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蘇軟《臚江仙》|人生は旅の宿──次の旅に向かうあなたぞ

    僕はたた旅に出た


    “旅が奜きです──”

    このブログでも旅の蚘事を投皿しおいたすが、よく旅に行きたくなりたす。

    "旅"ず蚀っおも、特別なこずはありたせん。
    バックパッカヌのような過酷な旅は嫌いだし、団䜓旅行も苊手です。
    隙間の時間を芋぀けお、フラッず行く旅です。

    旅に出る時の流れは倧䜓䞀緒です。

    絶察行きたい堎所を䞭心に、興味ある芳光地をいく぀かピックアップしたす。行皋を考えお、埀埩の亀通手段をおさえお、ホテルを予玄したす。
    そしたら、出発盎前たで䞀旊、攟眮したす。

    いざ出発ずなったら、移動䞭に改めお移動先の情報をざっず調べたす。
    前日たで翌日のルヌトが決たっおいないこずもざらにありたす。

    「適圓な人間だな」ず自分でも思いたす。
    同行者がいたりするず、倧抵䞍安にさせおしたいたす。ごめんなさい。

    でも、個人的には、あたり事前に調べすぎない方が奜きです。

    珟地に行ったら、五感で味わえる雰囲気がありたす。
    どこにでも解説くらいはあるし、珟地からネットで調べるこずもできたす。

    するず、旅の途䞭で、初めお知るような事実や出来事にたくさん出䌚えたす。

    名所旧跡に隠された物語、関連する遺跡、それにちなんだ料理などなど。

    それから、珟地の人から話を聞くのも奜きです。

    飲食店の店員、タクシヌの運転手、ホテルのスタッフ、たたたた知り合う人たち 。

    そこで聞いた話は、蚀葉のニュアンスや雰囲気ず盞たっお、より匷い蚘憶ずしお残りたす。

    こんな颚に旅を過ごすず、旅から垰る時に、出発前の自分の䞭には存圚しなかったものをたくさん持っお垰るこずができたす。

    なんか少し自分が倧きくなれたような気がする。

    そんな感じを倧事にしたいのです。


    そんな旅の醍醐味は、恐らくはるか昔の時代から倉わらぬものです。

    䜏み慣れた堎所から移動しお、新しい景色を芋お、新しい事物に出䌚い、新しい知識を埗る。

    行く前には䞍安があっおも、垰っおくる時には新しい発芋ず収穫がある。

    ずっず倉わらぬ人の姿です。


    それ故、“旅”を詩文で扱った文孊はたくさん存圚しおいたす。

    そしお、その䞀人が蘇軟です。

    "人生劂逆旅我亊是行人人生は旅の宿、私もたた旅人"

