【敗北上等セツごっこ】|noteに夢中になっていたら、家族に捜索された。
拙者、勤めのあいだ携帯電話なるものは、コールセンターのロッカーへ封印。
しかも、ほぼ終日消音の術。
帰宅後も、その術を解くのを忘れることしばしば。
その夜、拙者は――
寝ていた。
いや。
ただ寝ていたのではない。
noteに夢中になり、
あれを書き、これを読み、
気づけば夜。
そこへ、ビール。
「殿」
「なんじゃ、軍師」
「今日はもう寝た方がいいっす」
「まだ戦える」
「誰と戦ってるんすか」
「noteである」
「敵じゃないっす」
そんなやり取りをしたかどうかはさておき。
拙者はそのまま――
見事に爆睡した。
城門、異常なし。
見張り、なし。
軍師、退勤。
拙者、熟睡。
この時。
己の知らぬところで――
一族が動き始めていた。
⸻
妹、異変を察知する
事の始まりは、二日ほど前。
拙者は妹と、帰省の高速バスについてやり取りをしていた。
「この便でよかろうか」
「この時間なら間に合うじゃろう」
などと、
ごく普通に連絡を取り合っていたのである。
ところが、その後。
妹から連絡が入る。
返事なし。
もう一度。
返事なし。
電話する。
出ない。
「……あれ?」
つい二日前まで普通にやり取りしていた姉が、
急に無音。
妹の頭に、
「忙しいのかな」
の次に――
「……何かあった?」
が浮かんだらしい。
そして娘へ。
「お母さんと連絡つかんのやけど」
娘、
「え?」
ここで大事なことを申しておこう。
この頃、
家族はまだ誰も知らない。
拙者が夜な夜な――
noteという新大陸へ進軍していたことを。
ゆえに、
「またnoteやってるんじゃない?」
などという平和な答えは、
一族の選択肢には存在せぬ。
あるのは、
「何かあったのでは?」
だけ。
娘も電話する。
出ない。
LINEする。
返らない。
また電話する。
出ない。
「……ちょっと待って」
「ほんとに大丈夫?」
こうして、
高速バスの相談は――
姉の安否確認へと、まさかの乗り換えを果たした。
⸻
一方、その頃の拙者。
すやぁ。
「殿」
「……」
「殿」
「……」
「一族、動き始めてますよ」
「……」
「高速バスどころじゃなくなってます」
「……」
「聞いてないっすね」
軍師、敗北。
⸻
娘夫婦、出陣準備に入る
娘と婿殿は、
我が城まで様子を見に来ることになった。
されど。
ここで、ひとつ問題がある。
二人には、
子どもが二人おる。
しかも、深夜。
一緒に連れて討ち入りするわけにもいかぬ。
「どうする?」
「子どもたち、このまま連れて行けんよね」
そこで――
近くに住む義姉殿へ、
深夜の召集令状が飛んだ。
「すみません、ちょっと子どもたち見てもらえますか」
義姉殿、
まさかの夜間招集。
何事かと思えば、
理由は――
拙者の安否確認。
こうして、
子どもたちは義姉殿に見守ってもらい、
娘と婿殿、
我が城へ向けて出陣。
妹、連絡部隊。
義姉殿、後方支援。
娘夫婦、現地確認。
そして――
当の本人。
爆睡。
「殿」
「……」
「もう捜索隊になってます」
「……」
「後方支援まで編成されました」
「……」
「義姉殿まで起こされましたよ」
「……」
「殿だけ寝てるんすけど」
軍師、
またも敗北。
⸻
深夜零時半、我が城に討ち入り
そして、
深夜0時30分。
静まり返った我が城に――
ガシャッ。
玄関の鍵が開いた。
拙者、
布団の中でうっすら目を開ける。
「……ん?」
娘は我が城の鍵を持っている。
ゆえに、
城門は破られておらぬ。
娘が普通に鍵を開けただけである。
「お母さーん!」
娘の声。
続いて、
「大丈夫ー?」
婿殿の声。
拙者、混乱。
「……朝?」
違う。
暗い。
「会社?」
違う。
「寝坊?」
いや。
そもそも今は何時じゃ。
「殿」
「なんじゃ、軍師」
「娘夫婦っす」
「なぜ我が城におる」
「安否確認っす」
「拙者、寝ていただけじゃが」
「それを誰も知らないんすよ」
「なるほど」
