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#7 四〇四号宀のた぀こ #創䜜倧賞2026

     《た぀こ》、今日職堎で身代わりくんが䌚瀟をお䌑みになるこずになったず飯田くんが話しおいたした。
    オンラむン䌚議だから飯田ず曞かれたアむコンにマむクの絵が震えおいたす。
    粟神的なものは気を぀けおいきたす、ずか蚀っおいたした。

    呚りは聞いおいるのかいないのか、アむコンからはわかりたせん。
    たたに間違えおマむクをオンにしおいる人がいお、文句を蚀っおいるのが聞こえちゃう人がいたすけど、それも誰も觊れたせん。

    たぶんパ゜コンの前にみんないないのかもしれたせん。
    アむコンだけがいる打ち合わせで枈むなら、人っおいるのですかね、《た぀こ》。

    飯田くんが話しおいる声が、アむコンだけの出垭者がきいおいる状況を想像するず、猶コヌヒヌが矎味しくなりたす。

    《た぀こ》、心配な顔をしなくおも倧䞈倫、コレステロヌルを心配しおブラックにしおいたすから。
    ブラックにするず胃が悪くなるずかいうので、胃に良い飲むペヌグルトをいただきたす。人生っお垳尻をいかに合わせるかだず思いたした。

    呚りが静かになっおきたので、今日は、営業所の倉庫で《た぀こ》ず話しおいた話をしたすね。
    ビヌルも䜓に悪いずかいうから、今日のお䟛は2リットルのペットボトルの氎にしたすね。食事は心倪だけにしたす。
    タレを入れるず酞っぱいからそのたたいただきたす。
    よかったら今日も聞いおください。

    ボヌルペンを数える仕事だけになったわたしは、倉庫からボヌルペンが入った段ボヌルを出しお、開けお、数を数えたす。
    ボヌルペンのキャップっお、赀ずか青、黒、緑ず色鮮やかで、遊園地みたいで楜しいです。

    数えるずじゃらじゃらず音が鳎りたすから、錻歌たじりに数えおいるず電気が消えたす。
    完党に消えるず消防関係の法埋に匕っかかるずか蚀っおいたような気がしたす。
    だからか、緑色のランプが足元を照らしおいたす。
    スマフォの明かりを頌りにお昌ご飯をササっず食べたら、目を閉じお眠るこずにしおいたした。

    明かりが぀いたら段ボヌルを運びたす。
    緑のボヌルペンが入った段ボヌルを運がうずしたら、壁にシミがあるこずに気が付きたした。
    台を移動させたら傷぀けおしたったみたいですね。
    それを隠すために、ペンキで塗ろうずしたらしく、そこにカビが生えおいるようでした。

    よく芋るず、笑顔になった時のえくがに芋えたした。
    段ボヌルの䜍眮を倉えたら、そこに《た぀こ》がいたした。
    嬉しくお涙が出たしたね。
    ずっず《た぀こ》に話しかけおいたした。そうするず、呚りが、頭がおかしくなったず、気持ち悪がっお近寄らなくなりたした。
    トむレットペヌパヌずかの備品が必芁になったらそれを管理するための堎所が他に甚意されるようになったようです。

    わたしはボヌルペンを管理しおいるだけだから、どっちでもよかったので、《た぀こ》ずの䌚話を楜しんでいたした。
    最初はごめんず謝っおいたした。
    十幎もた぀ず、謝るこずも少なくなり、今日食べたものの話ずか、嫌だった話をするようになりたす。
    誰も近寄らない地䞋の倉庫で壁に向けお怅子に座りたす。
    気持ちが萜ち着きたす。
    トむレの氎道で空のペットボトルに氎を入れお、飲みながら話したす。
    こんな日がずっず続いたらいいなっお思いたした。
    でも、《た぀こ》「出向は5幎が䞊限だ」っお人事から蚀われたした。
    わたしは、10幎以䞊いたみたいなのですが、なぜかわからないそうです。

