家庭教師の竹村が部屋に入ると、森田君は熱心に計算をしている。
「さて森田君、どこまでできたかな」
「n 次置換は必ず互換の積で表せることから、5次置換をすべて互換の積で表し、偶置換と奇置換に分類してみました。そして前回、巡回置換のところで先生に教えてもらった
『偶置換は必ず3次巡回置換、または3次巡回置換の積で表すことができる』
ことを、すべての偶置換について確認してみました」
「えっ、すべて表してみたの?」
「はい。差積の添加によって対称性を保つ置換を5次置換から偶置換にまで絞り込むことに成功しましたが(本シリーズ (14))、その偶置換は、すべて3次巡回置換、または3次巡回置換の積で表すことができます」
~すべての偶置換は3次巡回置換、またはその積で表すことができる~
(例)
(x2 x1 x4 x3 x5x1 x2 x3 x4 x5)=偶置換(x1 x2)(x3 x4)=3次巡回置換の積(x1 x2 x4)(x1 x3 x4) (注1)
これはアーベルの証明を知る上で重要なテーマの1つ。「どこまで自力で考えたのだろうか?」と竹村は興味を抱いたが、ひとます森田君の研究成果をみようと竹村は机に座り、森田君はホワイトボードの前に立った。
ゼミのような竹村の家庭教師が始まった。
1. 5次置換についての復習
「先生、始めてよろしいでしょうか。ひとつひとつ確認しながら進めていきます。まずは5次置換をすべて互換の積で表し、偶置換と奇置換に分類していきます」
まだ小学5年生の森田君。自分の理解を確認するように、何度も整理しながら進めていくのが森田君のスタイル。初心者向けの授業のようにかゆいところを押さえていくので、竹村はほとんど話すことはない。
「5次方程式
x5+a1x4+a2x3+a3x2+a4x+a5=0
の5つの解を
x1, x2, x3, x4, x5
とします。あらかじめ x5 の係数を 1 にして、式を簡略化しています(⇒ 詳しくは本シリーズ (14))。
ここで5つの文字の置き換えである5次置換を考えます。例えば、先ほどの5次方程式の解
x1, x2, x3, x4, x5
を x2, x1, x4, x5, x3 に置き換える置換、つまり
x1⟶x2
x2⟶x1
x3⟶x4
x4⟶x5
x5⟶x1
と文字を置き換える置換を
(x2 x1 x4 x5 x3x1 x2 x3 x4 x5)
と表記することはすでにやりました。上から下へと文字が置換されると考えます(⇒ 詳しくは本シリーズ (14))。
なおこの置換は x1 と x2 の入れ替えである互換
x1↔x2
と、x3, x4, x5 が輪環するように入れ替わる巡回置換
x3→ x4→x5→x3→⋯
の2つの置換で構成されています。
(互換x2 x1 巡回置換x4 x5 x3x1 x2 x3 x4 x5)
x1 と x2 の入れ替えは互換表示
(x1 x2)
x3, x4, x5 の巡回置換は
(x3 x4 x5)
と表記できるので、先の5次置換は
(x2 x1 x4 x5 x3x1 x2 x3 x4 x5)=(x1 x2)(x3 x4 x5)
と表すことができます。なお本シリーズでは互換は左(前)から作用させると定義したので
(x1 x2)(x3 x4 x5)
は先に (x1 x2) を作用させてから、次に (x3 x4 x5) を作用させます(注2)。
なお、(x1 x2) と (x3 x4 x5) には共通の文字が含まれておらず互いに独立しているので、どちらを先に作用させても同じ置換となります。
確認のため、5つの文字列 x1, x2, x3, x4, x5 に作用させてみますと、(x1 x2)(x3 x4 x5) は
x1 x2 x2 x1 x2 x1 x3 x4 x5⇓ (x1 x2) を作用x3 x4 x5⇓ (x3 x4 x5) を作用x4 x5 x3 ⋯ (∗1)
一方、(x3 x4 x5)(x1 x2) は
x1 x2 x1 x2 x2 x1 x3 x4 x5⇓ (x3 x4 x5) を作用x4 x5 x3⇓ (x1 x2) を作用x4 x5 x3 ⋯ (∗2)
より、(∗1) と (∗2) は同じ結果となり
(x2 x1 x4 x5 x3x1 x2 x3 x4 x5)=(x1 x2)(x3 x4 x5)=(x3 x4 x5)(x1 x2)
となります。なお一般には、置換の順番が変わると結果は異なります。このことを含め、置換についての注意をいくつかあげておきます。なお、互換は2文字の巡回置換とみることもできます。
2. 置換についての注意
注意1 置換の順番を変えると、一般には同じ結果とならない。
例えば
(x1 x2)(x2 x4 x5)
と順番を入れ替えた
(x2 x4 x5)(x1 x2)
を、5つの文字列 x1, x2, x3, x4, x5 に作用させて調べてみましょう。x2 が共通の文字になっています。
まず (x1 x2)(x2 x4 x5) は
x1 x2 x2 x1 x4 x1 x3 x4 x5⇓ (x1 x2) を作用x3 x4 x5⇓ (x2 x4 x5) を作用x3 x5 x2 ⋯ (∗3)
一方、(x2 x4 x5)(x1 x2) は
