閉幕、敗北。四十人の負けに、拙者は一度も勝てなかった
殿、姫、今日もお疲れさま。
拙者、セツ。転生したときに名前を忘れて、頭の中の軍師にそう名づけられた侍だ。刀は橋の下にある。
今日の攻略対象は、旗だ。
九月の十六日に立てた旗「敗北上等 セツごっこ」。
負けた話を書けば、それで参加。
昨日、二十九日で、締め切った。
夕方。
リンが、板を持って土手を下りてきた。
「おじさん。全部で何人だったと思う」
「十人か」
「四十人」
拙者は、握り飯を落としかけた。
今度は、落とさなかった。
「殿〜、四十っす。殿の負けの数より、ちょっとだけ少ないっす」
「拙者は、四十も負けていない」
「数えてないだけっす」
梁の上で、カヤがうなずいた。音はしなかった。
「四十の陣が、一つの旗の下に集まった。……忍びの頭数としては、城がひとつ落とせます」
「負けた話で、城は落とせない」
「落とせます。笑いで」
届いた負け、四十
届いた順に、全部並べる。
一人に一行。拙者が勝てなかった所だけ書く。
・FCS殿|主任の圧に負けた。一人目の負けで、旗は立った
・しれネコ殿|心に石碑を建てた翌日に撤去。石碑は、拙者も建てたことがない
・福来モネ姫|四コマの一枚目で、もう負けていた
・紡えり殿|こんなの、やるしかない、で乗り込んできた
・ヘクたろー殿|寝過ごした朝。拙者も、毎朝その朝だ
・堂安咲和殿|ソフトクリームの蓋に負けた
・岡本卓大殿|洗濯物干しにも、物理の法がある
・算術01殿|茶をぶちまけた、一本目
・ねこまる殿|猫があまりに可愛くて、遅刻した
・のりもち殿|息子のことを書いた記事が、本人にばれた
・ネロ王子|王子ごっこに、王子が負けた
・マツリカ殿|古の妖怪が、現実に負け続けて異世界を目指した
・宵宮朔姫|初回限定版の五文字に弱い
・ミュリン殿|俳句で祝ってくれた。ぬいと布団には勝てない
・Hono姫|その王冠、どこから持ってきた。絵の機械に負けた
・OSHIKATSU殿|noteに出会いを求めて、王子に笑われた
・オレメガネ殿|負けを言わずに、侍を応援して帰っていった
・しらたまうさぎ殿|目の本を書いている人が、疲れ目に負けた
・Minori殿|隠したアイスを、魔法の呪文ごと食べられた
・たけひろ・しんじ殿|寝るね、と打つ前に寝た
・ゴリラ殿|眉を描き忘れて、姫も王子も負けた
・アイル殿|念願の主役回で、出番に負けた
・きっこ殿|三十年前のスカートが、太ももで止まった
・あいびより。殿|ゲームの誘惑に負けて、負けまで先に当てられた
・ryuu殿|声が揃いすぎて、戻せなかった夏
・天界記録殿|すごい文章を書いた人だと思って、拙者を見に来た
・リュウジ殿|迷っているうちに、お菓子の代金は払い終わっていた
・モウカク殿|火災報知器に、一日じゅう負けた
・みゆこ殿|ブロッコリーの虫退治で、負けた
・ミナト汐殿|呪文が質問を飛ばして、負けた絵が出た
・Say殿|いろいろ負けた。一人称は、妾
・水晶ゆめ殿|赤信号の絵を直すほど、最初の一枚に負けた
・アルフレッド殿|正義の人が、科学者に負ける物語
・松本ありす姫|タオルをめぐる攻防に負けた
・くまのひとみ姫|楽しい企画が多すぎて、負けた
・sophie姫|だらだらしない意志に、負けた
・つぶあん殿|楽しすぎて、青い光に目をやられた
・めりこ殿|noteに夢中になっていたら、家族に捜索された
・家マドワーカー ゆう殿|十五年忘れていた座右の銘を、締め切りの日に思い出した
・fuff殿|毎週の漫画雑誌が、顔も知らぬ宿敵に先に買われていた
「……長い」
リンが、板をおろした。
「四十人だ。長くて当たり前だ」
「おじさん、これ全部読んだの」
「読んだ。軍師が」
「やっぱり」
「殿〜、殿も読んだっす。三回、泣きそうになって、二回、笑って床に転がったっす」
言うな。
旗を、たたむ
旗は、たたむ。
でも、負けは明日も来る。
拙者は、明日も自動の扉と、傘と、たぶん改札に負ける。
四十人の負けは、殿の書庫に全部しまってある。
しまっておくと、いつでも読める。
読むと、ちょっとだけ、負けても平気になる。
また、いつか。
別の旗を、立てるかもしれない。
立てないかもしれない。
それは、軍師にも言っていない。
「言ってないっす。聞いてもいないっす」
今日の結果
閉幕、敗北。四十人の負けに、拙者は一度も勝てなかった。
でも拙者は学んだ。
負けは、四十集まると、祭りになる。
殿、姫。この旗の四十の負けで、いちばん「分かる」と思ったのは、どれだ。
一、寝落ち・寝過ごし系
二、食べ物・お菓子系
三、家族に負けた系
番号だけでいい。コメントに置いていってくれ。
明日も出陣する。殿、姫、もう寝ていいぞ。
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扶持米(ふちまい)を受け付けている。強制ではない。
頂いた米は、拙者の住まいが橋の下から四畳半になるのに使う。
養ってやってもよい、という殿だけ、どうぞ。