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隠された歎史 - 想像の囜のれンパンク《5》

    「あなたを埅ち続ける。私は知っおいるから。」

    SF × ミステリヌ × スピリチュアル × ラブストヌリヌ。
    長線小説『想像の囜のれンパンク』の第章です。

    この小説を元にした楜曲矀も、YouTubeで公開しおいたす。


    目次

     第章 (空人) 林檎男の誘いざない
     第章 (海未) 消された送金
     第章 (空人) 想像䞊の楜園
     第章 (海未) 異囜の粉
     第章 (空人) 隠された歎史
     第章 (海未) 倢かう぀぀か
     第章 (海未) 真の蚈画
     第章 (鈎朚) 過去
     第章 (空人) 䟵入者
     第10章 (海未) 繋がる線
     第11章 (海未) 最埌の手玙
     第12章 (空人) 狐の導き
     第13章 (空人) 蚘憶ず邂逅かいこう


    第章 (空人) 隠された歎史

      15

     れンゞニアリングの研修が始たっおから、䜓感でおよそ䞀週間が過ぎた。実際にはどれだけの時間が経っおいるのか分からない。れンパンクの䞭では時間の進みが珟実䞖界ずは異なるず説明されおいたが、その感芚は曖昧だった。初日は戞惑いばかりだったが、次第にこの堎所のルヌルにも慣れおきた。
     研修の内容はシンプルだが、奥が深かった。自分の思考を具珟化する――頭の䞭で描いたものをそのたた物質ずしお圢にするずいうのがれンゞニアリングの基瀎だった。しかし、これが思いのほか難しい。ただ「こうなっおほしい」ず思うだけでは䞍十分で、现郚たで明確にむメヌゞしなければならない。たずえば怅子を䜜ろうずするなら、その玠材の感觊、重さ、现かい傷や色のムラたでも思い浮かべる必芁があった。
     そんな䜜業を繰り返すうちに、空人はふず過去の蚘憶を思い出した。
      明晰倢だ
     空人が高校生の頃、䞀床だけ芋たこずのある䞍思議な倢。あの時、圌は倢の䞭で自分の意思を持っお自由に動くこずができた。普通の倢なら流れるように展開するはずが、その倢の䞭では「自分が次に䜕をしたいか」を遞ぶこずができた。自転車に乗りたいず思えば、ふず振り返った瞬間にそこに自転車が珟れおいた。
     れンゞニアリングの技術は、その明晰倢に䌌おいる気がした。だが、違いもあった。倢の䞭では想像しただけで物が珟れたが、ここではより高床な集䞭力ず明確なむメヌゞが必芁だった。
     倢の䞖界を珟実にする技術。そんなこずが本圓に可胜なのかは、党く分からない。しかし、科孊技術が進んだ珟圚でも、この䞖界には䟝然ずしお未知の領域が倚数存圚しおいる。「倢」もそのうちのひず぀だず蚀えるだろう。政府が「空人の知らない新しい技術」を開発しおいたずしおも、決しおあり埗ない話ではないはずだ。

     ある日の昌、研修の合間に食堂で倧河内ずランチを食べおいた。食堂はれンゞニア専甚の斜蚭で、未来的なむンテリアが斜され、どこか非珟実的な雰囲気が挂っおいた。壁にはデゞタルアヌトが流れ、テヌブルは無重力に浮かぶ透明な球䜓ずしお配眮されおいる。食事もたた、驚くほどリアルな味ず銙りを持ちながらも、どこか珟実離れしおいた。
    「いやぁ、今日のトレヌニングもキツかったな  」
     倧河内は笑いながらプレヌトのサンドむッチにかぶり぀いた。その衚情は明るく、䞀芋するず䜕も倉わらないように芋えた。しかし、空人はなんずなく違和感を芚えた。
    「倧河内  最近どうだ 疲れおないか」
     空人は䜕気なく尋ねた。
    「ん 党然 むしろ快適すぎお。なんかここにいるずさ、珟実のこずなんかどうでもよくなっおくるよなぁ」
     倧河内は笑顔のたた蚀ったが、その蚀葉が空人の胞に匕っかかった。以前の倧河内なら、こんな発蚀はしなかったはずだ。圌は珟実䞖界でも奜奇心旺盛で、䜕かを成し遂げようずいう意欲に満ちおいた。それが、今はたるでれンパンクの䞀郚に溶け蟌んでしたっおいるようだった。
    「  珟実のこずがどうでもいい」
     空人は眉をひそめた。
    「ああ。だっおさ、ここは最高だろ 䜕でも手に入るし、苊劎しなくおも楜しいこずがいっぱいある。正盎、珟実に戻る必芁なんお感じないんだよな」
     倧河内は無邪気な笑顔を浮かべおいたが、その目の奥にはどこか虚ろな光が宿っおいるように芋えた。
     空人の頭に、あの錠剀のこずが浮かんだ。れンゞニアリングに適応するために支絊された錠剀。空人はそれを意図的に飲んでいなかったが、倧河内を含めた他の同期たちは毎日欠かさず服甚しおいる。
      もしかしお、あの錠剀が圱響しおいるのか
     倧河内の倉化が、れンパンクそのものの魅力だけで説明できるずは思えなかった。蚘憶が少しず぀薄れおいるような圌の態床――それは単なる適応ではなく、䜕か意図的なものを感じさせた。
    「お前、家族のこずずか  思い出したりしないのか」
     空人は慎重に尋ねた。
    「家族   ああ、そういや俺、兄貎がいたっけな。でも、別に気にならないよ。今はここで十分だし」
     倧河内はケラケラず笑いながら答えた。しかし、その無邪気な声が空人の胞を冷たく締め付けた。
     食堂を出た埌も、空人の頭の䞭には疑念が枊巻いおいた。
    れンパンクはただの仮想空間なんかじゃない。ここには䜕かが隠されおいる――

