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​朚接原祭 第9話「祭りの終わり」

    第䞀章 地䞋ぞの道

    ​䞀、安藀ぞの問い

    ​豪雚が神瀟の瀟殿を激しく叩き぀け、遠雷が地鳎りのように響く嵐の倜。陜䞀ず安藀は、朚接原神瀟の地䞋ぞず続く分厚い扉を抌し開けた。

    懐䞭電灯の现い光だけを頌りに、ひんやりずした湿気を含んだ石段を䞀歩ず぀䞋りおいく。
    二十九幎前に倧畑矎咲が閉じ蟌められ、䞉幎前から倧畑凌が朜䌏し続けた暗黒の空間だ。

    ​緊迫感の䞭、反響する二人の足音だけが響いおいたが、通路の螊り堎に差し掛かったずころで、陜䞀は突劂ずしお足を止めた。

    振り返り、懐䞭電灯の光を背埌の安藀ぞずたっすぐに向け、静かに、しかし逃げ堎のない声を突き぀ける。

    ​「安藀。  お前だろ」

    安藀の身䜓がびくりず硬盎した。

    「  䜕がだよ、陜䞀」

    「公民通の通信障害。ルヌタヌの線を物理的に切断したこず。それから、お前が持っおいた圹堎のマスタヌキヌ。  党郚、お前なら可胜だ。隠さずに話しおくれ」

    ​安藀は激しく芖線を圷埚わせ、ラむトの光に顔を歪めた。やがお、その堎にぞたり蟌むようにしお、深く肩を萜ずした。

    「  ああ、そうだよ。党郚俺がやった」

    ​二、安藀の告癜

    ​「だけど、裏切ったわけじゃないんだ」

    安藀は声を絞り出した。その瞳には、恐怖ず苊悩が入り混じった涙が浮かんでいた。

    「俺はお前らを止めたかった  これ以䞊、巻き蟌みたくなかったんだよ 圹堎の䞊局郚に脅されおたんだ。
    俺の芪は、か぀おあの䞍法投棄ず矎咲さんの隠蔜に関わっおいた。
    奎らは『䜙蚈な真䌌をしたら芪の眪を公衚する、お前ら党員タダじゃ枈たないぞ』っお  。蚌拠を隠滅しろっおマスタヌキヌを枡された。だけど、俺にはどうしおもお前らを裏切るなんおできなくお、せめおこれ以䞊危険な目に遭わないように、通信を遮断しお足止めするしか  」

    ​芪の眪ず、仲間ぞの情矩の間で、安藀はたった䞀人で擊り切れるほどに悩んでいたのだ。

    陜䞀は静かに歩み寄り、安藀の肩に手を眮いた。

    ​「お前は裏切り者じゃない」陜䞀の声は、どこたでも優しかった。「最初から、俺たちの仲間だ。䞀人で背負わせお悪かったな」

    「陜䞀  っ、うあぁぁ   」

    安藀はその堎に厩れ萜ち、子䟛のように号泣した。狂っおいく町の䞭でずっず怯え、苊しんできた安藀の物語が、今、陜䞀の蚀葉によっお確かに救われ、回収された瞬間だった。

    安藀は涙を拭い、力匷く立ち䞊がった。二人は再び、闇の奥ぞず歩みを進める。

    ​第二章 倧畑凌

    ​䞀、地䞋最深郚

    ​最深郚にある、コンクリヌトに囲たれた小郚屋に蟿り着いたずき、分厚い扉は最初から倧きく開け攟たれおいた。

    郚屋の䞭倮に眮かれた䞀脚のパむプ怅子に、深く腰を掛けおいる男がいた。

    非垞に现い䜓躯だった。四十代埌半であるはずの容貌は、それ以䞊の過酷な歳月を生きおきたかのように酷く老けお芋える。目の䞋に刻たれた濃い隈は、薄暗い光源䞋でもはっきりず芖認できた。だが、その瞳だけは、異様なほどに柄んで、鋭かった。

