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ここまでのあらすじ|品性という言葉を知らない(連載小説)

杏奈は、ずっと人を見ていた

どんな女性が
自分よりかわいいと言われるのか。

どんな男性が
自分にお金や時間を使ってくれるのか。

誰が自分を羨ましがっているのか。

31歳の栗山杏奈は、
歯科医院の受付として働きながら、
夜はガールズバーでも働いている。

Instagramでは、
仕事もプライベートも充実した
華やかな日常を発信。

高級な食事、旅行、ブランド品、男性からのプレゼント、かわいい友達――。

「幸せな私」を彩るものを、
杏奈は次々とInstagramに載せていく。

一方、Xには、
日々の出来事や周囲の人たちへの
辛辣な本音を書き連ねていた。

杏奈にとって、男性との関係は一般的な「恋愛」とは少し違う。

お金を出してくれる男性
欲しいものを与えてくれる男性
自分を楽しませてくれる男性
仕事につながる男性

そしてそれらをいかに“多く”
杏奈に与えてくれるのか――――

「彼氏」はいらない。
「愛情」なんて信じない。
「セフレ」でもない。


既婚者や、彼女もちの男性との関係は、
杏奈にとって
「名前のつかない自由な関係」
だった。

そこに“罪悪感”はない。

なぜなら、“奪う”んじゃない。
“選ばれる”のだから――――。

そんな杏奈のもとに、ある日、
ひとつの火種が生まれる。

男性との関係を匂わせるInstagram

それは誰でもない“ある男性の彼女”
への匂わせやマウントだった

軽い気持ちだったが、
そこから始まった疑念

そして、杏奈自身が
思いもしなかったところで、
SNS上の人間関係がつながり始めていく

さらに、男性との関係をきっかけに、
行為を盗撮された動画まで拡散される。


「顔が分からなければ大丈夫」


最初はそう思っていた杏奈だったが、
動画は瞬く間に広がっていった。

そして、ついに誰にも見つからない
と思っていたXまで掘り起こされる。

Instagramでは
「仕事もプライベートも充実♡」
「丁寧な暮らし♡」
「おとな時間♡」
「余白を持つ♡」

そんな女性を演じていた杏奈。

けれどXには、

「ブスの嫉妬」
「自信のない人が多い」
「モテるって天性の才能」
「選ばれちゃうんだもん」

そんな言葉が並んでいた。

二つのSNSから浮かび上がったのは、

まるで別人のような二つの顔――――


けれど、そのどちらも杏奈自身だった。


そして、杏奈が気づかないうちに、
彼女のInstagramを見ている人たちも
増えていた。

過去に関わった男性
その男性たちの恋人
かつて杏奈が傷つけた女性
職場の人間
そして、家族

ストーリーズの閲覧者一覧に並ぶ名前を
杏奈は一人ずつ確認するようになる。

今まで、誰かを見て、
評価して、勝手に意味づけてきた、
そして見下してきた杏奈。

その杏奈が今度は、

「誰が私を見ているの?」

と、他人の視線を気にし始めている。

そして、その閲覧者の中には――

杏奈が過去に置き去りにしてきたはずの人たちの名前もあった。

杏奈はまだ知らない。

自分が「見る側」だと思っていた世界で、
いつの間にか、自分自身が「見られる側」になっていたことを。


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第1話はこちら


長編小説『最初に好きになったのは、あなただった』 主人公の杏奈は、この小説の 一登場人物でした。


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