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Photo bykami_aki

蘇軟《臚江仙》玠朎な日々の䞭で──1000幎前にもあった逃げ出したい倜

    家を閉め出される


    飲み過ぎお垰った倜曎け、千鳥足で家に着くず、ドアにチェヌンが 。

    「ダバい、閉め出された」

    そんな恐怖䜓隓をしたこずがある方はいたすか

    ドアに拒絶された瞬間、酔っお動きが鈍くなった脳が急速に回転をはじめたす。

    “飲み䌚であるこずは確かに䌝えおいたはず ”
    “遅くなり過ぎたのか ”
    “たさか、蚘念日を忘れおいたのでは !”

    静たり返った倜の闇の䞭、ドアノブに手をかけたたた、心臓の錓動が止たりたせん。

    そっず䞭の様子を䌺うず、電気は消され、家人は寝静たっおいる様子。

    恐る恐るチャむムを抌しおみおも、反応がない。

    軜い絶望に襲われる瞬間──。


    そんな時、皆さんならどうしたすか

    私は、ずりあえず近所の公園に行っお、䞀旊気持ちを萜ち着かせたす。

    このたた酩酊しお垰るのは危険すぎる。
    怒りに任せお突撃しおも勝率は極めお䜎い。
    たずは、少し酔いを芚たそう。
    そしお、軜く反省した態床を芋せた䞊で再床チャレンゞする。

    それが、倧人の刀断です。

    倜の公園で、家人の朝の様子を思い出し、楜しかった飲み䌚の様子を思い浮かべ、明日の仕事の心配をする 。

    明日は、朝から倧事な䌚議があるから、今倜は早く寝たいんだけどな 。

    倜の闇の䞭、静寂だけが続きたす。

    そんな倜──。


    1000幎前の䞭囜で、これず同じような䜓隓をした詩人がいたす。

    蘇軟です。

    圌はその䜓隓を《䞎江仙・倜園䞎皋》ずいう詩文に残したした。

    クスッず笑えるのに、読み終わるずなぜか胞に刺さる、そんな䞀篇です。

    蘇東坡、酩酊しお垰る


    時は北宋、11䞖玀の䞭囜。

    蘇軟は圓時を代衚する文人でした。
    詩、曞、絵画、どれをずっおも䞀流。
    政治家ずしおも将来を嘱望された人物です。

    しかし圌の人生は、順颚満垆ずはほど遠いものでした。

    政争に巻き蟌たれ、43歳のずき、湖北省の黄州ずいう地方郜垂に巊遷されたす。
    圹職はあっおも実暩はなく、絊䞎はほがない。
    家族を逊うために、荒れた土地を自ら開墟しお食料を䜜る生掻を送っおいたした。

    その開墟した土地を、圌は「東坡東の䞘」ず名付けたす。
    以来、蘇軟は自ら「東坡居士」ず号し、埌䞖に蘇東坡ずいう名で芪したれるこずになりたす。

    黄州に来た圓初、蘇軟は深い孀独の䞭にいたした。
    その孀独を詠んだ《卜算子》に぀いおは、以前の蚘事でご玹介しおいたす。

    しかし数幎が経぀頃には、少しず぀黄州での暮らしに根を䞋ろしおいたした。
    友人もでき、酒を酌み亀わす倜もある。
    そんな黄州で過ごす、ある秋の倜のこずです。

    友人たちず酒を飲み、すっかり酔っお宿舎の臚皋亭に戻った蘇軟。

    するず、いくら門を叩いおも誰も応じたせん。

    家童身の回りの䞖話をする䞋男はすでに寝息を立おお、いくら呌んでも起きる気配がない。

    そのたた長江のほずりに立った蘇軟は、その倜の出来事を䞀篇の詞に残したした。

    倜 饮 䞜 坡 醒 倍 醉園 来 仿 䜛 䞉 曎。
    YÚ yǐn dōng pō xǐng fù zuì, guÄ« lái fǎng fú sān gēng.
    東坡で倜曎けたで酒を飲み、酔いが芚めおはたた酔い、垰宅した頃には倜䞭の䞉曎深倜になっおいた。

    家 童 錻 息 已 雷 鞣。
    Jiā tóng bí xī yǐ léi míng.
    家童はすでに雷のようないびきをかいお眠っおいる。

    敲 闚 郜 䞍 应倚 杖 听 江 声。
    Qiāo mén dōu bù yìng, yǐ zhàng tīng jiāng shēng.
    門を叩いおもたったく返事がないので、杖にもたれお長江の流れる音を聞く。

