竹村の家庭教師が始まった。
「前回ラグランジュ・リゾルベント
α+β+γα+ωβ+ω2γα+ω2β+ωγ
という3つの式をやったね。α, β, γ は 3次方程式 y3+py+q=0 の解、ω は3乗して 1 になる数、つまり 1 の3乗根のうち虚数になる数だった。ではいよいよこのラグランジュ・リゾルベントを使って3次方程式の解の公式を導き出そうと思う。
ラグランジュ・リゾルベントの連立によって、3次方程式の解の公式を求めることが今日の目標だよ。
その前に少し前回の復習をしようか。まず3次方程式の3つの解の置換を、次のように定義したね。
<3つの解 α, β, γ の置換(復習)>
➀ α を α に、β を β に、γ を γ に、つまりそのままで変わらない置換、すなわち
α⟶αβ⟶βγ⟶γを(ααββγγ)
② α を γ に、γ を β に、β を α に置き換える置換、すなわち
α⟶γβ⟶αγ⟶βを(αγβαγβ)
③ α を β に、β を γ に、γ を α に置き換える置換、すなわち
α⟶ββ⟶γγ⟶αを(αββγγα)
④ α はそのままで、β を γ に、γ を β に置き換える置換、すなわち
α⟶αβ⟶γγ⟶βを(ααβγγβ)
➄ β はそのままで、α を γ に、γ を α に置き換える置換、すなわち
α⟶γβ⟶βγ⟶αを(αγββγα)
⑥ γ はそのままで、α を β に、β を α に置き換える置換、すなわち
α⟶ββ⟶αγ⟶γを(αββαγγ)
( )の中の文字は、上から下に置換されると見ればいいね。あと3つの解の置換はこの6つがすべてで、他には無いことにも注意。
さて、3次方程式 ax3+bx2+cx+d=0 を x=y−3ab と置き換える『チルンハウス変換』によって、y2 の項の無い y3+py+q=0 という、より簡単な形に変換できることは既にやったね。前回の授業では、この y3+py+q=0 の3つの解を α, β, γ としたときのラグランジュ・リゾルベント
α+β+γα+ωβ+ω2γα+ω2β+ωγ
に、先ほどの6つの置換を作用させてみた。一番上の第1式は対称式なのでどの置換でも変化しないけど、問題は第2式と第3式。これを
AB=α+ωβ+ω2γ=α+ω2β+ωγ
とおくと、A, B そのままでは対称式ではないが
ABA3+B3=(α+ωβ+ω2γ)(α+ωβ+ω2γ)=(α+ωβ+ω2γ)3+(α+ω2β+ωγ)3
は上の6つの置換すべてで変化しない、つまり AB と A3+B3 は対称式であることが示された。そこで今日の授業。
AB と A3+B3 が対称式であることを利用して、 A, B を3次方程式 y3+py+q=0 の係数 p, q で表し、それを
αβγ=3(α+β+γ)+(α+ωβ+ω2γA)+(α+ω2β+ωγB)=3(α+β+γ)+ω2(α+ωβ+ω2γ)+ω(α+ω2β+ωγ)=3(α+β+γ)+ω(α+ωβ+ω2γ)+ω2(α+ω2β+ωγ)
の A, B 部分に代入して3次方程式の解の公式を導き出そう、というのが今日の授業のメインテーマだね。(⇒ この式の証明は、本シリーズ (6))。
なお、α+β+γ 部分は基本対称式 なので、解と係数の関係から3次方程式の係数で表せる。解と係数の関係の左辺は基本対称式だからね。
<3次方程式の解と係数の関係(復習)>
3次方程式 ax3+bx2+cx+d=0 の3つの解を α, β, γ とすると
α+β+γ基本対称式 αβ+βγ+γα基本対称式αβγ基本対称式===−−abacad
α+β+γ 部分は解と係数の関係から、3次方程式の係数を用いてすぐに分かる。しかし A, B 部分はすぐには分からない。つまり、すぐには分からない A, B を、3次方程式の係数で表すことが今日の課題となる。そういえば森田君。考えてみると言ってたけど、どうだった?」
「はい、自分なりに考えてみました」
「おっ考えてみた!どう、できたかな?」
「ではやってみます」
