
🍂『秋から届いた、小さな招待状』
夏の終わりには、
季節だけが通れる
小さな扉があるという。

夕焼けが
空を茜色に染めるころ、
その扉はそっと開いて、
夏は麦わら帽子をかぶり、
大きな鞄に
蝉の声や、入道雲や、
花火のかけらを詰めてゆく。

「もう、行ってしまうの?」
私が尋ねると、
夏は少しだけ寂しそうに笑った。
「うん。でも、また来るよ」
風鈴が
ちりん、と鳴った。
それはまるで、
夏から届いた最後の返事。

向日葵たちは
黄色い帽子を脱ぐように
そっと頭を下げ、
夕暮れの海では
波たちがきらきら光りながら
小さな手を振っている。
「さようなら、夏」
そう呟いた瞬間、
どこからか
涼しい風が吹いてきた。

風の中には
まだ見えない秋の匂い。
すると空から、
一枚の赤い葉っぱが
くるくる、くるくる――
私の手のひらへ舞い降りた。
まるで秋から届いた
小さな招待状。
そこにはきっと、
「もうすぐ、会いに行きます」
そう書いてある。

秋が来たら、
金木犀の香りを探しに行こう。
落ち葉の絨毯を歩いて、
どんぐりを拾って、
少し冷たくなった夜には
月とうさぎに
秘密の話をしよう。
温かな珈琲を飲みながら、
窓辺で本を読むのもいい。
そう考えたら、
夏との別れが
少しだけ寂しくなくなった。

季節はきっと、
さよならをするたびに
次の小さな物語を
私たちの前へ置いてゆく。
だから私は
遠ざかってゆく夏の背中に
大きく手を振った。
「ありがとう、夏。また来年ね」
すると遠くで
最後の蝉が鳴いた。

そして反対側の小道から、
赤や黄色の葉っぱを
いっぱい抱えた秋が、
もうすぐそこまで
歩いてきている気がした。
私は笑って
秋の来る方へ歩き出す。

さようならの向こうには、
いつだって新しい
「こんにちは」が待っている。
だから今は――
暮れゆく夏に、別れを告げて。
まだ見ぬ秋を、
胸いっぱいに待ちわびよう。 🍁✨

💗柊紅葉💗

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