
エントロピー
DATA F「再度の来訪者」
弘人は、この事件の概要を長田に話した。もう足も痛まなくなった頃であった。
「・・・そうか、そんなことが・・・」長田は、コーヒーに砂糖を入れながら言う。弘人はそれを見て、同じように砂糖を入れた。飲んでみると、非常に甘い。
「そういう、追い付けないものへ抱くって、二種類あるよな。憎しみか、羨みか。日和さんはなんで向田を殺すことにしたんだろうな・・・。事件が解決しても、納得できねえな」長田はそう言いながら、メモに何やら文字を書いている
「確かにな。そもそも、まだ蘇原くみは捕まっていない。一体、どこへ逃げたんだろう・・・」弘人はそう言い、長田のメモ帳を見た。そして、店員を呼んだ。「・・・あの、コーヒーを一つ」
店員は明るい声で「はい、コーヒーを一つですね。お待ちください!」長田はそれを呼び止め、「ごめん、もう一杯お願い」と言った。店員は「二つですね。お待ちください!」と言い、厨房へと消えていった。
長田は徐にメモ帳を見せてきて、「どう?」と言ってきた。
私の心の花束に 新しい花を刺し込んで
麗しくなった瞳で 貴方に会う
私の中では貴方の影は ずっと前を歩いていて
ずっと永遠に笑えないと 思っていた
世界で多分貴方だけの 輝きを求めている
いつか一緒に歩けたら 話をしよう
私の成長点は まだまだ先の方にあるから
待っていてよ憧れ 地球の電灯のように
愛と憎しみの違いはさ ほとんどないと知っているけど
私はずっとその違いを 探している
森を抜け林を抜けて 少しずつ減った私の心
携帯のバッテリーのように 充電はできますか?
栓の開いたワインのように 一気に噴き出す私の戯言
いつかそれを隠せたら 貴方に会う
その時貴方が笑ってくれたら 私はどれほど嬉しいか
自己満なのは知ってるけど 私に笑ってください
貴方に送る言葉は エンターキーでは無理だから
吟味して 噛み砕いて 大切に渡すよ
迷子の私を 助け出してくれて 本当にありがとう お礼の番だね
世界で多分貴方だけの 輝きを求めている
いつか一緒に歩けたら 話をしよう
私の成長点は まだまだ先の方にあるから
待っていてよ憧れ 地球の電灯のように
夢を見ていた 平和の鳥の夢
花が咲き乱れたら 走り出す
空を見ていた 勇気の人の色
雲が消え去ったら 会いに行く
林田はそれを読んで、「・・・お前、もう、趣味の領域出ているだろ。今の話を聞いただけでこんな綺麗な詩って出来るもんなんだな」と言い、長田を見た。
長田は自信満々の顔で悠々と詩について話し始めた。その話に飽きてきた頃、さっきとは別の女性の店員が高い声で、「・・・お待たせしました、林田さん、長田さん」と言った。
ハッとして二人でその店員を見た。
天才で孤独。
孤独すら凌駕する知能。
ほとんど神に近い所業。
現代の人には理解しえない存在。
・・・彼女は笑っていた。
全てのURLはDATA αに記載。
DATA α「ギリシャ的前書き」
➟https://note.com/jolly_zebra1122/n/n872b23413251
DATA A「無限の観察者」➟https://note.com/jolly_zebra1122/n/n42710cec170b
DATA B「時計の長針」
➟https://note.com/jolly_zebra1122/n/n8240bd58d7af
DATA C「無機質の声」
➟https://note.com/jolly_zebra1122/n/n66f87f3d1b2c
DATA D「沈黙の箱」
➟https://note.com/jolly_zebra1122/n/n71163340d808
DATA E「狂詩曲の花」
➟https://note.com/jolly_zebra1122/n/n264437dfce84
DATA F「再度の来訪者」
➟当記事
DATA ω「背後の解説」
➟https://note.com/jolly_zebra1122/n/n29874adbf2af