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繋がる線 - 想像の囜のれンパンク《10》

    「あなたを埅ち続ける。私は知っおいるから。」

    SF × ミステリヌ × スピリチュアル × ラブストヌリヌ。
    長線小説『想像の囜のれンパンク』の第10章です。

    この小説ず連動した楜曲も、YouTubeで公開しおいたす。


    目次

     第章 (空人) 林檎男の誘いざない
     第章 (海未) 消された送金
     第章 (空人) 想像䞊の楜園
     第章 (海未) 異囜の粉
     第章 (空人) 隠された歎史
     第章 (海未) 倢かう぀぀か
     第章 (海未) 真の蚈画
     第章 (鈎朚) 過去
     第章 (空人) 䟵入者
     第10章 (海未) 繋がる線
     第11章 (海未) 最埌の手玙
     第12章 (空人) 狐の導き
     第13章 (空人) 蚘憶ず邂逅かいこう


    第10章 (海未) 繋がる線

      29

     バンコクのホテルの䞀宀で、海未はベッドに腰を䞋ろし、ノヌトパ゜コンの画面を芋぀めおいた。二回目のれンパンク蚪問から戻っおきたものの、頭の䞭は敎理しきれないたただった。
     残された粉は、あず䞀回分。慎重に䜿わなければならない。
     でも「青いワッペン」さえ芋぀かれば、空人を助ける手立おができるはずだ。
     アヌカむブ・タワヌで読んだ「プロゞェクト抂芁曞」には、「青いワッペンがあれば垰還できる可胜性がある」ず瀺唆されおいた。だが、今の段階ではそれをどこで入手できるのか、芋圓も぀かない。
     䜕か手掛かりはないか  。
     ふず、空人から聞いた「ギャラクシヌマりンテン」ずいう蚀葉が、脳裏をよぎった。あのテヌマパヌクのアトラクションに、䜕か関係があるのでは――そんな盎感が働く。
     詊しにむンタヌネットで怜玢するず、テヌマパヌクの公匏サむトが衚瀺された。
     ――補造元真田工務店
     その瞬間、海未は息をのんだ。
     繋がった。すべおが。
     コンサル時代に調査した、経産省から真田工務店ぞの䞍正送金。
     アヌカむブ・タワヌで目にした、プロゞェクト抂芁曞。
     空人が乗っおきたギャラクシヌマりンテン――。
     党おの点が線になった。
    「  真田工務店が、政府のプロゞェクトを受蚗しおいた。そしお、ギャラクシヌマりンテンの裏で、秘密裏にれンパンクを開発しおいた  」
     海未は手のひらで額を抌さえた。今の時点では仮説に過ぎないが、盎感的に確信できるものがあった。だが、それでも青いワッペンに関する情報は䜕もない。
    もっず䜕か情報が必芁  
     海未は、真田工務店に぀いお調べおいたずきに、技術郚門に〈特別管理区画〉ずいう文蚀があったこずを思い出す。
     もしかしたら特別管理区画ずいうのは、れンパンクを開発するチヌムそのものなのではないか。
     調べおみる䟡倀はある。
     その時、ふず頭に浮かんだのは、瑞季の顔だった。
    瑞季なら  䜕かわかるかもしれない
     海未はスマホを手に取り、通話アプリを開く。
     ――呌び出し音が䞉回鳎った埌、瑞季の声が聞こえた。
    「もしもし 海未 久しぶりだね。元気にしおる」
    「瑞季、急にごめん。ちょっず、お願いがあるの」
    「なになに いきなりだね」
     海未は、できるだけ冷静に説明した。
    「今、ある䌁業のプロゞェクトを調べたいんだけど  真田工務店っお、過去にコンサルの案件で扱ったこずある」
    「真田工務店 ちょっず埅っお  あ、そうだ、元圌が関わっおたわ」
    「元圌っお  ヒロ君」
    「そうそう、圌、前にむンフラ開発系のプロゞェクトで真田工務店ずやり取りしおたの。どうしお」
    「  特別管理区画に関わった技術者のリストが知りたいの」
    「えっ」
     䞀瞬、瑞季の声が驚きで䞊ずる。
    「できれば、䞀人でもいい。盎接連絡を取れる人がいたら、もっず助かる」
    「  海未、コンプラ厳しいの、わかっおるよね」
    「わかっおる。でも、瑞季にしか頌めない」
     スマホの向こうで、瑞季がため息を぀く音がした。
    「  はぁ。もう、ほんずに海未っお人は  。わかった、やっおみる。でもこれ、マゞでやばい案件だったら、私知らないからね」
    「ありがずう。絶察に誰にも蚀わない」
    「で、元圌にどう話を぀けるかだけど  たぁ、私から頌めば、どんな無茶振りでも100の仕事しおくれるから倧䞈倫」
    「  すごい関係性だね」
    「たぁ、色々あったのよ  今床ちゃんず話すから」
     瑞季の軜い口調に、海未は少しだけ救われた気がした。
    「ほんずにありがずう、瑞季」
    「いいよ、でも  お瀌はちゃんず考えおね。そうだなぁ、今床は䞀緒にバンコク行こ」
    「  うん、絶察」
     通話を切るず、海未はスマホを握りしめたたた、深く息を぀いた。
     これで、䜕か情報が埗られるかもしれない。
     瑞季が動いおくれる――それだけで、ほっずする自分がいた。
     思えば、ここたでの道のりはすべお盎感の連続だった。
     バンコクぞの旅立ち。
     恵理ずの再䌚。
     あの時、恵理ず䌚わなかったら、バンコクの占い垫ずの出䌚いもなかったはずで、私はただこの粉の存圚すら知らなかったかもしれない。
     あの䞍思議な粉を手にした瞬間、党おが動き始めたのだ。
     その占い垫ずの察話。
    「ツむン゜りル」ずは䜕なのかも知らなかった私に、圌女はたるで確信があるかのように蚀った。
    「あなたが助けにいかないずいけない」
     その蚀葉が、今でも耳の奥に残っおいる。
     れンパンクぞの到達。
     初めお粉を䜿った時の感芚――あの瞬間、私はもう「戻れない」堎所ぞず足を螏み入れおいたのだろう。
     れンパンクで空人ず出䌚った瞬間、胞の奥に雷のような衝撃が走った。
     そしお、二回目の蚪問で、政府の極秘蚈画を知っおしたった。
     ここたでのすべおは、偶然ではない。
     もし、あの時、盎感に埓わずに䜕かの行動を止めおいたら、今頃私は䜕も知らないたただった。
     今たで生きおきた䞭で、これほどたでに「自分の感芚を信じおよかった」ず思えたこずはなかった。
     ――もう、迷うこずはない。
     海未は小さく呟いた。
    「  頌むよ、瑞季」
     残された時間は少ない。次に日本に戻ったら、䞀気に動くしかない。

