
「それ、売ってないんですよ」── 機械設計エンジニアが3Dプリンターで解決した、生活の"名もなき不便"まとめ
── あとちょっと、が届かない。
壁掛けフックにドライヤーを掛けたら、微妙にガタつく。
工具を置くとき、ちょうどいいスタンドが売っていない。
スマートホームのセンサーを屋外に付けたいけど、引っ掛ける場所がない。
「惜しい。あとちょっとなんだけど。」
こういう"ちょっとした不便"、心当たりはないでしょうか。
Amazonで探しても、100均を何軒回っても、「自分の環境にぴったり合うもの」は見つからない。
──じゃあ、自分で作ればいい。
私は機械設計エンジニアとして、普段からCADでモノの形を考える仕事をしています。
3Dプリンターを導入してからは、そのスキルを"生活の困りごと"に向けるようになりました。
気がつけば、自作パーツは20種類以上。
どれも派手さはありませんが、毎日確実に生活を楽にしてくれているものばかりです。
この記事では、それらを「どんな悩みがあって」「何を作って」「どう変わったか」の形式でジャンル別に全部紹介します。
1. 電動工具・ガジェットの補助パーツ
手持ちの工具やデバイスを、より自分の使い方に合わせるためのパーツです。
紹介した商品の一部はメルカリで販売しています。
ご興味がある方は下記のリンクから御覧ください。
マキタ フィールドファン(MKT-102)用 吊り下げフック&端子カバー
悩み: デザインが気に入り、マキタフィールドファンのsnow peakコラボモデルを使用しています。純正フックでフィールドファンを吊り下げると、首振り機能が使えなくなります。また、AC電源で使うときにバッテリー接続部の黄色い端子がむき出しになり、見た目が気になります。

作ったもの: ブラケット側の穴を利用するオリジナルの吊り下げフックと、端子部を隠す目隠しカバーの2点セット。



使ってみた結果: 吊り下げたまま首振りが可能になり、ガレージや屋外作業での使い勝手が大幅に向上。端子カバーも付けることで、スノーピークコラボモデルのデザインを損なわずに見た目がスッキリしました。
マキタ バッテリー(BL1860B)用底面カバー
悩み: ガレージや屋外で作業する際、工具のバッテリーを地面に直置きすると、高価なバッテリー自体に傷がついてしまうのが嫌でした。

作ったもの: バッテリーの底面に被せる専用の保護カバー。

使ってみた結果: コンクリートの床や砂利の上にも気兼ねなく置けるようになり、屋外作業時のちょっとしたストレスが消えました。
京セラ ポリッシャー(RSE-1250)&サンダー(S-5000)用スタンド
悩み: 洗車やDIYで使う京セラ(旧リョービ)のポリッシャーやサンダーは、本体の形状が独特で置き場所に困ります。置くと研磨面が地面に直接触れてしまい、パッドを傷つけてしまいます。
作ったもの: 研磨面を浮かせた状態で立てておけるスタンド。初期は積層の向きが原因で差し込み部が折れる失敗がありましたが、プリントの向きを見直すことで強度を確保しました。



使ってみた結果: 作業中にちょっと手を離したいとき、スタンドにポンと置くだけで研磨面が地面に直接触れない。いちいち置き場所を気にしなくていいので、作業のテンポが格段に良くなりました。「市販品にないなら作る」という発想の原点になったアイテムです。
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ブロワ・エアダスター(AS180DZ)用ノズル(フラット型&ピンポイント型)
悩み: 純正のエアダスターノズルは丸形で、広い面積を吹き飛ばしたいときも風が一点に集中して効率が悪い。さらに、純正と同じ接続部で自作すると積層痕から割れてしまう問題もありました。
作ったもの: フラット型(幅広い面を吹き飛ばす用)とピンポイント型(先端にストローを付けて狭い隙間に届く用)の2種類を設計。接続部は構造を見直してシンプルにし、強度アップ。


