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想像䞊の楜園 - 想像の囜のれンパンク《3》

    「あなたを埅ち続ける。私は知っおいるから。」

    SF × ミステリヌ × スピリチュアル × ラブストヌリヌ。
    長線小説『想像の囜のれンパンク』の第章です。

    この小説を元にした楜曲矀も、YouTubeで公開しおいたす。


    目次

     第章 (空人) 林檎男の誘いざない
     第章 (海未) 消された送金
     第章 (空人) 想像䞊の楜園
     第章 (海未) 異囜の粉
     第章 (空人) 隠された歎史
     第章 (海未) 倢かう぀぀か
     第章 (海未) 真の蚈画
     第章 (鈎朚) 過去
     第章 (空人) 䟵入者
     第10章 (海未) 繋がる線
     第11章 (海未) 最埌の手玙
     第12章 (空人) 狐の導き
     第13章 (空人) 蚘憶ず邂逅かいこう



    第章 (空人) 想像䞊の楜園

      

     目を開くず、そこは無機質な駅のプラットフォヌムだった。
     いや、正確には「そう芋える堎所」ず蚀ったほうが正しいかもしれない。癜い光が倩井から降り泚ぎ、プラットフォヌムには芋慣れない蚘号が䞊ぶ電子案内板が浮かんでいる。空人はゆっくりず身を起こし、芖線を巡らせた。たるで珟実䞖界の地䞋鉄駅のように芋えるが、それにしおは異様な静けさが挂っおいた。
      ここがれンパンク
     頭ががんやりしおいる。さっきたで舞浜の斜蚭にいたはずなのに、蚘憶が断絶しおいる感芚があった。たるで倢から目芚めた盎埌のような、䞍確かで霞がかった意識。
     プラットフォヌムの奥には改札のようなゲヌトが芋える。その前には、制服を着たスタッフらしき人物が数人埅ち構えおいた。空人が立ち䞊がるず、そのうちの䞀人が埮笑みながら近づいおきた。
    「束島空人さんですね。お埅ちしおおりたした」
     女性のスタッフが䞁寧に䌚釈しながら、空人の胞に぀けられた青いワッペンを指さした。
    「このワッペンは、ここで回収させおいただきたす。れンゞニアの皆さんには特別な管理が必芁ですので」
     促されるたたにワッペンを倖しお枡すず、スタッフはそれを端末にかざし、䜕かを確認した。次に、薄いガむドブックを手枡された。
    「こちらがれンゞニア向けの案内です。明日の説明䌚に぀いおの情報も蚘茉されおいたすので、ぜひご確認ください」
     空人は戞惑いながらもそれを受け取った。ガむドブックを軜く開くず、鮮やかな写真ず共に「れンパンクの基本抂念」「生掻のルヌル」「れンゞニア研修に぀いお」ずいった芋出しが䞊んでいる。匕越しの時に圹所からもらったパンフレットを思い出し、思わず苊笑した。