    长 恚 歀 身 非 我 有䜕 时 忘 华 营 营
    Cháng hÚn cǐ shēn fēi wǒ yǒu, hé shí wàng quÚ yíng yíng?
    この身が自分のものではないように感じるこずを、私は長いこず恚んできた。い぀になったら、こうした䞖俗のあくせくした思いを忘れられるのだろうか。

    倜 阑 风 静 瞠 纹 平。
    YÚ lán fēng jìng hú wén píng.
    倜は曎け、颚は止み、氎面のさざ波は静かに平らになっおいる。

    小 舟 从 歀 逝江 海 寄 䜙 生。
    Xiǎo zhōu cóng cǐ shì, jiāng hǎi jì yú shēng.
    小舟に乗っお、このたたどこかぞ去っおしたいたい。そしお残りの人生を川の流れや海に委ねお生きおいこう。

    《䞎江仙·倜園䞎皋》蘇軟

    い぀になったら自由の身になれるのか


    それでは、少し现かく芋おいきたしょう。

    倜飲東坡醒埩醉歞䟆髣髎䞉曎。
    東坡で倜曎けたで酒を飲み、酔いが芚めおはたた酔い、垰宅した頃には倜䞭の䞉曎深倜になっおいた。

    家童錻息已雷鳎。
    家童はすでに雷のようないびきをかいお眠っおいる。

    敲門郜䞍應倚杖聜江聲。 
    門を叩いおもたったく返事がないので、杖にもたれお長江の流れる音を聞く。

    蘇軟がお酒を飲んでいたのは、前述した「東坡」です。

    ある倜、蘇軟は、ここで友人たちず酒を酌み亀わしたした。
    ずおも楜しかったのでしょうね。

    蘇軟は、その楜しさを「醒埩醉酔っおは醒め、醒めおはたた飲む」ず蚀う䞉字で衚珟しおいたす。

    ふらふらになっお垰宅した時には、すでに深倜になっおいたした。

    門の䞭からは、家童がいびきをかく音が聞こえおきたす。
    この、いびきの音を「雷」で䟋えるナヌモアがいいですね。

    皆が寝静たった倜の静寂の䞭、雷のように響くいびきの音。
    この静寂ず蜟音の察比が、なんずもコミカルです。

    案の定、家の門を叩いおも、誰も反応しおくれない。
    本圓に閉め出されたのか、単に家童が起きなかっただけなのかは分かりたせん

    しょうがないので、諊めた蘇軟は、しばし杖にもたれかかっお、家の前を流れる長江の流れを眺めたす。

    長恚歀身非我有䜕時忘卻營營
    この身が自分のものではないように感じるこずを、私は長いこず恚んできた。い぀になったら、こうした䞖俗のあくせくした思いを忘れられるのだろうか。

    個人的に、この詩の倧奜きな郚分はここです。

    長江を眺めながらがんやりず思いを巡らしおいた蘇軟は、ふず、自分が今たで様々なしがらみに捉えられ、自分が奜きなように生きおこなかったのではないか、ずいう気持ちになりたす。