      30

     飛行機が高床を萜ずし、県䞋に広がる東京の街䞊みが朝の光に包たれおいく。
     バンコクの喧隒ずは違う、敎然ずした街の景色。
     それが芖界に入った瞬間、ようやく垰囜した実感が湧いおきた。
     日本行きの飛行機が、矜田空枯の滑走路に降り立぀。
     長いフラむトのせいで身䜓は重かったが、海未の頭は冎えおいた。
     時間がない。今すぐに動かなければ――。
     スマホを開くず、瑞季からメッセヌゞが届いおいた。
    「海未、もう着いた 矜田の到着ロビヌにいるよ」
     驚いた。
     瑞季がわざわざ矜田たで来おくれるずは思っおいなかった。
     しかもこの時間  時蚈を芋るず、ただ午前時を少し過ぎたずころだ。
    どれだけ早く調査を終えたの  
     海未はスヌツケヌスのハンドルを握りしめ、空枯の到着ロビヌぞず足を螏み出した。
    瑞季  本圓にありがずう
     荷物をピックアップし、到着ゲヌトを出るず、瑞季が手を振っおいた。
    「海未」
     圌女は笑顔だった。
    「瑞季  こんな朝早くから  」
    「たあね。海未のお願いだし、盎接話したほうがいいず思っお」
     そう蚀っお、瑞季は海未のスヌツケヌスをひょいず匕き取った。
    「ずりあえず、カフェ行こ。飛行機の䞭で䜕も食べおないでしょ」
     その気遣いに、海未は蚀葉が出なかった。
     ――こんなにも、私は人に助けられおいるんだな。
     そう思うず、胞の奥がじんわりず熱くなった。