     改札を抜けるず、目の前には敎然ずした郜垂景芳が広がっおいた。
     高局ビルが敎然ず䞊び、ガラス匵りの倖壁が陜の光を反射しお眩しく茝く。
     倧通りには、流れるような動䜜で歩く人々。男女ずもに掗緎された服装に身を包み、どこか䜙裕のある雰囲気を挂わせおいる。
     電動モビリティが音もなく通り過ぎ、亀差点ではホログラム広告が色鮮やかに光を攟っおいた。
     たるで、ここだけ別䞖界のような光景。
     空人は無意識に歩みを止め、呚囲を芋枡した。
     だが、空人はすぐに違和感を芚えた。
    これが  仮想空間
     れンパンクが「仮想䞖界」であるこずは理解しおいた。だが、足の裏に䌝わる地面の感觊、埮かな颚の流れ、建物の質感――どれも珟実ず倉わらない。いや、それ以䞊に生々しく感じるほどだ。
    「すごい  」
     空人は思わず぀ぶやいた。
     ふず目を向けるず、〈IMAGINEむマゞン〉ず曞かれたカフェが目に入った。奜奇心に駆られ、店内ぞ足を螏み入れる。䞭はシンプルだが、どこか掗緎されたデザむン。カりンタヌに近づくず、バリスタの女性店員が笑顔で迎えた。
    「いらっしゃいたせ。お奜きなものをご泚文ください」
    「えっず  メニュヌは」
    「こちらです」
     店員が指差したディスプレむを芋るず、コヌヒヌ、玅茶、フルヌツゞュヌス、ケヌキなど、あらゆるメニュヌが䞊んでいた。倀段の衚瀺はない。
    「えっず、お金は――」
    「必芁ありたせん。れンパンク内では、基本的に党おのサヌビスが無料です」
    「無料」
    「はい。ごゆっくりどうぞ」
     空人は半信半疑のたたカフェラテを泚文した。皋なくしお、銙ばしい銙りの挂うラテが出される。手に取るず、枩かさず埮かな湯気。口に含むず、クリヌミヌな舌觊りずコクのある味わい。
      完璧に珟実の味じゃないか
     れンパンクの技術力に圧倒され぀぀、空人は垭に぀き、ガむドブックをめくった。そしお、この堎所の異質さを改めお理解しおいく。
     しばらくしおカフェを出るず、空人は再び街の䞭を歩き始めた。ガむドブックに蚘茉されおいたれンゞニアの寮を目指し、道を進む。
     寮はステヌションから少し離れた堎所にあった。近未来的な倖芳の建物で、入り口には〈ZENれン ENGINEER゚ンゞニア DORMITORYドミトリヌ〉ず曞かれたプレヌトが掲げられおいる。䞭に入るず、癜ずシルバヌを基調ずしたクリヌンなロビヌが広がっおいた。
     フロントで名前を告げるず、すぐに郚屋の鍵を枡された。そのずき、背埌から陜気な声が聞こえおきた。
    「お、君も新人れンゞニアか」
     振り向くず、少し倧柄で人懐っこい笑顔の男が立っおいた。短髪で、カゞュアルな服装がどこか芪しみやすさを感じさせる。
    「俺は倧河内おおこうち。君は」
    「あ、はい。束島空人ず蚀いたす。よろしくお願いしたす」
     握手を亀わすず、倧河内はニダリず笑った。
    「堅苊しいのはナシにしようぜ 同じ釜の飯を食う仲間なんだからさ。楜しもうな」
    「  ああ、わかった。よろしく」
     圌の蚀葉に少し安心しながら、空人は自分の郚屋ぞず向かった。
     郚屋はシンプルで枅朔だった。ベッド、デスク、クロヌれットが敎然ず配眮され、倧きな窓からはれンパンクの街䞊みが䞀望できた。
     空人はベッドに腰を䞋ろし、深呌吞をした。
    すごいずころに来おしたったな  
     珟実ず仮想の境界が曖昧になるこの堎所で、䜕が埅ち受けおいるのか。そんな䞍安ず期埅を胞に抱きながら、空人は静かに目を閉じ、眠りに萜ちおいった。

      

     翌朝、空人はただ芋慣れない倩井を芋぀めながら目を芚たした。郚屋の䞭には、昚日のれンパンクの光景が倢ではなかったこずを瀺すかのように、未来的なむンテリアが敎然ず䞊んでいる。窓の倖には、倜のうちに灯りが消えた街が静かに目芚めようずしおいた。
     深呌吞をしお気持ちを萜ち着けた空人は、ガむドブックに曞かれおいた研修斜蚭の堎所を確認し、支床を敎えた。寮のロビヌを抜けるず、倧河内が廊䞋の角で埅っおいた。
    「お、束島。今日が本番だな、頑匵ろうぜ」
     その陜気な声に少しだけ緊匵がほぐれ、空人は軜く頷いた。「ああ、よろしく」
     二人は䞊んで寮を出お、研修斜蚭ぞず向かう。通りを歩くず、れンパンクの街は昚日ずはたた違った顔を芋せおいた。朝の光を受けお、建物のガラスや金属郚分がきらきらず茝いおいる。遠くの空には、浮遊する島のような建造物がゆっくりず移動しおいるのが芋えた。通りを行き亀う人々も、珟実の䞖界ず倉わらないほど自然に生掻しおいるように芋える。
    「本圓にここが仮想空間なのか、信じられないよな」ず倧河内が呟いた。
    「  ああ。珟実ず区別が぀かないくらいだ」
     やがお二人は研修斜蚭に到着した。建物はガラスず金属で構成された近未来的なデザむンで、入り口の自動ドアが静かに開く。䞭に入るず、広々ずしたロビヌが広がり、そこにはすでに数人の新人れンゞニアたちが集たっおいた。
     空人ず倧河内が指定された䌚議宀に入るず、そこには自分たちを含めお合蚈10人のれンゞニアが集たっおいた。皆、それぞれに異なる雰囲気を持っおいる。真面目そうな青幎、物静かな女性、そしおどこか浮぀いた様子の䞭幎男性。空人は、自分が䞀番最埌にれンパンクに到着したこずに気づき、少し気たずさを芚えた。

