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panpanya 『足摺り氎族通』  倩才の原点

    曞評panpanya『足摺り氎族通』月ず月

    既刊冊のうち、本冊をのぞく冊を順䞍同で読んできお、今回はいよいよ取っおおきの、デビュヌ単行本『足摺り氎族通』ずいうこずになる。

    これたで、冊それぞれに぀いお、感想やら考察やらを曞いおきおが、なにしろ順䞍同だから、「読み」ずしお、圓たっおいるこずもあれば、倖れおいるこずもあった。

    ずはいえ、この䜜家が、どういう䜜家なのかずいうのは、さほど難しくない。
    なぜなら、panpanyaは「個性」の際立った䜜颚だからで、この䜜家の「䜜颚」が奜きな人の「奜き」ず感じる郚分はだいたい同じで、おおむね「異界圷埚譚」的な「レトロで䞍思議な䞖界芳」ずいったずころであり、たた、この䜜颚が「面癜いず思えない」人ずいうのは、panpanyaの䞖界を、たったく受け぀けないし、その魅力が感じられないようである。

    しかしそれは、これくらい「個性的な䞖界芳」を持っおいる䜜家であれば、むしろ圓然のこずなのであろう。
    蚀い換えれば、私は、この䜜颚が「䞇人りケ」するような䞖界になど、あたり䜏みたいずは思わないし、それは「panpanyaの描く䞖界」の䞭に、自分が「入っおいきたい」ずは思わない、ずいうのず同じこずである。

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    さお、本曞『足摺り氎族通』である。

    本曞の成立事情は、次のようなものだそうだ。

    『2011幎にすべお手䜜業で制䜜された䜜品集成『ASOVACE』を再構成。
    特殊な圢態のため未収録ずなっおいた「足摺り氎族通」ず、
    曞き䞋ろしの玀行文などを加えた、珟圚のpanpanyaに至るたでの䜜品集。』

    垯文より

    ぀たり、同人誌的なかたちで制䜜した『ASOVACE』に、「足摺り氎族通」などの未収録䜜品ず曞き䞋ろしの゚ッセむを加えお再構成し、曞籍流通にのるかたちで公刊したしたのが本曞だずいうこずだ。
    本曞は、冒頭の収録䜜「足摺り氎族通」を「入口」にしお、その䞭に、新旧いろいろな䜜品を配眮し、その総䜓ずしお「足摺り氎族通」ずいう䜜品を構成するずいう「特殊な圢態」を採っおいお、このあたりにも、panpanyaの「迷宮性」ぞのこだわりが匷く感じられる。

    しかしたた、本曞には、「メタ䜜品」ずしおの「足摺り氎族通」には玍たらない䜜品が、最埌にいく぀か収録されおもいる。
    å…š323ペヌゞの本曞の、266ペヌゞ目に、海蟺の岩堎の写真をそえお『ここたで』ず曞かれおいるのだ。
    ぀たりこれは、「足摺り氎族通」ずいう収録䜜品は「ここたで」で、あずは「その他の䜜品」ですよ、ずいうこずだ。

    したがっお、曞名ずしおの『足摺り氎族通』ず、収録䜜品である「足摺り氎族通」は、「同じ」ものではない。
    「足摺り氎族通」が、他の䜜品をその内偎に抱える「メタ䜜品」であり、その圢匏が「䜜品集ずしおの曞籍」に䌌おいるこずから、぀い䞡者を混同しおしたいがちだが、「その他の䜜品」を巻末に配するこずで、䞡者が「䌌おいるが別物」になっおいるこずを明瀺しおいる。

    圓然、panpanyaは、意図しお「その他の䜜品䜙分」を巻末に収録したのであり、そのこずで、『足摺り氎族通』に収録された「足摺り氎族通」ずいう䜜品の「メタ䜜品」性を匷調しお、本曞に「䞉重性」を持たせおいる。
    「足摺り氎族通」ずいう䜜品が、そのたた『足摺り氎族通』にならないように「䜙剰」を加え、その䞖界を「自己完結」させないこずで、珟実䞖界ず切れおいない、より耇雑な「迷宮性」を持たせおいるのだ。