小学5年生の森田君はすくっと立ち上がり、颯爽とホワイトボードの前に立った。
「まず、先ほどの<3次方程式の解と係数の関係>
3次方程式 ax3+bx2+cx+d=0 の3つの解を α, β, γ とすると
α+β+γ αβ+βγ+γααβγ===−−abacad
より、これを y3+py+q=0 に適用すると、a=1, b=0, c=p, d=q となるので
α+β+γ αβ+βγ+γααβγ===−−101p1q
より
α+β+γ αβ+βγ+γααβγ===−0pq
が成り立ちます。特に y2の係数が 0 なので α+β+γ=0 となり、後の計算が楽になります」
「チルンハウス変換を行ったメリットだね」
「そうです、この式は後に役立ちます。ここで簡単のためラグランジュ・リゾルベントを
AB=α+ωβ+ω2γ=α+ω2β+ωγ
とおくと、AB、A3+B3 は対称式なので、基本対称式を用いて表すことができる、というのが前回までの授業です。以下それを具体的に見ていきます。
<AB を求める>
まず AB は、普通に分配していきます。B をひとかたまりとして、A のそれぞれの項にB を分配し、さらにすべての項を分配していきます。
AB=(α+ωβ+ω2γ)(Bα+ω2β+ωγ)=α(Bα+ω2β+ωγ)+ωβ(Bα+ω2β+ωγ)+ω2γ(Bα+ω2β+ωγ)=α2+ω2αβ+ωγα+ωαβ+ω3β2+ω2βγ+ω2γα+ω4βγ+ω3γ2=α2+1ω3β2+1ω3γ2+ωαβ+ω2αβ+ωω4βγ+ω2βγ+ωγα+ω2γα=α2+β2+γ2+ωαβ+ω2αβ+ωβγ+ω2βγ+ωγα+ω2γα=α2+β2+γ2+(−1ω+ω2)αβ+(−1ω+ω2)βγ+(−1ω+ω2)γα=α2+β2+γ2+(−1)αβ+(−1)βγ+(−1)γα=α2+β2+γ2−αβ−βγ−γα=α2+β2+γ2−(αβ+βγ+γα) ⋯(∗1)
これを (∗1) とおきます。なお。途中で以前習った ω の性質
ω3=1ω4=ω3⋅ω=1⋅ω=ωω2+ω+1=0 より ω2+ω=−1
を使いました。すると αβ+βγ+γα は基本対称式なので、α2+β2+γ2 を求めるのが次の課題です。それには以下の展開公式を利用します。
(α+β+γ)2=α2+β2+γ2+2αβ+2βγ+2γα
左右入れ替えて
α2+β2+γ2+2αβ+2βγ+2γα=(α+β+γ)2
2αβ+2βγ+2γα を移項して
α2+β2+γ2=(α+β+γ)2−2αβ−2βγ−2γα=(α+β+γ)2−2(αβ+βγ+γα)
これに先ほど求めた解と係数の関係
α+β+γ αβ+βγ+γααβγ===−0pq
の上2つを代入して
α2+β2+γ2=(α+β+γ)2−2(αβ+βγ+γα)=02−2⋅p=−2p
よって、これと解と係数の関係の2つ目
αβ+βγ+γα=p
を、先ほど計算した (∗1) に代入して
AB=α2+β2+γ2−(αβ+βγ+γα)=−2p−p=(−2−1)p=−3p
これで AB を p を用いて表すことができました」
「AB は割と簡単だったけど、難しいのは A3+B3 の方だね」
「はい、難しかったです。ここで
A3+B3=(α+ωβ+ω2γ)3+(α+ω2β+ωγ)3
と3つの項のある3乗の式を、力技で展開するのはかなり計算が大変なので、ここでは3乗の展開公式を利用します」
力技で展開していた竹村は、そっとノートを閉じた。
<A3+B3 を求める>
「以下の3乗の展開公式を用います。
(A+B)3=A3+3A2B+3AB2+B3
まず左右入れ替えて
A3+3A2B+3AB2+B3=(A+B)3
3A2B+3AB2 を移項して
A3+B3=(A+B)3−3A2B−3AB2=(A+B)3−3AB(A+B) ⋯(∗2)
これを (∗2) とおきます。先ほど AB=−3p と求めたので、ここでは A+B を求めることが課題となります。すると
A+B=(α+ωβ+ω2γ)+(α+ω2β+ωγ)=α+α+ωβ+ω2β+ω2γ+ωγ=2α+(−1ω+ω2)β+(−1ω+ω2)γ=2α+(−1)β+(−1)γ=2α−β−γ=2α−(β+γ)