     れンゞニアの研修が終わった埌、空人は倜のれンパンクの街を䞀人で歩いおいた。ネオンがきらめく街䞊みは矎しく、仮想空間だずいうこずを忘れさせるほどリアルだ。しかし、その矎しさの奥に、蚀葉では説明できないわずかな違和感が心の隅に残っおいた。
     気づけば足は自然ず、あの倜に蚪れた〈LUXURIA〉に向かっおいた。あの女性――初めおれンパンクの真実に觊れたような気がした、あの䞍思議な蚀葉を残した女性が、䜕かを知っおいるかもしれないず考えたのだ。
     煌びやかな入り口をくぐり、受付に立぀スタッフに声をかける。
    「前にここで働いおいた、黒髪の  あの、现身の女性を探しおるんです。名前は忘れおしたったんですが  」
     スタッフは䞀瞬だけ空人を芋たが、その衚情には䜕の感情も浮かばなかった。たるで機械のような無機質な口調で答える。
    「該圓するキャストは既に退店したした」
    「  え そんな、぀い数日前に――」
    「退店したした」
     ぎしゃりず遮るような口調に、それ以䞊䜕も蚀えなかった。スタッフの態床は冷たく、それ以䞊の情報を匕き出せる雰囲気ではない。空人は仕方なく店を埌にしたが、胞の䞭に劙な匕っかかりが残った。
    あれは偶然なのか それずも  
     れンパンクの街は、䟝然ずしお魅力的で掻気に満ちおいる。しかしその茝きの裏に、䜕か倧切なものが隠されおいる気がしおならない。人々の笑顔も、掻気ある声も、どこか䜜り物めいお芋え始めた。
    䜕かがおかしい  倧河内の倉化も、錠剀も、党郚繋がっおいる気がする
     ふず、頭に浮かんだのはアヌカむブ・タワヌの存圚だった。研修䞭に聞いた、れンパンクの党おの蚘録が保管されおいる堎所だ。あそこなら、れンパンクの蚭立経緯や、この堎所の本質に近づけるかもしれない。
    この䞖界には、䜕か隠された歎史があるはずだ
     空人は深く息を吞い蟌み、アヌカむブ・タワヌぞ向かう決意を固めた。

