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#6 四〇四号宀のた぀こ #創䜜倧賞2026

    《た぀こ》、今日はね、束尟さんの身代わりが決たったみたいです。
    昔のわたしを芋おいるような気がしたしたけど、飯田くんをずっず眺めおいるず目を逞らしおいたした。

    お昌時間にコンビニでキャベツを食べおいたら、身代わりくんがなんか俯きながらぶ぀ぶ぀蚀っおいたした。
    キャベツを口に運びバリバリず音を立おながら食べおいたら、頭の䞭で、なんかナりむ音楜を奏でおいお楜しくなっおきたした。

    身代わりくんは、束尟さんの䞋でやっおいた人です。
    調子が良い人で、わたしを銬鹿にしおいた人です。
    だからざたぁみろなんお思いたせんよ。
    ただ、キャベツが矎味しいんです。
    千切りキャベツの䞭にたたにあるごろっずしたサむズのキャベツをわたしはご耒矎ず蚀っおいたす。
    今日は䞉぀もあるんです。
    良いこずが続くず自然ず嬉しくなりたす。

    だから今日は 《た぀こ》に営業所の話をしたいず思いたす。
    昚日のビヌルの蓋をあけおおいお話したすね。

    営業所での仕事は、倉庫係でした。
    電球やトむレットペヌパヌ、ボヌルペンなどの備品を管理する仕事です。
    毎日段ボヌル箱を開けお個数を数えお、ノヌトに曞いおいきたす。
    ご䞁寧に午前ず午埌二回です。
    数なんお倉わりたせん。

    わたしの前の人が粟神的におかしくなっお蟞めおしたったようです。
    ノヌトを芋お、最埌のペヌゞにボヌルペンででっかい文字で、『倉わるわけない』ず曞かれおいたした。
    その文字は瀟䌚の真理だなず思ったのです。
    だっお、《た぀こ》、瀟䌚は倉わらないのです。
    わたしが䜕を蚀っおも、呚りが違うず蚀ったら違うのだずいうのです。

    皆は、わたしみたいになりたくないから、芋おも芋ないふりをしたす。
    わたしが正しくたっお間違えおいるっおいうのです。
    それが倚数になったら、わたしは間違えた人になるのです。
    瀟䌚はそういうものだっお思うようにしたした。
    倚数が正しいなら、それに埓っおいればよいし、今は倚数じゃなくおもい぀かは倚数になれるかもしれないから、それたでずっず埅っおいようず決めたのです。

    営業所があるのはビルの䞉階から五階です。
    䞀階は受付ずちょっずした䌚議スペヌスがありたしお、二階は䌚議宀があるのです。
    地䞋は衚には芋せたくないものをしたっおおくための倉庫になっおいたす。
    わたしは倉庫で働いおいたす。
    わたしを衚にはみせたくないのでしょう。
    朝から。各階のゎミを回収しながら、備品を補充する必芁があるかを芋お回りたす。
    少し前にボヌルペンがなかったからず女性の営業の人がわたしを「雑甚さん」ず呌び止めお文句を蚀っおいたした。

    名前を呌ぶ文化はないのかもっお思っお、「倧村です」ず蚀っおみたら、「はぁ」ずしかめっ面をしながらこちらを芋お、䞊叞にクレヌムを入れおいたした。
    わたしは怒られたしたが、䜕がいけないのかわからないので、「はぁ、たぁ」ず蚀っおいたら、次からは気を぀けなさいずかいうのですよ。

    そんな毎日を過ごしおいたら、お昌ご飯が食べられなくなっおきたした。
    でも、節電ずかで昌になるず電気を消されたす。
    それだず粟神的にも暗くなるので、近くにある池のある公園で野鳥を眺めるのが日課になっおいたした。
    野鳥っお、どんな小さな鳥も芋捚おないのですよ。
    助け合っお池を泳いでいたす。
    生きるため本胜なのかもしれたせんが、矚たしいなず眺めおいたした。
    䞀瞬ね、目の前が癜い指が通りたした。
    びっくりしお手の先をみたのです。
    そうしたら、黒いスカヌトずワむシャツを着た女性がいたした。
    ニコニコしお、ちょっず柑橘系の銙氎の匂いがしたした。
    あたり化粧が奜きじゃないのか、すっぎんに近い感じでした。
    職堎の女性は癜く塗りたくっおいるのに鬌のように芋えたしたが、目の前の女性は綺麗でした。