     二人は空枯内のカフェに入り、静かな窓際の垭に腰を䞋ろした。
     コヌヒヌの銙りが挂う䞭、瑞季がバッグから封筒を取り出した。
    「でね、元圌に頌んで、真田工務店の過去のプロゞェクト関係者を調べおもらったの」
     そう蚀っお、封筒の䞭から数枚の資料を取り出す。
    「  これが、『プロゞェクトに関わっおいたこずがあっお、退職した技術者たちのリスト』」
     海未は食い入るように資料を芋぀めた。
     玙には十数人の名前が䞊んでいる。
    「こんなに  」
     瑞季が指で䞀人の名前を瀺した。
    「その䞭でも、特に気になる人がいるの。柳沢和圊やなぎさわかずひこっお技術者なんだけど  『突然退職し、その埌消息を絶った』っおいう蚘録になっおる」
     海未は思わず顔を䞊げた。
    「えっ   消息を絶った」
    「うん。でもね、これは元圌が元瀟員から盎接聞き出した話なんだけど  柳沢は、䌚瀟を蟞めた埌、実は長野に垰っおいたらしいの」
     海未の心臓が高鳎る。
    「長野  」
     瑞季は小さく頷く。
    「しかもね、ただ垰省したわけじゃなくお、䜕かに怯えお身を朜めるようにしおいたんだっお。でも、数ヶ月前たでしか長野にはいなかったみたいで、それ以降の行方は誰も知らないらしい」
      やっぱり、柳沢はれンゞニアだった  
     海未は、プロゞェクトのこずを知っおしたった人間が、政府に狙われる可胜性を考えおいた。もし柳沢がれンパンクに䞀床入った経隓があり、そこから逃げおきたのだずしたら  。
    「それでね、柳沢が長野でよく通っおたっおいう喫茶店があるの」
     瑞季は䞀枚のメモを海未に差し出した。
    「長野駅からそう遠くない堎所にある〈カフェ・アルペゞオ〉。ここに行けば、圌の足取りがわかるかも」
     海未はメモを受け取り、匷く頷いた。
    「ありがずう、瑞季  本圓に  」
    「気にしないで。でもさ、本圓にお瀌はちゃんず考えおね」
    「  どうすればいい」
     瑞季は䞊を向いお、少し考える衚情を浮かべた。
    「うヌん  そうだなぁ  今床は私ず䞀緒にバンコク行こ」
    「  うん、絶察行く」
     二人は笑い合った。

     カフェを出た海未は、矜田空枯から東京駅ぞず向かい、迷った末に重たいスヌツケヌスはコむンロッカヌに預け、そのたた新幹線に乗り蟌んだ。
     新幹線の窓から流れる景色をがんやりず芋ながら、頭の䞭で考えを巡らせる。
     ――おそらく、柳沢はれンゞニアの䞀人だった。
     ――しかし、圌は䜕かを知り、れンパンクから逃げおきた。
     ――そしお、長野に隠れたが、最終的にはそこからも姿を消した。
     もし柳沢が本圓にれンパンクから戻っおきたのなら、青いワッペンのこずを知っおいるはずだ。
     圌が今どこにいるのかはわからない。だが、圌の痕跡が残っおいる可胜性はある。
    長野に行けば、䜕かがわかる――
     新幹線は、冬の柄んだ空の䞋を走り続けた。

     31

     新幹線は長野駅に滑り蟌んだ。
     ホヌムに降り立った瞬間、ひやりずした空気が頬を撫でる。柄んだ冷気が肺の奥たで染み枡り、バンコクの湿気を垯びた熱気ずは察極の䞖界に来たのだず実感する。
     空を芋䞊げるず、遠くの山々の皜線には、うっすらず雪が積もっおいた。冬はもうすぐそこたで来おいる――そんな気配が、街の空気にも挂っおいた。
    柳沢の足取りを远わなきゃ  
     改札を出るず海未はタクシヌ乗り堎ぞ向かった。スマホのメモを確認する。瑞季から聞いた喫茶店――〈カフェ・アルペゞオ〉。そこに向かえば、柳沢の足跡が少しでも残っおいるはずだ。
     タクシヌの運転手に䜏所を䌝え、車は静かな街を走り出した。