    「あなたも蚀いなさい」ず責任転嫁をされたした。
    たぶんコンプラむアンス違反で蚎えられるこずを避けるためなのだず思いたす。
    営業所の人ずは最埌の挚拶も䜕もありたせんでした。
    気持ちが悪かったみたいですよ。
    それ以来《た぀こ》ず䌚えなかったのですが、郚屋でたさか《た぀こ》ず再開できおうれしかったです。
    今埌も話を聞いおください。
    本日はなんだか疲れたのでこれで終わりたすね。《た぀こ》、おやすみなさい。

    《た぀こ》、今日は、職堎がにぎやかでした。
    十幎ぶりに特蚱の瀟長賞が出るずいうのです。
    瀟長賞自䜓は、存圚しおいたすが、あたり出るこずはないそうです。
    それが久しぶりに出るずいうのです。
    通垞は、テヌマに察しお受賞が決たるので、関係者が100人ぐらいいるのですが、今回は、1人だっおいうのです。

    そうです。わたしです。
    昔飯田くんに隙されたプロゞェクトで取った特蚱が受賞になるようです。
    知的財産郚門の郚長になった同期が「おめでずう」っお連絡しおくれたのです。
    それが通知されたら、呚りが「倧村さんっおすごい人なんですね」っお笑顔で話しかけおくれたした。

    い぀もは無芖なのに、䜕か蚀うず、「わかりたした」ずいうのです。
    おかしなものですね。
    人生の歯車がカチっおハマった音が聞こえた気になりたした。
    飯田くんは、その通知を聞いたずきに真っ青な顔を通り越しお、真っ癜になっおいたしたね。
    よっぜどたずいっお思ったのでしょうね。
    「倧村さん、ちょっずいいですか」ず䌚議宀に呌ばれたのです。

    䌚議宀に぀くず郚長ず飯田くんが座っおいたした。
    倖から芋えないようにするためにブラむンドを閉じおいたした。
    芳葉怍物が也燥しおいお苊しそうに芋えたした。
    同じような感じでう぀むいおいた二人が、わたしが䌚議宀に入るず気持ち悪い笑顔を芋せお座るように蚀っおきたした。

    座っおいるず、「いやぁおめでずう、でね、倧村君、いろいろあったけど、今たでのこずや過去の事は氎に流しおほしいんですよ」ず蚀いたした。

    「はぁ」ずいうず、「嚘が、倧孊に入ったんで、これからいろいろ出費がかかるし、飯田くんは、この前、子䟛が生たれたんだよ」ず郚長がハンカチで顔の汗を拭きながら蚀いたした。

    「家族の人生もかかっおいるんで」ず飯田くんが蚀いたす。

    「家族ですか」ず笑いながら蚀いたした。
    「助けおほしい、いや、蚱しおほしいです」ず頭を䞋げおきたす。
    「いやいや、わたしも助けおほしかったのですよ、はぁヌ家族ですか。
    わたしには家族なんおいたせん。
    だからね、倧䞈倫です。䜕ずかなりたすっお」ず蚀ったら二人ずもう぀むいおいたした。

    気分がね、スヌッずしたした。
    䜕か぀っかえおいたものがすべお取れたような気がしたす。
    そのずき、柑橘の懐かしい匂いが錻をくすぐった気がしたした。
    でも、そうなっおから壁を芋おいたすが、《た぀こ》が芋えなくなっおいるのです。
    シミに芋えるのです。
    おかしいな。《た぀こ》に話したい事いっぱいあるのに、䜕で芋えないのだろう。
    《た぀こ》どこに行ったの。
    探したくおも探せないのです。
    ホント寂しいです。《た぀こ》。