使ってみた結果: キーボードの隙間、3Dプリンターのレール溝、車のエアコン吹き出し口など、ピンポイントでエアを当てられるように。ピンポイントノズルは誕生日用バルーンの空気入れとしても活用しており、想定外の使い道が生まれました。
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2. 家庭内の収納・便利グッズ・スマートホーム関連
家の中の細かな収納や、据え付けの安定感を向上させるアイテムです。
塗り薬のチューブ用スタンド
悩み: ロコイドなどの小さな塗り薬のチューブは、引き出しの中で倒れたり転がったりして整理しにくい。どこに何があるか一目で分からない。
作ったもの: チューブを立てて収納できる専用スタンド。複数本を並べて管理でき、ラベルが見える状態で保管できる設計。

使ってみた結果: チューブを横にしておくと、キャップ周りから薬がにじみ出て引き出しの中が汚れがち。立てて収納するだけでそれがなくなり、引き出しの中がいつも清潔に。地味ながら日常のストレスが一つ消えました。
薄型まな板用 壁掛けマグネットスタンド
悩み: 薄いまな板は立てかけても倒れやすく、食器棚に入れると場所を取る。置き場所が定まらず、キッチンが散らかる原因に。
グラタン用敷物も置き場所に困ります。
作ったもの: キッチンの壁(磁石がつく面)に取り付けるマグネット式スタンド。100均のマグネットを利用し、まな板を差し込むだけで壁掛け収納できるようにしました。


使ってみた結果: 3枚掛けても安定。まな板の乾燥・衛生面でも、置き型より壁掛けの方が優秀でした。キッチンの作業スペースも広がり、一石二鳥です。
※まな板のような直接食品に触れるものに3Dプリンタ製部品が触れるのはよろしくないと思ったので、最近はグラタンの敷物を写真のようにセットしています。まな板は安心の山崎実業を買おうかな…
壁に穴を開けない「ホッチキス固定」マウント
悩み: 昇降デスクのケーブル配線ガイド、SwitchBotハブ2・3、CO2濃度計など、壁に固定したいものは多いのに、ネジや画鋲を使うと壁に大きな穴が開く。賃貸ではなおさら困る。
作ったもの: ホッチキスの針で壁に固定できる構造のマウント。固定部にホッチキスの針が通る溝を設け、壁のダメージを最小限に抑えながらしっかり固定できる設計にしました。


使ってみた結果: 取り外しても穴がほぼ目立たず、模様替えも気兼ねなくできるように。配線を浮かせたり、センサー類を壁掛けしたりと、これ一つの発想で複数のマウントを横展開できました。
SwitchBotハブミニ コンセント直挿しスタンド
悩み: ハブミニを置く場所がなく、ケーブルがだらんと垂れて見栄えが悪い。
作ったもの: コンセントのACアダプタとケーブルごと一体化させ、壁のコンセントに直接挿して保持できるスタンド。


使ってみた結果: 配線が完全に隠れてスッキリ。壁にピタッとくっつくので掃除の邪魔にもなりません。
ドライヤー&電動ハンドソープ用スペーサー
悩み: 壁掛けフックに対してドライヤーの形状が合わずガタつく。キレイキレイの電動ハンドソープディスペンサーも、マグネットを貼り付けて使っていますが取り付け面との相性で不安定になっていた。
作ったもの: それぞれの製品形状に合わせた隙間を埋める専用ガイドスペーサー。わずか数ミリの調整で、ピタッとフィットさせました。



使ってみた結果: ドライヤーがフックから落ちなくなり、ハンドソープもしっかり固定。「あと数ミリの調整」ができるのが、3Dプリンターならではの強みだと実感したアイテムです。
SwitchBot温湿度計 屋外用カバー
悩み: SwitchBotの温湿度計(防水仕様)を屋外に設置したいが、雨どいなどに固定する手段がない。そのまま置くだけでは不安定で、風で飛ばされる心配もある。
作ったもの: カーポートの雨どいに磁石やインシュロックで取り付けられるカバー。カバー内に水が溜まらないよう水抜き穴を設け、その穴から本体を押し出すことで電池交換時の取り出しも容易にしました。取付・メンテナンスをカバーで解決した設計です。


