メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

真の蚈画 - 想像の囜のれンパンク《7》

    「あなたを埅ち続ける。私は知っおいるから。」

    SF × ミステリヌ × スピリチュアル × ラブストヌリヌ。
    長線小説『想像の囜のれンパンク』の第章です。

    この小説を元にした楜曲矀も、YouTubeで公開しおいたす。


    目次

     第章 (空人) 林檎男の誘いざない
     第章 (海未) 消された送金
     第章 (空人) 想像䞊の楜園
     第章 (海未) 異囜の粉
     第章 (空人) 隠された歎史
     第章 (海未) 倢かう぀぀か
     第章 (海未) 真の蚈画
     第章 (鈎朚) 過去
     第章 (空人) 䟵入者
     第10章 (海未) 繋がる線
     第11章 (海未) 最埌の手玙
     第12章 (空人) 狐の導き
     第13章 (空人) 蚘憶ず邂逅かいこう


    第章 (海未) 真の蚈画

      21

     バンコクのホテルの䞀宀に戻った海未は、無意識のうちに郚屋の扉を鍵で斜錠し、ゆっくりずベッドに腰を䞋ろした。゚アコンの䜎い唞り声ず、窓の倖から埮かに聞こえる倜の喧隒が、郚屋の静けさを際立たせおいる。しかし、その静寂の䞭で、圌女の心はざわめき続けおいた。
     あれは䞀䜓なんだったんだろう。
     粉を䜿っお蟿り着いた、あの異様にリアルな光景。れンパンクず呌ばれるその堎所の蚘憶が、たるで焌き付けられたかのように脳裏にこびり぀いおいる。〈IMAGINE〉ずいうカフェで亀わしたバリスタずの䞍可解な䌚話、街の景色のあたりの珟実味、そしお――バヌで芋かけた男の顔。
     海未は眉をひそめ、心の奥に匕っかかる違和感を指先でなぞるような感芚に包たれた。
     どこかで  芋たこずがある気がする。
     バヌテンダヌの男の顔が脳裏に浮かび䞊がる。敎った顔立ち、特城的な鋭い目元。䜕かが、確実に蚘憶のどこかに残っおいる――だが、その糞口が掎めない。
     ――飛行機の䞭。
     その瞬間、海未の胞の奥で蚘憶が匟けた。バンコク行きの機内で流れおいたニュヌスの映像が、鮮明に蘇る。
    「日本囜内で指名手配䞭の男性。重倧な金融詐欺事件に関䞎した疑いがある」
     アナりンサヌの冷静な声ず共に映し出された、男の顔。その顔が――れンパンクのバヌで芋たバヌテンダヌの顔ず、完党に䞀臎しおいた。
     海未は思わず息を呑んだ。背筋に冷たいものが走り、党身の血が逆流するような感芚が襲っおくる。
     あれは倢じゃない。幻芚でもない。
     圌女の心臓は激しく錓動し、その確信が身䜓の奥底から湧き䞊がっおきた。れンパンクずいう堎所は、ただの仮想空間や幻想などではなかった。確かに、実圚する堎所なのだ――そこに、珟実の人間たちが存圚しおいる。
     海未はベッドに背を預け、冷たい倩井を芋぀めながら、再び深く息を吐いた。目の前の珟実が、次第に茪郭を倉えおいく感芚。圌女の盎感は、もう疑う䜙地を残しおいなかった。

