「敗北上等セツごっこ」ゴリ姫敗北、万作おうじ敗北
万作:「ねね、参加しようよ」
ゴリ姫:「ん、何でしょう?」
万作:「じゃーぁーん」
ゴリ姫:「私、敗北ない」
万作:「えーっ。敗けてばかりじゃぁないの?」
ゴリ姫:「仕切り直しと言う」
万作:「いやぁー。この間も、あれ、しっかり黒星よぉ」
では、試してみましょうね。

病院の待合室は、今日も患者で一杯です。私は廊下に近い椅子に座っていました。
「あー、まだかなぁ」
すぐ側の壁には、不眠治療のポスターが貼られていました。
「不眠でお困りですか?」
一時間ずっと、この問いを見ています。
「はい、不眠かも、、」
私は、すでに暗示にかかっていました。
考えてみたら、先月もこの場所に座り、このポスターを眺めていました。
そして、恐ろしいことに、これが二年半続いているのです。
「もしや泥沼ループなのか?」
泥沼といえば、ダメな恋愛しか思いだせません。
つまり、私は病院と恋愛中なのです。
会いに行っても、約束が無いと追い返されます。
一か月に一度、やっと会えるのです。
電話は、十四時から十六時の間と決められています。
「平日にしてね」と何度も言われました。
相手は人気者で、待ち人が大勢です。
私との関係は一方通行であり、しかも、私はゾッコンなのです。
毎回、受診日の準備は念入りにします。
三日前から、消化の良いものを食べました。
当日、お腹を壊すのは笑いごとではありません。
診察券はあるか?
お薬手帳は持ったのか?
動きやすい服装か?
荷物は一つにまとめられるか?
出発時刻から逆算し、朝の行動を細かく計画します。
「咳ぃ!」
突然、待合室で、誰かが叫びました。
私の心臓は縮こまり、その反動で「ああーっ」と嘆息しました。
その時です。
「ゴリラさん、2番にお入りください」
私の名前が呼ばれました。
診察室のクリーム色のカーテンをすり抜け、
私は白い光に満ちた部屋に入りました。
黒い丸椅子が、部屋の中央にあります。
あ、私の場所だ、と砂場に小旗を立てる勢いで腰かけました。
「なんだか、感じが変わられた」
先生はそう言うと、
机の上で組んだ手を見つめていました。
薄紫の診察衣が、爽やかです。
快方に向かっているんだ、と嬉しくなって、私は胸を張りました。
私は胸を張りました。
その日は、受付や、会計の事務の方々が格別に丁寧でした。
狭い通路では、他の患者さんに道を譲ってもらいました。
コンビニでは、レジの列で、「どうぞ、御先に」の会釈を頂きました。
皆さんが、私をいたわってくださいます。
帰宅すると、私は玄関に鞄を放り出しました。
「疲れたぁ」
そのまま、上がり框に崩れるようにして座りました。
「うん、よくやったよ。」
私は靴を履いたままの脚を三和土に投げ出しました。
服から病院の匂いがしました。
右側の視線に気がつきました。
姿見の自分がこちらを見ています。
「はっ」
吸う息が喉の奥に引き込まれました。
「まっ、まゆ、、」
眉がありません。
今朝、私は眉を描き忘れたのです。
眉弓の盛り上がりが目立ち、非常に不機嫌そうです。
眉無し。
人々が道をあけ、順番を譲りたくなる、強面でした。


万作:「ほぁら、敗北ぅ」
ゴリ姫:(悔しそうに)
「万作さんも敗北よね」
万作:「えっ?」
ゴリ姫:「ボツ画像」
万作:「やめてよー。あれは敗北じゃないもん」
ゴリ姫:「いやいや、負け臭してますよ」
※ 万作さんは、ネロ王子のフォロワー千人のお祝いを試みていました。⚠️万作さんは、100以上は数えられません。

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