ベトナム写真紀行|15. 編集後記
二〇二四年八月一日から八月二十二日まで、僕はベトナム旅行をしていた。
ベトナムのホーチミンへ行くのは二度めで、古いパスポートを開くと前回の入国スタンプは二〇一四年の印が捺されていたのでぴったり十年前のことだった。当時はまだ大学生だったことを思うと、僕もずいぶん年を取ってしまったと思った。
二〇二四年は世界的な流行り病もちょうど落ち着いてきた時期で、正月が明けたころに「今年は久々に海外へ行ってみようかな」と考えていた。
それに思い返すと僕は海外に一人で行くことの方が少なかった。ハタチのころにイギリスに短期留学をしたことがあるのだが、そのときフランスやスペインに週末を使って旅行をしていたり、留学を終えるとイギリス国内を一週間かけて旅したことがあるだけだった。あとの海外旅行は友人と二人でアジアを回っていたり親孝行として母と二人で行ったパリ旅行だけだった。
一人きりで海外に行くのは十年以上前のことだったので、飛行機のチケットを取ってしまうと本当に一人で楽しめるのか不安だった。でもそれ以上に大人になった自分がどこまで楽しめるのか胸に期待を膨らませていた。
なぜ久々の海外旅行をベトナムにしたのか、それにも理由があった。
沢木耕太郎氏の『一号線を北上せよ』で沢木さんがホーチミンからハノイまで長距離バスを使ってベトナムを北上していく話を読んでいると「僕もこれがしたい」と思ったのだ。
ここまで僕のベトナム紀行を読んでくれた人たちは僕の旅がどれだけ思い通りにいかなかったかを知っているはずだが、出発前の僕はこの本をガイドブックのように読み込んで、オープンバスチケットが買える場所を予習しベトナム中部のビーチの名前を覚えて沢木さんとほとんど同じ旅程で旅をしようと計画していたのだった。
結果的に予定通りに旅行は進まず、旅の最中も大事に抱えていた『一号線を北上せよ』は途中から開くこともしなくなっていた。
でもそれで良かったのだ。沢木さんのようにクールな旅に憧れもするが、これは僕の旅なのだ。誰の真似でもなく、僕だけの旅にすることができて本当に良かったと思っている。
最後に、ここまでお付き合いしてくれた皆様、本当にありがとうございました。
一般的に中編と呼ばれる長さの文章量になったと思いますが、この長さの物語を書くのは初めての試みでした。拙い文章で状況がわかりにくい箇所も多々あったと思いますが、最後までお付き合いいただき心から感謝しております。
そして「編集後記」から読み始めた皆様へ。
この紀行文を読んでも、ベトナムの観光情報やグルメ情報などといった旅に役立つ話はあまりありません。あくまで僕個人の体験談になりますので、そのことはあらかじめご了承ください。でもきっと面白いお話だと思うので、やっぱりよかったら読んでください。
本紀行文は「創作大賞2026」の「#オールカテゴリ部門」の応募にあわせて書き上げました。
受賞できるとは微塵も考えておりませんが、選考期間を終えた後に『ベトナム写真紀行』は『羊男』のアカウントと関係のないところでいずれ何らかの形で発表するつもりでいます。もし万が一、もし億が一、あなたの目に触れた際には温かい目で見守っていただけますと幸いです。

『ベトナム写真紀行』
目次
|1. 出発前
|2. ホーチミン到着
|3. ホーチミンの夜
|4. メコン川クルーズ(前編)
|5. メコン川クルーズ(後編)
|6. カジノ一家(前編)
|7. カジノ一家(後編)
|8. 不調
|9. タム・ビエット
|10. ハノイ到着
|11. 再会
|12. ホーおじさん
|13. トゥーソンの町と小林くんの思い出
|14. 旅の終わり
|15. 編集後記
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