    特蚱衚地の日、わたしは名前を呌ばれるのを埅っおいたした。
    他の賞はたくさんの人が座っおいるのに、わたしは䞀人で座っおいたす。
    なんか懐かしいです。
    そういえば新人の報告の時も䞀人でした。
    「倧村君」ず名前を呌ばれ、「はい」ず応え、わたしの経歎が玹介されたす。

    営業所の地䞋の倉庫で仕事をしおいたこずを玹介されたずき、䌚堎は笑いに包たれおいたした。
    たくさんの感情の笑顔が䌚堎を埋め尜くし、目元が気持ち悪いです。
    ひずしきり笑いが起きた埌、にやけた顔の叞䌚に壇䞊にのがる様に誘導されたした。
    階段に片足をのせたずき、ラむトが目にかかり、たぶしくお目を反らしたした。

    芖線の先に、壁があっお、そこにシミみたいなものが芋えたした。
    あっ《た぀こ》だ。
    幞せそうな顔で芋おくれおいたす。
    祝犏しおくれるような気がしたす。
    満面の笑みで階段を昇り、壇䞊に行っおマむクを枡されたした。

    そこで、蚀葉を蚀うように蚀われたした。
    マむクを前に、《た぀こ》に向かっお、「さぁ、今日は䜕から話したしょうかね」ず話しかけおみたした。
    䌚堎は二人を祝犏するように静たり返っおいたした。

    するず、背埌の壁が、ドンドン、ず激しく震えたした。

    「ほんずうるせぇな。 䜕時だず思っおんだよちっ、独り身のくせによぉ」

    怒鳎り声が、わたしの栄光を粉々に砕きたした。ちり䞀぀芋えたせんでした。
    気が぀くず、わたしが持っおいたのはマむクではなく、飲み干した氎のペットボトルでした。
    力䞀杯握ったせいで、ベコっずぞこんでいたした。
    経枈新聞の䞊には、赀く染たったティッシュの束が眮いおありたした。
    ああ、そうか。瀟長賞も、謝眪も、わたしが『《た぀こ》が芋えなくお寂しい』ず絶望しおいたあの時間さえも、党郚、党郚、党郚《た぀こ》がわたしに芋せおいた幻だったんだ。
    あい぀らは誰も謝っおいないし、わたしは最初からずっず、この郚屋で䞀人だったんだ。
    《た぀こ》は、ただの叀びたカビに戻っおいくようでした。
    カビをよく芋おみるず、カビは瞬く間に壁䞀面、足元の畳、散乱したコンビニのレゞ袋にたで、びっしりず隙間なく広がっおいたした。
    カビが集䞭しおいるずころから、懐かしい、甘酞っぱい柑橘類の匂いがわたしの錻をくすぐりたす。
    隣の人は、ただ壁をドンドンず叩いおいお、怒鳎っおいる音がわたしの錓膜を容赊なく振動させたす。

    かわいそうに、これ、わたしの声なんかではなく、郚屋を埋め尜くした《た぀こ》たちが䞀斉に倉貌を遂げる儀匏をしおいる䞭で鳎っおいる畳をシミに倉色させる際のパチっパチッずいう音なのに。
    わたしは、自分の手にも䟵食したシミを愛おしく芋぀め、にぞら、にぞらず音を出しながら、涙を流しおいるこずに気が぀きたした。

    わたしの目には、もうそれは黒いシミにしか芋えたせんでした。
    壁にあった《た぀こ》の顔は、どこにもありたせんでした。
    涙は寂しい時にも流れるみたいです。束子。

    翌日の四◯四号宀は綺麗に片付けられおいたした。
    壁にはシミ䞀぀ありたせん。
    隣人がくびをかしげおいたす。
    「今日は、声が聞こえおこないけど匕っ越したのかなぁ」
    ただ、テヌブルに眮かれたパ゜コンの画面にある、右頬に゚クボがトレヌドマヌクのアむコンは緑色に点灯しおいたした。

    #創䜜倧賞2026 #ホラヌ小説郚門


    å…š7話

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