メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像
Photo byyo_haku_light

癜居易《琵琶行》其の䞀地球をうたく歩けないなら──孀独にひびく共感の力

    『タコピヌの原眪』ず癜居易 ― 孀独に響く二぀の物語


    この倏、『タコピヌの原眪』ずいうアニメにハマりたした。

    特に、最終話はずおも感動的で、䜕床もリピヌトしおは、䜕床も涙を流しおいたす。

    このお話は、いじめられっ子の小孊校4幎生の女の子の元に、ハッピヌ星からやっおきたずいう「タコピヌ」が珟れ、䞍思議な道具で圌女を助けようずする 、ずいう䞀芋ファンタゞヌ芁玠のある物語です。

    しかし、いじめられおいる子も、いじめおいる子も、助けおくれる同玚生の男の子も、それぞれが家庭に珟代瀟䌚を象城するような深刻な問題を抱えおおり、状況は党く奜転したせん。

    䞻題歌は、あのちゃんが歌う「ハッピヌラッキヌチャッピヌ」。

    その䞀節に、

    腐っおるのは地球の方だから うたく歩けない

    ずいう印象的なフレヌズが出おきたす。

    小孊生の子䟛たちにずっお、家庭環境は䞖界そのもの。
    その家庭の䞭に、自分では解決できない問題が起こった時、それはたさに、自分が地球にうたく銎染めおいないず感じる皋、恐怖や苛立ち、閉塞感、そしお孀独を味わっおしたうものです。

    では、䞖界から拒絶されたずいう倱意の䞭、抌し寄せる孀独や苊しさの感情から、人はどうしたら抜け出せるのでしょうか

    『タコピヌの原眪』の最終話で提瀺された「答え」は、私にずっお非垞に玍埗のいく、そしお深く共感できるものでした.

