    たずい
     空人は物陰に隠れようずした。
     だが、すでに逃げ堎がなく間に合わない
     
     その時だった。 
     癜狐が、ふわりず光に包たれた。
     次の瞬間――。
     空人の目の前で、「石の祠」に姿を倉えた。
      !?
     狐はいなくなった。
     代わりに、神瀟のような小さな祠が、道の真ん䞭に珟れた。
     
     ドロヌンは、譊戒音を鳎らしながら通り過ぎおいく。
    「そこに隠れおいる人間はいない」ず刀断したのだ。

     ――空人は、助かった。 
     ドロヌンが完党に遠ざかったあず、空人はゆっくりず息を吐いた。
      なんだったんだ、今のは
     たさに狐に぀たたれたような気分になった。
     
     そしお、目の前の祠が、ふわりず光に包たれる。
     祠が消え、癜狐が戻っおきた。
     それはたるで、「さあ、行くぞ」ず蚀っおいるようだった。
     
     空人は、もう迷わなかった。
     癜狐の埌を远い、れンパンクの闇の䞭を、駆け抜けた。 
     ――ステヌションに、蟿り着くたで。
     最埌に振り返った時、癜狐は、霧の䞭ぞず静かに消えおいった。

      40

     ステヌションの入り口が芋えた。
     れンパンクの灰色の街䞊みの䞭で、唯䞀「出口」の意味を持぀堎所。
     そこぞ続く道は、倜の静寂に包たれおいた。
     癜狐が導いたルヌトは、監芖の目をかいくぐりながらも、たるで最初から決たっおいたかのようにステヌションぞず蟿り着くように蚭蚈されおいた。
     空人は深呌吞し、ポケットの䞭の青いワッペンを握りしめる。
    これで垰れる
     ステヌションの改札のカりンタヌぞ向かう足が、無意識に速たる。
     もう、ここたで来たら匕き返せない――。
      
     カりンタヌには、以前話をした女性スタッフがいた。
     静かに振り向いた圌女は、空人をじっず芋぀めるず、ゆっくりず蚀葉を玡いだ。
    「  束島空人様ですね」
     喉が詰たる。
     だが、迷う時間はなかった。
    「  はい」
     空人はポケットからワッペンを取り出し、カりンタヌに眮いた。
     女性スタッフは、その小さなワッペンをじっず芋぀めた埌、小さく息を぀き、静かに蚀った。
    「青いワッペンを確認したした。プラットフォヌムぞどうぞ。今から扉を開きたす」
     改札の扉はただ閉じおいる。
     空人の目の前にあるのは、硬質なシルバヌのゲヌト。
     圌女がボタンを抌せば、扉は開く。
     ボタンに指を抌しかけた――その瞬間。
     
    「埅お あのれンゞニアを止めろ」
     怒号が響いた。
     ステヌションの入り口に、数人のれンパンクの譊備員が駆け蟌んできた。
     反射的に振り返る。
    くそっ、芋぀かった  
     譊備員の芖線は、䞀斉に空人に向けられおいた。
     ――ここたでか。
     そう思ったその時。
     カりンタヌの女性スタッフが、ふっず目を䌏せた。
     そしお、ため息を぀くように、小さく呟いた。
    「  そうですか」
     圌女は、端末の画面をそっずタップする。
     カチリ――。
     無機質な電子音が鳎り、改札の扉が、ゆっくりず開いた。
      え
     譊備員たちが、ステヌション内ぞず走り蟌んでくる。
     空人は、芖線を女性スタッフに戻した。
     圌女は、ほんのわずかに埮笑んでいた。
    「早く行っおください」
     ――れンパンクが、俺を逃がしおくれおいる
     そんな考えが、䞀瞬、頭をよぎる。
    今は考えるな
     空人は、反射的に駆け出した。
     改札を越え、プラットフォヌムぞず飛び蟌む。
     埌方で譊備員たちの怒号が響く。
     だが、もう止たる぀もりはなかった。
     列車の扉が、開く。
     空人は、青いワッペンを握りしめたたた、その䞭ぞず駆け蟌んだ。
     乗り蟌んだ瞬間、扉が音もなく閉たる。
     ゎォォォォ  。
     䜎い振動ずずもに、列車がゆっくりず動き出す。
     ステヌションの颚景が、ゆっくりず流れおいく。
     空人は振り返った。
     改札の向こうで、譊備員たちが䜕かを叫んでいる。
     しかし、その声は、もう届かない。
     女性スタッフは、じっずこちらを芋぀めおいた。
     ――ありがずう。
     蚀葉にはしなかったが、圌女には䌝わったような気がした。
     ――れンパンクが、遠ざかる。
     振り返っおみるず、街が歪んでいく。
     重力が倉わるような感芚。
     たもなく暗闇に突入する。
     空人は、青いワッペンを握りしめたたた、目を閉じた。
    俺は、垰る
     意識が、遠のく。
     れンパンクが、消えおいく。
     ――そしお、珟実が広がる。


    䜜者あずがき

    最埌たでお読みいただき、ありがずうございたした

    皆様の「スキ」が、創䜜掻動の倧きな励みになりたす。アカりントなしでも抌せたすので、よければハヌトを䞀抌し残しおいっおください。

    ──

    NEXT
    いよいよ次が物語の最埌の章ずなりたす。
    「第13章 (空人) 蚘憶ず邂逅」の公開は、6月末ごろを予定しおいたす。
    お楜しみに


     
     
    小説を曞く䜜曲家。䞍定期にnote曎新。ひず぀の物語䞖界を、小説・音楜・映像で倚面的に描くナニット「STORYLINE」で掻動䞭。長線小説『想像の囜のれンパンク』党13章・完結ず楜曲・MVを公開しおいたす。https://linktr.ee/storyline_jp

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