x1 x2 x1 x4 x2 x4 x3 x4 x5⇓ (x2 x4 x5) を作用x3 x5 x2⇓ (x1 x2) を作用x3 x5 x1 ⋯ (∗4)
となり、(∗3) と (∗4) は異なる結果となります。
(x1 x2)(x2 x4 x5)=(x2 x4 x5)(x1 x2)
なお巡回置換は互いに独立であれば、つまり同じ文字が含まれていなければ、順番を変えて作用させても同じ結果となります。先ほどの (∗1) と (∗2) がその例です。
(x1 x2)(x3 x4 x5)=(x3 x4 x5)(x1 x2)
注意2 互換は順番を入れ替えでも同じ互換となる。
互換 (x1 x2) は x1 と x2 の入れ替えですが、文字の順番を入れ替えた (x2 x1) も x1 と x2 の入れ替えなので、どちらも同じ互換となります。
(x1 x2)=(x2 x1)
ただし本シリーズでは混乱を避けるため、添え字の数の小さい順に (x1 x2) と表記していきます。
このことは3次巡回置換についてもいえて
(x1 x2 x3) と (x2 x3 x1) と (x3 x1 x2)
はどれも
x1→x2→x3→x1→⋯
と巡回する置換なので、同じものとなります。
(x1 x2 x3)=(x2 x3 x1)=(x3 x1 x2)
なおこの場合も混乱を避けるため、添え字の数の小さい順に (x1 x2 x3) と表記していきます。
注意3 すべての巡回置換は互換、または互換の積で表すことができる。
2次巡回置換、3次巡回置換、⋯、と順にみていきます。
注意3-1 2次巡回置換は互換そのものである。
(例) (x1 x2)
互換は2変数の巡回置換とみることができます。
注意3-2 3次巡回置換を互換の積で表す方法。
3次巡回置換は、次のように互換の積で表せます。
(例)
(x1 x2 x3)=(x1 x2)(x1 x3)
先頭にある x1 を共通の文字にして、左から x2 との互換 (x1 x2)、x3 との互換 (x1 x3) と順に並べていきます。 実際等しくなることを確認します。この互換の積 (x1 x2)(x1 x3) を5つの文字列 x1, x2, x3, x4, x5 に作用させると
x1 x2 x2 x1 x2 x3 x3 x4 x5⇓ (x1 x2) を作用x3 x4 x5⇓ (x1 x3) を作用x1 x4 x5
つまり
x1⟶x2
x2⟶x3
x3⟶x1(x1 に戻る)
x4⟶x4(変化しない)
x5⟶x5(変化しない)
より
x1→x2→x3→x1→⋯
と巡回しているので、確かに
(x1 x2 x3)=(x1 x2)(x1 x3)
となります。なお x4 と x5 は変化していません。また、互換を順に作用させるにつれて、 x1(下線部)が1つずつ右に移動していくのが見て取れます。
x1 x2 x2 x1 x2 x3 x1がx3 x4 x5⇓ (x1 x2) を作用x3 x4 x5⇓ (x1 x3) を作用x1 x4 x5↑右に移動
注意3-3 4次巡回置換を互換の積で表す方法。
4次巡回置換は、次のように互換の積で表せます。
(例)
(x1 x2 x3 x4)=(x1 x2)(x1 x3)(x1 x4)
これも先頭にある x1 を共通の文字にして、左から x2 との互換 (x1 x2)、x3 との互換 (x1 x3)、x4 との互換 (x1 x4) と順に並べていきます。 実際等しくなることを確認します。この互換の積 (x1 x2)(x1 x3)(x1 x4) を5つの文字列 x1, x2, x3, x4, x5 に作用させると
x1 x2 x2 x1 x2 x3 x2 x3 x3 x4 x5⇓ (x1 x2) を作用x3 x4 x5⇓ (x1 x3) を作用x1 x4 x5⇓ (x1 x4) を作用x4 x1 x5
つまり
x1⟶x2
x2⟶x3
x3⟶x4
x4⟶x1(x1 に戻る)
x5⟶x5(変化しない)
より
x1→x2→x3→x4→x1→⋯
と巡回しているので、確かに
(x1 x2 x3 x4)=(x1 x2)(x1 x3)(x1 x4)
となります。なお x5 は変化していません。また、ここでも互換を順に作用させるにつれて、 x1(下線部)が1つずつ右に移動していくのが見て取れます。
x1 x2 x2 x1 x2 x3 x2 x3 x3 x4 x5⇓ (x1 x2) を作用x3 x4 x5⇓ (x1 x3) を作用x1 x4 x5⇓ (x1 x4) を作用x4 x1 x5↑x1が右に移動
注意3-4 5次巡回置換を互換の積で表す方法。
5次巡回置換は、次のように互換の積で表せます。
(例)
(x1 x2 x3 x4 x5)=(x1 x2)(x1 x3)(x1 x4)(x1 x5)
これも x1 を共通の文字にして、左から x2 との互換 (x1 x2)、x3 との互換 (x1 x3)、x4 との互換 (x1 x4)、x5 との互換 (x1 x5) と順に並べていきます。 実際等しくなることを確認します。 この互換の積 (x1 x2)(x1 x3)(x1 x4)(x1 x5) を5つの文字列 x1, x2, x3, x4, x5 に作用させると
