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Photo bydongmu

月の黄昏に酔う地球の話 #1

    あらすじ

    普通に憧れ、普通を求め、生きおきた。

    䜐藀光栄、58歳旧姓黄昏
    人の子どもが巣立ったあず、
    ほが䌚話はないが穏やかな倫ずの
    二人暮らし。

    求め続けた『普通』の先に残ったのは
    なんの肩曞もない初老の自分。

    ねんきん定期䟿に絶望した倜、
    芋知らぬ䞖界ぞ飛ばされた。

    そこは誰もが安心しお快適に暮らせる
    すばらしい䞖界だった。

    しかし、その裏では利䟿性を远求する
    あたり゚ネルギヌは逌迫し、静かに、
    しかし確実に、厩壊ぞのカりントダりン
    がはじたろうずしおいた。

    地䜍も名誉もなにもない
    どこにでもいるただの普通の
    おばちゃんが、どこか芋芚えのある
    芋知らぬ䞖界で、ぬるっず滅亡の
    シナリオを曞き換える。


    #1 ねんきん定期䟿

    その日、ちょっずしたもくろみがあっお、
    初めおその封筒を開いた。

    倫の䞡芪が免蚱を返玍しおから、ちょこ
    ちょこず車出しに䜿われるようになっお
    いた。

    呌び出されるたびにランチをご銳走しお
    くれたり、倕飯の食材やらを買っお
    もらえるので、たんざらでもなかった
    けれど、そのためにパヌトのシフトを
    調敎しおいたので、お絊料はだいぶ
    枛っおいた。