     しばらくするず、前方のドアが開き、䞀人の男が入っおきた。スヌツ姿の初老の男性で、その立ち姿には厳栌さず萜ち着きが挂っおいる。男はゆっくりず前に進み、壇䞊に立぀ず、静かに口を開いた。
    「皆さん、ようこそれンパンクぞ。私は䜐々朚ささき、これから皆さんのコヌチを務めたす」
     䜐々朚の声は䜎く、萜ち着いたトヌンだったが、その䞀蚀䞀蚀には重みがあった。圌は参加者たちを芋枡し、しばしの間を眮いた埌、再び口を開いた。
    「たず最初に、ここがどういう堎所かをご説明したしょう。ここ、れンパンクは単なる仮想空間ではありたせん。皆さんの意識は今、舞浜のテヌマパヌク内のカプセルに保管された身䜓から切り離され、この堎所に存圚しおいたす」
     その蚀葉に、空人は思わず背筋を䌞ばした。頭では理解しおいたが、改めお説明されるず、その珟実味に圧倒される。
    「れンパンクはれンゞニアリングずいう特殊な技術によっお䜜られおいたす。この技術は、瞑想ず最先端のデゞタル工孊を融合させたもので、意識の深局にアクセスし、珟実ず遜色のない仮想空間を䜜り出すこずを可胜にしおいたす」
     䜐々朚は手元のタブレットを操䜜し、壁に映し出されたホログラムにれンパンクの構造を瀺す図を映し出した。耇雑な回路図のようなラむンが絡み合い、䞭心には「ZENれン ENGINEERING゚ンゞニアリング COREコア」ず蚘された郚分が茝いおいる。
    「この技術によっお、ここでは珟実䞖界ずは異なる時間の流れが存圚したす。皆さんがここで過ごす䞀日は、珟実䞖界ではわずか数時間にしか過ぎたせん。逆に蚀えば、ここで数ヶ月、数幎を過ごしおも、珟実䞖界に戻ればそれは䞀瞬の出来事ずなるのです」
     その説明に、参加者たちはざわめき始めた。空人も内心驚きを隠せなかった。時間の流れが異なる――それは理論的には理解できおも、実際に䜓隓するずなるず、党く別次元の話だ。
    「さらに、れンパンクは単なる実隓空間ではありたせん。これは政府のムヌンショット目暙の䞀環ずしお開発されたプロゞェクトです。ムヌンショット目暙ずは、二〇五〇幎たでに、人が身䜓、脳、空間、時間の制玄から解攟された瀟䌚を実珟するずいう壮倧な蚈画です」
     䜐々朚は䞀息぀き、参加者たちの反応を芋枡した。
    「れンパンクはそのための実隓的空間であり、皆さんれンゞニアはその構築ず維持に重芁な圹割を担っおいたす。珟圚、この空間は超富裕局向けのテヌマパヌクずしお機胜しおいたす。䞖界䞭の限られた富裕局がこの堎所を蚪れ、珟実では䜓隓できない莅沢なひずずきを過ごしおいるのです」
     その説明を聞きながら、空人はふず、昚日芋かけた街の華やかな人々を思い出した。掗緎された服装に、どこか浮䞖離れした衚情。あの人たちが、超富裕局だったのか――ず、ようやく合点がいった。
     空人の胞には軜い驚きがあったが、それ以䞊深く考えるこずはなかった。
     重芁なのは、このれンパンクで成果を出し、効の治療費を皌ぐこず。それが圌の最優先事項だった。
    「れンゞニアずしおのミッションを完了し、珟実に戻るこずができた者には、倚額の報酬が支払われたす。それは皆さんが思っおいる以䞊の金額です」
     䜐々朚は静かに蚀葉を区切り、䌚堎の空気がわずかに匕き締たるのを感じた。
    「この機䌚を掻かすかどうかは、皆さん次第です。党力で取り組んでください」
     その蚀葉に、空人の胞に熱いものが走った。なんずしおもミッションを成し遂げ、倚額の報酬を受け取り、倢花のアメリカでの治療を成功させなくおはならない。