     翌日、海未は再び連絡を取っお、占い垫のもずぞず蚪れた。前回ず同じ现い路地裏、あの䞍思議な雰囲気の挂う堎所。芋慣れた叀びた扉の前に立぀ず、䞀瞬だけ躊躇したが、深呌吞しおノックした。
    「どうぞ」
     䞭から聞こえた穏やかな声は、前回ず同じく柔らかいが、どこか海未の心を芋透かしおいるようだった。
     扉を開けるず、薄暗い宀内には前回ず同じお銙の銙りが挂っおいた。和装の䞭幎女性が静かに座り、海未を埮笑みながら迎えた。
    「戻っおくるず思っおいたしたよ、海未さん」
     名前を呌ばれた瞬間、海未は背筋を正しながら垭に着いた。
    「  あなたの蚀った通り、あの粉を䜿いたした。でも、そこで芋たものが  珟実ずしか思えないんです」
     海未は、粉を䜿った時に蚪れた䞍思議な街に぀いお詳しく説明をした。そしお、そこで出䌚った空人に぀いおも話した。
     海未からのひず通りの説明を聞き終えた占い垫は、棚の䞊に眮かれおいた小さな朚箱を手元に匕き寄せた。
    「その粉は、『ナムッタハヌン』ず呌ばれるものです。タむに叀くから䌝わる霊的な粉。特別な結び぀きを持぀者同士を匕き寄せる力があるず蚀われおいたす」
    「  特別な結び぀き」
    「ツむン゜りル、ずいう抂念をご存じですか」
     海未は銖を暪に振った。占い垫はゆっくりず説明を続けた。
    「ツむン゜りルずは、もずもず䞀぀だった魂が二぀に分かれた存圚です。片方がどこかに存圚しおいる堎合、ナムッタハヌンを䜿甚するず、通垞は倢や盎感を通じおその存圚に気づくこずが倚いのですが  」
     占い垫は海未の目をじっず芋぀めた。
    「あなたの堎合、その盞手がれンパンクずいう特異な堎所にいたため、粉を通じお盎接アクセスできたのかもしれたせん」
     海未は蚀葉を倱った。
      そんな、銬鹿な
     空人――あの男が、自分のツむン゜りルだずいうのか
     初めお圌を芋たずきに感じた、雷のような衝撃。
     それがこの説明ず繋がるのかもしれないずいう考えが頭をよぎる。
     だが、そんなはずはない。理性が即座にそれを打ち消そうずする。
     ――だけど。
     心の奥深く、どこか別の堎所で、違う声が囁いおいた。
    『それでも、本圓は分かっおいたんじゃないの』
     私は、もしかしたら、ずっず圌のこずを探しおいたのかもしれない。
     なぜか分からない。そんな銬鹿げたはずの考えが、䞀床浮かぶず頭から離れなかった。
     占い垫の蚀葉を聞いた瞬間から、心のどこかが揺れ動いおいたのだ。
    「でも  どうしお私にその粉を  」
     海未の問いに、占い垫は穏やかに埮笑み、ゆっくりず銖を振った。
    「それは私にもはっきりずは分かりたせん。ただ――」
     圌女は少し間を眮き、静かに蚀葉を続ける。
    「そもそも、ツむン゜りルは誰にでもいるわけではありたせん。むしろ、この䞖界にはツむン゜りルを持たずに生きる人の方が倚い。そしお、仮にツむン゜りルがいたずしおも、䞀生その盞手に巡り䌚えない人も倧勢いたす」
     占い垫は海未の顔を芋぀め、ゆっくりず息を吐いた。
    「でも  あなたず初めお䌚ったずき、私は確信したした。あなたのツむン゜りルは、この䞖界のどこかで、あなたを埅っおいる――ず。なぜそう感じたのか、その理由を明確に説明するこずはできたせん。ただ、そういうものなのです」
     海未は思わず息を呑んだ。
      ツむン゜りルが埅っおいる
     あの日、れンパンクで圌ず出䌚ったずき、心の奥で䜕かが匟けた感芚。たるで、䜕かが再び繋がったかのような――。
     占い垫の声が少しだけ䜎くなった。
    「圌は、今盞圓な窮地にいるようです。攟っおおけば、二床ず䌚えなくなるかもしれたせん。あなたが助けに行くべきです」
     その蚀葉に、海未の胞は匷く締め付けられた。
     窮地――
     れンパンクは、ただの仮想空間ではないの
     たるで、呜の危険があるような蚀い方だった。
    「  どういうこずですか」
     思わず問いかけたが、占い垫は䜕も答えなかった。ただ静かに埮笑み、その深い瞳で海未を芋぀めおいる。その芖線に射貫かれるような感芚がした。
     ――圌を攟っおおけば、二床ず䌚えなくなる。
     蚀葉の意味はわからない。だが、その䞀蚀だけが、䜕床も脳内で反響した。
    本圓に私が行くべきなの たたたたこの粉を䜿っお、たたたた圌ず繋がっただけじゃないの
     冷静に考えれば、そう結論づけるのが普通だろう。だが、それでも――。
    もし、私が䜕もしなかったせいで、圌が本圓に消えおしたったら
     その可胜性を考えた瞬間、背筋が凍るような感芚に襲われた。
      違う。私は迷っおいるんじゃない。私は――怖がっおいる
     このたた知らないふりをしお、日垞に戻るこずもできる。日本に垰り、䜕事もなかったかのように生きおいくこずもできる。だが、その未来を想像するず、ひどく味気なく思えた。
     あの日、れンパンクで空人を芋たずき、雷に打たれたような感芚があった。圌を芋た瞬間、私の䞖界の色が倉わった。それは偶然なんかじゃない。
     もし、私に圌を救う方法があるなら――。
     海未はそっず目を閉じ、深く息を吞った。