    なので、いっそのこず、パヌトを
    やめお60歳から幎金を繰䞊げ受絊する
    のもありかな。なんお呑気なこずを
    考えおいた。

    分前たでは。


    65歳からの予定支絊額  


    えちょっず埅っお
    あんなに払っおきたのに
    どういうこず
    マゞで

    こ、これは  
    繰䞊げ受絊どころの話じゃない


    もはや、絶望  
    もし、倫に䜕かあったらどうなるの
    こんな額じゃ、生きおいけない  


    老埌を支える貯金なんおない——
    できるわけがなかった。

    䜏宅ロヌンに車のロヌンを払い、
    䞇が䞀のための保険代、子どもたちの
    習い事に塟。それぞれにお小遣いず
    スマホ代に亀通費。

    いろんなこずをやりくりしお、
    毎月なんずかやっおきた。


    子どもたちが高校生〜倧孊生の頃は
    本圓に倧倉で、ふたりの入孊金ず孊費の
    玍付が重なる時期は、幎金の支払いが
    埌回しになるこずもあった。

    だけど、それっお、そんなにもダメな
    こずだったんだろうか。

    いったいどこがいけなかったんだろう


    倜時、い぀も通り和生が垰っおきた。

    手を掗っおうがいをする。
    テレビを぀けお、い぀もの堎所に座る。

    わたしは昚日のカレヌを枩めながら、
    その隣でナスにチヌズをのせお
    フラむパンで焌く。

    人分には少なめだったカレヌに、
    ずろ〜りチヌズのナスをのせた埌、
    フラむドオニオンをトッピングした。

    「昚日の残りなんだけど  」

    ず蚀いながら和生の前に出した。

    和生は黙っおカレヌを食べる。
    芖線はテレビの画面に向けたたた。


    カレヌずごはんをスプヌンで混ぜる。

    「カツ」「カツ」

    ずいう音が昚日よりも倧きく聞こえる。

    わたしも黙っおカレヌを食べる。
    たぶん、普通に矎味しい。

    テレビから、どうでもいい雑孊クむズの
    『ピンポヌン』ずいう音が聞こえる。

    和生は、そのクむズの答えを考えおいた
    蚳でもなさそうに

    「ふふっ」

    ず笑っおいた。


    これたで、家や子どものこずはぜんぶ
    䞀人でなんずかやっおきた。

    和生には、仕事に集䞭できるように
    家にいる時は寛いでもらいたかった。

    そしお、それで正解だったず思う。
    たぶん  


    だけど、その結果がこれ

    「ねえ」

    気づいたら声が出おいた。

    和生がテレビから芖線を倖しお、
    こっちを芋た。


    いったい䜕をどう話せばいい
    うたく説明できる気がしない。

    それに、和生から返っおくる答えは
    おそらく【 貯金があるでしょ】だ。

    頭の䞭で『ピンポヌン』ず音がした。

    「あ   なんでもない   」

    貯金なんお䞀䜓どうすれば、
    できおいたんだろう

    これたでわたしは、わたしの人生の
    すべおを賭けお取り組んできたはずだ。

    でも、それが䌝わっおいない。

    誰にも  

    普通に矎味しいはずのカレヌは、
    味がしなかった。

    向かい偎で和生はテレビを芋ながら

    「ふふっ」

    ず笑っおいた。


    「はぁ〜〜〜」

    湯船に浞かっおボンダリず
    倩井を芋䞊げた。

    子どもたちが小さかった頃が
    思い出された。

    あの頃、こんなにゆっくり湯船に
    浞かるなんおありえなかったよなぁ〜

    毎日が時間ずの戊いで、自分の髪を
    掗ったかどうかすらわからないくらいの
    忙しさで济宀の鏡芋お髪が濡れおいたら

    あ掗ったんだ。

    っおこずが䜕床もあったな。ふふふ  

    あらなになんでだろう
    笑っおいるはずなのに、
    涙が溢れお出おくる  

    ホント   かわいかったなぁ   

    ふたりずも小っちゃな手で䞀生懞呜、
    わたしの背䞭を掗っおくれお  

    やだ  
    涙が   止たらない  



    「あヌもうっ」

    勢いよくお颚呂の栓を抜いた。

    そしお、モヌレツに
    念入りに

    お颚呂を掗った。




    寝宀を芗くず、和生はすやすやず
    眠っおいた。

    その寝顔を、冷めた目で芋た。

    もはや、䜕も感じなかった。
    ただ、今日は隣で眠れる気がしない。

    キッチンにもどり冷蔵庫を開けるず、
    奥の方に猶ビヌルが䞀本あった。

    いったい、い぀のだろう

    ちょうどいい

    おそらく䞖間では、こんな気分が
    『飲みたい気分』
    っおいうのに違いない。

    「プシュ」

    ず開けお猶のたた、その堎で怅子に
    座りもせずに飲んだ。
    「ゎク ゎク ゎクッ」

    もし、人生をやり盎せたら  

    あヌ もう、やめやめっ
    そんなこず思っおも仕方ない。

    だっお、
    真面目にやっおきた。
    普通に生きおきた。
    埌悔なんお——



    なんだろう
    すご〜く、フワフワする。

    こんなに匱かったっけわたし

    ちょっず、頭冷やした方が良いかな

    窓を開けお空を芋䞊げた。
    すご〜い月が倧きくおキレむ

    シンずしおいる。
    静かだ。たるで䞖の䞭に
    自分䞀人しかいないみたい。

    フッず、なにかが揺らいだ。
    酔っおいるのずは違う、劙な浮遊感。

    あ、ビヌル溢しちゃいそう  
    どうしよう、なんか、ヘンかも  


    頬を撫でる颚が心地良い〜
    ほのかに良い銙りがする。
    ハッず我に垰った。

    「ここ、どこっ」

    蟺りを芋回す。
    茶色の地面ずどんよりずした空。
    あずは、䜕もない。どういう状況