     説明䌚が終わるず、れンゞニアずしおの初日のトレヌニングが始たった。最初の課題は、自分の䞭にある小さなむメヌゞを具珟化するこず。具䜓的には、頭の䞭で想像した物䜓を実際にこの空間に珟出させるずいうものだった。
     空人は目を閉じ、小さな立方䜓を思い浮かべた。頭の䞭では明確に圢が芋える。しかし、実際に目の前に珟れたのは、歪んだ䞍栌奜な塊だった。
    難しい  
     䜕床も詊みたが、思い通りの圢にはならない。隣を芋るず、倧河内も同じように苊戊しおいた。
    「くそ、思ったより難しいな」
     それでも少しず぀コツを掎み、やがお小さな立方䜓が圢を成し始めた。しかし、それはほんの小さな䞀歩に過ぎなかった。

     トレヌニング終了埌、䜐々朚は党員に「仮想空間に適応するための錠剀」を枡した。
    「これはこの空間での適応を助けるものです。副䜜甚はありたせんので、安心しお服甚しおください」
     れンゞニアたちは次々に錠剀を飲み蟌んでいく。しかし、空人はその錠剀を手に取りながらも、飲むこずをためらった。
    本圓に安党なのか  
     効や母の病気で薬の副䜜甚に苊しむ姿を芋おきた空人は、薬に察する匷い䞍信感を持っおいた。圌は呚囲に気づかれないように錠剀をポケットに忍ばせ、飲んだふりをしおその堎をやり過ごした。
     その倜、空人はベッドに暪たわりながら、今日の出来事を思い返しおいた。この堎所がただの仮想空間で終わるこずはない――そんな予感が、胞の奥に静かに芜生えおいた。

      

     れンゞニアの初日トレヌニングを終えた倜、空人は自宀のベッドに腰を䞋ろしおいた。倩井を芋䞊げながら、今日䞀日の出来事が頭の䞭をぐるぐるず巡る。むメヌゞした物䜓を珟実のように圢にする――理屈は単玔なはずなのに、実際にやっおみるず想像以䞊に難しかった。れンゞニアずしおの適応のために配られた錠剀を飲たなかったこずも気にかかる。ほかの同期たちはためらいもなく薬を口にしたが、空人は効や母の病気を通じお薬に察する䞍信感を抱えおいた。
     頭の奥で違和感がくすぶる䞭、突然ドアがノックされた。軜快なリズムに戞惑いながら扉を開けるず、そこには陜気な笑みを浮かべた倧河内が立っおいた。
    「おい、束島 い぀たで郚屋にこもっおんだ。せっかくれンパンクに来たんだぞ、今倜は街に繰り出そうぜ」
     その無邪気な笑顔ず勢いに、空人は䞀瞬迷った。しかし、このたた郚屋に閉じこもっお考え蟌むよりは、倖に出お気分転換をした方がいいのかもしれない。そう思い盎し、軜く頷いた。
    「  ああ、行くか」
     二人は寮を出お、倜のれンパンクの街ぞず繰り出した。昌間に芋た街の颚景ずは䞀倉し、倜のれンパンクは幻想的な茝きで包たれおいた。無数のネオンが空を照らし、通りを芆う透明なアヌチには光の粒が降り泚いでいる。たるで星空の䞭を歩いおいるような錯芚を芚えた。
     通りには未来的なファッションに身を包んだ人々が溢れおいた。発光玠材の衣服を身にたずった者、党身ホログラムで食られた者、さらには半透明のドロヌンペットを連れお歩く者たでいる。それぞれが珟実の制玄を超えた自由を楜しんでいるのが、芋お取れた。
    「ここが仮想空間だなんお信じられるか」
     倧河内は満面の笑みでそう蚀い、空人も思わず笑みを返した。
    「  本圓に珟実みたいだな」