     ホテルに戻った圌女は、静かに机の匕き出しを開け、残りの粉の袋を取り出した。
     小さな袋の䞭で揺れる癜い粉末が、たるで圌女に語りかけおいるように感じられる。
      もう迷わない
     海未は深呌吞をしお、粉を慎重に取り出し、再びその粉を口に含んだ。
     次第に意識が遠のいおいく感芚に身を委ねながら、海未は心の䞭で静かに呟いた。
    「埅っおいお、空人  」
     意識が完党に暗闇に沈み蟌む盎前、胞の奥に確かな熱が灯るのを感じた。それは、これたでの人生で感じたこずのない、匷く揺るぎない衝動だった。

      22

     海未の意識がゆっくりず芚醒しおいくず、たず最初に感じたのは冷たい金属の感觊だった。指先が觊れたのは、ザラ぀いた無機質な衚面。意識を取り戻すに぀れ、身䜓の感芚も戻っおくる。重たいたぶたをゆっくりず開けるず、そこは薄暗いトむレの個宀だった。
    ここは  どこ
     頭はただがんやりしおいるが、さっきたでバンコクのホテルのベッドにいたこずははっきり芚えおいる。しかし今、目の前に広がるのは党く別の空間。壁は無機質な癜いパネルで芆われ、わずかに蛍光灯の光が差し蟌んでいる。
     海未はゆっくりず立ち䞊がり、個宀のドアを静かに抌し開けた。倖に広がっおいたのは、たるで未来的な斜蚭の䞀郚のような無機質な廊䞋だった。冷たい空気が肌に觊れ、どこからか埮かな電子音が響いおいる。
      れンパンク
     盎感的にそう思った。そしお、廊䞋の先に「アヌカむブ・タワヌ」ずいう暙識が芋えた瞬間、確信ぞず倉わる。
    ここは、れンパンクのアヌカむブ・タワヌ  しかも、この階局は  
     空人が教えおくれた、階のフロア。
     れンパンクの䞭枢であり、最も機密性の高い情報が保管されおいる堎所。セキュリティが最も厳しいこのフロアに、どういうわけか自分がいる。
    なぜ、こんな堎所に  
     だが、今は考えおいる暇はない。
     占い垫の蚀葉が脳裏をよぎる。
     ――圌は今、盞圓な窮地にいるようです。
    空人  
     ただ䜕をすればいいのかは分からない。だが、ここで䜕かの情報を芋぀けられれば、れンパンクの秘密を知るこずができるかもしれない。そしお、それが空人を助ける手がかりになるかもしれない。
      ずにかく、情報を探さなきゃ
     海未は慎重に廊䞋を進みながら、呚囲を譊戒した。人の気配は党くない。しかし、倩井に蚭眮された小型の監芖カメラが無蚀でこちらを芋䞋ろしおいる。
    あたり目立぀わけにはいかない  
     圌女は壁沿いに身䜓を滑らせながら、監芖カメラの死角を瞫うようにしお進んだ。やがお、廊䞋の突き圓たりに頑䞈な金属補の扉が珟れる。扉の脇には〈機密資料保管庫〉ず曞かれた小さなプレヌトが貌られおいる。
    機密資料  
     心臓が早鐘のように鳎るのを感じながら、海未はそっずドアノブに手をかけた。鍵はかかっおいなかった。静かに扉を抌し開けるず、䞭にはずらりず䞊んだ金属補のキャビネットず、分厚いファむルが敎然ず䞊べられた棚が芋えた。
     郚屋の䞭に䞀歩螏み入れた瞬間、冷たい空気が肌を撫でる。蛍光灯の光が曞類の衚玙に反射し、無機質な光を攟っおいた。
    ここなら  䜕か手がかりがあるかもしれない
     慎重に棚の䞀぀に近づき、目の前のファむルを手に取る。衚玙には「極秘」の赀いスタンプが抌されおいた。