ここでも ω の性質 ω2+ω+1=0 より ω2+ω=−1 を使っています。すると、解と係数の関係の1つ目の式 α+β+γ=0 より β+γ=−α なので
A+B=2α−(β+γ)=2α−(−α)=2α+α=3α
これで A+B が求まったので、これと既に求めた AB=−3p を (∗2) に代入して
A3+B3=(A+B)3−3AB(A+B)=(3α)3−3(−3p)⋅(3α)=27α3+9p(3α)=27α3+27pα
さて、ここで解と係数の関係の2つ目の式 αβ+βγ+γα=p 、つまり
p=αβ+βγ+γα をこの式に代入して、一度 p を消去します。
A3+B3=27α+27pα=27α3+27(αβ+βγ+γα)α=27α3+27(α2β+αβγ+γα2)=27α3+27(α2β+γα2+αβγ)=27(α3+α2β+γα2+αβγ)=27{α2(α+β+γ)+αβγ}
これに、解と係数の関係の1つ目と3つ目の式
α+β+γαβγ=0=−q
を代入すれば
A3+B3=27{α2⋅0+(−q)}=27⋅(−q)=−27q
これで目標だった A3+B3 と AB が、p, q を用いて
A3+B3AB=−27q=−3p
と定まりました。ここでいよいよラグランジュ・リゾルベント A=α+ωβ+ω2γ, B=α+ω2β+ωγ を求めていきます。
<ラグランジュ・リゾルベント A, B の決定>
A, B を求めるには、下の式 AB=−3p を3乗して
A3+B3(AB)3=−27q=(−3p)3
A3+B3A3B3=−27q=(−3)3p3
より
A3+B3A3B3=−27q=−27p3
ここで、A3, B3 は2次方程式
(X−A3)(X−B3)=0
の解になることを利用します」
「例えば 2 と 3 を解に持つ2次方程式は (x−2)(x−3)=0 となる、という考え方だね」
「そうです、以前習った方法です。そこで (X−A3)(X−B3)=0 を展開すると
X2−(A3+B3)X+A3B3=0
これに、先ほど求めた
A3+B3A3B3=−27q=−27p3
を代入して
X2−(−27q)X−27p3=0
より
X2+27qX−27p3=0
すると、この式は元々 (X−A3)(X−B3)=0 だったので、この2次方程式の解 X が A3, B3 となります。この2次方程式は、すでに分かっている2次方程式の解の公式を用いて解くことができます。

解きたい2次方程式は X2+27qX−27p3=0 なので、a=1, b=27q, c=−27p3 として解の公式を用いると
X=2⋅1−27q±(27q)2−4⋅1⋅(−27p3)=2⋅1−27q±(27q)2−4⋅(−27p3)=2−27q±272q2+4⋅27p3
このあとの計算は、ある狙いをもって計算していきます。その狙いとは、以前習った解の公式に合わせて 2p と 3p の見えるきれいな形にするということと、将来的に3乗根を取るので 33 つまり 27 でくくった形にする、ということです。そうすることによって、以前『カルダノの方法』で習った解の公式と同じ形に導きやすくなります。具体的にやってみますと、上の式より ”±” のところで2つの分数に分けて
X=2−27q±272q2+4⋅27p3=2−27q±2272q2+4⋅27p3=2−27q±22272q2+4⋅27p3=2−27q±4272q2+4⋅27p3=2−27q±4272q2+4⋅27p3=2−27q±4272q2+44⋅27p3=2−27q±272⋅4q2+27p3=2−27q±272⋅4q2+272⋅27p3=2−27q±272(4q2+27p3)=2−27q±274q2+27p3=2−27q±2722q2+33p3=−27⋅2q±27(2q)2+(3p)3=27{−2q±(2q)2+(3p)3}