x1 x2 x2 x1 x2 x3 x2 x3 x2 x3 x3 x4 x5⇓ (x1 x2) を作用x3 x4 x5⇓ (x1 x3) を作用x1 x4 x5⇓ (x1 x4) を作用x4 x1 x5⇓ (x1 x5) を作用x4 x5 x1
つまり
x1⟶x2
x2⟶x3
x3⟶x4
x4⟶x5
x5⟶x1(x1 に戻る)
より
x1→x2→x3→x4→x5→x1→⋯
と巡回しているので、確かに
(x1 x2 x3 x4 x5)=(x1 x2)(x1 x3)(x1 x4)(x1 x5)
となります。ここでも互換を順に作用させるにつれて、 x1 が1つずつ右に移動していくのが見て取れます。
x1 x2 x2 x1 x2 x3 x2 x3 x2 x3 x3 x4 x5⇓ (x1 x2) を作用x3 x4 x5⇓ (x1 x3) を作用x1 x4 x5⇓ (x1 x4) を作用x4 x1 x5⇓ (x1 x5) を作用x4 x5 x1↑x1が右に移動
なお一般に n 次巡回置換について
=(x1 x2 x3 ⋯ xn−1 xn)(x1 x2)(x1 x3) ⋯ (x1 xn−1)(x1 xn)
と公式として定式化できます。ただし n は n≧2 の自然数です。実際等しくなることを確認します。これを n 個の文字列 x1, x2, x3, ⋯, xn に作用させると、左から順に互換を作用させて
x1 x2 x3 x2 x1 x3 x2 x3 x1 x2 x3 x4 x2 x3 x4 ⋯ xn−2 xn−1 xn⇓ (x1 x2) を作用⋯ xn−2 xn−1 xn⇓ (x1 x3) を作用⋯ xn−2 xn−1 xn⋮⇓ (x1 xn−1) を作用⋯ xn−1 x1 xn⇓ (x1 xn) を作用⋯ xn−1 xn x1
つまり
x1⟶x2
x2⟶x3
x3⟶x4
⋮
xn−1⟶xn
xn⟶x1(x1 に戻る)
より
x1→x2→x3→⋯→xn−1→ xn→x1→⋯
と巡回しているので、確かに
=(x1 x2 x3 ⋯ xn−1 xn)(x1 x2)(x1 x3) ⋯ (x1 xn−1)(x1 xn)
となります。ここでも互換を順に作用させるにつれて、 x1 が1つずつ右に移動していくのが見て取れます。
x1 x2 x3 x2 x1 x3 x2 x3 x1 x2 x3 x4 x2 x3 x4 ⋯ xn−2 xn−1 xn⇓ (x1 x2) を作用⋯ xn−2 xn−1 xn⇓ (x1 x3) を作用⋯ xn−2 xn−1 xn⋮⇓ (x1 xn−1) を作用⋯ xn−1 x1 xn⇓ (x1 xn) を作用⋯ xn−1 xn x1↑x1が右に移動
この式について n=2 のときは
(x1 x2)=(x1 x2)
という自明な式になりますが、n=3 のとき
(x1 x2 x3)=(x1 x2)(x1 x3)
n=4 のとき
(x1 x2 x3 x4)=(x1 x2)(x1 x3)(x1 x4)
n=5 のとき
(x1 x2 x3 x4 x5)=(x1 x2)(x1 x3)(x1 x4)(x1 x5)
⋮
と具体的な互換表示が次々と現れます。先頭にある x1(下線部)を共通文字とし、それと残りの文字の互換を順にかけていきます。当然この公式は先頭が x1 以外のときや、添え字の数字が小さい順に並んでいない場合でも成り立ち、同じ構成法で
(x2 x3 x4)=(x2 x3)(x2 x4)
(x2 x4 x3 x5 x1)=(x2 x4)(x2 x3)(x2 x5)(x2 x1)
と互換の積で表すことができます。今後、必要に応じてこの公式を使っていきます。
注意4 すべての置換は互換、または互換の積で表すことができる。
まずはある置換を互換や巡回置換の積に分解し、次にその巡回置換を注意3で述べた公式で互換の積に分解すれば、最終的には互換の積だけで表すことができます。例えば、冒頭で述べた5次置換の例でいうと
(x2 x1 x4 x5 x3x1 x2 x3 x4 x5)=(x1 x2)(x3 x4 x5)=(x1 x2)(x3 x4)(x3 x5)
このように、一度互換 (x1 x2) と巡回置換 (x3 x4 x5) の積に分解し、次に巡回置換 (x3 x4 x5) を(x3 x4)(x3 x5) と互換表示すれば、最終的に互換の積だけで表すことができます。
注意5 置換の互換の積の表し方について、その方法は1通りとは限らず、複数通り有る場合がある。
例えば次のような置換
(x2 x3 x1 x4 x5x1 x2 x3 x4 x5)=(x1 x2 x3)
を考えます。これは巡回置換です。この置換は
(x1 x2)(x1 x3)
または
(x1 x3)(x2 x3)
などと、複数通りの互換の積で表すことができます。確認のため、これらを x1, x2, x3, x4, x5 に作用させて確認してみます。
(x1 x2)(x1 x3) を作用させると
x1 x2 x2 x1 x2 x3 x3 x4 x5⇓ (x1 x2) を作用x3 x4 x5⇓ (x1 x3) を作用x1 x4 x5 ⋯ (∗5)
(x1 x3)(x2 x3) を作用させると
x1 x2 x3 x2 x2 x3 x3 x4 x5⇓ (x1 x3) を作用x1 x4 x5⇓ (x2 x3) を作用x1 x4 x5 ⋯ (∗6)