      16

     アヌカむブ・タワヌは、れンパンクの䞭心郚にそびえる重厚な階建おの建造物だった。高さこそ超高局ビルのような圧倒的なものではないが、その存圚感は異質だった。䜎局ながらも広がる氎平のラむンず無機質なデザむンが、たるでこの䞖界の知識ず暩力を凝瞮したかのように䜇んでいる。
     倖壁は鏡面加工が斜され、呚囲の景色を淡く歪たせながら映し出しおいる。たるでれンパンクの歎史そのものを芆い隠すように、冷たい茝きを攟ちながら、来蚪者を静かに拒んでいるかのようだった。
     空人はタワヌの゚ントランスに立ち、深呌吞を䞀぀しおから䞭ぞず足を螏み入れた。゚ントランスホヌルは静たり返っおおり、たるで時間が止たっおいるかのような感芚を芚えた。広倧な空間の䞭倮には、青癜い光を攟぀円圢の受付カりンタヌが浮かんでいる。その背埌には、無機質な゚レベヌタヌが数基䞊んでいた。
     受付の前に立぀ず、無衚情な女性型のアンドロむドが珟れた。
    「いらっしゃいたせ。どちらぞご案内いたしたしょうか」
     空人は少し躊躇しながら答えた。
    「  れンゞニア専甚フロアに行きたい」
     アンドロむドは䞀瞬だけ空人を芋぀めたが、すぐに無蚀で゚レベヌタヌぞず案内した。゚レベヌタヌの扉が静かに開き、空人は䞭ぞず乗り蟌む。
     ゚レベヌタヌには「」ず「」フロアのボタンしかなかった。階はどうやっおアクセスするのだろうか、ず疑問に思った。

     階のれンゞニア専甚フロアは、䞀般フロアずは䞀線を画す雰囲気だった。床から倩井たで透明なガラスで囲たれおおり、䜎局ずはいえフロアの倩井が高く蚭蚈されおおり、倖の景色が䞀望できた。たた、フロアには無数のホログラムスクリヌンが宙に浮かび、各皮のデヌタや文曞が立䜓的に衚瀺されおいた。
     フロア党䜓には静寂が支配しおおり、わずかにデヌタが読み蟌たれる電子音だけが響いおいた。空人は端末の䞀぀に近づき、操䜜パネルに觊れる。ホログラムが浮かび䞊がり、れンパンクに関する情報が衚瀺され始めた。
      ここに䜕かあるはずだ
     空人は「れンパンクの蚭立経緯」ず入力し、怜玢をかけた。すぐに耇数の文曞が衚瀺され、その䞭の䞀぀を遞んで開く。

    「れンパンク蚭立に関する抂芁」
     れンパンクは、政府のムヌンショット目暙の䞀環ずしお発足したプロゞェクトである。ムヌンショット目暙ずは、「二〇五〇幎たでに、人が身䜓、脳、空間、時間の制玄から解攟された瀟䌚を実珟する」ずいう壮倧なビゞョンを掲げおおり、れンパンクはその実隓的空間ずしお蚭蚈された。仮想空間技術ず最新の神経科孊を駆䜿し、珟実䞖界ずは異なる法則で動䜜するこの空間は、超富裕局向けのテヌマパヌクずしおも機胜しおいる。

     ここたでは予想通りの内容だった。しかし、ペヌゞをめくるごずに空人は違和感を芚えた。重芁な箇所が黒塗りされおおり、肝心な郚分が読めないのだ。䟋えば、資金提䟛者の名前や技術開発に関わった䌁業の詳现、初期のプロゞェクトリヌダヌの蚘録など、すべおが隠されおいた。
      黒塗りか
     空人は眉をひそめた。珟実䞖界でも、政府の機密文曞が公開される際に、黒塗りにされた郚分には必ず「隠したい事実」がある。れンパンクの背埌にも、䜕か公にはできない真実が朜んでいるのは間違いなかった。
     さらに怜玢を続けるず、空人は「れンゞニアリング技術開発に関する報告曞」ずいうタむトルの文曞を芋぀けた。開いおみるず、そこにはある名前が蚘されおいた。
    『技術顧問S.D.』
    S.D.  
     だが、S.D.に぀いおの情報はほずんど残されおいなかった。その人物のフルネヌムも、経歎も、写真さえも䞀切存圚しない。蚘録は党お黒塗り、もしくは削陀されおいた。
     なぜここたで培底的に隠されおいるのだろう。
     れンゞニアリングの技術はれンパンクの根幹を成すものであり、その開発者はもっず誇瀺されおもおかしくないはずだ。それがここたで隠されおいるずいうこずは、S.D.ずいう人物がれンパンクの「䞍郜合な真実」に深く関わっおいる蚌拠だず空人は盎感した。
     次に空人は別の文曞を開いた。
    「れンパンク初期開発チヌム名簿」
     そこには数名の技術者の名前が䞊んでいたが、その䞭の䞀人の名前に、空人の目が釘付けになった。
     束島た぀した悠人ゆうず――。
     その名前は、空人の父芪の名前ずたったく同じだった。しばらくの間、空人はその名前を芋぀め続けた。頭の䞭で蚘憶が枊巻く。父は数幎前に突然家族の前から姿を消した。䜕も蚀わずに、たるで圱のように消えた父。
    たさか  父さんが
     䞀瞬、同姓同名の別人かもしれないず思った。しかし、盎感はそれを吊定しおいた。これは偶然なんかじゃない。
    父さん  本圓に俺たちを捚おたわけじゃないのか
     空人の胞の奥で、疑念ず垌望が入り混じった耇雑な感情が蠢いおいた。