これで 2p と 3p の見える形となり、27 でくくることができました。解はプラスマイナスの2つあるので、プラスの方を A3、マイナスの方を B3 とおくと
A3B3=27{−2q+(2q)2+(3p)3}=27{−2q−(2q)2+(3p)3}
ここで A, B を求めるには、最初に3次方程式の解の公式を導いたときに習った、以下の解法が便利です。

つまり x3=a の解は、1 の3乗恨 1, ω, ω2 のそれぞれに 3a をかけて
x=3a, ω3a, ω23a
として求まります。そこで簡単のため、新しい文字 u, v を用いて
A3B3=27{−2q+(2q)2+(3p)3}=u=27{−2q−(2q)2+(3p)3}=v
とおきます。つまり
A3B3=u=v
と式を簡略化します。ここからの計算は、最初に3次方程式の解の公式を導いたときと全く同じです。まず A3=u の解は、1 の3乗恨 1, ω, ω2 のそれぞれに 3u をかければいいので
A=3u, ω3u, ω23u
同様に B3=v の解も、1 の3乗恨 1, ω, ω2 のそれぞれに 3v をかければいいので
B=3v, ω3v, ω23v
すると A は3通り、B も3通りなので、A, B の組み合わせは 3×3=9 通り。しかし AB=−3q よりどの組み合わせでも一定の値にならないとだめなので、A と B の組み合わせは、掛けて同じになる組み合わせに絞られることとなります。
まず A=3u、B=3v とすると
AB=3u×3v=3uv
なので、掛けて 3uv になるような組み合わせを考えると、ちょうど以下の3組が見つかります。
{A=3uB=3v, {A=ω3uB=ω23v , {A=ω23uB=ω3v
確認して見ると、A=ω3u, B=ω23v のときは、ω3=1 より
AB=ω3u×ω23v=ωω23u3v=ω33uv=1⋅3uv=3uv
また、A=ω23u, B=ω3v のときも同様にして
AB=ω23u×ω3v=ω2ω3u3v=ω33uv=1⋅3uv=3uv
となり、どの組み合わせも 3uv と同じ値となるので、A, B の組み合わせは
{A=3uB=3v, {A=ω3u B=ω23v , {A=ω23uB=ω3v ⋯(∗3)
と決定し、これを (∗3) とします。最後にいよいよ、y3+py+q=0 の解 α, β, γ を決定していきます。
前回の授業で α, β, γ は、ラグランジュ・リゾルベントの連立によって
αβγ=3(α+β+γ)+(α+ωβ+ω2γ)+(α+ω2β+ωγ)=3(α+β+γ)+ω2(α+ωβ+ω2γ)+ω(α+ω2β+ωγ)=3(α+β+γ)+ω(α+ωβ+ω2γ)+ω2(α+ω2β+ωγ)
と表せることを解説しましたが、解と係数の関係の1つ目の式より
α+β+γ=0
なので
αβγ=30+(α+ωβ+ω2γ)+(α+ω2β+ωγ)=30+ω2(α+ωβ+ω2γ)+ω(α+ω2β+ωγ)=30+ω(α+ωβ+ω2γ)+ω2(α+ω2β+ωγ)
よって
αβγ=3(α+ωβ+ω2γ)+(α+ω2β+ωγ)=3ω2(α+ωβ+ω2γ)+ω(α+ω2β+ωγ)=3ω(α+ωβ+ω2γ)+ω2(α+ω2β+ωγ)
と、式を簡単にできます。さらに
A=α+ωβ+ω2γ
B=α+ω2β+ωγ
であったので
αβγ=3A+B=3ω2A+ωB=3ωA+ω2B
これに、先ほど求めた A, B の組み合わせ (∗3)
{A=3uB=3v, {A=ω3uB=ω23v , {A=ω23uB=ω3v
を順に代入していきます。
まず A=3u、B=3v のとき
αβγ=3A+B=33u+3v=3ω2A+ωB=3ω23u+ω3v=3ωA+ω2B=3ω3u+ω23v
より
⎩⎨⎧α=33u+3vβ=3ω23u+ω3vγ=3ω3u+ω23v
A=ω3u、B=ω23v のとき、ω3=1 と ω4=ω を用いて
αβγ=3A+B=3ω3u+ω23v=3ω2A+ωB=3ω2⋅ω3u+ω⋅ω23v=3ω33u+ω33v=31⋅3u+1⋅3v=33u+3v=3ωA+ω2B=3ω⋅ω3u +ω2⋅ω23v=3ω23u+ω43v=3ω23u+ω3v
