
琥珀色の向こう側 ➀ プロローグ ( Nene-The Mother of Samurai )
プロローグ ねね(Nene-The Mother of Samurai )
台風並みの強風が吹き荒れたかと思えば、今夜は嘘のように静かな夜を迎えている。
南からの温かい風と、北からの冷たい風がぶつかり合って、激しい嵐を起こしていたのだ。昼間はやたらと暖かく、夜になると急に肌寒くなる。
五月雨月(さみだれづき)。
もうすぐ、この列島に長い梅雨の季節が始まる。
そんな湿り気を帯びた空気感が、そのまま肌に伝わってくるようだ。
手元にある温かいお茶が、街灯の光を受けて綺麗な琥珀色に透けてみえた。
私はふっと、ときおり私の夢枕に立っては何かを語りかける、
あの『夢の物語』――豊臣の、そして日本の「母」であった女性の話を、
ここに書き留めてみようと思い立った。
時計の針を、四百有余年巻き戻してみる。
西暦1600年。世界は激動の真っ只中にあった。
現代の私たちは「暑さの時代」を生きているが、1600年当時、地球は「寒さの時代(小氷期)」を生きていた。冷夏、不作、そして飢え。どんよりとした冷たい空の下で、世界中の国々が揺れ、人々は生きるために戦っていた。
ヨーロッパでは、宗教改革の荒波が王国を揺るがしていた。カトリックとプロテスタントの激しい対立、王権の強化、そして富(銀や香料など)を求めて海を越えていく植民地拡大。
北アメリカ大陸では、のちに歴史に名を残すジェームズタウンもプリマスも、まだ築かれてはいない。アメリカ合衆国へと繋がっていく開拓の物語が、まさに産声を上げようとしていた黎明期である。
アジアへ目を向ければ、明の中国、ムガルのインド、オスマンの中東が、巨大な帝国として君臨し、世界の交易路をめぐって熾烈な覇権争いを繰り広げていた。
地球全体が、外へ、外へと激しく膨張し、未知の荒波へと漕ぎ出していた時代。その同じ時、極東の小さな島国・日本は、まったく逆の選択をしようとしていた。
日本は、百年以上も続いた内なる戦乱を、力ずくで終わらせようとしていたのだ。列島の覇権をめぐる武士たちの戦いは、海外への植民地広げでも、宗教の戦争でもなかった。それは、この国に真の平穏をもたらす支配者を決める、剥き出しの命のやり取りだった。
織田信長、豊臣秀吉、そして徳川家康。
三人の偉大な武将(Samurai)が、
それぞれの狂気と知略で切り開いた、乱世の終焉。
これは、その巨大な歴史のうねりの傍らで、戦国というあまりにも残酷な時代を支え続けた「一人の母」の物語である。
実子が無く、育てた子どもたちを自分の子どものように愛した ねね。
最高権力者のもっとも近くで、世界の、そして時代の激変を見つめ続け、
すべての侍たちから「母」として切に慕われた人。
『史実』にない『余白』のなかにいる、ねねを探す旅でもあります。
琥珀色のお茶の湯気の向こう側、
426年前のあの1600年へ、旅を始める。
(プロローグ 終わり)
創作大賞用に、記載(以下)
本編が➀~⑰、コラム編が⑱~㉕です。以下URLを記載します。
また、本編、コラム編をマガジン分けています。
琥珀色の向こう側
➀
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➆
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⑰ 本編最終話
コラム編(本編とコラムで、2つのマガジンに分けてあります)
⑱コラム プロローグ
⑲コラム 物語の世界観(戦国時代の米コメ)
⑳コラム 物語の世界観(気象変動と戦国時代)
㉑コラム 物語の世界観(火山の噴火と人類の歴史)
㉒コラム 物語の世界観(安土饗応膳の豪華メニュー:信長物流)
㉓コラム (マインドフルネス茶道)
㉔
㉕
以上 ありがとうございます。