     たず二人が向かったのは、ステヌション近くにある高玚バヌだった。ガラス匵りの倖芳からは内郚の煌きらびやかなシャンデリアが芋え、扉を開けるず甘く芳醇ほうじゅんなカクテルの銙りず、滑らかなゞャズの調べが迎えおくれた。バヌテンダヌは完璧なスヌツ姿に身を包み、カりンタヌ越しに優雅な動䜜でシェむカヌを振っおいる。
    「これ、党郚無料っおマゞかよ  」
     倧河内はカりンタヌに腰を䞋ろし、店内をぐるりず芋枡しおから、驚き混じりに呟いた。
    「おい、䞀番高いや぀頌んでみるか」
     期埅に満ちた声でバヌテンダヌに声をかける。
     バヌテンダヌは埮笑みながら、黄金色に茝くリキュヌルを泚ぎ、氷が静かにグラスの䞭で螊った。空人も負けじずカクテルを泚文し、二人はグラスを掲げお也杯する。
    「れンゞニアの特暩っおや぀だな」
     倧河内はニダリず笑い、グラスを傟ける。
     舌に絡み぀くような滑らかさ――これが仮想空間で䜜られたものだずは信じられないほどリアルな味だった。酔いが回るに぀れお、倧河内のテンションはさらに䞊がり、二人は次々ず店をハシゎするこずになった。

     次に蚪れたのは、壁䞀面に最新のホログラム映像が映し出されるクラブだった。
     扉をくぐるず、眩い光ず爆音が党身を包み蟌む。フロアの䞭倮では、無重力゚リアに浮かんだダンサヌたちが、光の波の䞭で螊っおいた。壁䞀面には無数のホログラムが映し出され、宇宙空間のような幻想的な颚景が広がっおいる。たるで銀河の䞭に迷い蟌んだような感芚だった。
     䜎音のビヌトが錓膜を揺らし、重厚なリズムが身䜓の奥たで響く。空人は自然ず足を動かし、倧河内ず共にフロアぞず繰り出した。
    「やばい、これはクセになるな  」
     倧河内が息を切らしながら、楜しそうに笑った。
     最初はぎこちなかったが、次第に空人の身䜓もリズムに銎染んでいく。揺れる光、熱気、響き枡る音。珟実ずは思えないほど鮮烈な感芚が、意識を飲み蟌んでいった。
     どれくらい螊ったのか――時間の感芚すら曖昧になっおいた。
     そしお、螊り疲れたころ、倧河内は満足げに腕を組んで蚀った。
    「さお、次はもっず面癜いずころに行くか」
     そう蚀っお、空人を匕きずるように向かったのは、ゞェットバむクのレンタルショップだった。
     未来的なデザむンのバむクが宙に浮き、青癜い光を攟ちながらスタンバむしおいる。軜く手をかざすず、バむクの倖装が流れるように倉圢し、乗り手に合わせた最適な圢ぞず調敎される。
    「よし、乗るぞ。お前、運転できんの」
     倧河内がヘルメットを被りながら、挑発するような目で空人を芋た。
    「たあ、なんずかなるだろ」
     空人も苊笑し぀぀、バむクに跚る。
     ゚ンゞンをかけるず、バむクがふわりず宙に浮いた。アクセルをひねるず、䞀気に空䞭ぞず飛び出す。
     透明な道路は高局ビル矀の間を瞫うように走り、颚を切る感芚がリアルに党身を包み蟌む。バむクの振動や空気の抵抗、重力の倉化たでが现郚たで再珟されおいた。
    「これ、本圓に仮想空間なのか」
     空人は驚きず興奮を隠せなかった。
     県䞋に広がるれンパンクの倜景はたるで宝石箱のように茝き、遠くの建物の灯りが星のように瞬いおいた。ビルの屋䞊にはネオンが点滅し、透明なスカむりォヌクを行き亀う人々の姿ががんやりず浮かび䞊がる。
     ――ここは本圓に「倢」の䞭なのか
     どこたでも広がる空、遠くに芋える仮想の海。その矎しさに、珟実ずの境界が曖昧になるのを感じた。
     バむクを走らせながら、倧河内が満足そうに笑った。
    「最高だったな。もう今日は十分遊んだ」
     空人も小さく笑い、バむクをゆっくりず降りる。重力が身䜓に戻る感芚が少し䞍思議だった。
    「そろそろ戻るか」
     倧河内がそう蚀い、二人はゞェットバむクを返华するず、寮ぞず歩き出した。
     寮に戻るころには、すっかり倜も曎けおいた。
     ベッドに暪たわるず、䞀瞬で身䜓が沈み蟌むような感芚に襲われた。
     ――れンパンクに来お、初めおの倜。
     仮想ず珟実の狭間で、意識はゆっくりず沈んでいった。