より 、(∗5) と (∗6) は同じ結果となり
(x1 x2 x3)=(x1 x2)(x1 x3)=(x1 x3)(x2 x3)
となります。なお、1つの置換について複数通りの互換表示があるとはいえ、その表し方は偶数個の互換の積になるか、奇数個の互換の積になるかは、あらかじめ決まっていることを注意しておきます。すでにやりましたが、偶数個の互換の積で表せる置換は偶置換、奇数個の互換の積で表せる置換は奇置換となります(⇒ 詳しくは本シリーズ (8))。
それではいよいよ、5次置換をすべて互換の積で表していきます。
3. 5次置換をすべて互換の積で表す
5次置換は全部で
(x1〇x2△x3□x4 ♢x5 ♡)↑↑↑↑↑5×4×3×2×1=120 通り
より 120 通りあることはすでにやりました(⇒ 詳しくは本シリーズ (14))。この 120 通りあるすべての5次置換を互換のみで表示することを考えます。それによって5次置換が偶置換と奇置換に分類されることが明確にわかり、そのうちの偶置換が「3次巡回置換の積で表せる」ことの説明が簡単になります。
では、動かない文字の個数について場合分けをしていきます。
(case1) 動かない文字が5つの場合
これは何も変化しない置換、つまり恒等置換
(x1 x2 x3 x4 x5x1 x2 x3 x4 x5)=I
の 1 通りとなります。恒等置換は
I=(x1 x2)(x1 x2)
と、同じ互換の積で表すことができます。ある2つの文字を入れ換えた後、もう一度同じ入れ替えをすれば元に戻ります。恒等置換は偶数個の互換の積で表せるので偶置換となります。
さて、動かない文字が4つの場合は有り得ません。動かない文字が4つということは、1つの文字だけが動くということですが、それは有り得ないからです。動くとしたら2文字以上なので、次の場合分けは、動かない文字が3つの場合となります。
(case2) 動かない文字が3つの場合
この場合は、1つの互換で表せる場合となります。
(例)
(x2 x1 x3 x4 x5x1 x2 x3 x4 x5)=(x1 x2)
(x1 x2 x5 x4 x3x1 x2 x3 x4 x5)=(x3 x5)
下線部が互換となっています。上の例は x1↔x2 の互換で、動かない文字は x3, x4, x5 の3文字、下の例は x3↔x5 の互換で、動かない文字は x1, x2, x4 の3文字となります。
この場合は、次のように①から⑩の 10 通りの互換があります。
(x1 〇) 型① (x1 x2)② (x1 x3)③ (x1 x4)④ (x1 x5)(x2 〇) 型⑤ (x2 x3)⑥ (x2 x4)⑦ (x2 x5)(x3 〇) 型⑧ (x3 x4)⑨ (x3 x5)(x4 〇) 型⑩ (x4 x5)
x1, x2, x3, x4, x5 から2つの文字を選んで得られる互換を、添え字の数字について辞書式に並べます。
なお、置換についての注意2で述べたように、同じ文字の順番違いである (x1 x2) と (x2 x1) は同じ互換となるので、添え字の数字の小さい順に並べた (x1 x2) のみカウントしていきます。
(case3) 動かない文字が2つの場合
この場合は、3次巡回置換で表せる場合となります。
(例)
(x2 x3 x1 x4 x5x1 x2 x3 x4 x5)=(x1 x2 x3)
(x1 x3 x5 x4 x5x1 x2 x3 x4 x5)=(x2 x3 x5)
下線部が巡回置換となっています。上の例は
x1→x2→x3→x1→⋯
と巡回し、動かない文字は x4, x5 の2文字となります。下の例は
x2→x3→x5→x2→⋯
と巡回し、動かない文字は x1, x4 の2文字となります。
この場合は、次のように①から⑳の 20 通りの置換があります。なお、3次巡回置換は2つの互換の積で表せることは注意3-2ですでにやったので、そちらの方も示しておきます。
(x1 〇 〇) 型① (x1 x2 x3)=(x1 x2)(x1 x3)② (x1 x2 x4)=(x1 x2)(x1 x4)③ (x1 x2 x5)=(x1 x2)(x1 x5)④ (x1 x3 x2)=(x1 x3)(x1 x2)⑤ (x1 x3 x4)=(x1 x3)(x1 x4)⑥ (x1 x3 x5)=(x1 x3)(x1 x5)⑦ (x1 x4 x2)=(x1 x4)(x1 x2)⑧ (x1 x4 x3)=(x1 x4)(x1 x3)⑨ (x1 x4 x5)=(x1 x4)(x1 x5)⑩ (x1 x5 x2)=(x1 x5)(x1 x2)⑪ (x1 x5 x3)=(x1 x5)(x1 x3)⑫ (x1 x5 x4)=(x1 x5)(x1 x4)(x2 〇 〇) 型⑬ (x2 x3 x4)=(x2 x3)(x2 x4)⑭ (x2 x3 x5)=(x2 x3)(x2 x5)⑮ (x2 x4 x3)=(x2 x4)(x2 x3)⑯ (x2 x4 x5)=(x2 x4)(x2 x5)⑰ (x2 x5 x3)=(x2 x5)(x2 x3)⑱ (x2 x5 x4)=(x2 x5)(x2 x4)(x3 〇 〇) 型⑲ (x3 x4 x5)=(x3 x4)(x3 x5)⑳ (x3 x5 x4)=(x3 x5)(x3 x4)
