
エントロピー
DATA ω「背後の解説」
ミステリーとは何でしょうか。名探偵やその助手、警察に犯人・・・。それらが必須であるのか。情報を推理で割ることでのみ真相が明らかになるのでしょうか。
大体、明らかに怪しげな言動をする者が必ずいます。今回の場合は、深谷がその一例でしょう。結果的に、彼は真相にはたどり着けていませんが。逆に、あの身近にいた古城がまさかの天才プログラマだった、という流れになっている本作は、ある意味、最初から答えは出ていたのかもしれません。実際、この本作には、確かに突飛な素晴らしい頭脳を持つ林田、情報を与える古城など、役割がある程度わかれています。ですが、実際には、突如新たな情報が出ることはまずありません。初めに、問題を解くヒントは散りばめられていました。実際、その点は、私が最も重視した点です。登場人物は、推理をする人間ではなく、読者の解明のためのツール的な存在として、描きました。
読んでいれば、ある程度分かるかもしれませんが、私は森博嗣の「すべてがFになる」という本を何度もリピートしています。今回の設定も、だいぶ似てはいますよね。影響はだいぶ受けました。差別化するために、敢えて「萌絵的存在」の古城を犯人に仕立て上げたというストーリーがあります(途中までは決まっていませんでした。突如蘇原くみが登場するという流れです)。
ミステリーは、ただ謎を解明するのが全てではないと思います。謎を生み出すのも、謎を放っておくのも、謎を解いてみるのも、ミステリーと呼びたい。そう思います。謎すら、ある種の有象無象です。ミステリーの本質は、人のグレーに触れることだと思います。黒でも白でもない、その、あやふやな境界線に親身になって寄り添う事だと思います。読者は、その凍った心を、ゆっくりと、何度も何度も溶かし続けていくのです。
実際、世の中みんなそうです。いつか黒くなるだろうけど、それでも存在しえない白を夢見て生きて、周りは見ないのです。全員がそう。誰も抗えない。
但し、ある特定の人々はそれに対抗できます。それは、「ほんの一つの才能」と、「無限大の努力」です。どんな才能も、努力に勝るものはありません。怠ければ、いつかは努力者に抜かされる。
ただ、才能がある、俗に言う天才は、そのことに、他の人より一段階早く気付けるから、天才と凡才の差はどんどん広がっていく。凡才で対抗できる人は何人いるのでしょうか?
この作品が、いつか、貴方の心の中で川のように流れ、貴方に少しでも常識の窓を叩けたらいいなと思っています。その日まで、永遠に読んでください。
では、本書を読んでいただき、ありがとうございました。また、夢の中で。
『エントロピー』 食パンの耳
全てのURLはDATA αに記載。
DATA α「ギリシャ的前書き」
➟https://note.com/jolly_zebra1122/n/n872b23413251
DATA A「無限の観察者」➟https://note.com/jolly_zebra1122/n/n42710cec170b
DATA B「時計の長針」
➟https://note.com/jolly_zebra1122/n/n8240bd58d7af
DATA C「無機質の声」
➟https://note.com/jolly_zebra1122/n/n66f87f3d1b2c
DATA D「沈黙の箱」
➟https://note.com/jolly_zebra1122/n/n71163340d808
DATA E「狂詩曲の花」
➟https://note.com/jolly_zebra1122/n/n264437dfce84
DATA F「再度の来訪者」
➟https://note.com/jolly_zebra1122/n/n94728964a97d
DATA ω「背後の解説」
➟https://note.com/jolly_zebra1122/n/n29874adbf2af
もし宜しければ、他のA~Fまで、全てもう一周読んでみてください。