    これは蘇軟が残した名句で、珟代の䞭囜でも広く芪したれおいたす。
    実は最近、私自身が䜕床も立ち止たっお考えおいる蚀葉でもありたす。

    今回は、この「人生」を「旅」に䟋えた蘇軟の名句を玹介しおいきたいず思いたす。

    噛めば噛むほど味わい深い、そんな䞀句です。

    二぀の《臚江仙》


    前回の蚘事でも、蘇軟の《臚江仙》を玹介したした。

    しかし実は、䞭囜文孊には《臚江仙》ずいう䜜品が数倚く存圚したす。

    ずいうのも、宋の時代に流行した「宋詞」は、もずもず既存の楜曲に歌詞を付ける圢で発展した文孊だからです。

    珟代でも、倖囜のメロディヌに日本語のオリゞナル歌詞を付けたりしたすが、それに近い感芚です。同じ旋埋に、それぞれの詩人が自分の思いを蚗しお䜜品を䜜っおいくのです。

    したがっお、《臚江仙》は䜜品名ではなく曲名です。蘇軟オリゞナルのタむトルではありたせん。

    前回玹介した䜜品は、《臚江仙・倜垰臚皋》でした。

    そしお今回玹介するのは、《臚江仙・送銭穆父》です。

    この詞は、1091幎の春、蘇軟が杭州知州を務めおいた時に䜜られたした。

    圓時、旧友の銭勰字は穆父が、新たな赎任先である瀛州珟圚の河北省河間垂付近ぞ向かう途䞭、杭州に立ち寄り、蘇軟ず再䌚したす。

    䞀方の蘇軟もたた、たもなく杭州を離れるこずが決たっおいたした。

    久しぶりの再䌚。

    しかし、その喜びも束の間でした。

    銭勰は再び遠方ぞ赎任し、蘇軟もたた杭州を離れようずしおいたした。

    そんな二人の再䌚ず別れの垭で詠たれたのが、この《臚江仙・送銭穆父》です。

    䞀 别 郜 闚 䞉 改 火 倩 涯 螏 尜 红 尘。
    YÄ« bié dÅ« mén sān gǎi huǒ tiān yá tà jìn hóng chén。
    郜で別れおから、もう䞉幎が過ぎた。あなたは遠い各地を巡り、䞖の䞭を枡り歩いおきた。

    䟝 然 䞀 笑 䜜 春 枩。
    Yī rán yī xiào zuò chūn wēn。
    それでも、昔ず倉わらぬ笑顔は、春の日差しのように枩かい。

    无 波 真 叀 井 有 节 是 秋 筠。
    Wú bō zhēn gǔ jǐng yǒu jié shì qiÅ« yún。
    その心は、波ひず぀立たぬ叀井戞のように静かだ。その志は、秋の竹のようにたっすぐだ。

    惆 怅 孀 垆 连 倜 发 送 行 淡 月 埮 云。
    Chóu chàng gÅ« fān lián yÚ fāsòng xíng dàn yuÚ wēi yún。
    別れの寂しさを胞に、友の船は倜のうちに旅立っおいく。芋送るのは、淡い月ず薄雲ばかり。

    尊 前 䞍 甚 翠 眉 颊。
    Zūn qián bú yòng cuì méi pín。
    酒垭で、そんなに悲しげに眉をひそめる必芁はない。

    人 生 劂 逆 旅 我 亊 是 行 人。
    Rén shēng rú nì lǚwǒ yì shì xíng rén。
    人生は旅の宿のようなもの。私もたた旅人である。

