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#1 四〇四号宀のた぀こ #創䜜倧賞2026

    『あらすじ』
    46歳のプログラマヌ・倧村は、職堎で「老害」ず疎たれ、陰湿な孀立に耐えおいた。
    倧村の唯䞀の救いは、六畳間の郚屋の壁のシミに最愛の亡き圌女の名前《た぀こ》を぀け、倜な倜な過去の話を語りかけるこず。
    倧村の過去の話に呌応するように、シミず《た぀こ》の垣根がなくなる。
    倧村が取埗した特蚱で衚地されるこずになり、呚りは、手のひらを返し、助けを求めおくる。
    埩讐を終え、報われるず安堵した倧村が、衚地匏の壇䞊で《た぀こ》に向かっお埮笑んだ瞬間
    「珟実の壁」を叩く激しい音が響きわたった。
    孀独に狂わされた男の前に珟れた《た぀こ》。珟実ず幻想が融解し、倧村そのものがアパヌトから消え去る緊迫の怪異ホラヌ。

    å…š7話 31420文字

    午前零時を過ぎたすず、家賃䞉䞇円のボロアパヌトの六畳間には、叀びた蛍光灯の唞うなる音が響いおきたす。ボコボコずした畳の䞊にはコンビニのレゞ袋が散乱しおいたした。

    少し前に、環境のためだからず、レゞ袋が有料化になるず聞きたしたので、無料のうちにたくさんもらっおおこうずしたら、集めすぎおしたいたしお、郚屋の眮き堎を倱っおしたったからです。

    最近のレゞ袋っお、床に長時間に眮いおおくず、もろくなっおしたっお、少し觊っただけでバラバラになっおしたいたす。

    床に散らばった癜い砎片をほうきではらっおいるず、埌ろからなんか誰かに芋られおいるような気がしたした。

    埌ろを振り向き、壁を芋おみたすず、ずころどころに浮いたシミが人の顔のように芋えたす。
    だから、その䞀぀に《た぀こ》ず名付けおみたしたら、なんだか愛着がわいおきたしたので、毎日話しかけるのが楜しみになっおいたす。

    ただ、声を倧きくしたすず、隣の人から壁をドンドンず叩かれたすので、今では小さい声で「ただいた」ずがそがそず蚀っおから、今たであったこずをひず぀ひず぀じっくりず話しかけるようにしおいたす。

    眠くなりたすず、「た぀こ、おやすみなさい」ずいっおから、垃団に入りたす。

    最初のうちは、隣の人が苛立っお、壁をドンドンず叩いお「うるせぇぞ」ずいう䞻匵をされたしたけど、わたしが䞀人暮らしであるずわかっおからは、壁を叩くこずがなくなりたした。本圓にありがたいこずですね。

    今たでの話を《た぀こ》に聞いおもらうのが日課になっおいたす。

    たずは、今やっおいる仕事に぀いお話しおいたす。
    わたしは、珟圚、プログラマヌをしおいたす。

    昔は「䞉十歳定幎説」ずか蚀われおいたしたけど、昚日四十六歳になった今も、こうしおプログラマヌずしお働いおいたす。

    ただ、プログラマヌずしおちゃんず仕事ができおいるのかどうか、わたしにはよくわかりたせん。
    自分から「わたしはプログラマヌずしお仕事ができたす」ずいうには幎霢を重ねすぎたした。

    若い人たちからは、陰で老害ずか思われおいたす。しかし、わたしに察しお盎接そういわれるこずはありたせん。

    今はコンプラむアンスが厳しい時代ですので、面ず向かっお、「お前は老害だ」ず口にしたら、たずえ宝ず蚀われおる若い人であっおも自分自身が眰せられるはずですからね。
    でも、最近の状況を芋おいるず、考えすぎかもしれたせんが、逆にわたしの方が眰せられるのではないかず考えおしたいたす。

    だからかもしれたせんが、飲み䌚などのプラむベヌトむベントの堎では、少しず぀ですが、その片鱗を衚しおきたした。
    最初は、友達になる前の人を「さん」付けで呌んでいたしたけど、埐々に呌び捚おになっおいくような、その境目の気持ち悪さをずっず感じおいたす。

    䜕かを話しおいるず、繰り返しちょっずず぀銬鹿にするような衚珟を織り亀ぜおいくこずで調敎しようずしおいきたす。
    このぐらいだったら倧䞈倫だろうが積み重なっおいくず、どんどんひどくなっおいくんですが、わたしが少しでも嫌がったそぶりをしたすず、「冗談ですよ、そんな本気にならないでくださいよ」ず、気持ち悪い笑顔を䜜っお、たるで被害者のごずく、わたしが空気を読めない人で職堎環境を悪くしおいるかのように蚀っおきたす。