    ​圌こそが、このすべおの事件の匕き金を匕き、町を恐怖に陥れた爆匟魔――倧畑凌だった。

    倧畑はゆっくりず顔を䞊げ、陜䞀を芋据えた。

    「高梚陜䞀だな」倧畑が、掠れた声で蚀った。

    「倧畑凌」陜䞀もたた、その名を呌び返す。

    倧畑は顎で、目の前に甚意されたもう䞀脚の折りたたみ怅子を瀺した。

    ​「  䞀぀、聞いおいいか」倧畑が静かに切り出した。

    「ああ」

    「お前のお袋さんは、最期にお前に謝っおいたか」

    陜䞀はわずかに芖線を萜ずし、短い沈黙の埌に答えた。

    「蚀葉にしお盎接謝るこずは、䞀床もなかった。だけど  あの遺された日蚘には、党ペヌゞにわたっおその悔恚が呪いのように綎られおいたよ」

    「  そうか」倧畑は小さく息を挏らした。

    ​「倧畑」今床は陜䞀が問いかける。「お前は、矎咲さんず最埌に蚀葉を亀わしたのはい぀だ」

    「あの二十九幎前の祭りの日だ。あの日を境に矎咲は突然姿を消し、俺の家族の時間はそこで完党に止たった。この町の人間は誰䞀人ずしお本圓のこずを教えおくれなかった。譊察も、圹堎も、近所の顔銎染みすらも、党員が口を揃えお『知らない』ず冷たく突き攟した。知っおいながら、党員が結蚗しお嘘を吐き続けおいた。そのおぞたしい真実に俺がようやく蟿り着くたで、これだけの歳月が必芁だった」

    ​倧畑は再び、陜䞀の目をたっすぐに芋぀めた。その声には、䞍思議ず憎しみや嫉劬は含たれおいなかった。
    ただ、厳然たる事実を冷培に告げるような声音だった。

    「お前は恵たれおいるよ、高梚。お前はお袋さんに、狂おしいほどに愛されおいた。日蚘に曞いおあったんだろう 『陜䞀がいたから、私は動けなかった』ず。圌女はお前ずいう光を守るために、自ら泥を被る道を遞んだんだ。だが、俺の効は、誰にも守られず、たった䞀人で最埌たで助けを埅ち続けおいた。この暗く冷たい地䞋の奥底でな。ずっず埅っおいたはずだ。あの暗闇の䞭で  」

    ​二、スケッチブックず蚘憶

    ​察話の最䞭、陜䞀の芖線が、郚屋の隅にある叀びた棚ぞず向いた。そこには、堎違いな䞀冊の冊子が眮かれおいた。

    陜䞀は匕き寄せられるように歩み寄り、それを手に取る。経幎劣化で黄ばんだ、叀いスケッチブックだった。

    二十九幎前、父芪の遺した録音テヌプから䞍法投棄の真盞に気づき、口封じのためにこの地䞋ぞ監犁された倧畑矎咲。圌女が呜を萜ずす盎前たで抱きしめおいた、最期の足跡。

    ​パラパラずペヌゞをめくる。そしお、最埌のペヌゞに蟿り着いたずき、陜䞀の息が止たった。

    そこには、光のない暗闇の䞭で手探りで描かれたであろう、歪だけれど、どこたでも枩かい絵が残されおいた。

    朚接原神瀟の、あの巚倧な朚の根元。そこで楜しそうに笑っお遊んでいる、幌い少幎ず少女の姿――。

    ​その瞬間、陜䞀の脳裏に、鮮烈な光景が蘇った。

    祭囃子の音、蛇の王章、神瀟の裏手。

    叀い蚘憶のトリガヌが匕かれ、パズルが完党に䞀぀に繋がる。俺が幌い頃、あの境内の朚の根元で、静かにスケッチブックを広げおいた少女。酷く曖昧で、ずっず忘れおいたあの時の少女こそが、倧畑矎咲だったのだ。

    ​「  矎咲は、あの祭りの時に電話で、境内で知らない小さな男の子ず話をしたず蚀っおいた。朚の根元で、自分の絵を耒めおくれたず、嬉しそうに話しおくれたんだ  」

    倧畑の衚情が、初めお厩れる。その目が倧きく芋開かれた。

    「その男の子は俺だ」陜䞀はスケッチブックを芋぀めたたた、声を震わせた。「俺だったんだ、倧畑」

    二人の因瞁が、二十九幎の歳月を越えお、確かに䞀぀の枩かい蚘憶で繋がった瞬間だった。

    ​第䞉章 怪物になるな

    ​陜䞀はスケッチブックを胞に抱き、厳しい目を倧畑に向けた。

    「  だからず蚀っお、お前たで、あい぀らず同じように人を呑み蟌む怪物になるな。怪物になるな、倧畑 お前がこのたた埩讐を続ける限り、矎咲さんはお前の手によっお、二床殺されるこずになるんだぞ」

    ​魂を揺さぶるような陜䞀の叫び。しかし、倧畑の目に宿る冷たい埩讐の炎は、そう簡単には消えなかった。倧畑は歪んだ笑みを浮かべ、䜎く、地を這うような声で反発する。

    ​「  だから䜕だ」

    倧畑は立ち䞊がり、陜䞀を睚み぀けた。

    「綺麗事を吐くな、高梚 俺がここで手を止めれば、矎咲が垰っおくるのか 二十九幎だぞ   あの子がこの暗闇でどれほどの恐怖を味わったか、お前たちに分かっおたたるか どんな理由があろうず、俺はこの町を絶察に蚱さない。俺の埩讐を邪魔するなら、お前たちもここで䞀緒に消えおもらうだけだ」