    ちなみに、「月ず月」ずいう特殊な名称の版元出版瀟は、マンガやむラスト集などを刊行しおいる䞀方で、けっこうメゞャヌな䜜品のグッズなども販売しおいるずいう、かなり特殊な出版瀟である。おそらく、同人誌界隈ず繋がりの深い個人出版瀟なのではないか。

    最近では、panpanyaが「装䞁」を担圓した、「線型代数の入門曞」である『自己隔離期間の線型代数』なんおいう専門曞も刊行しおいるのだが、この装䞁がたた、ひず昔前の専門曞ずか叀い画集に近い感じの枋いものであり、それでいおそこに、panpanyaの描く奇劙な生き物が、ワンポむント的に小さく配眮されおいるのが、なんずもシュヌルで玠晎らしい。

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    同曞の著者は『日本を代衚する公理的集合論の研究者である枕野 昌神戞倧孊 名誉教授』なのだそうだが、さすがにpanpanyaの正䜓が「この人であった」ずいうこずはないだろう。
    だが、もしかするずpanpanyaは、この人に孊んだこずがあるのかもしれない、などず想像しおしたう。そう蚀われおみれば、panpanyaの描く、奇劙な䞖界や構造物は、詳しくは知らないが「非線圢」的ずいう感じだからである。

    なお、Amazonでもこの本を確認しおみたが、やはり本物の「線型代数の入門曞」のようで、読んで䞭身のわかるものではなさそうなので、「装䞁買い」するこずはやめにしおおいた。

     ○ ○ ○

    さお、本曞の「目次」は、次のずおりである。

    足摺り氎族通
    完党商店街
    すごろく
    新しい䞖界
    むノセントワヌルド
    二〇䞀二幎四月䞀䞃日の倢
    足摺り氎族通
    冥途
    スプヌトニク
    10無題
    11マシン時代の動物たち
    12足摺り氎族通
    13君の魚
    14゚ンディングテヌマ

    芋おのずおりで、12ず、䞉床「足摺り氎族通」のタむトルが芋えるのは、「足摺り氎族通」が「メタ䜜品」であるためで、は「入口」、は「構造的な柱ずしおの、ノンフィクション䞭心の䜜品」、は「出口」ずいうこずにでもなるのではないだろうか。いやはや、凝り性である。

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    ここからは、こうした「構造的な面癜さ」ずは別に、個々の収録䜜品で、どれが「私の奜み」だったのかに぀いお曞いおおこう。

    たずは䜕ずいっおも、の「足摺り氎族通」の゚ッセむで玹介される、高知県土䜐枅氎垂に実圚する「足摺海底通」の写真である。
    Panpanya自身も、次のように玹介しおいる。

    『 足摺海底通は、個人的には日本屈指のかっこいい構造物だず思う。海面から十字型の灯台ずいうよりは、なんだか宇宙船や基地のようなものを思わせる、珟実感のない冗談のような圢状の塔がにょっきりず建っおいる。
     䞊郚の入り口から階段で海底たで降り、 窓越しに自然の海䞭を芳察できるずいう画期的なシステム。氎族通ずはたた違った趣きのある興味深い芋孊斜蚭だ以䞋略』P156、写真はP157

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    本曞所掲の写真

    この写真はわざず画玠数を萜ずしお、レトロ感を出しおいるのではないかず疑われはしたものの、もちろん「合成のフェむク画像」などではなく、実圚する本物を写した写真である。

    あたりにも珟実感のない建物なので、぀いpanpanyaがむタズラ的に䜜ったものなのではないか、なんお疑いもしたが、ネット怜玢しおみれば、いくらでも蚘事や写真がヒットするから、その実圚は疑えない。

    ただ、少し疑問に思ったのは「こんなにナニヌクな建物なのなら、仮面ラむダヌやりルトラマンや怪奇倧䜜戊のロケ地になっお、芋芚えがあっおも良さそうなものなのに」ずいうこずだったのだが、これも少し調べおみお、その理由がわかった。

    無論、この足摺海底通が、東京から行くロケ地ずしおは遠すぎるずいうこずが倧きな理由なのだろうが、最倧の理由は、この斜蚭の開通は「1972幎」であり、『りルトラマンや怪奇倧䜜戊』などの䜜品よりも埌にできたものであり、『仮面ラむダヌ』の埌半に匕っかかるあたりの時期のものではあれ、いずれにしろその頃は、新品ピカピカすぎお䜿えない、ずいうこずだったのではないだろうか。

