
この作品を書いた理由
最初に書いたのは、『あなたの失恋、お掃除いたします』の主人公・紬ちゃんが最後に自分のために書いた物語、『ルピナスの咲く日に』でした。
学生時代、『恋空』『赤い糸』などの携帯小説が流行っていて、恋愛ドラマや映画、漫画も大好きでした。
「こんな恋ができたらいいな。」
そんなことを思いながら、たくさんの物語に触れてきました。
でも、自分が小説を書くなんて、ずっと考えたこともありませんでした。
書けるとも思っていませんでした。
だけど、どうしても忘れられない人がいました。
失恋して、何年も経って。
忘れようと思えば思うほど、忘れられなくて。
どんどん思い出が美化されていって。
今を生きているのに、ずっと過去に生きているような、そんな感覚でした。
何年も経ってくると、「まだ忘れられない」なんて、なかなか人には言えないんですよね。
昔、会社の先輩がこんな話をしてくれました。
「結婚して、子どももいて、すごく幸せなんだけど……あの恋だけは、忘れられないんだよね。いまだに、どうしてるかなって考える時がある。」
その時は、「そんなものなんだなぁ。」くらいに思っていました。
だけど、今ならその言葉が痛いほど分かります。
何年も失恋を引きずって。
無理やり思い出さないようにして。
でも、ふとした瞬間に思い出してしまう。
「このままでは、ずっと辛いままだ。」
そう思って、自分の恋を文字にしてみたんです。
全然、物語なんかじゃありません。
ただ、思ったことを、そのまま書き殴るような感じでした。
そしたら、楽しかった思い出だけじゃなくて、苦しくて、辛くて、ずっと蓋をしていた気持ちまで、一気に溢れてきました。
お恥ずかしながら、書きながら号泣しました。
でも、それが一つの区切りになりました。
忘れたわけではありません。
今でも、きっと大切な思い出です。
でも、辛いままではなくなりました。
文字にしたことで、自分の恋を少しだけ客観的に見ることができた気がします。
現実では、過去を変えることはできません。
ハッピーエンドにも、バッドエンドにもできない。
だからこそ、どうすることもできない苦しさを抱えたまま、ふと過去を思い出しては、「あの頃は良かった」「あの時、ああしていれば」と、過去ばかりを見つめてしまっていました。
でも、物語として書き終えた時、その時間が少しずつなくなっていることに気づきました。
ようやく、自分の中で一つの区切りをつけることができたんだと思います。
だから、この『あなたの失恋、お掃除いたします』という物語が生まれました。
苦しい過去や、辛い思い出と向き合うことは、きっと誰にとっても簡単なことではありません。
私自身も、ずっと目を背けてきました。
でも、『あなたの失恋、お掃除いたします』は、そんな失恋を経験し、過去に心を置いたまま前へ進めない人に、
「もし紬ちゃんのような人がそばにいてくれたら。」
そんな思いから生まれた物語です。
この物語が、そんな苦しみを抱えながら生きている誰かに、少しでも寄り添える作品になっていたら、とても嬉しいです。
そして、もう少し先になるかもしれませんが。
少しずつ、紬ちゃんが最後に自分のために書いた物語、
『ルピナスの咲く日に』
も公開していこうと思っています。
もし、その時もお付き合いいただけたら、とても嬉しいです。
まだまだ未熟な私の物語を、最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
月白結葉