使ってみた結果: 屋外の気温を室内のCO2センサーのディスプレイやスマホでいつでも確認できるようになり、外に出なくても室内との温度差がパッとわかるように。服装選びに役立ちます。
防犯カメラブラケット
悩み: 防犯カメラを設置したいが、市販のブラケットではちょうどいい向きに調整できず、壁への固定方法も悩ましい。
作ったもの: 向きを自由に調整できる2分割構造のブラケット。あまどいに固定できるようにしました。

使ってみた結果: 狙った角度でピッタリ固定できるように。最初はケーブルタイを通す穴が潰れてしまう失敗もありましたが、モデルを修正して強度と実用性を両立させました。
3. デスク周り・趣味のアイテム
デスクのデッドスペース活用や、趣味の道具を使いやすくするためのパーツです。
Stream Deck+ 1/4インチネジ対応マウントスタンド
悩み:Stream Deck+を直置きしたくない、空中に浮かせたい 作業効率化に手放せない「Stream Deck+」ですが、デスクに直置きすると結構なスペースを取ります。「モニター下などの空中に、好きな角度で固定したい」と思ったのですが、本体にネジ穴がないため、市販のマウントではどうにもなりませんでした。
作ったもの: 「売ってないなら作るしかない」ということで、本体の形状にジャストフィットし、底面に「1/4インチネジ穴(一般的なカメラネジ)」を備えた専用スタンドを設計・出力しました。



結果: これを装着したことで、カメラ用の三脚や、クランプ式の小型モニターアームなどにStream Deck+を直接固定できるようになりました。デスクからデバイスを完全に浮かせることができるため、机の上がスッキリします。手元の最適な位置でダイヤル操作ができ、作業環境が改善しました。
※「自分もアームで浮かせて設置したい!」という方向けに、こちらもメルカリで出品しています。
詳細記事はこちら
HomePod mini用 高さ調整スタンド
悩み: モニター横に置いたHomePod miniのスピーカー位置が、耳の高さと合わない。数センチの差だが、音の聞こえ方に影響する。
作ったもの: ちょうど耳の高さにスピーカーが来るように計算した専用台座。HomePod miniの底面形状にぴったりフィットし、ズレない設計です。

使ってみた結果: 音の定位感が改善した……ような気がしています。正直、劇的な変化かと言われると自信はありませんが、コストは数百円の材料費だけで、それっぽい見た目も気に入っています。
【あわせて読みたい】これらの自作パーツが活躍するデスク環境の全貌 ここで紹介した配線を隠すためのホッチキス固定マウントなど、自作パーツを駆使して構築したデスクの全貌をシリーズで公開しています。 親子で共用するワークスペースや、こだわりの入力デバイスに興味がある方は、ぜひこちらもご覧ください👇
プラモデル用ツールスタンド
悩み: デザインナイフ、ニッパー、スミ入れペンなど、プラモデル用の工具は形状がバラバラで、市販のペン立てでは収まりが悪い。倒れたり取り出しにくかったりする。
作ったもの: 手持ちの各工具のサイズに合わせて溝の間隔を個別に調整した専用スタンド。それぞれのツールがスッと定位置に収まります。

使ってみた結果: 「あのニッパーどこ行った?」がゼロに。使ったら戻す、が自然にできるようになりました。プラモ作業の効率も上がり、作業台が散らからなくなりました。
ガンプラ用ポージングスタンド
悩み: 子どもが作ったガンダムのプラモデルを飾りたいが、自立が不安定で決まったポーズでしか置けない。アクションベースを買うほどでもないが、もっと自由にディスプレイしたい。
作ったもの: 子どもの作ったガンプラを、自由なポーズでディスプレイできるスタンド。