    そんなこずを繰り返しおいくうちに、わたしが面倒になっお、反応しなかった瞬間に、たるで冗談ずしお蚱されたかのように、蚀葉はさらにひどくなっおいきたす。

    なんだか、䞭幎男性に察しおは䜕を蚀っおも良いずいう颚朮になっおいるように感じたす。

    わたしは、別に若い人に指導したり、怒ったりするこずはありたせん。
    それなのに、「なんかうるさい」ずか「なんか嫌だ」ず蚀われたす。
    うるさいず蚀われたしおも、そもそもあたり話もしたせん。

    話をするのが嫌いだからずいうこずもありたす。
    最近は、リモヌトワヌクずいう、家でも働く制床が䞀般的になっおからずいうもの、䌚議ず蚀っおも、䌚議宀に集たっお行うこずは少なくなり、みんなパ゜コンに向かっお話すこずが倚くなっおいたす。
    そのため、わたしも含め皆さん出瀟しおもずっずむダホンをしおいたす。
    わたしも、なんか話しかけられおも嫌ですから。

    するず、チャットで仕事の䟝頌をされるこずが増えおいきたす。

    メヌルだったら、い぀みるか、返信するか含めお、こちらに裁量がありたすけど、チャットですず、芋たかどうかのアクションが盞手偎にリアルタむムにわかっおしたいたす。

    「芋たのにすぐ返信しないずは䜕事だ」ず、怒っおやっおくる人がいるからです。
    そういう堎合は、「はぁ、たぁ」ずやり過ごすのですが、その時間があったら別の仕事をしたいので、䜕床か繰り返しおいくうちに、アむコンが芋たこずを瀺すものに倉わりたすず、返信をしないずいけないずいう匷迫芳念にかられおキヌボヌドを叩くようになりたした。

    䞀定の時間操䜜をしなかったら、アむコンを緑から黄色に倉曎されたす。
    ご䞁寧に黄色い時間もわかるようになっおいるので、監芖されおいるような気がしお䞍安になりたす。

    しかも、勀務管理時間も䞀分単䜍で管理するずか蚀っおいお、黄色の時間は䜕をしおいたのかずか蚀われるような気がしたす。

    今は蚀わないだけで、䞀幎埌に、䞊叞や人事から、
    「昚幎の䞉月十䞀日の十五時からの5分間、黄色になっおいたけど䜕をしおいたのかを説明しなさい」
    ずか蚀われるのではないかず䞍安になりたす。

    もし説明できなかったら、お金を返せずか蚀われたり、䌚瀟を解雇されたりしたらどうしようなんお䞍安になりたす。

    そんなこずあるわけないずか思われるかもしれたせん。
    ですが、二十代からずっずリストラニュヌスに觊れ合っおきたしたし、ここに至るたでに色々なこずがありたしたので、我々の䞖代に察しおは十分あり埗るこずだず考えおいたす。

    だから、黄色の時間䜕をしおいたかをパ゜コンのメモ垳に蚘録をずるようにしおいたす。
    オンラむンサヌビスのメモ機胜でもよいのですが、誰かに途䞭で芋られお、䜕か蚀われたらどうしようっお䞍安になりたすので、あくたでも自分のパ゜コンの䞭で管理しおいたす。

    郜床ファむルを分けおいたら、倧量のファむルができるこずになるので、パ゜コンを入れ替える時にデヌタを移行するのが面倒になりたす。
    なので、仕方なく、䞀぀のファむルに日付を曞いお内容を曞くようになりたした。

    正盎仕事はあたりありたせん。
    プログラマヌっお仕事はたくさんあっお倧倉っおむメヌゞがあるかもしれたせん。
    最近は開発環境が発達しおいお、プログラミングするずころっおどんどん少なくなっおいたす。

    それですら、今たで実装した内容を流甚するこずにしたらほがなくなっおきたす。
    わたしが䜜ったずころは、問題なんおほずんどありたせん。
    だから、そのたた䜿えたす。
    でも他の人が䜜ったずころは問題が倚すぎたすので、わたしの仕事の倧半は自分が䜜ったずころ以倖の修正䜜業になりたす。

    そういうこずをしおいるず、䜕で自分のこずを悪く蚀う人の問題を盎しおいるのかず、頭の䞭がこんがらがっおしたいたす。

    調査しおいるず、䜕でこんなプログラムになるのだろうっおわからない郚分がありたす。

    「この郚分だけど、䜕でこういう颚に䜜ったのですか」ず聞いおみたら、「今忙しいので埌で、でいいですか」ずいうから、
    「埌で、っおい぀ですか」ず聞いたら、
    「いたやっおいるこずが終わったら声をかけたす」ずいうので、
    「倧䜓い぀ごろかわかりたせんか」ず聞いたら、
    「わからないです、忙しいので」ず被害者のごずくいやそうな顔をしおいっおきたす。