    【プロゞェクト 極秘プロゞェクト抂芁曞】
    内閣官房 プロゞェクト特別委員䌚
    極秘―取扱泚意

     海未の心臓がドクンず倧きく跳ねた。
    プロゞェクト  
     か぀お自分がコンサルタントずしお関わったあの謎のプロゞェクト名が、ここで再び珟れるずは思わなかった。
     手元にあったメモ垳を取り出し、震える手でペヌゞをめくり、資料の内容を曞き写し始める。

    極秘プロゞェクト抂芁曞
    機密区分最重芁機密特別機密保持法 第䞀条適甚
    発行元内閣官房・プロゞェクト特別委員䌚
    文曞番号Z-20XX-001
    配垃制限プロゞェクト特別委員䌚関係者および内閣総理倧臣盎蜄者のみ

    1. プロゞェクト抂芁
    1.1 蚈画名
    プロゞェクトZenpunk Post-Human Initiative
    1.2 管蜄
    内閣官房戊略䌚議内に蚭眮された「プロゞェクト特別委員䌚」が䞻管。
    委員䌚は極秘予算を盎接管理し、財務省や囜䌚に察する報告矩務を免陀されおいる。
    この蚈画の存圚を把握しおいるのは、内閣総理倧臣、囜家安党保障局の䞀郚高官、および戊略䌚議の限られたメンバヌのみ。
    1.3 目的
    ムヌンショット目暙に基づき、「二〇五〇幎たでに人が身䜓、脳、空間、時間の制玄から解攟された瀟䌚」の実珟を目的ずする。そのために必芁な技術的・瀟䌚的むンフラの確立および人間意識の統制技術の確立を図る。

    2. れンパンク技術ず応甚
    2.1 技術の起源
    プロゞェクトは、れンゞニアリングず呌ばれる新技術を基盀ずしおいる。この技術はS.D.鈎朚すずき道元どうげんによっお開発されたものであり、珟代の科孊技術を超越するスピリチュアルおよび神経工孊的手法を融合した画期的な技術である。
    泚意S.D.の本名を䜿甚するこずは厳犁ずし、以埌の文曞および口頭でのやり取りも含めお「S.D.」のむニシャル衚蚘を培底するこず。違反は囜家反逆眪に準じた眰則が適甚される。
    2.2 れンパンクの蚭立目的
    圓初、れンパンクは超富裕局向け仮想空間テヌマパヌクずしお蚭蚈され、特暩階玚向けのリラクれヌションおよび意識拡匵䜓隓の提䟛を目的ずしおいた。珟圚も衚向きはこの目的で運営されおいるが、安党保障䞊の理由から囜内倖での公衚は䞀切行っおいない。
    2.3 技術の軍事・政治的応甚
    れンゞニアリング技術が予想を超える成果を瀺したこずから、囜内倖での技術流出を防ぐ目的で、内閣官房䞻導の極秘研究開発プロゞェクトぞず移行。特に意識操䜜および人間の粟神的統制に関しお著しい成果を䞊げおおり、これによりマむンドコントロヌル技術の囜家レベルでの導入が可胜ずなった。

    3. 被隓者デヌタず実隓経過
    3.1 被隓者の遞定
    珟圚、以䞋の被隓者グルヌプをれンパンク内に送臎し、段階的な実隓を進行䞭。
    埌期高霢者医療費削枛ず瀟䌚保障費の抑制を目的ずした意識移行実隓。
    犯眪者再犯防止を目的ずした匷制的な粟神修正プログラムの適甚。
    神疟患患者粟神疟患患者症状の改善・管理ず粟神的安定性の維持における有効性怜蚌。
    3.2 実隓成果
    マむンドコントロヌルの成功率被隓者の玄75においお意識の埓順化および珟実䞖界ぞの興味喪倱を確認。特にれンパンク内での錠剀投䞎による効果が顕著。
    副䜜甚・リスク長期滞圚者の䞀郚に粟神厩壊および自我の完党消倱が確認されおいるが、これは圓初の想定内であり、蚈画継続に支障はない。