より
⎩⎨⎧α=3ω3u+ω23vβ=33u+3vγ=3ω23u+ω3v
A=ω23u、B=ω3v のとき
αβγ=3A+B=3ω23u+ω3v=3ω2A+ωB=3ω2⋅ω23u+ω⋅ω3v=3ω43u+ω23v=3ω3u+ω23v=3ωA+ω2B=3ω⋅ω23u +ω2⋅ω3v=3ω33u+ω33v=31⋅3u+1⋅3v=33u+3v
より
⎩⎨⎧α=3ω23u+ω3vβ=3ω3u+ω23vγ=33u+3v
以上をまとめると、α, β, γ の値は以下の3組
⎩⎨⎧α=33u+3vβ=3ω23u+ω3vγ=3ω3u+ω23v⎩⎨⎧α=3ω3u+ω23vβ=33u+3vγ=3ω23u+ω3v⎩⎨⎧α=3ω23u+ω3vβ=3ω3u+ω23vγ=33u+3v
となりますが、これらはいずれも
33u+3v, 3ω3u+ω23v, 3ω23u+ω3v
の組み合わせです。α, β, γ はもともと3次方程式 y3+py+q=0 の解でした。α, β, γ は対等で区別は無いので、これらが y3+py+q=0 の解となり
y=33u+3v, 3ω3u+ω23v, 3ω23u+ω3v
と決定されます。ここで、u, v は
uv=27{−2q+(2q)2+(3p)3}=27{−2q−(2q)2+(3p)3}
だったので、これらの3乗恨は、27 でくくったことのメリット 327=333=3 を利用すれば
3u=327{−2q+(2q)2+(3p)3}=327⋅3−2q+(2q)2+(3p)3=333⋅3−2q+(2q)2+(3p)3=33−2q+(2q)2+(3p)3
同様に v の方も
3v=327{−2q−(2q)2+(3p)3}=327⋅3−2q−(2q)2+(3p)3=333⋅3−2q−(2q)2+(3p)3=33−2q−(2q)2+(3p)3
より
3u3v=33−2q+(2q)2+(3p)3=33−2q−(2q)2+(3p)3
これらを先ほど求めた
y=33u+3v, 3ω3u+ω23v, 3ω23u+ω3v
に代入すれば、これが y3+py+q=0 の解となります。
まずは第1式 y=33u+3v に代入すると、3で約分して
y=333−2q+(2q)2+(3p)3+33−2q−(2q)2+(3p)3=33⎩⎨⎧3−2q+(2q)2+(3p)3+3−2q−(2q)2+(3p)3⎭⎬⎫=3−2q+(2q)2+(3p)3+3−2q−(2q)2+(3p)3
第2式 y=3ω3u+ω23v に代入すると、同様の計算で
y=3ω⋅33−2q+(2q)2+(3p)3+ω2⋅33−2q−(2q)2+(3p)3=33⎩⎨⎧ω3−2q+(2q)2+(3p)3+ω23−2q−(2q)2+(3p)3⎭⎬⎫=ω3−2q+(2q)2+(3p)3+ω23−2q−(2q)2+(3p)3
第3式 y=3ω23u+ω3v も同様の計算で
y=3ω2⋅33−2q+(2q)2+(3p)3+ω⋅33−2q−(2q)2+(3p)3=33⎩⎨⎧ω23−2q+(2q)2+(3p)3+ω3−2q−(2q)2+(3p)3⎭⎬⎫=ω23−2q+(2q)2+(3p)3+ω3−2q−(2q)2+(3p)3
以上より
y=⎩⎨⎧3−2q+(2q)2+(3p)3+3−2q−(2q)2+(3p)3ω3−2q+(2q)2+(3p)3+ω23−2q−(2q)2+(3p)3ω23−2q+(2q)2+(3p)3+ω3−2q−(2q)2+(3p)3
すると、チルンハウス変換での x=y−3ab=−3ab+y に、先ほど求めた y を代入して
x=⎩⎨⎧−3ab+3−2q+(2q)2+(3p)3+3−2q−(2q)2+(3p)3−3ab+ω3−2q+(2q)2+(3p)3+ω23−2q−(2q)2+(3p)3−3ab+ω23−2q+(2q)2+(3p)3+ω3−2q−(2q)2+(3p)3
ただし
pq=−31(ab)2+ac=272(ab)3−31(ab)(ac)+ad