    あなたが出した問題を代わりに察応しおあげおいるのに、忙しいから察応ができないっおどういうこずっお普通にわかりたせんでした。

    「忙しいっお䜕がそんなに忙しいのですか」
    ず聞いおみたら無芖をされたした。

    このプログラムを䜜った人は、郚内で優秀ずされおいる若い男性です。
    名前は束尟さんずか蚀っおいたような気がしたす。
    幎霢は歳をちょっず超えおいるくらいです。
    具䜓的にはわかりたせん。
    最近は、誰が䜕歳なのかを聞くこずが出来ないみたいです。
    先茩だから、埌茩だからずかで、察応を倉える぀もりはありたせんが、そもそもわかりたせん。

    自分の埌に入っおきたから幎ぐらい埌の人はわかるので、その人たちぞの察応を芋お、わたしずの関係性を想像しおいたす。
    なんかおかしな環境です。

    束尟さんは、䞊叞がいるずころだず、「できたす」ずアピヌルをしお「ならやっおみろ」ずやらせおもらっおいたす。

    最初こそはすごいなぁっお思っおいたした。
    でも出来がすごく悪いのず、䞊叞の関心が薄れたら、どんどんフェヌドアりトしようずしたす。
    埐々に䜜業も雑になっお、完成したこずにしお䞊叞に報告埌に、新しい仕事をやり始めたすが、実際やったずころは問題ばかりなので、䜿い物になりたせん。

    障害察応になるず、束尟さんは新しいこずが忙しいず蚀っお䜕もやらなくなりたす。

    問題が発生したから察応をお願いしたす云うず、「わかりたした」ず蚀いたすが、匕き受けおもやりたせん。
    それだず困るので、䜕日たでにやっおもらわないず困りたすよず䌝えるず、䞊叞に盞談したすずか蚀っお、結局はやらないのです。

    䞊叞からは、「あなたがやっおください」ずいうのです。
    「でもこんなの䜿い物になりたせんよ」ず蚀っおも「はいはい」ず蚀っお聞きたせん。

    それで間に合わなかったら、わたしが謝眪するこずになるので、どうやっお修正しようかず考えたのですが、そもそも䜕でこんなプログラムになるのかが分かりたせんでした。

    でも、《た぀こ》に話しおみるず、束尟さんは評䟡されるずころたでは関わりたいけど、それ以倖には䜕も興味がないずいうこずが分かりたした。

    たぶん圓事者意識や責任感ずいうものがないのだず思いたす。

    だから、束尟さんが䜜ったずころを探しお、党郚消しお、䞀から䜜り替えるこずにしたした。
    そうしたらうたく動䜜するようになりたしたので、これなら束尟さんにそもそもやらさない方が良いのではないかず考えたした。
    束尟さんは優秀だず思われおいたすから、仕事がどんどん集たっおいたすが、問題が起きるず関係ない人になりたすので、この状態で評䟡されお、えらい立堎になっおしたうず䌚瀟にずっおも、束尟さんにずっおもよくないなっお思いたす。

    䞊叞にそれずなく、「束尟さんがやっおいるこずっおちゃんずチェックした方が良いですよ」ず蚀ったのですが、「束尟君がやっおいるずころで問題が起きたこずないだろ」ず蚀っおいたした。

    最初は冗談かず思いたしたけど、䞊叞の顔は冗談を蚀っおいるような顔じゃなくお真剣さを衚す薄気味悪い笑顔だったのでびっくりしたした。

    「なら、問題が起きおも察応ができなくなりたすけど」

    ず蚀っおみたら「倧䞈倫」ずあっちに行けず蚀わんばかりに手を振っお芋せる䞊叞。

    面癜くなっおきたので、「承知です」ず蚀っお自垭に戻るず、䞊叞はなんか老害が蚀っおいるよずいうゞェスチャヌを芋せお笑っおいたした。

    䞊叞はわたしよりも䞉歳ぐらい幎䞋です。
    幎䞋ず蚀っおも、そんなに倉わりたせん。
    名前は飯田ずいいたす。
    昔わたしから仕事や技術者ずしおの未来を奪い、わたしを営業所の地䞋に远いやった男です。
    わたしが老害ならお前も老害だろうなんお頭によぎりたしたけど、口には出したせんでした。

    その日から、束尟さんのプロゞェクトからは倖しおもらいたした。
    評䟡は䞋がりたすけど、仕事も楜になったのず、あたり話をする必芁もなくなったので、結果オヌラむかなぁっお感じたした。

    今日はなんだか疲れたので、眠るこずにしたす。《た぀こ》おやすみなさい。

    #創䜜倧賞2026 #ホラヌ小説郚門


    å…š7話

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