    で、そう思っおみるず、足摺海底通は、1970幎に開催された「日本䞇囜博芧䌚」のパビリオン的な「未来的デザむン」だずいうのがわかる。これが、䞇博博芧䌚堎に建っおいたら、䜕の違和感もなかったろうし、倪陜の塔ず䌌た十字型圢状ずいうこずで、䞡者が動き出しお盎接組み打ち察決、なんおB玚映画だっお、のちには䜜られたのではないだろうか。
    ただ、この足摺海底通は、ひず぀だけポツンず、少々蟺鄙な堎所銙川県倧月町の皆さん、倱瀌に建おられたために、あたり広く知られるこずはなかった、ずいうこずなのであろう。

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    䞊は、博芧䌚開催時の「倪陜の塔」。䞋は、各囜パビリオンなど
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    それでも、䞇博䌚堎のパビリオンのように、圓たり前に地面に立っおいるのでは、決しお足摺海底通の「面癜さ」は出なかったず思う。
    海の䞭に立っおいるからこその、独特の存圚感があっお、それは「ノンマルトの秘密基地」だずか「りルトセブンが磔になる」ずいったような、楜しい想像を喚起しおくれるのである。

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    さお、本曞収録の挫画䜜品ずしお気に入ったのはどれかずいうず、はっきり蚀っお、どれも玠晎らしいのだがあえお挙げれば、たずは10の「無題」。

    この䜜品は、panpanyaには珍しく、男の子たぶんが䞻人公である。
    たあ、䞻人公ずいっおも、セリフひず぀なく、ただ暗く幻想的な「倢の町」を歩くだけなのだが、その䞭に出おくる、廃墟ず思しき和颚家屋の屋内颚景が、私がよく芋る倢の颚景に極䌌しおいお、既芖感に近いものを感じた。

    たた、そのせいか、これを曞きながら、いた、昚倜今朝芋た倢を思い出した。
    倚くの人は興味ないだろうが、個人的な蚘録ずしお曞いおおこう。私は自由なのである。

    譊察官である私は、事件か䜕かの出動で、譊察甚の通称「網バス」で、同僚たちず珟堎付近に着いおいる。そこは車道の真ん䞭であり、車は枋滞しおいお、そんななかで、道のど真ん䞭に駐車しおいる網バスは、呚囲から迷惑がられおいるようだが、私は「緊急時なのだから仕方がない」ず思っおいる。
    私は、珟堎出動時に着る、玺色の出動服を着おいる。機動隊が来おいる服だず思っおもらえばいいが、機動隊のように手甲脚絆を぀けたりヘルメットを被っおいるわけではない。灜害堎所で掻動するずきのような、出動服だけである。だが、䞀般人が芋れば、はっきりず「譊察だ」ずわかる服装だ。
    ずころが、すぐにその事件か䜕かが、誀報だったずわかった。しかし、すぐに匕き䞊げるずいうわけにはいかないようで、しばらくその堎に止たるようだ。
    私が退屈しお網バスの倖に出おいるず、地元の子䟛が、䜕やら鬱陶しいこずを蚀っおたずわり぀いおくるので、私はかっずなっお、腕でその少幎を振り払おうずしたずころ、手に持っおいたボヌルペンか䜕かが、少幎の䞊腕郚に突き刺さっおしたった。幞い、傷口は浅いようで、少幎は泣きもしなかったが、私は「倧倉なこずをしおしたった」ず焊り、その堎から逃げお誀魔化すこずにした。
    しばらく網バスはその堎を動かないだろうから、すこし付近を散策しお、ほずがりが芚めた頃に戻っおくればバレないだろうず考えたのだ。
    で、網バスが停っおいた立䜓亀差か䜕かの䞊り坂を越えお、その向こう偎に出るず、すぐに海沿いの鄙びた町があっお、私は海岞の方ぞ行ったのだが、すぐに海岞は道のない岩堎のようになっおしたい、私は岩堎から転げ萜ちないように、冷や汗をかきながら四぀ん這いになっお進んでいるず、その岩堎は、立掟な和颚の邞宅の庭の䞭に続いおいた。どうやら自然の岩堎を、庭石ずしお取り蟌んでいるようだ。
    私は、そちらから、町ぞ戻れるだろうず、庭の䞭の岩の䞊を進んでいたずころ、぀いに岩から滑り萜ちおしたう。
    倧した高さではなかったから怪我はしなかったが、他人の家の庭ぞの無断䟵入である。そこぞ、家の䞻人らしき和服姿の恰幅のいい䞭幎男性が珟れたので、私は慌おお「怪しい者ではない。道に迷っお、岩堎を歩いおいるうちに、ここに萜ちおしたったのだ」ずいうような蚀い蚳を、ぞどもどしながらしお、その家からどうにかしお脱出した。
    邞宅の衚には、鄙びた商店街があっお、私の感じずしおは、この商店街を抜けたあたりに網バスが止たっおいるはずだず思い、商店街を抜けたのだが、商店街を抜けたずころの道路は、網バスが停っおいたのずは別の堎所だった。
    そこからは芋通せない、この道路の先が元の堎所だずも思えたのだが、闇雲に歩いおも迷うだけだず思い、通行人の䞭幎女性に「この近くに、譊察の網バスが停っおいたず思うのですが、どのあたりか知りたせんか」ず尋ねるず、その女性は「それなら、ずっくに垰りたしたよ」ず蚀い、私は眮き去りになったこずを知っお、乗り遅れたこずでも叱られるだろうし、少幎を怪我させたこずもバレるに違いないず、絶望にかられる。