となり、これが3次方程式 ax3+bx2+cx+d=0 の解の公式となります」
「素晴らしい、大変よくできました」
「補足として、ラグランジュ・リゾルベントと、y=s+t とおいたカルダノの方法との s, t の関係を見ていきます」
「前回の授業で森田君がすこし触れた部分だね」
<ラグランジュ・リゾルベントとカルダノの方法の関係>
「ここで、改めてラグランジュ・リゾルベント
AB=α+ωβ+ω2γ=α+ω2β+ωγ
の値を、p, q を用いた形で具体的に求めていきます。A3=u, B3=v とおくことによって得られる A, B の組み合わせは (∗3) で求めました。以下それを復習しますと
{A=3uB=3v, {A=ω3uB=ω23v , {A=ω23uB=ω3v
となります。これらに A=α+ωβ+ω2γ、B=α+ω2β+ωγ を代入して
{α+ωβ+ω2γ=3uα+ω2β+ωγ=3v{α+ωβ+ω2γ=ω3uα+ω2β+ωγ=ω23v {α+ωβ+ω2γ=ω23uα+ω2β+ωγ=ω3v
さらに
3u3v=33−2q+(2q)2+(3p)3=33−2q−(2q)2+(3p)3
も代入していくと
⎩⎨⎧α+ωβ+ω2γ=33−2q+(2q)2+(3p)3α+ω2β+ωγ=33−2q−(2q)2+(3p)3⎩⎨⎧α+ωβ+ω2γ=ω⋅33−2q+(2q)2+(3p)3α+ω2β+ωγ=ω2⋅33−2q−(2q)2+(3p)3⎩⎨⎧α+ωβ+ω2γ=ω2⋅33−2q+(2q)2+(3p)3α+ω2β+ωγ=ω⋅33−2q−(2q)2+(3p)3
より
⎩⎨⎧α+ωβ+ω2γ=33−2q+(2q)2+(3p)3α+ω2β+ωγ=33−2q−(2q)2+(3p)3⎩⎨⎧α+ωβ+ω2γ=3ω3−2q+(2q)2+(3p)3α+ω2β+ωγ=3ω23−2q−(2q)2+(3p)3⎩⎨⎧α+ωβ+ω2γ=3ω23−2q+(2q)2+(3p)3α+ω2β+ωγ=3ω3−2q−(2q)2+(3p)3
ただし
pq=−31(ab)2+ac=272(ab)3−31(ab)(ac)+ad
と、これがラグランジュ・リゾルベントの具体的な値となります。3通りの組み合わせで求まりました。どの組み合わせからでも、3次方程式の解の公式が正しく導かれます。実はこのラグランジュ・リゾルベントは、以前 y=s+t とおいたカルダノの方法の、その s, t について
α+ωβ+ω2γα+ω2β+ωγ=3s=3t
という関係が成り立っています。s, t の3倍がラグランジュ・リゾルベントになるということです。それを示すために、以前習ったカルダノの方法を、流れだけ復習していきます。
まず3次方程式 ax3+bx2+cx+d=0 の両辺を a(=0) で割って x3 の係数を 1 にして
x3+abx2+acx+ad=0
この式にチルンハウス変換、x=y−3ab を代入して y2 の項を消すと
y3+py+q=0
そしてカルダノの方法、y=s+t とおくと
s3+t3+q+(s+t)(3st+p)=0
ここで、上式の一重線部と二重線部が 0 となるような s,t についての連立方程式
{s3+t3+q=03st+p=0
つまり
{s3+t3=−qst=−3p
を考えます。ここからの計算のステップは、先ほどやった A, B を求める方法と全く同じです。つまり下の式を3乗して
⎩⎨⎧s3+t3=−q(st)3=(−3p)3
より
⎩⎨⎧s3+t3=−qs3t3=−(3p)3
s3, t3 は2次方程式 (X−s3)(X−t3)=0 の解なので、これを展開して
X2−(s3+t3)X+s3t3=0
これに先ほど得られた s3+t3=−q, s3t3=−(3p)3 を代入して
X2−(−q)X−(3p)3X2+qX−(3p)3=0=0
計算は省略しますが、この2次方程式の解 X が求めたい s3, t3 なので、これを2次方程式の解の公式を使って解けば s3, t3 が求まり、さらにその3乗恨を取ることによって s, t の値は