最初の1文字を固定して、2文字目、3文字目はそれよりも添え字の数字の大きい文字を辞書式に並べる、という方法で並べていきます。なお、このケースは2つの互換に共通の文字が含まれる場合とみることもできます。いずれも独立ではない互換の積です。
また、注意2で述べたように、同じ文字の順番違いである (x1 x2 x3) と (x2 x3 x1) と (x3 x1 x2) はすべて同じ巡回置換となるので、添え字の数字の小さい順に並べた (x1 x2 x3) のみカウントしていきす。
さらに、 x1 はそのままで x2 と x3 を入れ替えた (x1 x2 x3) と (x1 x3 x2) は別の巡回置換になることも確認しておきます。
(case4) 動かない文字が1つの場合
これはさらに2つのケースに分けられます。
(case4-1) 共通の文字のない2つの互換の積
(case4-2) 4次巡回置換
(case4-1) 共通の文字のない2つの互換の積
共通の文字のない2つの互換の積は、例えば次のような置換です。
(例)
(x2 x1 x4 x3 x5x1 x2 x3 x4 x5)=(x1 x2)(x3 x4)
(x5 x3 x4 x4 x1x1 x2 x3 x4 x5)=(x1 x5)(x2 x3)
一重線同士、二重線同士が互換となっています。上の例は
x1↔x2 と x3↔x4
の互換の積で、動かない文字は x5 の1文字となります。下の例は
x1↔x5 と x2↔x3
の互換の積で、動かない文字は x4 の1文字となります。
この場合は、次のように①から⑮の 15 通りの置換があります。
(x1 x2)(〇 △) 型① (x1 x2)(x3 x4)② (x1 x2)(x3 x5)③ (x1 x2)(x4 x5)(x1 x3)(〇 △) 型④ (x1 x3)(x2 x4)⑤ (x1 x3)(x2 x5)⑥ (x1 x3)(x4 x5)(x1 x4)(〇 △) 型⑦ (x1 x4)(x2 x3)⑧ (x1 x4)(x2 x5)⑨ (x1 x4)(x3 x5)(x1 x5)(〇 △) 型⑩ (x1 x5)(x2 x3)⑪ (x1 x5)(x2 x4)⑫ (x1 x5)(x3 x4)(x2 x3)(〇 △) 型⑬ (x2 x3)(x4 x5)(x2 x4)(〇 △) 型⑭ (x2 x4)(x3 x5)(x2 x5)(〇 △) 型⑮ (x2 x5)(x3 x4)
最初の互換の文字を固定し、残りの文字で、次の互換を添え字の数字について辞書式に並べます。なお、2つの互換に共通の文字が含まれておらず互いに独立している場合は、どちらを先に作用させても同じ置換となることは冒頭や注意1でやりました。つまり
(x1 x2)(x3 x4)=(x3 x4)(x1 x2)
となるので、添え字の数字の小さい順に並べた (x1 x2)(x3 x4) のみカウントしていきます。
(case4-2) 4次巡回置換
4次巡回置換は、例えば次のような置換です。
(例)
(x2 x3 x4 x1 x5x1 x2 x3 x4 x5)=(x1 x2 x3 x4)
(x3 x5 x2 x4 x1x1 x2 x3 x4 x5)=(x1 x3 x2 x5)
下線部が巡回置換となっています。上の例は
x1→x2→x3→x4→x1→⋯
と巡回し、動かない文字は x5 の1文字となります。下の例は
x1→x3→x2→x5→x1→⋯
と巡回し、動かない文字は x4 の1文字となります。
この場合は、次のように①から㉚の 30 通りの置換があります。4次巡回置換は3つの互換の積で表せることは注意3-3ですでにやったので、そちらの方も示しておきます。
x1, x2, x3, x4を用いる場合(x5を使わない場合)① (x1 x2 x3 x4)=(x1 x2)(x1 x3)(x1 x4)② (x1 x2 x4 x3)=(x1 x2)(x1 x4)(x1 x3)③ (x1 x3 x2 x4)=(x1 x3)(x1 x2)(x1 x4)④ (x1 x3 x4 x2)=(x1 x3)(x1 x4)(x1 x2)⑤ (x1 x4 x2 x3)=(x1 x4)(x1 x2)(x1 x3)⑥ (x1 x4 x3 x2)=(x1 x4)(x1 x3)(x1 x2)x1, x2, x3, x5を用いる場合(x4を使わない場合)⑦ (x1 x2 x3 x5)=(x1 x2)(x1 x3)(x1 x5)⑧ (x1 x2 x5 x3)=(x1 x2)(x1 x5)(x1 x3)⑨ (x1 x3 x2 x5)=(x1 x3)(x1 x2)(x1 x5)⑩ (x1 x3 x5 x2)=(x1 x3)(x1 x5)(x1 x2)⑪ (x1 x5 x2 x3)=(x1 x5)(x1 x2)(x1 x3)⑫ (x1 x5 x3 x2)=(x1 x5)(x1 x3)(x1 x2)x1, x2, x4, x5を用いる場合(x3を使わない場合)⑬ (x1 x2 x4 x5)=(x1 x2)(x1 x4)(x1 x5)⑭ (x1 x2 x5 x4)=(x1 x2)(x1 x5)(x1 x4)⑮ (x1 x4 x2 x5)=(x1 x4)(x1 x2)(x1 x5)⑯ (x1 x4 x5 x2)=(x1 x4)(x1 x5)(x1 x2)⑰ (x1 x5 x2 x4)=(x1 x5)(x1 x2)(x1 x4)⑱ (x1 x5 x4 x2)=(x1 x5)(x1 x4)(x1 x2)x1, x3, x4, x5を用いる場合(x2を使わない場合)⑲ (x1 x3 x4 x5)=(x1 x3)(x1 x4)(x1 x5)⑳ (x1 x3 x5 x4)=(x1 x3)(x1 x5)(x1 x4)㉑ (x1 x4 x3 x5)=(x1 x4)(x1 x3)(x1 x5)㉒ (x1 x4 x5 x3)=(x1 x4)(x1 x5)(x1 x3)㉓ (x1 x5 x3 x4)=(x1 x5)(x1 x3)(x1 x4)㉔ (x1 x5 x4 x3)=(x1 x5)(x1 x4)(x1 x3)x2, x3, x4, x5を用いる場合(x1を使わない場合)⑲ (x2 x3 x4 x5)=(x2 x3)(x2 x4)(x2 x5)⑳ (x2 x3 x5 x4)=(x2 x3)(x2 x5)(x2 x4)㉑ (x2 x4 x3 x5)=(x2 x4)(x2 x3)(x1 x5)㉒ (x2 x4 x5 x3)=(x2 x4)(x2 x5)(x1 x3)㉓ (x2 x5 x3 x4)=(x2 x5)(x2 x3)(x2 x4)㉔ (x2 x5 x4 x3)=(x2 x5)(x2 x4)(x2 x3)
数え方として、どの4つの文字を使うかによって場合分けをします。4つの文字が決まれば、あとは添え字の文字について辞書式に並べていきます。
(case5) 動かない文字が0の場合
これはさらに2つのケースに分けられます。
(case5-1) 互いに共通の文字のない、1つの互換と3次巡回置換との積
(case5-2) 5次巡回置換
(case5-1) 互いに共通の文字のない、1つの互換と3次巡回置換との積
互いに共通の文字のない、1つの互換と3次巡回置換との積は、例えば次のような置換です。
(例)
(x2 x1 x4 x5 x3x1 x2 x3 x4 x5)=(互換x1 x2)(3次巡回置換x3 x4 x5)
(x4 x5 x1 x3 x2x1 x2 x3 x4 x5)=(互換x2 x5)(3次巡回置換x1 x4 x3)
一重線部が互換、二重線部が3次巡回置換となっています。上の例は
x1↔x2
の互換と
x3→x4→x5→x3→⋯
の3次巡回置換との積で、動かない文字はありません。下の例は
x2↔x5
の互換と
x1→x4→x3→x1→⋯
の3次巡回置換との積で、こちらも動かない文字はありません。
この場合は、次のように①から⑳の 20 通りの置換があります。3次巡回置換は2つの互換の積で表せることは注意3-2ですでにやったので、そちらの方も示しておきます。
(x1 〇) 型① (x1 x2)(x3 x4 x5)=(x1 x2)(x3 x4)(x3 x5)② (x1 x2)(x3 x5 x4)=(x1 x2)(x3 x5)(x3 x4)③ (x1 x3)(x2 x4 x5)=(x1 x3)(x2 x4)(x2 x5)④ (x1 x3)(x2 x5 x4)=(x1 x3)(x2 x5)(x2 x4)⑤ (x1 x4)(x2 x3 x5)=(x1 x4)(x2 x3)(x2 x5)⑥ (x1 x4)(x2 x5 x3)=(x1 x4)(x2 x5)(x2 x3)⑦ (x1 x5)(x2 x3 x4)=(x1 x4)(x2 x3)(x2 x4)⑧ (x1 x5)(x2 x4 x3)=(x1 x5)(x2 x4)(x2 x3)(x2 〇) 型⑨ (x2 x3)(x1 x4 x5)=(x2 x3)(x1 x4)(x1 x5)⑩ (x2 x3)(x1 x5 x4)=(x2 x3)(x1 x5)(x1 x4)⑪ (x2 x4)(x1 x3 x5)=(x2 x4)(x1 x3)(x1 x5)⑫ (x2 x4)(x1 x5 x3)=(x2 x4)(x1 x5)(x1 x3)⑬ (x2 x5)(x1 x3 x4)=(x2 x5)(x1 x3)(x1 x4)⑭ (x2 x5)(x1 x4 x3)=(x2 x5)(x1 x4)(x1 x3)(x3 〇) 型⑮ (x3 x4)(x1 x2 x5)=(x3 x4)(x1 x2)(x1 x5)⑯ (x3 x4)(x1 x5 x2)=(x3 x4)(x1 x5)(x1 x2)⑰ (x3 x5)(x1 x2 x4)=(x3 x5)(x1 x2)(x1 x4)⑱ (x3 x5)(x1 x4 x2)=(x3 x5)(x1 x4)(x1 x2)(x4 〇) 型⑲ (x4 x5)(x1 x2 x3)=(x4 x5)(x1 x2)(x1 x3)⑳ (x4 x5)(x1 x3 x2)=(x4 x5)(x1 x3)(x1 x2)
先に互換の2文字を固定し、残りの文字で、3次巡回置換を添え字の数字について辞書式に並べていきます。
(case5-2) 5次巡回置換
5次巡回置換は、例えば次のような置換です。
(例)
(x2 x3 x4 x5 x1x1 x2 x3 x4 x5)=(x1 x2 x3 x4 x5)
(x3 x5 x2 x1 x4x1 x2 x3 x4 x5)=(x1 x3 x2 x5 x4)