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    こんな「嫌な倢」だった。
    だいたい、私の芋る倢ずいうのは、こういう「嫌な倢」が倚いのだが、そんな倢の䞭に登堎する、ちょっず叀い街䞊みや、和颚䜏居の屋内の雰囲気が、panpanyaの描くそれに䌌おいお、ずおも惹かれるのである。

    「嫌な倢」の颚景なのに、珟実の方ではそれに惹かれるずいうのも奇劙な話だが、これが人間の心の䞍思議ずいうものなのであろう。
    䞀䞀ずもあれ、倢の䞭の私は、悪いや぀である。

    だいぶ脱線したが、この10「無題」ずいう䜜品には、「䞍思議な町䞊みや家屋」が登堎するだけではなく、いかにもpanpanyaらしい、ぐにゃぐにゃした巚倧生物も登堎するのだが、私の倢には、この皮の怪物の類いは䞀切登堎しない。もちろん、理由はよくわからない

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    次に奜きな䜜品は、の「冥途」で、この䜜品は、珍しくもフランスはパリから物語が始たる。
    䞻人公の女の子日本人は、銎れぬパリの街で、珍しい飛行船を远っおいるうちに道に迷い、い぀の間にか「死者の町」に入っおしたう。その死者の町は、パリの延長にありながら、無囜籍か぀日本的なずころも倚々あるのだが、総じお蚀えるこずは「䜏人」たちが盞互に分かり合える、枩かい町だずいうこずである。
    物語の最埌で、䞻人公は、生者の町に戻っおきたようなのだが、そのずき初めお「死の恐怖」を感じたずいう。䞀䞀これは䜕ずなくわかる気がする。

    「死」ずいうのは、たぶん「生」ずは違っお「安らぎ」なのだ。しかしたたそれは、「死者」にずっおの「安らぎ」であっお、「死の安らぎ」ずいうのは、やっぱり「生者」にずっおは「恐怖」なのであろう。そうでなければ、生きおいけないのだから  。

    以䞊の䜜は、それぞれに「死」の臭いの挂う「異界圷埚譚」だが、それずは違っお、䞀皮の「友情もの」ず蚀っおも良いであろう、11の「マシン時代の動物たち」ず、13の「君の魚」も奜きだ。

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    Panpanyaの䜜品ずいうず、これたでのレビュヌでも指摘しおきたずおりで、「異界圷埚」ずか、その反察の「日垞」ずいうこずが、たず目に぀くのだが、その䜜品にほずんどい぀も登堎する、各皮の「友達」や、その「い぀でもそばにいおくれる存圚」に察する「友情」ずいうのも、panpanyaずいう䜜家を理解する䞊では、決しお芋萜ずせない芁玠なのであろう。

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    さお、これでpanpanyaの既刊は、すべお読み終えた。

    あずは新刊を埅぀ばかりだが、今幎はただ新刊が出おいないので、もうそろそろなのではないだろうか。楜しみである。


    2023幎7月30日

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