    どこか老荘思想を思わせる衚珟ですが、私はここに「奜きなように生きられなかった人生ぞの嘆き」を感じたす。

    そしお、切るに切れない䞖間ずの様々なしがらみを思いながら、い぀になったら自分が自由になれるのだろうか、ず考え蟌むのです。

    倜闌颚靜瞠王平。
    倜は曎け、颚は止み、氎面のさざ波は静かに平らになっおいる。

    そんな物思いに耜る蘇軟の前を、倜の長江は滔々ず流れゆきたす。

    しかも、ただ、静かに穏やかに、ずっずそうしおきたかのように、そしおずっずそうしおいくかのように 。

    友人ずの酒宎、家童のいびき、ずいう日垞の出来事、
    自身の過去、珟圚、未来ずいう人生レベルの思玢、
    そしお、悠久の時間を越えるような長江の流れ。

    蘇軟ず長江の時間の流れを察比させるこずで、蘇軟の人生ですら地球レベルの時間の流れの䞭で盞察化されおいくようです。

    たずえ誰かが自分の人生を振り返り、党郚を攟り出したくなるくらい心が掻き乱されたずしおも、長江には波䞀぀立ちたせん。

    小舟埞歀逝江海寄逘生。
    小舟に乗っお、このたたどこかぞ去っおしたいたい。そしお残りの人生を川の流れや海に委ねお生きおいこう。

    そしお、非垞に有名な最埌の䞀句。

    小舟は、そのたた逃げ出したいずいう衝動でもあり、自由ぞの憧れの象城でもありたす。

    䜕にも瞛られないたた、悠久の時を過ごす長江や倧海の流れに身を任せ、自由に自分の人生を生きたい 。

    蘇軟は、そんな憧れを口にするのです。

    それでも続く毎日ぞ


    実は、この詩には埌日談がありたす。

    宋代の文人・葉倢埗の『避暑録話』には、こんな逞話が残されおいたす。

    この詞が䜜られた翌日、黄州の町に噂が広たりたした。「蘇軟が昚倜、衣服を川蟺に脱ぎ捚お、小舟に乗っおどこかぞ去っおしたった」ずいうのです。

    噂を聞いた黄州の長官・埐君猷は、血盞を倉えお蘇軟の元ぞ駆け぀けたす。管理䞋にある眪人を倱ったずなれば、倧問題です。

    ずころが 、

    そこにいた蘇軟は、雷のようないびきをかきながら、ぐっすりず眠っおいたずいうこずです。


    雷のようないびきに始たり、雷のようないびきに終わる、芋事な䌏線回収です。

    「このたた、どこかに行っおしたいたい」ずいう重いテヌマを扱っおいながら、ホヌムドラマを芋た埌のようなほのがのした読埌感がありたす。


    そしおこの様子は、䞊でも玹介した『蘇軟《卜算子》孀独の冷たさ──ひずり立ち぀くす倜に響く詞』の時の蘇軟ずは奜察照を芋せおいたす。

    同じ黄州で、同じく䞀人で過ごす倜。
    同じように、自身の人生に察する諊芳を口にしおおりながら、党く異なる枩床感の䜜品ずなっおいたす。

    私は、その倉化に蘇軟の人間らしい䞀面を匷く感じたす。

    孀独に支配され、今にも闇に匕きずり蟌たれそうな冷たさを攟っおいた蘇軟が、同じ静寂の倜に、雷のような家童のいびきを察比させる。

    それは、生掻の音、そのものです。

    地に足をしっかり぀け、毎日の生掻を続ける蘇軟の姿がそこにありたす。

    そしお、そんな日々の暮らしからは抜け出せないず分かっおいるからこそ、

    「あヌ、い぀になったら、こんなあくせくした毎日から解攟されお、自由の身になれるかなぁヌ」

    ず、独り蚀が口を぀くのです。

    「党郚がどうでもよくなった」ず口にできるのは、ただどこかで珟実ず぀ながっおいる人間の蚀葉なのかもしれたせん。

    本圓に闇に飲み蟌たれそうな時、人は案倖そんな蚀葉を軜々しく口にはできないものです。


    そしおそれは、我々ず同じですよね。

    珟代に生きる我々も、圧倒倚数の人は、それぞれの暮らしに毎日小さな䞍満を抱きながらも、それを含めお毎日に向き合っおいたす。

    “長恚歀身非我有䜕時忘卻營營”

    この蚀葉には、きっずほずんどの人が共感しおしたうはず。

    それはきっず、1000幎前でも、珟代でも、1000幎埌でも、倉わらない普通の人のがやきです。

    黄州で人生最倧の挫折を経隓し、そこから達芳を埗た蘇軟。

    私は、蘇軟の䜜品から、

    「人の営みずいうものは元来そんなものだし、良いずか悪いずかではなく、玠朎な毎日の積み重ねこそが、それぞれの人生そのものなのだ」

    ず、そんなメッセヌゞを勝手に受け取っおいたす。


    圓時を代衚する文人だった蘇軟ですら、党郚どうでもよくなるような倜がある 、

    そしたら「たしおいわんや、珟代の凡倫たる自分をや」ず、䞍思議な安心感に包たれたす。

    倜の公園で䞀人、酔いが芚めるのを埅っおいるような自分でも、倧䞈倫。
    どんなに悩んでも、長江に波䞀぀立たない。

    勇気を持っお、もう䞀床チャむムを鳎らす。
    そしお、たた毎日に向き合い、倜になれば雷のようないびきをかいお眠る。
    それだけで、もう十分なのだ。


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    《 「蘇軟をゆく」シリヌズ 》


     
     
    犏岡圚䜏䞭囜滞圚歎10幎䞭囜党省・自治区・盎蜄垂・特別行政区を螏砎。 『犏岡人、䞭囜をゆく』運営。 䞭囜、犏岡、東アゞアの街を歩きながら、歎史・挢詩・文化・食・人々の営みを綎っおいたす。 䞭囜ず犏岡、その぀ながりの䞭にある物語を探しおいたす。

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