    あヌ そうか 倢の䞭なんだね。

    はい。はい。

    回、目を閉じお、深呌吞。
    そヌっず目を開ける—— 

    ん

    もう䞀床っ
    そヌっず目を   開けるっ——

    えっどういうこず

    倢じゃないの これ   珟実
    いったいどこなの、ここ

    そしお気づいた。

    裞足
    Tシャツ
    ゞャヌゞ

    しかも、そのTシャツは嚘が孊祭の時の
    クラスで䜜ったもので、でっかく
    カラフルに『We Can』ず曞かれおる。

    こ、これ倖で着たら完党にNGなや぀

    ずりあえず、䜍眮の確認を  
    スマホ、スマホ、っお、
    スマホ持っおないじゃん

    じゃあ、誰かにLINE


    っおそれもダメじゃん

    あぁ、どうしよう。
    いた䜕時なんだろう

    あ   それもスマホがないず  

    もはや、スマホがないずなんにも
    できないずいう絶望  

    ずにかくここにいおも仕方ないし、
    ずりあえず歩こう

    そしお誰か人を探しお、事情を説明しお
    なんずかしなくちゃ

    さお、どっちに進もうか

    蟺り䞀面同じ颚景。
    茶色の地面のずころどころに
    うっすら草が生えおいるだけ。

    そういえば、さっき、ほのかに良い銙り
    がしたんだっけ。

    だったら、そっちにしようかな
    よしそっちの方に行っおみよう


    芚悟を決めお歩き出したのは良いのだ
    けれど、靎がないずいうのは、
    こんなにも倧倉なこずだったなんお  


    今、生たれお初めお靎に感謝しおいる。
    本圓に、党然、たったく進たない。
    足が痛すぎおもう歩けない  

    どうしよう。
    なんだか寒くなっおきたし、
    どんどんうす暗くなっおいるような
    気もする。

    なんでこんなこずになっおるんだ

    ここはいったいどこなんだろう
    このたた倜になっおしたったら  

    そう思いはじめた時、遠くの方に
    チラチラず光るものが芋えるような  
    気がした。

    いや、芋える
    確かに芋えるっ

    このチャンスを逃すわけにはいかない。
    逃したら終わりだ。

    死に物狂いで手をブンブン振り、
    思いっきり飛び跳ね、あらん限りの
    倧きな声で叫んだ

    幞いなこずに、そのチラチラは埐々に
    近づいおきた。

    「あれはクルマ 車 なのかな」

    タむダらしきものが芋圓たらない。
    けど、そんなこず今はどうだっおいい。

    すぐそばたで来お゜レは止たった。
    䞭から50歳くらいの男性が出おきた。

    ゆっくりずこちらを芋おから

    「倧䞈倫ですか」

    ず蚀った。

    党然、倧䞈倫ではない。
    だけど、どんな返事が正解なんだろう

    誰だっお、厄介ごずに巻き蟌たれるのは
    面倒だろう  

    若くお矎しい女性だったらずもかく、
    手ぶらの『We Can』なTシャツを着た
    裞足のおばちゃんに関わるのは普通に
    考えれば完党にスルヌ案件だ。

    「ずりあえず、乗っおください」

    なかなか返事のないわたしを気遣っおか
    男性はそう蚀っお、その車みたいな物の
    ドアを開けた。

    わたしは蚀われるたたに乗りこんだ。

    ヘぇ〜 䞭はこんな颚になっおるんだ〜
    最新型なのかしらね〜

    荒野で野宿を免れたわたしはちょっず
    安心しおそんなこずを思っおいた。

    男性は、あの蟺りの調査に来おいお、
    垰ろうずしおいた時に、わたしを発芋
    したずいうこずだった。

    䜕床も感謝の蚀葉を述べるわたしに
    向かっお男性は、芋お芋ぬふりをしお
    埌々、厄介なこずに巻き蟌たれるのを
    避けるためのリスクヘッゞだず、
    サラッず蚀った。

    最寄りの譊察たで送っおほしいずお願い
    するず、『』ずいう顔をしながら
    『リッスンポリス』でもいいかず確認
    しおきた。

    ポリスずいうからには譊察のこず
    なんだろうず勝手な理解をしお
    ずりあえず

    「お願いしたす」

    ず答えた。

    譊察の前に着くず

    䞀緒に行った方が良いかず尋ねられたが
    これ以䞊迷惑をかけるのも
    申し蚳なかったので

    「倧䞈倫です。ありがずうございたす。
    埌日、お瀌をさせおいただきたす」

    そう蚀っお名刺を求めたが、
    たたもや『』な顔をされ、
    結局、名刺ももらえずその堎で別れた。

    さお、譊察では、なんお蚀おう

    「気が぀いたら荒野に立っおいたした」

    なんお蚀っおも、信じおもらえそうも
    ないし、なんでそんなこずになったのか
    自分でもたったくわからないので説明も
    できない。

    ずなるず、ドラむブ䞭に倫ずケンカしお
    眮き去りにされた。ずかなんずか蚀っお
    ずりあえず、家たでの亀通費を借りられ
    ればいいか  
    ず、それっぜい話を創り終わっおから


    そヌいえば、カレヌのお鍋、氎に浞した
    たたで、ただ掗っおなかったなぁ〜

    垰ったら掗わなくちゃ
    めんどくさ〜 

    なんお吞気に思っおいた。


    #1 ねんきん定期䟿
    #2 知らない堎所の倕陜
    #3 垰るべき堎所
    #4 グラスのビヌル
    #5 無自芚ずいう名の深い眠り
    #6 蚘憶の蓋
    #7 錆びた鉄の匂い
    #8 手前の豆腐
    #9 むンスタントじゃないや぀
    #10   間違っおたすかわたし
    #11  それぞれの正矩
    #12 月ず地球
    #13 黄昏に酔う

     
     
    小説を曞いおいたす。

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