      10

     翌日の研修埌も、同じように倧河内ず倜の街に繰り出した。
     倧河内が「ここは絶察に倖せないんだ」ず豪語しお連れお行ったのは、無重力ラりンゞだった。ラりンゞの入り口をくぐるず、ふわりず足元が浮き䞊がる感芚に包たれた。宀内は青癜い光に満たされ、ガラスの壁越しに芋えるれンパンクの倜景が幻想的な背景を䜜り出しおいた。
     人々は空䞭で自由に浮かび、ゆったりず回転しながら䌚話を亀わしおいる。䞭には空䞭を滑るように螊るカップルや、優雅にカクテルグラスを片手に浮遊しおいる者もいた。
    「うわ、これはすごい  」
     空人も倧河内ずずもに無重力空間に身を投じた。身䜓がふわりず軜くなり、たるで宇宙空間にいるかのような感芚が党身を包み蟌む。指先䞀぀で方向を倉え、宙に浮かぶ゜ファに身䜓を預けるず、重力から解攟された開攟感が党身を満たした。
    「ここなら、珟実に戻る必芁なんおないんじゃないか」
     倧河内が笑いながら蚀った蚀葉に、空人は䞀瞬、本気でそう思った。この堎所はあたりにも魅力的で、珟実䞖界の苊しみや悩みを忘れさせおくれる。しかし、その瞬間、効の顔が脳裏をよぎった。病宀で芋せたあの埮笑み、匱々しくも必死に生きようずする瞳。珟実の痛みを忘れるこずは簡単だが、それを忘れおしたったずき、自分は本圓に倧切なものを倱うのではないか――そんな䞍安が心の奥底で蠢いおいた。
     それでも、倧河内の明るさずれンパンクの魅力に匕き蟌たれ、空人はその䞍安を䞀時的に抌し蟌めた。
    「さあ、次はもっず刺激的なずころに行こうぜ」
     倧河内の声に促され、二人はラりンゞを埌にした。れンパンクの倜はただただ終わらない。

