
行こう!お母さん!
一年前の五月、夫が倒れた。
その頃、息子は中学に入学したばかりだった。
両親共働き。
姉が二人いることもあり、保育園時代から習い事や塾に通ったことはない。
小学校も、一学年一クラスの小さな学校だった。
中学に入ったら、何か部活動をする。
そう言ってはいたけれど、
経験のない子が、大所帯の中学校生活に馴染めるのか。
正直、それさえ心配だった。
そこに、夫の不慮の事故が重なった。
なんとなく体験入部をしていたバレーボール部について、息子は言った。
「それでも、バレーボールをやりたい」
理由はわからない。
このバレーボール部は、県内では強豪校と言われている。
スタメンには経験者が多く、仲間たちの経験値も高い。
なぜ、そこを選んだのか。
反対しなかったわけではない。
ただ、否定する言葉が、見つからなかった。
さらに、父母の送迎負担は、私にとって現実的に重かった。
生きるため。
養うため。
私自身のため。
仕事をフルスロットルで続けない、という選択肢はなかった。
私は、
「現実から目を逸らす慰め」より、
「現実を直視した上での言葉」を選びたい。
息子も、きっと同じだったのだと思う。
顧問や外部コーチ、仲間を信じて、
ひとつひとつ、努力を重ねている。
ルールを覚え、
チームを信頼し、
仲間と協力し、
つなぐバレーボールを楽しんでいる。
朝が早くても。
夜が遅くても。
技術を身につけることが厳しくても。
逃げない。
決めた道なら、
私は支える。
支え合う。
チカラをもらい、笑う事ができる毎日に感謝している。
今日もはじまる。
さあ、お母さん練習行くよ!
目次
第1章 同じ家で、違う時間を生きる
第2章 ICUのドアの向こう
第3章 問いの残る時間
第4章 問いを抱えたまま
第5章 選ぶ前に
第6章 暮らしの入り口
第7章 私は、無理をしている自分を知っている
第8章 戻らない人と生きていく