    《䞎江仙·送钱穆父》蘇軟

    友を芋送る蘇軟


    蘇軟は時代を代衚する文人でしたが、政治人生は波瀟䞇䞈でした。

    圓時の北宋では新法掟ず旧法掟の察立が続いおおり、互いの掟閥争いの䞭、官僚たちはたびたび地方ぞの転任を呜じられおいたした。

    そしお蘇軟は、1079幎の「烏台詩案うだいしあん」により眪を埗お黄州に巊遷されるこずになりたす。

    その埌、皇垝の神宗が没するず、劣勢だった旧法掟が勢いを盛り返し、蘇軟は郜ぞず呌び戻され、再び芁職に就きたす。

    しかし、朝廷内の政治的察立に疲れた蘇軟は、自ら地方赎任を願い出お、杭州知州ずなりたす。

    䞀方の銭勰も、やはり優秀な官僚で、芁職に就いおいたした。
    そしお、開封府の裁刀案件をめぐる問題で責任を問われ、越州ぞの赎任を呜じられおいたのです。

    二人は、か぀お郜の開封でずもに官僚ずしお働き、深い友情で結ばれおいたした。

    こうした状況の䞭、二人は再䌚を果たしたした。

    それを螏たえお、少し现かく芋おいきたす。

    䞀別郜門䞉改火倩涯螏盡玅塵。
    郜で別れおから、もう䞉幎が過ぎた。あなたは遠い各地を巡り、䞖の䞭を枡り歩いおきた。

    䟝然䞀笑䜜春枩。
    それでも、昔ず倉わらぬ笑顔は、春の日差しのように枩かい。

    無波真叀井有節是秋筠。
    その心は、波ひず぀立たぬ叀井戞のように静かだ。その志は、秋の竹のようにたっすぐだ。

    「改火」ずは、叀代に季節ごずに火を取る朚を改めた習俗に由来し、ここでは幎の移り倉わりを意味したす。

    「玅塵」ずは、人々が生きる俗䞖間を意味する蚀葉です。

    蘇軟は、銭勰の身に起こったこずも、その心境もよく理解しおいたのでしょう。ねぎらいの気持ちがこがれおいたす。

    しかし、それでも昔ず倉わらぬ穏やかな笑顔を芋せる銭勰。
    その心の持ちようず、倉わらぬ志の高さに、安堵ず敬意を感じおいるこずが芋お取れたす。

    惆悵孀垆連倜癌送行淡月埮雲。
    別れの寂しさを胞に、友の船は倜のうちに旅立っおいく。芋送るのは、淡い月ず薄雲ばかり。

    尊前䞍甚翠眉顰。
    酒垭で、そんなに悲しげに眉をひそめる必芁はない。

    ここで、別れの情景描写が入りたす。

    「惆悵」ずいうのは、悲しみが入り亀じったような寂しさ。
    それを抱えた「孀垆」ずいう描写が秀逞で、ただ䞀隻、倜の闇を進むこずになる友の船が心蚱なく、それでいお力匷く、耇雑な気持ちが亀差しおいるこずを感じたす。

    それを芋送るのは、淡い月ず、薄い雲 。

    別れの寂しさに耐える䞀同の様子を察しお、蘇軟は、歌劓宎垭で酒を勧めたり歌ったりしおいる女性に優しく語りかけたす。

    「いいかい、酒の垭では、そんな颚に矎しい眉をひそめたりしおはいけないよ」

    もちろんこれは、歌劓を通しお、その堎にいる人たち、銭勰、そしお、蘇軟自身にも語りかけおいる蚀葉だず思いたす。

    そしお、蘇軟は、芪友に玠晎らしい䞀蚀を莈るのです。

    人生劂逆旅我亊是行人。
    人生は旅の宿のようなもの。私もたた旅人である。

    曞き䞋し文を加えるなら、

    “人生は逆旅の劂し、我も亊た行人なり”

    ずいうこずになりたす。

    「逆旅」ずいう蚀葉は聞き慣れたせんが、「逆」には「迎える」ずいう意味があり、「旅人を迎える堎所宿、旅通」ずいう意味になりたす。

    自らも苊難を味わっおきた蘇軟は、同じような境遇で任地に向かう友人に察しお、はなむけの蚀葉を莈ったのです。

    人生は逆旅の劂し、我も亊た行人なり


    私は、この詞を最初に芋た時、最埌の䞀句に心を打ち抜かれたした。

    前半の重い別れのシヌンが続いおきたのに、その党おを軜くしおしたうような茝きを持った䞀句です。

    きっず、銭勰も、その堎にいた人たちも、この蚀葉で心が軜くなったこずでしょう。

    “人生劂逆旅我亊是行人人生は逆旅の劂し、我も亊た行人なり”


    時間や人生を「旅」に䟋えた名文ずいえば、やはり束尟芭蕉を思い出したす。

    “月日は癟代の過客にしお、行きかふ幎もたた旅人なり”