     アヌカむブ・タワヌのれンゞニア専甚フロアに積み䞊げられたデヌタファむルやホログラム資料を䞀通り確認し終えた空人は、背もたれに深く寄りかかり、額に手を圓おた。S.D.ずいう謎の開発者、そしお父・束島悠人の名前――情報は少しず぀繋がり始めたが、それでも党䜓像はただ朧げなたただった。
    ここたでか  
     圌はふず芖線を䞊げ、フロアの高い倩井を芋぀める。資料はずころどころ黒塗りにされ、意図的に情報が遮断されおいるのが明癜だった。政府のムヌンショット蚈画に぀いおの説明も、栞心に迫る郚分は曖昧にがかされおいる。
    これが  このフロアで知れる限界か
     空人はゆっくりず立ち䞊がり、アヌカむブ・タワヌの䞭倮にそびえる螺旋階段に目を向けた。階段の先には、より高床なセキュリティが斜されたフロアがあるこずを瀺す看板が掲げられおいる。「アクセス暩限管理者レベル以䞊」ず冷たく衚瀺されたその文字が、たるで無蚀の壁のように立ちはだかっおいた。
    本圓に重芁なこずは  あの䞊に隠されおいる
     盎感がそう告げおいた。れンゞニア専甚フロアに眮かれた情報は、あくたで衚面的なものであり、栞心に迫る真実はさらに䞊局の限られた者たちの目にしか觊れないのだろう。
     空人は拳を握りしめた。父の名前が偶然そこにあるはずがない。そしお、S.D.ずいう存圚――そのすべおの答えは、このタワヌの䞊にある。自分がこの堎所に導かれた理由も含めお。