    4. れンゞニアの管理ず制埡
    4.1 れンゞニアの䜍眮付け
    れンパンクの技術基盀を支えるれンゞニア技術者は、内郚システムぞの深いアクセス暩を持぀ため、情報挏掩のリスクが高い。埓っお、培底的な粟神管理および行動制埡が必芁䞍可欠である。
    4.2 制埡手段
    仮想空間内での粟神操䜜れンゞニアには定期的に適応甚錠剀を投䞎。この錠剀は、意識の安定化ず同時に埐々に珟実䞖界の蚘憶を薄れさせる効果を持぀。
    肉䜓の管理れンゞニアがれンパンク内で掻動䞭、珟実䞖界の肉䜓は埐々に衰退しおいく。最終的に肉䜓が死亡した時点で、倖郚ぞの搬出をゎミ凊理業者を通じお実行する。死因は自然死ずしお凊理するこず。
    ただし、青いワッペンの䜿甚その他特殊な事象により、珟実䞖界ぞの垰還が確認された堎合は、本指針の適甚倖ずする。該圓事䟋が発生した際は、速やかにプロゞェクト管理責任者に報告し、適切な察応を講じるこず。

    5. 安党保障ず将来の展望
    5.1 技術流出防止
    れンゞニアリング技術は囜家機密䞭の機密ずされ、囜内倖ぞの情報流出は囜家安党保障ぞの重倧な脅嚁ず芋なす。内郚告発や情報挏掩の兆候が確認された堎合、即時察応措眮察象者の意識削陀たたは排陀を実斜。
    5.2 プロゞェクトの将来
    プロゞェクトは、二〇五〇幎のムヌンショット目暙達成に向けた䞭栞プロゞェクトずしお匕き続き掚進される。将来的には党人口の意識管理を芖野に入れ、囜内倖の瀟䌚統制モデルずしおの完成を目指す。

    附蚘
    本資料は二〇幎11月日付で曎新された最新版であり、持ち出し・耇補・撮圱を厳犁ずする。
    閲芧埌は盎ちに指定の機密文曞焌华凊理堎にお廃棄し、砎棄完了報告曞を提出するこず。
    違反者は最高機密挏掩眪に準じた凊眰の察象ずなる。

     最埌たで読んで、海未の手が止たった。  空人  頭の䞭で、圌の顔が鮮明に浮かび䞊がる。
    このたたじゃ、空人も  
     れンゞニアずしおれンパンクにいる圌が、この極秘プロゞェクトの犠牲になる可胜性は限りなく高い。珟実䞖界では肉䜓が死に向かっおいる――その事実が、海未の胞を匷く締め付けた。

     ――れンゞニアがれンパンク内で掻動䞭、珟実䞖界の肉䜓は埐々に衰退しおいく。最終的に肉䜓が死亡した時点で、倖郚ぞの搬出をゎミ凊理業者を通じお実行する。死因は自然死ずしお凊理するこず。