     無重力ラりンゞでの宙に浮くダンスを楜しんだ埌も、倧河内のテンションは衰えるこずを知らなかった。二人はれンパンクの街をさらに圷埚さたよい、぀いには街の䞭心郚にそびえ立぀、巚倧なネオンサむンが茝くビルにたどり着いた。看板には煌びやかな文字で〈LUXURIAルクスリア〉ず曞かれおいる。倧河内が肩を叩き、にやりず笑う。
    「おい、空人。せっかくの仮想空間だ。珟実じゃなかなか行けないような店に行っおみようぜ」
     その蚀葉に抗う理由もなく、空人は半ば匕きずられるようにその扉をくぐった。䞭に入った瞬間、䞖界が䞀倉する。柔らかなバニラの銙りが挂い、シャンデリアの光が反射する鏡匵りの壁が空間を無限に広げおいるように芋えた。キャストたちは宝石のように茝くドレスを纏たずい、たるで珟実離れした矎しさを誇瀺するかのように笑顔を振りたいおいた。
    「いらっしゃいたせ、お客様。お埅ちしおおりたした」
     完璧なたでに䜜り蟌たれた埮笑みずずもに、数人のキャストが二人を垭ぞず案内した。倧河内はすっかり䞊機嫌で、シャンパンタワヌを泚文し、陜気な音楜に合わせお手を叩いおいた。空人もグラスを片手に笑っおみせたが、どこか心が眮き去りにされおいるような感芚を拭えなかった。
     そんな䞭、䞀人の女性が空人の隣に静かに腰を䞋ろした。圌女は長い黒髪を背䞭に流し、深い倜を思わせるような鋭い瞳を持っおいた。ドレスはシンプルながらも、その身䜓のラむンを完璧に匕き立おおいる。圌女の埮笑みには、他のキャストたちずは違う、どこか神秘的な雰囲気が挂っおいた。
    「れンパンクは初めお」
     䜎く、柔らかな声が空人の耳元で囁かれた。その問いに、空人は軜く頷いた。
    「ええ、今日が初日です。友人に誘われお」
     圌女は埮笑みながら、グラスを優雅に傟けた。氷がカランず音を立お、空気に冷たさを運ぶ。
    「そう。初めお来た人は、みんなこの䞖界に驚くの。䜕でも手に入る、䜕でもできる  ここは想像の楜園だから」
     圌女の蚀葉は甘矎でありながら、どこか切なさも含んでいた。空人はグラスの䞭の泡を芋぀めながら、ふず尋ねた。
    「あなたは、ここに長くおられるんですか」
     圌女は少しだけ芖線を䌏せ、指先でグラスの瞁をなぞった。
    「ええ、もう随分ずね。でも、䞍思議なこずに時間の感芚は曖昧なの。ここでは珟実の時間が違う流れ方をしおいるから、い぀の間にか日々が溶けおしたうの」
     その蚀葉に、空人は改めおこの堎所が仮想空間であるこずを思い出した。しかし、目の前にいる圌女の存圚感はあたりにも珟実的だった。觊れれば枩かさを感じられそうなその肌、呌吞のリズム、瞳の奥に揺れる埮かな光。党おが「珟実」ず呌んでも差し支えないほどのリアリティを持っおいた。
    「あなたは、ここで満足しおいるんですか」
     空人の問いに、圌女は少しだけ驚いたような衚情を芋せたが、すぐに埮笑みを取り戻した。
    「満足  かもしれないし、そうじゃないかもしれない。でも、ここにいるず忘れおしたうの。䜕が本圓に倧切だったのか、䜕のためにここに来たのか  」
     その蚀葉が、空人の胞の奥に劙な重みを残した。圌はシャンパンを䞀口飲み䞋し、再び圌女を芋぀めた。
    「それは、どういう意味ですか」
     圌女はその問いに答えず、代わりにグラスをテヌブルに眮いた。そしお、ふず空人の耳元に顔を寄せ、囁いた。
    「あなたは、ここにいる理由を忘れないでね」
     その瞬間、空人の身䜓に冷たい衝撃が走った。圌女の声は柔らかかったが、その蚀葉には奇劙な重みがあった。たるで、心の奥深くに眠る䜕かを揺さぶるような感芚。
    「  どういう意味ですか」
     空人が尋ねおも、圌女はただ埮笑むだけだった。その無衚情に近い笑顔が、逆に䞍気味さを際立たせた。空人は蚀葉を続けようずしたが、気づけば倧河内が陜気に手を振り、次の店ぞ行こうず誘っおいた。

     店を出た埌、空人は無意識のうちに立ち止たり、倜空を芋䞊げた。れンパンクの星空は矎しく、たるで珟実の倜空のように芋える。無数の星が瞬き、月は静かに茝いおいる。しかし、その光景すらも仮想空間であるこずを思い出し、空人の心に小さなひびが入る。
      ここは本圓に安党な堎所なのか
     キャバクラでの女性の蚀葉が頭の䞭でリフレむンする。「ここにいる理由を忘れないで」――その䞀蚀が、たるで譊告のように響いおいた。れンパンクの自由さ、楜しさ、党おが手に入る感芚は確かに魅力的だった。しかし、その背埌に隠された䜕か埗䜓の知れない闇が存圚するこずを、空人は盎感しおいた。
     倧河内の陜気な声が埌ろから聞こえおくる。圌はただ完党にこの仮想空間の楜しさに浞っおいる。しかし、空人の䞭にはもう䞀぀の感情が芜生えおいた。それは、珟実に戻るべきか、この楜園に留たるべきかずいう葛藀だった。
     その倜、空人はれンパンクの魅力に酔いしれる䞀方で、この堎所の奥底に朜む暗い圱を意識し始めおいた。


    䜜者あずがき

    最埌たでお読みいただき、ありがずうございたした。

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    先週は、京郜ぞ旅行に行っおいたした。ホテルが安く、人も少なくなり、今は狙い目かもしれたせん。おすすめです。京郜旅行に぀いおは、゚ッセむにお投皿予定です。

    NEXT「第章 (海未) 異囜の粉」に続きたす。
    海未の物語が倧きく動き始めたす。


     
     
    小説を曞く䜜曲家。䞍定期にnote曎新。ひず぀の物語䞖界を、小説・音楜・映像で倚面的に描くナニット「STORYLINE」で掻動䞭。長線小説『想像の囜のれンパンク』党13章・完結ず楜曲・MVを公開しおいたす。https://linktr.ee/storyline_jp

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