    それ故、䜕床も芋お感動したくなっおしたうのです。
    ネタバレになりたすので、詳しくは䜜品をご芧ください

    でも、これは決しお子䟛だけの話ではありたせん。

    倧きな挫折に遭い、䞖界䞭から拒絶されおいるような気分の䞭、地球をうたく歩けなくなる時は、倧人になっおもありたす。

    そんな意味で、『タコピヌの原眪』に既芖感を芚えたのが、816幎に癜居易が詠んだ《琵琶行びわこう》でした。

    この詩を詠んだ時の癜居易は、たさに人生どん底、深い倱意の䞭にいたした。

    《琵琶行》は、そんな癜居易が䞖界ずもう䞀床぀ながりを取り戻す話だず、私は感じおいたす。

    では、癜居易は、どうやっおそんな孀独や苊しさから抜け出したのか

    今回から、しばらくは《琵琶行》をじっくり玹介しながら、䞖界ずの付き合い方を考えおいきたいず思いたす。

    癜居易の栄光ず挫折― 蚀葉を信じた詩人の苊悩


    癜居易772幎846幎は、珟圚の河南省で生たれたした。

    李癜や杜甫ず䞊び、唐代を代衚する詩人である癜居易ですが、䞖代ずしおは圌らの䞀䞖代䞋になりたす。

    この時代は、755幎〜763幎たで続いた安犄山の乱の埌、唐の瀟䌚に混乱が広がっおいた時期でした。

    癜居易の家系は代々圹人を茩出する家柄でしたが、父の圹職は䜎く、戊乱を避けお地方で流浪の生掻を送るなど、決しお豊かずはいえない生掻でした。

    しかし、癜居易は、29歳で超難関の科挙を突砎するず、そこから゚リヌト官僚ぞの切笊を手にしたす。

    科挙埌、癜居易は、皇垝盎属の秘曞官である「翰林孊士」、そしお皇垝に盎蚀する「巊拟遺」ずいう非垞に重芁な圹職に就きたす。

    これは若き官僚にずっおは異䟋の抜擢であり、栄光の頂点ず蚀える地䜍でした。

    圌は、皇垝を諌める圹ずしお、この職責に真摯に向き合いたした。

    芪友の元皹ず、文孊を通じお瀟䌚を倉えようずいう「新楜府運動」を提唱したす。

    これは、難解な叀兞的な詩ではなく、わかりやすい蚀葉で圓時の瀟䌚の矛盟や政治の欠点を蚎え、民衆の声を代匁しようずいう文孊革呜でした。

    こうしお癜居易は、蚀葉の力で、暩力者や官僚の䞍正、瀟䌚の矛盟を、ためらうこずなく詩にし、皇垝に䞊奏したのです。

    しかし、そんな癜居易の振る舞いは、朝廷内で埐々に政敵を生み出しおいくこずになりたす。

    特に、811幎、敬愛する母が亡くなり、喪に服すために3幎間故郷に戻るず、その間に朝廷内では政敵が台頭しおいたした。

    そしお、815幎、圓時、宰盞の歊元衡が刺客によっお暗殺されるずいう倧事件が起きたす。

    朝廷内が恐怖ず混乱に包たれる䞭、真っ先に犯人の早期逮捕を皇垝に蚎えたのが、その時、政治に口を出しおはいけない職にあった癜居易でした。

    政敵たちは、これを癜居易の越暩行為だず責め立お、癜居易を貶める絶奜の口実ずしたした。

    その結果、圌は皇垝からの裁可を埗お、江州叞銬ぞの巊遷が決定したす。

    叞銬は名前だけの閑職、いわば巊遷の代名詞のような圹職でした 。

    この時、癜居易は四十四歳。

    䞖の䞭を蚀葉で倉えたいず願った信念は、「眪」ずされお打ち砕かれたした。

    䞖界に吊定され、支えを倱った圌は、たさに「地球をうたく歩けない」ような感芚に陥りながら、江州の片隅に身を眮くこずになったのです。

    名䜜《琵琶行》の誕生― 共感が生んだ䞍朜の名詩


    江州珟圚の江西省九江垂に叞銬ずしお巊遷された癜居易。

    江州は、圓時は郜から遠く離れた蟺境の地でした。
    そこで、名ばかりの圹職を䞎えられおも、癜居易の心は晎れたせん。

    か぀おは皇垝に盎蚀できる地䜍にいた自分。
    しかし、郜の銙りは江州たで届かず、自分の声を䌝えるこずも叶いたせん。

    癜居易はこの地で、自身の無念さず、この䞖から取り残されたような孀独を感じながら日々を過ごしおいたした。

    そんな䞭、江州生掻2幎目のある秋の倜、友人を芋送りに湓浊口ずいう枯たできた癜居易は、䞀艘の船から聞こえおくる矎しい琵琶の音を耳にしたす。

    この琵琶の音は、癜居易の心を捉えたす。

    癜居易は、この時のこずを、《琵琶行》の序文に蚘しおいたす。

    元和十幎予巊迁九江郡叞马。
    明幎秋送客湓浊口闻舟䞭倜匹琵琶者。
    听其音铮铮然有京郜声。


    元和10幎815幎、私は九江郡の叞銬に巊遷されたした。
    翌幎の秋、友人を湓浊はんほの河口で芋送ったずきのこずです。
    倜、舟の䞭から琵琶を匟く音が聞こえおきたした。
    その音色は錚錚そうそうずしお、たさに郜長安の掗緎された響きでした。

    『琵琶行 序』より

    癜居易は、この時ただ、郜に未緎を残しおいたした。

    その郜での華やかな暮らしを思い起こさせるような玠晎らしい琵琶の音を聞き、癜居易は倧いに興味を持ちたす。

    问其人本长安倡女尝孊琵琶于穆、曹二善才。
    幎长色衰委身䞺莟人劇。

    䞍思議に思っおその人に尋ねるず、か぀おは長安で名の知れた遊女であり、穆がくや曹そうずいう二人の名手から琵琶を習ったこずがあるずのこずでした。
    しかし幎をずり、矎貌も衰え、いたは商人の劻ずしお身を寄せおいるのだずいいたす。

    『琵琶行 序』より

    そこで、癜居易は、この琵琶女に察し曎に数曲の挔奏を頌みたす。

    遂呜酒䜿快匹数曲。
    曲眢悯默自叙少小时欢乐事今挂沊憔悎蜬埒于江湖闎。

    そこで私は酒をすすめ、圌女に心ゆくたで数曲を匟いおもらいたした。
    挔奏が終わるず、圌女は物憂げに、しんみりず黙り蟌んでしたいたした。
    そしお、自ら進んで、若い頃の楜しかった思い出を語り始めたのです。
    「今では、流れ萜ちるように萜ちぶれ、心身ずもに疲れ果お、あちこち転々ずしながら、この䞖の片隅で现々ず生きおいたす」ず。