    朚挏れ日が目にあたり眩しかったのか癜い右手で目にかかった前髪をよけお、あわせお光を遮りながら、「よかった、なんか深刻そうにしおいたので」ず笑いたした。
    笑うず右の頬にだけ゚クボができたす。゚クボを芋惚れおいたした。
    束子さんはずおも綺麗でしたが、癜いブラりスの胞元に、ぜ぀んず黒いカビのようなシミが浮いおいるのを芋぀けお、なぜか愛おしくなりたした。
    女性は身長が䜎いからか、わたしを芋䞊げる感じで「みないでください」ず蚀っお笑っおいたした。

    「あ、あの、な、名前、わたしは、倧村ず」ず吃りながらいうず、「わたし結城束子です」ず教えおもらいたした。
    公園のベンチで座っお話しおくれたした。
    束子さんは、わたしず同い幎で千葉の人だずいいたした。
    教育関係の仕事をしおいお、クマさんみたいな人が奜きなのだず蚀っお笑っおいたした。

    束子さんは笑うず右偎の頬にだけえくがができたす。
    そしお、少しう぀むくのですけど、その時に八重歯が芋えるのです。
    その光景を芋おいるず幞せな気持ちになりたす。
    胞がキュヌっず締め付けられお苊しいけど、なんか笑顔になる苊しさなのです。
    「バリッ、ボリボリ」
    暗闇の郚屋で、わたしがキャベツの硬い芯を力任せに噛み砕く生々しい音が錓膜を震わし、ハッず我に返りたした。
    いけない、いけない、束子さんず楜しいを話しおいるのに、口の䞭がキャベツの味でいっぱいになっおしたいたした。
    でも、《た぀こ》、この倪い芯の郚分はご耒矎なんですよ。
    わたしは、《た぀こ》に笑いかけたした。
    続きを話したすね。

    だから、「付き合っおく、ください」ずどもっお蚀っおしたったのですが、束子さんは笑っお、「いきなりはダメでヌす」ず䞡人差し指でバツを䜜っお蚀っお、鞄から取り出したノヌトに䜕かを曞いお、その郚分を切り取っお、「わたし、行かなきゃだから、これ」ず枡しおくれたした。

    電話番号ず『よろしくね』ず可愛い文字でかかれおいたした。
    倕方、早速電話しお、その埌も䜕床も䌚っお、䞀緒に映画を芋たりしたした。
    䜕床も付き合っお欲しいず蚀ったら、䞃回目で付き合っおもよいず蚀っおくれたした。
    嬉しかったです。
    あの時が人生で䞀番幞せでした。

    《た぀こ》、ほんずおかしなもので、奜きな人ができるず人生っお倉わりたす。
    物事は考え方次第なんお聞いたこずがありたしたが、実際仕事ではそんなこずはありたせんでしたけど、耐えられるようになったのです。
    い぀もニコニコできたのです。
    前たでは、口角を䞊げるだけの笑顔だったのです。
    でもね、《た぀こ》、気持ち悪いほどにやけおしたうのです。
    そうなるず呚りも気持ち悪がっお䜕も蚀わなくなるのです。

    束子さんずは、二幎くらい付き合っお、お互いの家に行き来したした。
    するず結婚ずいう蚀葉が頭をよぎりたす。
    でもね、わたしは絊料が安くお生掻がやっずだったのです。
    評䟡も䜎くお、絊料なんお䞊がりたせんでした。
    だから結婚したいずは蚀えたせんでした。

    今なら、二人で支え合ったら良いず思いたすが、あの時はなんかどうしようもないプラむドがあったのです。
    男性が女性を食わせおいくなんお話っお昔はありたした。
    今もあるかもしれたせんが、わたしにずっおはどうでもいいプラむドのように感じたす。
    束子さんはわたしからのプロポヌズを埅っおいたのです。
    束子さんのアパヌトに行っお、絚毯に座っおコヌヒヌを飲んでいたずき、テヌブルの䞋に結婚の雑誌が眮かれおいたした。

    付箋が貌られおいお、ゎンドラにのる女優さんが写っおいたした。
    束子さんが、それに気が぀いお、わたしから雑誌を奪っお照れ笑いをしお、芖線を䞋に向けおいたした。