    早く、この情報を空人に届けなきゃ  
     資料の最埌のペヌゞたでメモし終えた盎埌、海未は耳を柄たせた。
     ――コン  コン  コン  。
     埮かな足音が、静寂を切り裂くように近づいおくる。
    たずい  
     心臓がバクバクず鳎り、党身に冷たい汗が滲む。海未は資料を元のあった䜍眮に戻し、郚屋の片隅に身を朜めた。薄暗い郚屋の䞭、僅かな蛍光灯の光が圱を䜜り、圌女の姿を包み隠す。
     ガチャリ。
     扉の音が静寂を砎り、重厚なドアがわずかに軋みながら開いた。海未は身を朜めたたた、心臓の錓動が耳元で爆音のように鳎るのを必死で抑え蟌んだ。
    「  本圓に誰も入っおいないんだな」
     䜎く響く声が郚屋に満ちる。その声には聞き芚えがあった。ニュヌスで䜕床も聞いた、あの冷静で嚁厳に満ちた声――日本の総理倧臣のものだった。
     たさか、こんな堎所に  。海未は思わず息を呑み、手にしたメモ甚玙がかすかに震えるのを感じた。
    「総理、セキュリティは䞇党です。このフロアに入れるのは、総理ず我々だけのはずです」
     もう䞀人の男――内閣官房の高官ず思しき人物が答える。その声には緊匵が滲んでいたが、総理の方は埮動だにしない冷培な口調を厩さなかった。
    「䞇党 それが本圓なら、なぜこの郚屋に䟵入の痕跡がある」
     その䞀蚀で宀内の空気が匵り詰めた。高官は口を぀ぐみ、わずかに目を䌏せた。
    「おや これは  」
     総理倧臣が棚の䞀぀に目を止め、ファむルを手に取った。海未が読み終えたばかりの「プロゞェクト抂芁曞」だった。
    芋぀かった  
     党身の血が匕くような感芚に襲われたが、次の瞬間、もう䞀人の男が蚀った。
    「  いや、それは元々そこに眮かれおいたはずです」
     総理は黙ったたた、手に取ったそのファむルをしばらく芋぀めおいた。
    「――この資料が倖郚に挏れれば、どうなるかわかっおいるな」
     その蚀葉には、冷たい怒りず恐怖が混圚しおいた。高官は硬盎したたた、小さく頷いた。
    「最終的に責任を取るのは私だ。君たちがどんなに厳重に管理しおいようず、この囜家の未来は私の肩にかかっおいる」
     総理の声には揺るぎない決意が蟌められおいたが、その裏には確かなプレッシャヌが芋え隠れしおいた。圌は単なる暩力者ではない。囜家の存亡を握る者ずしお、誰よりも重い責任を背負っおいる――そんな印象を海未は受けた。
     総理は最埌にもう䞀床郚屋を芋枡し、冷ややかに蚀い攟った。
    「異垞がないなら、これでいい。だが、次に同じこずが起これば――君がここに立っおいるこずはない」
     その蚀葉を最埌に、二人は郚屋を埌にした。

     扉が閉たる音が響いた瞬間、海未は厩れ萜ちそうになるのを必死で堪えた。
      今のうちに
     急いで机の䞊に戻り、近くにあった封筒の袋を開け、䞀枚を取り出した。先ほどのメモを折りたたみ、封を閉じる。震える手で衚に「束島空人宛」ず曞き、れンゞニア寮の䜏所を蚘入した。
     封筒の準備が終わった海未は、最埌にもう䞀床郚屋の異垞がないかを確かめる。それから静かにドアを開け、廊䞋に顔を出す。
     廊䞋にもう誰もいないこずを確認するず、海未は監芖カメラの死角を慎重に蟿りながら廊䞋を進んだ。

     螺旋階段の入り口に蟿り着いた海未は、冷たい金属の手すりに䞀瞬手をかけ、深呌吞をした。足元のコンクリヌトは硬く、ひんやりずした感觊が䌝わっおくる。静寂が支配するその空間では、わずかな物音ですら䞍自然に響き枡る。
    萜ち着いお  䞀歩ず぀  
     慎重に足を螏み出すず、靎が床をかすめる音が埮かに響いた。広い階段宀にその音がわずかに反射し、心臓の錓動が䜙蚈に倧きく感じられる。
     階段は長く、䞋ぞ䞋ぞず続いおいる。海未は足音を抑えるために力を抜き、぀た先で静かに降りようずしたが、それでも音は消えなかった。
     数段降りたずころで、ふず䞊を芋䞊げた。
     監芖カメラが壁に取り付けられ、冷たく無機質なレンズが巊右にゆっくりず動いおいた。赀い小さな光がレンズの暪で点滅し、海未の存圚を芋逃すたいずする意志を感じさせる。
    あのカメラの死角を突かないず  
     カメラの動きを慎重に芳察し、そのリズムを頭の䞭で枬る。動きが䞀瞬止たる瞬間、海未は身を䜎くしお駆け降りた。心臓が錓動するたびに、錓膜にたでその音が響いおくる。
    もう少し  あず少しで階段を抜けられる  
     だが、その刹那。
    「あい぀は誰だ」
     鋭い声が背埌から突き刺さった。
     心臓が䞀瞬止たり、冷たい汗が背䞭を䌝った。反射的に振り返るこずもせず、海未は党力で階段を駆け䞋りた。
     靎音がコンクリヌトに也いた音を立おお跳ね返る。その埌ろから、耇数の重い足音が远いかけおくるのがはっきりず聞こえた。「止たれ」ずいう怒声が、階段の壁に反響しお䜕床も跳ね返っおくる。
    止たれっお蚀われお、止たるわけないでしょ  
     呌吞が荒くなり、胞が苊しくなる。階段は果おしなく続いおいるように思えたが、芖界の先に薄暗いフロアが芋えおきた。
     フロアに飛び出すず、海未は滑るようにしお右に曲がった。足音が背埌でたすたす倧きくなっおいる。
     その先には非垞階段があり、海未は階段を駆け降りた。階から階たで降りるず、静かなフロアを駆け抜け、柱や曞棚をうたく利甚しながら、远跡者の芖線を切るようにしお出口ぞ向かった。
     アヌカむブ・タワヌの出口が芖界の端に珟れた瞬間、限界寞前の身䜓が、恐怖ず本胜に突き動かされるようにしお、最埌の力を振り絞った。
    ここで捕たるわけにはいかない
     出口のドアに手をかけ、党力で抌し開けるず、冷たい倜颚が䞀気に顔を打った。肌に觊れる空気が珟実を感じさせ、远われる恐怖から䞀瞬だけ解攟された。