    〈カフェ・アルペゞオ〉は、駅から少し離れた萜ち着いた䜏宅街の䞀角にあった。倖芳は朚の枩もりが感じられるレトロなデザむンで、入口のドアには手曞きの「OPEN」の札がかかっおいる。
     扉を抌すず、小さなベルが鳎った。
     店内にはカりンタヌ垭ずいく぀かのテヌブルが䞊び、柔らかなゞャズが流れおいる。朝の静かな時間垯なのか、客はほずんどいなかった。
    「いらっしゃいたせ」
     カりンタヌの奥にいた店䞻――癜髪亀じりの穏やかな男性が顔を䞊げた。
     海未は䞀瞬ためらったが、意を決しおカりンタヌ垭に座った。
    「すみたせん  コヌヒヌをお願いしたす。それず、少しお話を䌺いたいんですけど」
     店䞻は少しだけ眉をひそめた。
    「お話」
    「  柳沢和圊さんのこずです」
     その名前を口にするず、店䞻の衚情が䞀瞬だけ倉わった。
     譊戒しおいる――。
     海未は急いで付け加えた。
    「私は、圌の昔の仕事関係の者です。最近になっお、圌の消息を知りたくお  。もし、ご迷惑でなければ、お話を䌺えたせんか」
     店䞻は海未をじっず芋぀めた埌、静かにコヌヒヌを淹れ始めた。
     やがお、湯気の立぀カップが目の前に眮かれる。
    「柳沢さんね  」
     店䞻は、䜎く静かな声で語り始めた。
    「圌は昔から、この店によく来おいたした。孊生の頃からね。い぀も黙っおコヌヒヌを飲んで、垰る。話しかけおも、あたり倚くは語らなかったな」
    「そうだったんですね  」
     店䞻はカップを拭きながら、芖線を萜ずした。
    「でも、䞀幎ほど前に突然垰っおきた時は  たるで別人のようだったよ」
    「  どういう意味ですか」
    「䜕かに怯えおいた。誰かに監芖されおいるような、そんな目をしおいた。萜ち着きなく呚囲を芋回しお、ちょっずした物音にすら驚いおいた。最初は冗談の぀もりで、『䜕か悪いこずでもしたのかい』っお聞いたんだけど  」
     店䞻は䞀瞬蚀葉を詰たらせた。
    「  圌は笑わなかった。ただ、『党郚遅かった』っお、小さく呟いたんだ」
     海未の背筋に、冷たいものが走った。
    党郚遅かった  
    「それからしばらくしお、ぱったりず姿を芋せなくなった。たるで、最初からいなかったみたいにね」
    「圌が最埌にいた堎所  䜕か心圓たりはありたすか」
     店䞻は少し考え蟌んだ埌、ふっず思い出したように顔を䞊げた。
    「  〈深岳神瀟みたけじんじゃ〉だよ」
    「神瀟  」
    「柳沢さんは、䜕かを悔いおいるようだった。時々この店に来おいたけど、長い時間を過ごしおいたのは、あの神瀟だず思う。ずっず䜕かを祈るように、手を合わせおいたよ」
     海未は息を呑んだ。
    柳沢は、神瀟に䜕かを残しおいるかもしれない  
    「  ありがずうございたす。行っおみたす」
     コヌヒヌ代を支払い、店を埌にした。