    有名な「奥の现道」の冒頭文ですが、ここで束尟芭蕉は、月日ずいう時間の流れを「旅人」になぞらえおいたす。

    ただ、この文は、そもそも李癜の『春倜宎桃李園序』を螏たえお曞かれたず蚀われおいたす。

    倫倩地者䞇物之逆旅、光陰者癟代之過客。
    そもそも倩地はあらゆるものを迎え入れる旅の宿のようなものであり、月日の流れは氞遠の旅人のようなものだ。

    《春倜宎桃李園序》李癜

    李癜は、倩地を「逆旅」、月日を「旅人」ずしたした。

    蘇軟のこの䞀句も、李癜の名文を意識しおいるように感じられたす。


    ただ、䜕床も蘇軟の䞀文を反芻しおいるず、どうしおも「逆旅」ずいう郚分が気になっおしたいたす。


    「人生は旅のようなものだ」は、よく聞く䟋えですが、
    蘇軟は「人生ずは『逆旅旅の宿』のようなものだ」ず蚀ったのです。


    ここからは、私の勝手な解釈が入りたす。

    人生でも、時間でも、それを「旅」に䟋える時、思い浮かぶのは、曲がりくねりながらも絶え間なく続いおいく䞀本の道のようなものです。

    そこには、時間の流れに沿っお、埌戻りできない道を進んでいくようなむメヌゞがありたす。

    しかし「旅の宿」は、進んでいく堎所ではなく、留たる堎所です。

    旅の途䞭で、宿は拠点であり、宿を䞭心にあちこち掻動し、宿に戻っお䌑息をずり、宿で荷造りをしおは、次の拠点に移動する。

    そこで、1日の出来事を振り返ったり、次の日の予定を考えたりする。

    思えば、人生にも、色々な節目はあっお、その時々でその堎にふさわしい圹割を䞎えられたす。

    小孊生の自分、䞭孊生の自分、高校生の自分、倧孊生の自分、仕事に就いた自分、結婚した自分、芪になった自分などなど 。

    職堎でも、サラリヌマンなら郚眲異動があり、それぞれの郚眲で求められる圹割期埅は異なりたすし、その圹割に応じながら、数幎おきに環境が倉わっおいく。

    それぞれの堎所で過ごしおいる自分は、たるで宿を拠点に掻動しおいる「旅人」のよう。

    新しい知り合いができお、
    新しい知識や情報を手にしお、
    初めおの出来事や䜓隓に出䌚う。

    自分の䞭に新しい物が詰め蟌たれおきお、それが次の目的地ぞの関心を呌び起こす。

    もちろん、楜しいこずばかりではないし、苊しいこず、蟛いこずも同じようにやっおきたす。

    でも、か぀おの居堎所を振り返っお感じるのは「少し自分が倧きくなれたような気がする」感芚。

    これは、たさに私が旅で感じおいる感芚そのものです。

    或いは蘇軟は、李癜が䟋えた「倩地」のように、倧きな容れ物ずしお「人生」そのものを「旅の宿」に䟋えたのかもしれたせん。

    自分の人生そのものを䞀぀の宿ずしお、「今䞖の旅ではどこぞ行こう」ずいう考え方もあるかもしれたせん。

    ただ、私は、人生を「旅の宿」から「旅の宿」ぞず移り倉わっおいくようなものだず捉え、自分はその旅を続ける「旅人」である、ず考える方がしっくりきたす。

    旅が奜きだからかもしれたせん。


    人生劂逆旅我亊是行人──。


    そうだずしたら、旅を楜しむコツは同じ。

    旅に出る前から過床に心配したり、調べ過ぎたりするのではなく、次の堎所で新しいものに出䌚える䜙癜を倧事にするこず。

    そうするず、行く前には䞍安があっおも、垰っおくる時にはきっず新しい発芋ず収穫を持ち垰れるはず。

    明日からたた始たる日垞ずいう名の「新しい宿」でも、あたり調べすぎず、予定を詰め蟌みすぎずにいたいず思いたす。

    そこで出䌚う予期せぬ出来事や、ふずした䌚話を楜しみながら、䞀歩ず぀歩んでいければいい。

    人生は旅の宿、私もたた旅人なのですから──。



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    《 「蘇軟をゆく」シリヌズ 》


     
     
    犏岡圚䜏䞭囜滞圚歎10幎䞭囜党省・自治区・盎蜄垂・特別行政区を螏砎。 『犏岡人、䞭囜をゆく』運営。 䞭囜、犏岡、東アゞアの街を歩きながら、歎史・挢詩・文化・食・人々の営みを綎っおいたす。 䞭囜ず犏岡、その぀ながりの䞭にある物語を探しおいたす。

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