下線部全体が5次巡回置換となっています。上の例は
x1→x2→x3→x4→x5→x1→⋯
と巡回しながら置き換わり、下の例は
x1→x3→x2→x5→x4→x1→⋯
と巡回しながら置き換わります。
この場合は、次のように①から㉔の 24 通りの置換があります。5次巡回置換は4つの互換の積で表せることは注意3-4ですでにやったので、そちらの方も示しておきます。
(x1 x2 〇 △ □) 型① (x1 x2 x3 x4 x5)=(x1 x2)(x1 x3)(x1 x4)(x1 x5)② (x1 x2 x3 x5 x4)=(x1 x2)(x1 x3)(x1 x5)(x1 x4)③ (x1 x2 x4 x3 x5)=(x1 x2)(x1 x4)(x1 x3)(x1 x5)④ (x1 x2 x4 x5 x3)=(x1 x2)(x1 x4)(x1 x5)(x1 x3)⑤ (x1 x2 x5 x3 x4)=(x1 x2)(x1 x5)(x1 x3)(x1 x4)⑥ (x1 x2 x5 x4 x3)=(x1 x2)(x1 x5)(x1 x4)(x1 x3)(x1 x3 〇 △ □) 型⑦ (x1 x3 x2 x4 x5)=(x1 x3)(x1 x2)(x1 x4)(x1 x5)⑧ (x1 x3 x2 x5 x4)=(x1 x3)(x1 x2)(x1 x5)(x1 x4)⑨ (x1 x3 x4 x2 x5)=(x1 x3)(x1 x4)(x1 x2)(x1 x5)⑩ (x1 x3 x4 x5 x2)=(x1 x3)(x1 x4)(x1 x5)(x1 x2)⑪ (x1 x3 x5 x2 x4)=(x1 x3)(x1 x5)(x1 x2)(x1 x4)⑫ (x1 x3 x5 x4 x2)=(x1 x3)(x1 x5)(x1 x4)(x1 x2)(x1 x4 〇 △ □) 型⑬ (x1 x4 x2 x3 x5)=(x1 x4)(x1 x2)(x1 x3)(x1 x5)⑭ (x1 x4 x2 x5 x3)=(x1 x4)(x1 x2)(x1 x5)(x1 x3)⑮ (x1 x4 x3 x2 x5)=(x1 x4)(x1 x3)(x1 x2)(x1 x5)⑯ (x1 x4 x3 x5 x2)=(x1 x4)(x1 x3)(x1 x5)(x1 x2)⑰ (x1 x4 x5 x2 x3)=(x1 x4)(x1 x5)(x1 x2)(x1 x3)⑱ (x1 x4 x5 x3 x2)=(x1 x4)(x1 x5)(x1 x3)(x1 x2)(x1 x5 〇 △ □) 型⑲ (x1 x5 x2 x3 x4)=(x1 x5)(x1 x2)(x1 x3)(x1 x4)⑳ (x1 x5 x2 x4 x3)=(x1 x5)(x1 x2)(x1 x4)(x1 x3)㉑ (x1 x5 x3 x2 x4)=(x1 x5)(x1 x3)(x1 x2)(x1 x4)㉒ (x1 x5 x3 x4 x2)=(x1 x5)(x1 x3)(x1 x4)(x1 x2)㉓ (x1 x5 x4 x2 x3)=(x1 x5)(x1 x4)(x1 x2)(x1 x3)㉔ (x1 x5 x4 x3 x2)=(x1 x5)(x1 x4)(x1 x3)(x1 x2)
なお、次のような巡回する順番違い
(x1 x2 x3 x4 x5)
(x2 x3 x4 x5 x1)
(x3 x4 x5 x1 x2)
(x4 x5 x1 x2 x3)
(x5 x1 x2 x3 x4)
はすべて同じ置換
(x1 x2 x3 x4 x5)
となります。よって最初の文字 x1 を先頭に固定し、2列目からは x2, x3, x4, x5 を添え字の数字について辞書式に並べていきます。x1 以外の4つの文字の並べ方をカウントすればいいことになります。
(固定x1 この 4 文字の並べ替えx2 x3 x4 x5)
4. 5次置換を偶置換と奇置換に分類
以上をまとめると、次のようになります。それぞれ偶置換か奇置換かも明示していきます。偶数個の互換の積が偶置換、奇数個の互換の積が奇置換です。
(case1) 動かない文字が5つの場合 1 通り 偶置換
例 恒等置換 I=(x1 x2)(x1 x2)
(case2) 動かない文字が3つの場合 10 通り 奇置換
例 互換 (x1 x2)
(case3) 動かない文字が2つの場合 20 通り 偶置換
例 3次巡回置換 (x1 x2 x3)=(x1 x2)(x1 x3)
これは共通の文字が1つある2つの互換の積とみることもできる。
(case4) 動かない文字が1つの場合
(case4-1) 共通の文字のない2つの互換の積 15 通り 偶置換
例 (x1 x2)(x3 x4)
(case4-2) 4次巡回置換 30 通り 奇置換
例 (x1 x2 x3 x4)=(x1 x2)(x1 x3)(x1 x4)
(case5) 動かない文字が0の場合
(case5-1) 互いに共通の文字のない、1つの互換と3次巡回置換との積 20 通り 奇置換
例 (x1 x2)(x3 x4 x5)=(x1 x2)(x3 x4)(x3 x5)
(case5-2) 5次巡回置換 24 通り
例 (x1 x2 x3 x4 x5)=(x1 x2)(x1 x3)(x1 x4)(x1 x5) 偶置換