「なるほどじゃないっす」
⸻
玄関から寝室の方が見える。
そして――
婿殿が何かを発見した。
「あっ!」
娘、
「えっ!?」
婿殿、
「あ、足がある!!」
……足。
拙者の足である。
「殿」
「なんじゃ」
「生存確認が足から始まりました」
「顔ではないのか」
「まず足っす」
「なんとも武士らしからぬ確認じゃ」
「殿が爆睡してるからっす」
⸻
娘が寝室へやって来る。
「お母さん!」
拙者、むくり。
「……ん?」
「お母さん!!」
「……朝?」
「深夜!!」
「会社は?」
「行かんでいい!!」
婿殿、
「よかった……ほんとに寝てただけやった」
拙者、
「……何事じゃ」
娘、
「何事じゃないよ!!」
⸻
「ずっと連絡つかんかったんよ!」
「寝ておった」
「何回電話したと思ってると!?」
「知らぬ」
「知らぬじゃない!」
婿殿、
「LINEも返ってこなかったんで、心配になって……」
拙者、
「なるほど」
娘、
「なるほどじゃない!」
本日二度目の――
なるほどじゃない。
⸻
娘、
「ほんとに何しよったと?」
拙者、
「寝ておった」
「その前!」
「……いろいろじゃ」
「いろいろって何!」
ここで、
noteの存在を言いかける。
されど、この頃はまだ、
拙者が夜な夜なnoteという新大陸へ進軍していることを、
家族は知らぬ。
ゆえに、
「……まあ、いろいろじゃ」
娘、
「怪しい!」
婿殿、
「まあまあ、無事だったんで……」
娘、
「無事だから今こうやって言えるんよ!」
婿殿、
「それはそうですね」
婿殿、
即座に寝返る。
「婿殿!」
「殿、そこ味方判定するところじゃないっす」
⸻
やがて娘が、
大きく息を吐いた。
「もう、ほんと心配したんやけん」
そこでようやく、
寝ぼけた拙者の頭にも、
事の重大さが届いた。
「……すまぬ」
「次から連絡してよ」
「心得た」
婿殿、
「ほんとお願いします」
「婿殿まで……」
「僕も心配したんで」
「かたじけない」
⸻
軍師、敗因を数える
「殿」
「なんじゃ」
「此度の敗因、整理します?」
「申してみよ」
「まず、noteに夢中」
「うむ」
「次に、酒」
「うむ」
「そして爆睡」
「……うむ」
「家族への生存報告、皆無」
「ぐっ」
「義姉殿まで深夜に起こされる」
「……」
「殿?」
「もう数えるな」
「五連敗っす」
「やめよ」
「あと、顔より先に足を発見されました」
「それは敗因ではない!」
「では番外編で」
「残すな!」
⸻
こうして、
妹が心配し、
娘へ連絡し、
子どもたちを見守るため義姉殿まで夜間招集され、
娘と婿殿が、
深夜零時半、
我が城へ安否確認に参った。
その間。
拙者は――
何も知らず、
ただただ、
気持ちよく寝ていた。
完全敗北である。
⸻
此度の戦、結果
深夜零時半。
娘夫婦、我が城へ突入。
そして婿殿の第一声――
「あ、足がある!!」
かくして拙者は、
顔でもなく、
声でもなく、
足から無事が確認されたのである。
なんとも締まらぬ生存確認でござる。
此度の敗因は、
note沼。
酒。
睡魔。
そして、
生存報告を怠った拙者自身。
さらには、
己ひとりの爆睡により、
一族の夜間部隊まで編成させたことである。
敗北上等。
されど、
これだけは申しておこう。
拙者、確かに生きておった。
そして翌日も――
しれっとnoteを書いておった。
……反省はした。
だが、
noteはやめぬ。
そこはまだ、落城しておらぬ。
⸻
今回、
セツ殿の企画
「敗北上等 セツごっこ」
に参加させていただいたでござる⚔️
▼セツ|note転生したサムライ(相互フォロー、色々制限中)さんの記事を見に行く
セツ殿。
高速バスの相談から始まり、
義姉殿まで夜間招集し、
最後は足から生存確認された、
この見事なる敗北。
どうか敗北書庫の片隅へ、
納めてくだされ🤣
▼元記事はこちら。気になるので見に行く
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