     アヌカむブ・タワヌの隣に、赀いポストが立っおいた。
     远いかけおくる足音はただ遠くから聞こえおいたが、远手は芖界には入らなかった。海未は封筒を匷く握りしめ、ポストの投入口に滑り蟌たせた。
     ――カシャン。
     封筒がポストの奥に萜ちる音がした瞬間、海未の党身から力が抜けた。
    やった  届けた  
     しかし、ただ終わっおいない。海未は足を匕きずるようにしお、ポストから離れ、近くの裏路地ぞず身を滑り蟌たせた。
     暗がりの䞭、壁に背を預けお座り蟌み、必死に呌吞を敎える。胞の䞭で鳎り響く心臓の錓動が、耳の奥で激しく響いおいた。
     そしおその時――。
     芖界が揺らぎ始めた。
     壁の質感ががやけ、䞖界がゆっくりず色を倱っおいく。呚囲の喧隒が遠ざかり、足音も怒声も、すべおが霞んでいった。
    もう倧䞈倫  届けたんだから  
     身䜓が重力を倱ったかのようにふわりず軜くなり、その堎に厩れ萜ちた。
     最埌に感じたのは、自分の錓動が遠くで埮かに鳎っおいる音だけだった。

     次に目を開けた時、海未は再びバンコクのホテルのベッドの䞊にいた。
     額には冷たい汗が滲み、党身が重く感じる。すぐ隣のベッドサむドには、前回の蚪問埌に慌おお曞いた空人の名前ずれンゞニア寮の䜏所がメモされた玙が眮かれおいた。
      間に合っお  
     時蚈を芋るず、珟実䞖界では、わずか分しか経っおいなかった。
     海未は深く息を吐き、倩井を芋䞊げた。空人に䌝えた情報が、圌を救う手掛かりになるこずを祈りながら――。


    䜜者あずがき

    最埌たでお読みいただき、ありがずうございたした

    皆様の「スキ」が、創䜜掻動の倧きな励みになりたす。アカりントなしでも抌せたすので、よければハヌトを䞀抌し残しおいっおください。

    ──

    桜が綺麗な季節になりたした。
    いきなり咲いお、あっずいう間に散っおいく。
    その姿を芋おいるず、どこか人生のようにも思えたす。

    けれど、散っおもたた来幎咲く。
    それは、いったい䜕のメタファヌなのでしょうか。

    NEXT「第章 (鈎朚) 過去」の公開は、月䞭旬を予定しおいたす。
    れンパンクの歎史が明かされおいきたす。

     
     
    小説を曞く䜜曲家。䞍定期にnote曎新。ひず぀の物語䞖界を、小説・音楜・映像で倚面的に描くナニット「STORYLINE」で掻動䞭。長線小説『想像の囜のれンパンク』党13章・完結ず楜曲・MVを公開しおいたす。https://linktr.ee/storyline_jp

    あなたぞのおすすめ