使ってみた結果: 子どもが大喜び。「パパ、このポーズで飾りたい!」というリクエストに応えられるように。家族の「ちょっとした希望」を形にできるのも、3Dプリンターの魅力です。
4. その他、用途に特化した小物たち
一つひとつは小さいけれど、日常のモヤモヤを確実に消してくれるアイテムたちです。
HHKB用 親指シフトキーキャップ: 親指シフト入力がしやすいよう、シフトキーのサイズを変更したオリジナルキーキャップ。打鍵感と操作性を自分好みに調整できるのは、自作ならではの良さです。

引き出し内トレイ: 既製品のトレイでは必ず生じてしまう微妙な隙間を埋める、ジャストサイズのトレイ。数ミリ単位で引き出しの内寸に合わせられるのは、3Dプリンターの独壇場です。

Switch横置きトレイ: テレビ台の下の隙間にスッキリ収まるNintendo Switch用トレイ。取り出しやすく、見た目もスッキリ。リビングの景観を損なわない収納を実現しました。

リュックサックの紐留めクリップ: 長さ調整で余って垂れ下がるリュックの紐を固定するクリップ。小さなパーツですが、歩くたびにブラブラするストレスが消えます。

キムワイプホルダー: 3Dプリンターのメンテナンスでよく使うキムワイプを壁掛けできるように、箱に取り付けるホルダーを作成。100均のマグネットを接着剤で貼り付け、使いたい時にすぐ引き出せるようにしました。

照明リモコンスタンド: 定位置が定まらなかったデスク照明のリモコンを、照明の支柱にはめ込んで収納できるアタッチメント。「リモコンどこ?」問題を根本から解決する、シンプルだけど効果的なアイテムです。


まとめ ── 3Dプリンターのある生活とは
ここまで紹介してきたアイテムに共通するのは、どれも「市販品では対応しきれない、あと数ミリの調整」や「特定の用途に特化した形状」を埋めるものだということです。
一つひとつは地味です。
ノズルも、スタンドも、スペーサーも、それ単体では「わざわざ記事にするほどか?」と思うかもしれません。
でも、こうした"名もなき不便"が一つずつ消えていく感覚は、想像以上に快適です。
3Dプリンターを導入して変わったこと
「ないなら作る」という選択肢が増えた。 Amazonで探して「ちょうどいいのがない…」と諦めていた場面が、「じゃあCADで設計しよう」に変わります。
失敗も学びになる。 ポリッシャースタンドのように、積層の向きで折れるといった失敗も経験しましたが、そこから構造の知識が深まります。
家族の困りごとも解決できる。 「この薬、立てて置けないかな?」「まな板の置き場所がなくて…」── 家族からの"ちょっとした相談"に応えられるのが嬉しいです。
一つの発想が横展開できる。 ホッチキス固定マウントのように、一つのアイデアが複数のアイテムに応用できるのも醍醐味です。
【あわせて読みたい】これから3Dプリンターを始める方・もっと活用したい方へ 「自分も3Dプリンターを導入してみたい」「もっと快適・安全に運用したい」と思った方に向けて、私が実践しているノウハウや愛用品をまとめています。導入の際の参考にしてみてください👇
さいごに
3Dプリンターは「日常のあったらいいなを、自分の手で形にできる道具」です。
市販品では対応しきれない「あと数ミリの調整」や「特定の用途に特化した形状」を自分で設計して形にできる──それが、3Dプリンターの最大の実用的メリットだと感じています。
もしあなたが「こういうの欲しいんだけど、売ってないんだよな…」と日常的に感じているなら、3Dプリンターはきっと、あなたの生活を変えてくれます。
この記事が、その第一歩のきっかけになれば嬉しいです。
※製作した小物の一部は、メルカリでも販売しています。ご興味のある方は、下記のリンクからご覧ください。