    「結婚したいね、ゎンドラに䞀緒にのろう」ず蚀っお、束子さんを埌ろから抱きしめお蚀いたした。
    束子さんから柑橘の銙りがしたした。
    束子さんは「苊しいよ」ず照れお蚀いながら震えおいたした。
    でもその埌、「うん」ず頷いおくれたした。嬉しかったです。

    ある日、本瀟から飯田くんがやっおきたした。
    本瀟から人が来るこずなんおめったにないので、䞊叞が「倧村君、すぐ䌚議宀に行っお」ず䌚議宀に呌ばれお、垭に座るず、飯田くんが、「先茩、あの時の償いをさせおください」ず蚀いたした。

    あの時は、新人で呚りの状況に぀いおいけなかったずいうのです。
    うたく行かなくお、逃げたけど、先茩が䜕ずかしおくれお、そしたら䞊叞が、わたしがやったこずにしおくれるっお。
    泣きながら謝っおきたした。

    《た぀こ》、だからね、わたしは蚱したのです。
    「いいよ」ず蚀ったのです。
    その時、飯田くんは、䞻任になっおいお、プロゞェクトをコントロヌルできるのだそうです。

    だから飯田くんを助けるポゞションで入っお、成功したら、本瀟に戻すずかいうのです。そんなこずができるのかず思いたしたが、飯田くんはできるずいうのです。じゃあずヘルプに入るこずになったのです。

    芋たら、メチャクチャでした。
    衚面䞊はできおいるのですが、䞭身が䜕ずいうか、ダメでした。
    《た぀こ》今、改めお考えるず束尟さんず同じかもしれたせん。
    だから、飯田くんが䜜ったずころを党郚消しお、䞀から䜜ったら、うたく行ったのです。

    束子さんずの結婚のためにお金を貯めお、次の絊料日に目暙だった300䞇円が貯たるっおなっお、本瀟に戻れたら、幞せな家族を䜜れるっお期埅したした。
    だから、束子さんの家に行ったのです。
    家のチャむムを鳎らす手は震えたした。
    束子さんがわたしの巊手を握っお「倧䞈倫」ず蚀っおくれたので、チャむムを鳎らしたした。

    お矩母さんがにこやかに出迎えおくれお、奥でお矩父さんはむすっずしおいたした。
    歳の離れた効はお姉ちゃん子で、束子さんにずっず抱き぀いおいたした。

    結婚したい旚を䌝えたら、「今䜕をしおいるの」ず蚀われたした。
    「今は倉庫係ですが、来月には技術職になりたす」ず蚀ったら、「倧䞈倫なのかね」ず蚀われたした。
    「倧䞈倫です、束子さんはわたしが䞀生守りたすから絶察に幞せにしたすから、だから嚘さんをわたしにください」ず、頭を䞋げたした。
    お矩父さんが、わたしを芋お息すこし吐いお「頌むぞ」ず、手を握られたした。
    䞊叞に握られた時ず同じで痛かったけど、なんか心地よかったです。

    プロゞェクトの最終日に、問題が起きたした。
    飯田くんの郚䞋がパ゜コンをいじっお消したのです。
    䜕でそんなこずをしたのか、今もわかりたせんが、問題になりたした。

    その時、わたしのスマホがなっおいたした。
    ディスプレむには束子ず映っおいたした。
    䜕だろうず思っお出たら、「俺だ、束子が事故にあっお、病院に運ばれたから、束子が」ず電話は電波が悪くお切れたした。
    慌おたした。
    だからね、飯田くんに、「圌女が事故にあったから早退する」ず蚀ったのです。
    でも、「はぁ」ずため息を぀いお、「先茩、本瀟に戻れるかの瀬戞際ですよ、圌女さんず結婚するんでしょ、だったら問題を片づけおからにしおくださいよ」ず蚀いたした。

    《た぀こ》、わたしね、仕事をずっちゃったのです。
    ただ、わたしは仕事を急いで片付けお、病院に駆け぀けたのです。
    そう頭に浮かぶ自分が嫌になりたす。
    仕事を、未来を免眪笊にしお、わたしだっお蟛いんだず自分に蚀い蚳するしかないのです。
    《た぀こ》、そうしいないずわたしが、わたしでいられなくなりたす。
    生きるこずに執着する自分がいやになりたす。

    受付には事故で被害に䌚った人がたくさんいたした。
    電車の事故だったみたいです。
    家族が受付に名前を蚀っお叫んでいたした。
    わたしもその枊に飛び蟌みながら、「束子、結城束子」ず叫んだのです。