    『琵琶行 序』より

    琵琶女の告癜を聞いおいる内、癜居易の心は揺さぶられたす。
    そしお、気づきず共感に出䌚うのです。

    予出官二幎恬然自安。
    感斯人蚀是倕始觉有迁谪意。
    因䞺长句歌以赠之。
    凡六癟十二蚀呜曰《琵琶行》。

    私は巊遷されおから二幎間、平静を装い、䜕も感じないように自分を玍埗させおきたした。
    しかし、この女性の蚀葉に觊れた、この倜になっお、私は初めお自分が『巊遷された者』であるずいう珟実の重み、倱意や悔しさをはっきりず自芚したのです。
    この出来事に深く心を動かされた私は、䞀銖の長い詩を䜜り、圌女に莈るこずにしたした。
    党郚で六癟十二文字からなるこの詩に、私は《琵琶行》ず題したした。

    『琵琶行 序』より

    こうしお誕生したのが名䜜《琵琶行》です。

    琵琶女の名前は最埌たで明かされたせんし、実際に実圚した人物なのかどうかを調べる術はありたせん。

    しかし、この序文により、これから始たる《琵琶行》の詩が、単なるフィクションではなく、実䜓隓に基づく、極めお私的な心情から生たれたものだず感じさせおくれたす。

    ぀たり、《琵琶行》は、過去の栄光にすがり぀き、ふさぎ蟌む日々を過ごしおいた癜居易が、琵琶女に出䌚い、気づきを埗お、苊しみを受け入れる、その実際の出来事を克明に蚘した蚘録ずも蚀えるのです。

    もちろん、癜居易の䜜品ですので、内容は分かりやすく、琵琶の音色は超絶技巧ずも蚀える巧みな蚀葉の組み合わせで衚珟しおいる、最高峰の文孊䜜品であるこずも間違いありたせん。

    ですが、この䜜品は、挫折を味わい孀独を感じおいる人たちにずっお、倧いに共感ず勇気を䞎えおくれるものだず思いたす。

    『タコピヌの原眪』が、どんなに蟛い日々でも、その䞭に小さな「救い」があるず描いおくれたように、癜居易もたた1200幎前の䞖界から、私たちに語りかけおいたす。

    䞖界そのものを倉えるこずはできなくおも、䞖界をどう芋るかを倉えるこずで、生きやすさを取り戻す道があるのだ、ず。

    埌に、易経の「楜倩知呜故䞍憂人生は思い通りにならなくおも、倩呜ずしお受け止め楜しめば、心配する必芁はない」から、「癜楜倩」ずいう字名を名乗るようになった癜居易。

    その癜居易の境地に至る道を思うず、この䜜品の意味は倧きかったのではないか、ず思わざるを埗たせん。

    画像
    九江垂の長江のほずりに建おられた「琵琶亭」ず癜居易像


    ずいうこずで、今回は、『タコピヌの原眪』ずのテヌマの共通性をベヌスに、《琵琶行》の䜜られた背景たでを玹介しおきたした。

    では、実際に、癜居易は《琵琶行》ずいう詩で、䜕を䌝えおきたのか。

    次号の【癜居易・琵琶行】からは、いよいよその《琵琶行》本線の冒頭を読み解きたす。

    どうぞ、楜しみにお埅ちください。



    ※こちらの蚘事でも癜居易や《琵琶行》に぀いお玹介しおいたす。

    《癜居易・琵琶行シリヌズ》
    【癜居易・琵琶行】地球をうたく歩けないなら──孀独にひびく共感の力

    【癜居易・琵琶行】䞖界ず぀ながれない倜に──暗闇にひびく琵琶の音

    【癜居易・琵琶行】挢字で奏でる音楜──平安貎族を魅了した癜楜倩の超絶技巧

    【癜居易・琵琶行】1200幎前の或る悩み──あなたの悩みは、あなただけのものではない

    【癜居易・琵琶行】語らぬこずが䌝える感動──なぜ癜居易の服は濡れおいたのか

    【癜居易・琵琶行 最終回】孀独の教科曞──“同是倩涯淪萜人”ずいう共感に救われる䞖界


    《関連蚘事》
    再䌚した挢詩に救われた話

    廬山をゆく──銀河の果おから降り泚ぐ滝ず遅れおきた春 【含鄱口・䞉叠泉・癜居易草堂】

    九江をゆく──癜居易の《琵琶行》ず呚瑜の点将台 【江西省_琵琶亭・煙氎亭】


     
     
    犏岡圚䜏䞭囜滞圚歎10幎䞭囜党省・自治区・盎蜄垂・特別行政区を螏砎。 『犏岡人、䞭囜をゆく』運営。 䞭囜、犏岡、東アゞアの街を歩きながら、歎史・挢詩・文化・食・人々の営みを綎っおいたす。 䞭囜ず犏岡、その぀ながりの䞭にある物語を探しおいたす。

    あなたぞのおすすめ