⎩⎨⎧s=3−2q+(2q)2+(3p)3t=3−2q−(2q)2+(3p)3⎩⎨⎧s=ω3−2q+(2q)2+(3p)3t=ω23−2q−(2q)2+(3p)3⎩⎨⎧s=ω23−2q+(2q)2+(3p)3t=ω3−2q−(2q)2+(3p)3
と求まります。すると、この結果を先ほど求めたラグランジュ・リゾルベントの値
⎩⎨⎧α+ωβ+ω2γ=33−2q+(2q)2+(3p)3α+ω2β+ωγ=33−2q−(2q)2+(3p)3⎩⎨⎧α+ωβ+ω2γ=3ω3−2q+(2q)2+(3p)3α+ω2β+ωγ=3ω23−2q−(2q)2+(3p)3⎩⎨⎧α+ωβ+ω2γ=3ω23−2q+(2q)2+(3p)3α+ω2β+ωγ=3ω3−2q−(2q)2+(3p)3
と見比べてみます。1つ目同士、2つ目同士、3つ目同士で比較すると、どれも 3 倍だけが共通に違っていて
α+ωβ+ω2γα+ω2β+ωγ=3s=3t
という関係式が共通に成り立ちます。つまり、カルダノの方法での s, t の3倍がラグランジュ・リゾルベントになります。
一番初めに3次方程式の解の公式を発見したタルタリア、そして最初に発表したカルダノも、ラグランジュ・リゾルベントの存在は知りませんでした。y=s+t とおくカルダノの変形は、ラグランジュ・リゾルベントの式さえ表には出てきませんが、全く同じ思想が根底に流れていたわけです。
以下カルダノの方法では、y=s+t より
y=⎩⎨⎧3−2q+(2q)2+(3p)3+33−2q−(2q)2+(3p)3ω3−2q+(2q)2+(3p)3+ω23−2q−(2q)2+(3p)3ω23−2q+(2q)2+(3p)3+ω3−2q−(2q)2+(3p)3
となるので、上の y を x=y−3ab=−3ab+y に代入すれば、先ほどラグランジュ・リゾルベントを用いて導いた解の公式とまったく同じになります」
「素晴らしい!大変よくできました。カルダノの方法とラグランジュ・リゾルベントによる方法は、本質的には同じだったんだね。いやいや、先生がやろうとしてたことも全部森田君がやってしまたったよ。それでは今日の授業はここまでにして、えーと、次の授業では・・・」
「先生、質問があります」
「何かな?」
「この方法を5次方程式に応用させると解の公式ができそうな気がします。5次方程式の解を α, β, γ, δ, ϵ とおいて、今度は5乗して 1 になる数、つまり 1 の5乗根のうち素数となるものを ω とすると、5次方程式のラグランジュ・リゾルベントは
α+β+γ+δ+ϵ
と
α+ωβ+ω2γ+ω3δ+ω4ϵ
と、あと係数 ω を入れ替えて、うーん、これは計算が大変・・・・・・」
「そうそう、実はかのラグランジュも、森田君が言ったような5次方程式のラグランジュ・リゾルベントから解の公式を導き出そうとしたんだけどうまくいかず、そうしている間にアーベル、そしてガロアが5次以上の方程式には解の公式が存在しないことを証明してしまった、ということなんだね。では次の授業でその辺に迫っていくことにしようか。まずはアーベルの証明から見ていくことにしよう」
「分かりました。楽しみです!」
今日の授業は終わった。森田君がホワイトボードに立ち、竹村が机に座る。授業というより大学のゼミのような感じだったが、これからの授業に手ごたえを感じ、竹村は馴染みの小料理屋へと向かった。
(了)
(コメント)
分かりにくい所など、随時修正していきます。この後の構成はあまり考えていませんが(自分も勉強しながら書いています)、次からはどうしてもグラフが必要なので、どうすればいいか考え中。noteで図形や、その数式のグラフが描けるようになればと思います。本文の流れに合わせて細かい修正が入るので、他で作って画像にして貼り付けるのは結構大変です。
気付いたら全部書いてしまう癖があるので、逆に分かりにくくなっているかもしれません。一人では気付かないので、間違いや分かりにくいところがあればコメント下さい。もっと分かりやすくなるように反映させたいと思います。