    〈深岳神瀟〉――それが、柳沢が通っおいた神瀟の名前だった。
     長野駅からロヌカル線に乗り、さらにバスで数十分。
     車窓から芋えるのは、冬の冷たさを纏った静かな田園颚景。
     やがお、バスが目的地に着くず、海未は深く息を぀いお倖に出た。
     深岳神瀟は、町の倖れにひっそりず䜇んでいた。
     芳光地ずしお敎備されたような華やかさはなく、どこか厳かで、地元の人々の信仰が息づいおいるような雰囲気があった。
     鳥居の奥に続く石段は、長い幎月をかけお削られたのか、ずころどころが滑らかに磚かれおいる。
     螏みしめるたびに、小さな石が靎の䞋でこすれる音が響いた。
     鳥居をくぐった瞬間、冷たい颚が頬を撫でた。
     たるで、ここが珟䞖ずは少し違う堎所であるこずを告げるかのように――。
     境内は静たり返っおいた。
     瀟殿の前に䜇みながら、海未は目を閉じる。
    柳沢さん  あなたはここで、䜕を祈っおいたの
     圌の心境を想像しようずしたが、䜕も浮かばなかった。
     ただ、ひず぀だけ確信しおいるこずがある。
     圌はれンパンクにいた。
     そしお、そこから垰っおきた――それが䜕を意味するのかは、ただわからない。
     ――手がかりは、ここにあるはずだ。
     ふず、芖界の端にある絵銬掛けが目に入った。
     瀟殿の暪に蚭眮されたその堎所には、無数の朚の板が掛けられおいる。
     願い事、健康祈願、家族の幞犏  人々の想いが綎られた絵銬が、長い時間をかけお積み重なっおいた。
     その䞭に、䞀枚だけ、時間の経過を感じさせる色耪せた絵銬があった。
     ――なぜか、それだけが異質に芋えた。
     海未はゆっくりず近づき、指先でそっず觊れた。
     也いた朚の感觊。そしお、描かれおいたのは――。
     れンパンクのロゎ。
     それは間違いなく、アヌカむブ・タワヌの正面に描かれおいたものず同じデザむン。
     円盞ず、その呚囲を囲む回路のような王様。
     れンパンクの象城ずもいえるマヌクだった。
    どうしお、こんな堎所に  
     戞惑いながら、絵銬を裏返した。
     そこには、たった䞀文だけが刻たれおいた。
    『青き印、乙の神域にあり』
     青き印――青いワッペンのこず
     乙の神域――れンパンク内のどこかの神瀟
     海未は息を呑んだ。
     次にれンパンクぞ行ったずきの目的が、はっきりず定たった。
    れンパンク内の神瀟を探しお、青いワッペンを芋぀ける――
     今床こそ、確実に空人を助けるために。
     この最埌の機䌚を、無駄にはできない。
     海未は拳を匷く握りしめた。

      32

     神瀟の境内を埌にし、海未は石段を降りた。
     すでに日は傟き、空は茜色に染たっおいる。
     ――あの絵銬に曞かれた蚀葉。
    「青き印、乙の神域にあり」
     これは間違いなく、れンパンク内のどこかにある神瀟を指しおいる。
     次にれンパンクぞ行くずきの目的ははっきりした。
    神瀟を探しお、ワッペンを芋぀ける  
     新幹線に乗り、長野駅から東京ぞず戻る車内で、海未は䜕床もその蚀葉を反芻した。

     倜、東京駅に到着するず、コむンロッカヌに預けたスヌツケヌスを取り出しおから圚来線に乗り換え、最寄りの駅で降りた。
     倖に出るず、深たった秋の倜颚が冷たく肌を刺す。
     改札を出お、駅前のコンビニで飲み物を買い、マンションぞ向かっお歩き始めた。
     ――その時だった。
     䜕か、背埌に気配を感じた。
     ほんの埮かな違和感。人通りの少ない䜏宅街を歩く海未の埌ろに、䞀定の距離を保っお誰かが぀いおきおいるような感芚があった。
      気のせい
     ふず足を止め、振り返る。
     誰もいない。
     街灯ががんやりず光り、颚がアスファルトの䞊を吹き抜けおいく。
     しかし、この違和感は、決しお気のせいではなかった。
     海未はさりげなくスマホの画面を開き、駅前のマップを衚瀺する。
     このたた自宅に戻るのは危険だ。
     もし、本圓に誰かが尟行しおいるのなら――。
     自宅の堎所を知られるわけにはいかない。
     海未は、道を䞀本曲がり、近くのコンビニぞず足早に入った。

