
【連作短編】騒ぐな踊るな先を見ろ 序章
〜独断と偏見のエンジニア・キャリア論〜
序章 渦の中心
会議室の窓から、夜の東京が見えた。
ビルの明かりが無数に瞬いている。橘誠一はそれを見ながら、手元のコーヒーが冷めていくのに気づかなかった。隣の部屋では、まだ議論が続いている。AIセキュリティについて、若い担当者たちが熱く話し合っている声が、壁越しに聞こえてくる。
十年前、自分は何をしていたか。
誠一は目を閉じた。
傍流の、誰も注目しない部署。ネットワーク管理とデバイス管理。花形のシステム開発部門が華々しいプロジェクトを走らせているとき、誠一はルーターの設定ファイルを眺め、端末の台帳を更新していた。出世も同期より遅れていた。焦りがなかったといえば嘘になる。しかしどこかで、それでいいという感覚もあった。
なぜそう思えたのか。
今になってようやく、少しわかる気がする。
第一話 花形ではない場所
第二話 メンターの言葉
第三話 シンガポールの夜
第四話 騒ぐ人たちの隣で
第五話 3つのモード
第六話 遅れていた者の地図
第七話 AIという騒音の中で
第八話 渦の真ん中にいること (完)
Noteで小説書いてます。暇つぶしにどうぞ♪