全部で何通りあるかを確認すると
(case1)+(case2)+(case3)+(case4-1)+(case4-2)+(case5-1)+(case5-2)
=1+10+20+15+30+20+24
=120 通り
となり、前にやった5つの異なる文字
x1 x2 x3 x4 x5
を1列に並べる並べ方の総数
(x1〇x2△x3□x4 ♢x5 ♡)↑↑↑↑↑5×4×3×2×1=120 通り
と同じになります。さらに、恒等置換は
I=(x1 x2)(x1 x2)
と同じ互換の2つの積で表せることに注意すると、偶数個の互換の積で表せる偶置換は
(case1)+(case3)+(case4-1)+(case5-2)
=1+20+15+24
=60 通り
奇数個の互換の積で表せる奇置換は
(case2)+(case4-2)+(case5-1)
=10+30+20
=60 通り
となり、偶置換と奇置換の数はちょうど半分ずつの 60 通りになります」
「なるほど」と竹村はうなずいた。120 通りある5次置換をすべて書き表して具体的に数え上げる、いう発想は自分には無かった。
「さて森田君、この続きは・・・」
竹村が口にすると
「のどが渇いたので少し休憩をいれてもいいですか?」
そういえば水分を1滴も飲まずここまで進めた今日のゼミ。
「先生今日はいいのがあるよ。お母さん、クリームソーダ!」
2人分のクリームソーダが机に並べられた。
「森田君どこまで準備したんだっけ?」
「先ほど述べた 60 通りの偶置換は、すべて3次巡回置換で表せるとこまでです。続いてそのことを説明します。ただ・・・」
「ただ?」
「矛盾までは導き出せていません・・・」
「そこが急所だね。5次方程式の解の公式が存在すると仮定して、どこかで矛盾を導き出し、存在しないことを証明する。やれるところまでやってみる?やっていくうちに何か気付くかもしれないよ」
「わかりました」
2人は今後のゼミの展開をイメージしながら、ゆっくりとクリームソーダをすすった。
(続く)
(注1)等しくなることの証明
(x1 x2)(x3 x4) と (x1 x2 x4)(x1 x3 x4) が等しくなることを確認してみます。
(x1 x2)(x3 x4) は
x1 x2 x2 x1 x2 x1 x3 x4 x5⇓ (x1 x2) を作用x3 x4 x5⇓ (x3 x4) を作用x4 x3 x5 ⋯ (∗7)
一方、(x1 x2 x4)(x1 x3 x4) は
x1 x2 x2 x4 x2 x1 x3 x4 x5⇓ (x1 x2 x4) を作用x3 x1 x5⇓ (x1 x3 x4) を作用x4 x3 x5 ⋯ (∗8)
となり (∗7) と (∗8) は等しく、どちらも同じ置換
(x2 x1 x4 x3 x5x1 x2 x3 x4 x5)=偶置換(x1 x2)(x3 x4)=3次巡回置換の積(x1 x2 x4)(x1 x3 x4)
となります。
(注2)作用の順番について
教科書や解説書では「後ろから作用させる」のが正しいようです。本シリーズでは分かりやすさを重視して前から作用させると定義しました。
(参考)各章の内容
(1)「2次方程式の解の公式」を式変形で導出
・平方完成
(2)「3次方程式の解の公式」を導出するための準備
・1 の3乗根 ω
(3)「3次方程式の解の公式」を式変形で導出
・チルンハウス変換
(4)「解と係数の関係」と「対称式」の解説
(5)「対称式」を用いた「2次方程式の解の公式」の導出
(6)「解の置換」と「ラグランジュ・リゾルベント」の解説
(7)「ラグランジュ・リゾルベント」による「3次方程式の解の公式」の導出
(8)「偶置換」と「奇置換」の解説(ここから「アーベルの証明」の準備)
(9)「差積の2乗」が対称式となることを解説
(10)「平方根」「3乗根」と次々と累乗根を加えていくアイデア
(11)「アーベルの証明」のアイデアを用いて、なぜ「2次方程式の解の公式が存在するのか」を解説(添加する式について加筆予定)
(12)「アーベルの証明」のアイデアを用いて、なぜ「3次方程式の解の公式が存在するのか」を解説(前編)。「差積の2乗の平方根」を用いて対称性を保つ置換を「偶置換」にまで絞り込む。
(13)「アーベルの証明」のアイデアを用いて、なぜ「3次方程式の解の公式が存在するのか」を解説(後編)。「ラグランジュ・リゾルベント」を用いて対称性を保つ置換を「恒等置換」にまで絞り込む。⟶ 3次方程式の解の公式の完成
(14)「アーベルの証明」の解説。5次方程式の解の差積(または差積の2乗の平方根)を添加して、加減乗除ができる式の範囲を拡大。その結果、対称性を5次置換から偶置換(偶置換シンメトリー)へと絞り込む。
(15)「アーベルの証明」の解説。すべての置換は互換で表せることから、5次置換をすべて互換の積で表して、偶置換と奇置換に分類。それによって、そのうちの偶置換が「3次巡回置換の積で表せる」ことの説明が簡単になる。
(16)(予定)「アーベルの証明」の解説。すべての偶置換は3次巡回置換の積で表されること。さらには任意の3次巡回置換が5次巡回置換の積で表せることによって、「5次方程式には解の公式が存在しない」ことが証明されることの解説。