敗北上等 セツごっこ / 妾、なんかいろいろ敗北。
敗北。
戦国の世において、それは即ち死。
しかし。
現代社会では、敗北は必ずしも死ではない。
敗れてもまた、明日はやって来る。
ならばせめて、敗けてなお、誇り高くありたい。
Sayです。
さて今回は、現代に転生されしお侍、セツ殿の企画に参加させて頂こうと思います👇
わたし、こういう企画モノに参加させて頂くのは初めてですので、もし粗相などございましたなら、平にご容赦を。
上手く出来ましたならご喝采♪
妾の負けっぷり、とくとご覧あれ♪
それでは、いざ参る!
■妾、敗走する。
「…お疲れ様でした。」
その夜、妾は若干憮然としながら仕事場を後にした。
さっさと着替えて愛馬に跨り、少し乱暴に走り出す。
愛馬の鉄の心臓が唸りを上げた途端、目の前の信号が黄色に変わった。
妾、早速信号機に敗北。
鞍上、頭の中にさっきの上司の言葉が甦る。
「Sayさん、今月残業時間ヤバいから、もう今日は上がって。あと、前から言ってたけど、明日は有休消化してね」
…いやそれ今ぁ?
てか、有休の話、前からは言ってねぇじゃろ。
今朝じゃん。
どうせ人事総務からなんか言われたんじゃろ、あのバ課長め。
なんなんだ、この似非ホワイト企業は?
半期決算に向けて、追い込みの真っ最中。
妾、マジ目が回りそうなんじゃが?
今は1日が、1時間が惜しいんじゃが?
明日、無理矢理出勤してやろうか。
いや、そうしたとて、結局のところ締まるのは妾自身の首である。
なんじゃこの訳分からん状況?
妾とて、なにも好き好んで夜も遅うまで仕事をしておる訳ではない。
なんなら毎日でも華麗に定時ダッシュをキめて、一刻も早う愛しい彼女の元へ飛んで帰りたいのじゃ。
言うて妾の姫も、帰りはまあまあ遅いけど。
ぶっちゃけ仕事なぞしとうないわ。
妾、出来ることならずっとダラダラしたいしイチャイチャしてたいんじゃ。
が、今は仕事が出来ぬことに難儀しておる。
おのれホワイト企業。
妾の進退、ここに窮まれり、じゃ。
敗北感に苛まれていたら、いつの間にか家に着いていた。
妾、コンプライアンス的なやつに敗北。
■妾、一騎打ちにも敗北。
帰宅後。
彼女と夕餉を共にしながら会社の愚痴を吐き散らかし、妾の溜飲も多少なりとも下がった。
そして、全くの偶然ではあるが、彼女も明日はシフト休だと申すではないか。
妾、ちょっとご機嫌♡
「あ、だったらさ、明日は朝ごはん、外に行かない?」
な、なんと!
ナイスアイデアではないか〜♪
愛いやつじゃ♡
「じゃあ妾、朝マック食べたい♪」
「…え?モーニングでしょ」
お風呂上がりのリビング。
剣呑な空気が流れる。
「…ほう、そなた、妾に盾突くと申すか」
「Sayちゃんこそ、朝マックなんて食べたらまた『もう無理〜、お昼食べれない〜😭』ってなるわよ」
「妙に似ておるのがまたなんとも業腹じゃなぁw…コホン、どうしても譲れぬと申すか」
「あなたこそ」
「…お互い引けぬ、か。ならば仕方あるまい。妾とそなた、一騎打ちを所望する」
「ふふん、上等。『きゃいん♡』と言わせてあげるわ」
…リビングに漂う戦場の気配。
ひりついた空気が、妾の頬を容赦なく刺す。
「…いざ」
「…行くわよ」
刹那、妾と彼女が同時に動いた。
裂帛の気合いと共に、妾は拳を繰り出した。
「「じゃんけんぽん!!」」
彼女の掌は、ぱーぱーに開かれていた。
「…きゃいん♡」
妾、じゃんけんで敗北。
■妾、翌日も順調に敗北。
…朝。
まだ少し重たい瞼。
隣には、彼女の気配。
…ああ、そうか。
今日はお休みであったな。
どれ、もうひと眠り…。
…と、ちょうど心地よくなって来た辺り。
妾のスマホから、Rage Against The Machine の「Guerrilla Radio」がけたたましく鳴り響いた。
…しまった。
アラームをかけたままであった。
妾、失敗失敗♪
仰向けのまま、顔の前でスマホを操作してアラームを切った、まさにその刹那。
スパン!
「ふぎゃ!?」
なんか痛い!
妾、鼻が痛い!!
なんなんだ、朝っぱらから!?
妾の視界が涙で滲む。
顔面を押えながら呻いている妾。
いつの間にか寝惚けている彼女に抱き締められておった。
どうやら寝返りを打った彼女の右腕が妾の手に当たり、その拍子に持っていたスマホを取り落としてしまい、それが妾の鼻っ面にクリティカルヒットした、の図のようじゃ。
状況が分かったところで、痛いものは痛い。
そして、せっかくの休日の朝だというのに、もう二度寝どころの騒ぎではない。
いまだ涙で滲む視界の端。
まだ夢の中の彼女。
妾には無い谷間を羨ましく眺めつつ、妾、目覚ましアラームに敗北(谷間でも敗北)。
「いや、ホントごめんて」
「…妾、別に怒ってはおらぬ」
ようやく赤みの引いた鼻っ面を擦りながら、妾は珈琲を口にする。
「分厚いトースト、食べたかったんだよね〜♪」
某喫茶チェーン店が経営する和風喫茶店。
モーニングは、トーストとおにぎりから選べる。
彼女はトーストにマーマレード。
妾はお味噌汁が飲みたくて、おにぎりセットを所望した。
妾の向かいに座る彼女。
トーストを目の前に、ご機嫌そうでなによりじゃ。
妾もおにぎりを口に運ぶ。
「どお、Sayちゃん?」
トーストを頬張りながら、妾に微笑みかける彼女。
…ああ、朝マックはまたの機会にするとしよう。
こんな顔をされては、妾はもう完敗じゃ。
堂々と、誇り高く、白旗を掲げようではないか。
「…おいちい♡」
妾、モーニングに敗北。