     店内に入り、陳列棚の陰からさりげなく倖を芗く。
       やはり、誰もいない。
    䜕かの気のせい  だった
     しかし、違和感は消えなかった。
     海未はレゞで適圓にガムを買い、店を出た。そしお、そのたた駅ぞず戻り、タクシヌ乗り堎ぞず向かう。
     マンションの前で降りるのは危険だ。
     少し手前の通りでタクシヌを降り、慎重に呚囲を確認しながら歩く。
     ――誰も、いない。
     それでも、息を詰め、现心の泚意を払いながらマンションの゚ントランスに入った。
     ゚レベヌタヌに乗り、郚屋ぞず向かう。
     玄関の鍵を閉めた途端、党身の力が抜けるようだった。
    䜕だったんだろう  
     尟行されおいたずいう確蚌はない。
     だが、れンパンクのアヌカむブ・タワヌに監芖カメラがあったこずを考えるず――。
    もしかしお、私の顔を撮られおいた
     だずすれば、私が誰なのか、向こうは特定しおいるのかもしれない。
     珟実䞖界で監芖されおいる可胜性――。
     そう考えるだけで、背筋が凍るような感芚に襲われた。

     ――ピンポヌン。
     むンタヌホンが鳎った。
     海未の心臓が跳ね䞊がる。
     時刻は深倜近い。こんな時間に蚪ねおくる人などいるはずがない。
     海未は足音を立おないように、そろそろずドアに近づいた。喉が枇いおいくのを感じながら、震える手でドアスコヌプを芗き蟌む。
     そこに映っおいたのは――。
     芋知らぬ老婆だった。
     癜髪を埌ろで束ねた老婆が、スコヌプ越しにこちらをじっず芋぀めおいた。皺の刻たれた口元が、笑っおいるのか、それずも  歪んでいるのか。静かな埮笑みなのに、なぜか寒気がした。
     海未は息を飲んだ。
      誰
     そもそもこのマンションの゚ントランスはオヌトロックのはずだ。どうやっお入っおきた
     䞍気味な静寂が流れる。
     海未はそっず埌ずさる。
     劙な胞隒ぎがする。今すぐにでも逃げ出したいのに、足が動かない。
     意を決しお、むンタヌホンの応答ボタンを抌した。
    「  どなたですか」
     しばしの沈黙。
     そしお、スピヌカヌから静かな声が返っおきた。
    「――菊の花は、いりたせんか」
     海未の喉が詰たった。
       菊の花
    「  いりたせん」
     震える声でそう答え、海未はむンタヌホンを切った。

     しばらくしお、そっずドアを開け、倖の様子を確認する。
     老婆の姿は、もうなかった。
     しかし――。
     玄関の前には、倧量の菊の花が眮かれおいた。
     菊の花。
     葬儀で食られる花。死者に手向ける花。
     たるで、「お前はもう死ぬ運呜だ」ず蚀われおいるような――。

     その瞬間、盎感した。
     ――これは、盞手からの脅しだ。
     その盞手がどんな組織なのかも、今はよくわからない。
     そしおあの老婆自䜓は、その盞手ず無関係かもしれない。
     でも圌らは、圌女を「䜿った」。
     䞍気味な偶然に芋せかけお、私にプレッシャヌをかけるために。
      私の存圚は、確実にバレおる
     膝が震えるのを必死にこらえた。
     空人の呜も、危ないのではないか
     向こうが私を特定できたなら、空人だっお――。
    助けに行かないず  
     時間がない。
     もう、迷っおいる堎合じゃない。

     海未はバッグを開け、粉の入った小袋を取り出した。
     これが、最埌の䞀回分。
    やるこずは、決たっおる
     ――れンパンクの神瀟で、ワッペンを芋぀ける。
     ――それを、空人に届ける。
     深く息を吞い蟌み、粉を口に含んだ。


    䜜者あずがき

    最埌たでお読みいただき、ありがずうございたした

    皆様の「スキ」が、創䜜掻動の倧きな励みになりたす。アカりントなしでも抌せたすので、よければハヌトを䞀抌し残しおいっおください。

    ──

    NEXT
    「第11章 (海未) 最埌の手玙」に続きたす。


     
     
    小説を曞く䜜曲家。䞍定期にnote曎新。ひず぀の物語䞖界を、小説・音楜・映像で倚面的に描くナニット「STORYLINE」で掻動䞭。長線小説『想像の囜のれンパンク』党13章・完結ず楜曲・MVを公開しおいたす。https://linktr.ee/storyline_jp

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