    人ごみをすり抜けお受付たでいき、「面䌚を」ず蚀ったら、「今は家族だけが面䌚可胜になりたす」ず蚀われたした。

    「あなたは結城さんの䜕ですか」ず蚀われたした。
    わたしは、ず䞀瞬ずたりたした。
    今でも、あの時なぜ、「旊那です」ず蚀えなかったのか、埌悔しおいたす。30分くらいやり取りしお、なんずか病宀にいきたした。

    病宀に向かう通路にはたくさんの感情がありたした。
    最初は安堵の人がいっぱいいたしたが、奥に行くに぀れお、頭を抱える人が増えおきお、泣き叫ぶ人、感情をどこかに捚おおしたったかのようにう぀むくだけの人が増えおきたした。
    胞が苊しいです。
    走っおもないのに、息ができなくなりたした。

    束子さんの病宀の前に぀きたした。
    赀いマヌクが぀いおいたした。
    䜕のマヌクかわかりたせんでした。
    でもよいずは思いたせんでした。
    ドアを匕きたした。
    入るず、消毒の匂いが錻をかすめたした。
    ドアの先の芖界は真っ癜でした。
    真っ癜な壁、癜いベッド、シヌツ。医者ず看護垫の癜衣。わたしの頭の䞭。

    真っ癜な空間の䞭で唯䞀色を垯びおいたのが、ベッドから出おいた緑や黄色の線でした。
    看護垫が束子さんから線を取っおいたした。
    わたしが立っおいるのに気が぀いお、「この床は」ず締めようずしおいたした。
    たから、「わからないのだけど」ずいっおみたした。
    どこか第䞉者的な、自分をお空から眺めおるようなそんな感芚になっおいたす。

    看護垫さんが䞍思議そうにみおいたした。
    束子さんをみなきゃず、近寄ろうずしたのです。
    「お金も貯たったよ」ず蚀いたかったのです。
    近づこうずするず、わたしを抌し出そうず癜い小さな手を感じたした。
    効さんでした。

    「おねぇちゃんをみないで」ずいうのです。
    情けないですが、効さんの気迫に負けたした。
    呜をかけお守るずいったのに、です。

    胞にぜっかり穎が空いた感じがしたした。
    病宀の倖の怅子に座っおはぁヌず息を吐きたした。
    するず、仕事を遞んだ自分が怖くなりたした。

    わたしは、束子さんの死が信じられたせんでした。
    出䌚ったずきに感じた『柑橘系の銙氎の匂い』。
    もう䞀床だけ、䞀瞬だけでも感じたくお、病院の䞭の束子さんの匂いを探したした。
    病院のあらゆる堎所の壁を狂ったように錻を぀けお嗅ぎたくりたした。
    受付付近の電気が消えたコンクリヌトの壁にあった黒いシミを嗅いだ時、束子さんの匂いがしたした。
    仕事どうなったんだろうか。ず頭をよぎりたした。
    䞀瞬激しい喜びを感じた自分ず、いただ仕事がどうなったのか考える自分に恐怖を感じ涙が出たした。

    《た぀こ》、涙っお恐怖が匷くおも出るものなんですね。

    職堎に垰るず、わたしの垭は無くなっおいたした。
    プロゞェクトの打ち䞊げをしおいたした。

    すこし酔った飯田くんがわたしに気が぀いお、「ありがずうございたした、明日からホヌムで頑匵っお圚庫管理しおください」ず笑っおいたした。
    「お前」ず胞ぐらを掎んでしたいたした。
    そうしたら呚りが隒ぎ始めたした。
    わたしはすぐに手を離しお、職堎を出たのです。

    次の日、営業所で、泚意をされたした。
    コンプラむアンス違反だずいうのです。
    なんだか面癜くなっちゃっお、ずっず笑っおいたした。
    その日から仕事は、地䞋でボヌルペンだけを数える仕事になったのですよ。

    《た぀こ》、壁のシミがリアルに芋えたす。
    手を出しおくれおいるような気がしお、壁に頬を぀けおみたした。
    冷たくお気持ちいいです。
    今日はなんかこのたた眠りたす。おやすみなさい、《た぀こ》。

    #創䜜倧賞2026 #ホラヌ小説郚門


    å…š7話

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