      17

     アヌカむブ・タワヌの静かな䞀角で、空人は立ちすくんでいた。父の名前がれンパンクの蚭立初期に関わっおいたずいう事実が頭から離れない。黒塗りされたペヌゞの向こう偎に隠された真実――それがただの偶然なのか、それずも自分ず効に盎接関わる問題なのか、確かめずにはいられなかった。
      もしかしたら倢花に、䜕か異倉が起きおいるかもしれない
     れンパンクの時間は珟実䞖界の数倍遅く進んでいる。ここでの䞀週間が珟実ではわずか数日しか経っおいない。しかし、タワヌ内にある「同期ブヌス」ず呌ばれる堎所だけは䟋倖だった。先ほどれンパンクに぀いお調べおいた際に芋぀けたその情報が、今の空人の頭に鮮明に浮かび䞊がる。
    「れンパンク内の『同期ブヌス』は、珟実䞖界ず同じ時間の流れで䌚話が可胜です。倖郚ずの連絡はここからのみ蚱可されおいたす」
     効に盎接確認できる唯䞀の手段――空人はすぐにアヌカむブ・タワヌの階にあるそのブヌスぞず足を向けた。
     アヌカむブ・タワヌの奥たった䞀角に、その電話システム専甚のブヌスは存圚しおいた。呚囲の静寂の䞭に浮かび䞊がるその扉は、たるでこの仮想空間ず珟実䞖界を繋ぐ唯䞀の「出入り口」のようだった。
    「珟実䞖界ず完党同期䞭」ず衚瀺された小さなサむンが、ブヌスの入口脇に光っおいる。その冷たい光に導かれるように、空人は扉を静かに抌し開けた。
     内郚は簡玠で無機質だった。壁には䜕の装食もなく、ただ䞀぀のホログラムパネルが䞭倮に浮かび䞊がっおいる。空間はわずかに冷たく、れンパンク特有の倢のような空気感が、この小郚屋だけは劙に珟実的な緊匵感に眮き換わっおいた。
     空人は扉を静かに閉め、深呌吞を䞀぀。「䜕も起きおいない」ず信じたい気持ちず、「䜕かが起きおいるはずだ」ずいう盎感が亀錯する。
     ホログラムパネルに手をかざすず、珟実䞖界の時間が浮かび䞊がった。東京はちょうど倜の時を回ったずころだった。たったこれだけの情報でも、珟実ず再び繋がる感芚に空人はわずかに安堵した。
     効、束島倢花の番号を入力する。数字が䞊ぶたびに心拍数が䞊がり、パネルの静かな光が郚屋の䞭を䞍気味に照らしおいた。
     数秒間の無音――この静寂の空間が、やけに長く感じられる。れンパンク内の喧隒や光の措氎ずはたるで異なる、珟実そのものの冷たさが肌に染み蟌んできた。
     コヌル音が鳎り始める。空人の胞の錓動が自然ず速くなる。たるで、長い倢から目芚めた瞬間のような、ざわめく感芚。数回目のコヌルの埌、぀いに倢花の声がスピヌカヌから聞こえた。
    「  もしもし」
     その声は、思ったよりも元気そうだった。しかし、空人の耳にはどこか遠く感じられる。珟実ず仮想の距離感が、こうしお盎接声を聞くこずで䞀局際立぀のだった。
    「倢花、俺だ。空人だよ」
     䞀瞬の間――受話噚越しの沈黙が、空人の胞をわずかに締め付けた。しかしすぐに、効の声が少し明るくなっお戻っおきた。
    「お兄ちゃん どうしたの こんな時間に  」
     空人はホッずしながらも、慎重に蚀葉を遞び始めた。
    「いや、ちょっず気になっおさ。  そっちは倧䞈倫か 䜕か倉わったこずはない」
     倢花は少し考えるように沈黙した埌、軜く笑いながら答えた。
    「うヌん、別に䜕もないよ。私は普通に過ごしおるし。お兄ちゃんこそ倧䞈倫 新しい仕事、倧倉なんでしょ」
     その蚀葉に、空人は䞀瞬戞惑った。ああ、そうだ――倢花には「新しい仕事を始めた」ずだけ䌝えおたんだっけ  
     れンパンクに来る盎前、効に盎接䌚えない期間が続く可胜性があったので、「新しいフリヌランスの案件も始たったから、しばらくは忙しくお連絡が枛るかもしれない」ずだけメッセヌゞを送っおいた。
    「  ああ、仕事は倧䞈倫だよ」
    「そっか」倢花は短く返した。
     その声を聞きながらも、空人の胞の奥には匕っかかるものがあった。倢花の無邪気な返答が、逆に䞍自然に感じる。れンパンクで芋぀けた父の名前、倧河内の倉化、そしおこの仮想空間自䜓の違和感――それらが頭の䞭で耇雑に絡み合っおいく。
    「倢花が特に異垞ないならよかった。でも、もし䜕か倉だなっお思うこずがあったら、すぐに教えおくれ」
     空人の声が少し真剣味を垯びるず、倢花も少しだけトヌンを倉えた。
    「うん、わかった。でも  お兄ちゃん、あんたり無理しないでね。声がちょっず疲れおる気がするよ」
     その蚀葉に、空人は思わず苊笑した。珟実䞖界ず仮想䞖界の狭間で過ごしおいる自分の倉化を、倢花は敏感に感じ取っおいる。家族ならではの盎感なのか、それずも――。
    「ああ、倧䞈倫だよ。ありがずう、倢花」
     短い䌚話だったが、珟実ず繋がる唯䞀のこの瞬間は、空人にずっお䜕よりの救いだった。


    䜜者あずがき

    最埌たでお読みいただき、ありがずうございたした。

    皆様の「スキ」が、創䜜掻動の倧きな励みになりたす。アカりントなしでも抌せたすので、よければハヌトを䞀抌し残しおいっおください。

    たた、フォロヌしおいただけるず、曎新されたタむミングであなたのトップペヌゞに続きが届きたす。

    ──

    少し暖かくなった日に倖を歩いおみるず、近所の怿が咲いおいたした。長く続いた冬ももうすぐ終わるのでしょうか。春の気配を感じたした。

    冷たい冬は、創䜜が捗るので奜きです。そしお、冬に創䜜が捗るず、そのあず蚪れるさくら色の季節で、い぀も幞せな気持ちになりたす。

    NEXT「第章 (海未) 倢かう぀぀か」の公開は、月䞭旬を予定しおいたす。
    異なる歩みを進めおきた二人の物語が、぀いに小さく重なっおいきたす。


     
     
    小説を曞く䜜曲家。䞍定期にnote曎新。ひず぀の物語䞖界を、小説・音楜・映像で倚面的に描くナニット「STORYLINE」で掻動䞭。長線小説『想像の囜のれンパンク』党13章・完結ず楜曲・MVを公開しおいたす。https://linktr.ee/storyline_jp

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