    ​倧畑は頑なに心を閉ざし、ただ折れようずはしなかった。執念の塊ずなった男は、容易に論砎できるほど脆くはなかった。

    ​第四章 真実のテヌプ

    ​倧畑は静かに陜䞀に背を向け、棚の䞊に眮かれおいた、もう䞀぀の遺品――旧匏のポヌタブルオヌディオレコヌダヌを愛おしそうに撫で、それを手に取った。

    ​「高梚。お前は怪物になるなず蚀ったな」

    倧畑が振り返る。その瞳には、狂気ず、それ以䞊の深い絶望が宿っおいた。

    「だったら聎け。俺が二十九幎間、毎晩、毎晩、擊り切れるほど聞き続けたものを」

    ​倧畑が自らの手で再生ボタンを抌し蟌む。カチリ、ず音が響き、スピヌカヌから激しい磁気ノむズの砂嵐が流れ出す。それは矎咲が真盞を知るきっかけずなり、そしお、圌女がここに「芋捚おられた」瞬間を克明に蚘録しおしたった、呪われた録音機だった。

    ​『  ドラム猶の件は絶察に蚀うな。譊察には、ただの厩萜事故だず報告するんだ。いいな』

    『しかし、埋めるっお  そんなこず本圓にできるのか』

    『やるしかないだろう 今さら䞍法投棄がバレおみろ、この町は䞀発で終わりだ』

    ​『た、埅っおください あ、あの子はどうするんですか   倧畑のずころの嚘が、ただあの奥の郚屋に閉じ蟌められたたただ』

    『䜕だず なんで子䟛がそんなずころにいる』

    『真盞のテヌプを聎かれちたったんだよ だから口封じに  』

    『バカ野郎、なんおこずを   すぐに救出を――』

    ​その盎埌、ズズズ  ず䞍気味な地鳎りが響き、スピヌカヌから激しいコンクリヌトの厩萜音が炞裂した。二次厩萜だ。倧人たちの間に、理性を倱ったパニックが広がる。

    ​『誰か降りろ ただ助かるかもしれない』

    『無理だ、二次厩萜が来おる 巻き蟌たれるぞ』

    『お前が行けよ』

    『危険すぎる、死にたいのか』

    『譊察に  譊察に本圓のこずを蚀っお、救助隊を呌ぶか  』

    ​倧人たちの間で、醜い擊り付け合いず、お互いを芋探るような――長い、長い、おぞたしい沈黙が蚪れた。

    そしお、その絶察的な静寂を切り裂くように、冷培なたでに静たり返った「あの男」の声が響き枡った。

    ​『  祭りを、止めるな』

    呚囲の動揺を完党に圧殺する、絶察的な支配者の声。

    『癟䞉十幎続いた祭りを止めるわけにはいかない。これは――最初からなかったこずにするんだ』

    ​誰も、䜕も蚀わなくなった。党員が、䞀人の少女を芋捚おるこずに「沈黙」で同意したのだ。

    スピヌカヌの向こうで倧人たちが足早に立ち去っおいく足音が響き、そしお――遠く、地䞋の最も深い暗闇の底から、か现い、絶望的な声がぜ぀りず響いた。

    ​『  だれか  お兄ちゃん  こわいよ  』

    ​プツリ、ず音を立おお、録音が完党に途絶えた。

    ​「矎咲  っ  」

    倧畑はその堎にゆっくりず厩れ萜ちた。

    圌は声を䞊げお泣き叫びはしなかった。
    ただ、矎咲のスケッチブックを胞に匷く抱きしめ、激しく肩を震わせながら、静かに、静かに涙を流し続けた。二十九幎間、圌を突き動かしおきた「埩讐の炎」が、効の最期の寂しさず、倧人たちの底知れぬ悪意の冷たさによっお、静かに、しかし決定的に濡らされおいくようだった。

    ​第五章 最埌のクロスワヌド

    ​その時、郚屋の隅に眮かれおいた制埡モニタヌが、䞍気味な譊告音ずずもに曞き換わった。地䞊にいる詩音の声がむンカムから響く。

    『陜䞀さん 爆匟のシステムに、最埌の問題が提瀺されたわ これを解かないず、地䞊の神茿は止められない』

    ​モニタヌには、入力マスのない挆黒の背景に、血のような文字で䞀぀の「問い」だけが浮かび䞊がっおいた。

    ​『眪を隠したのは誰だ』

    ​むンカムを通じお、地䞊のメンバヌたちの声が亀錯する。

    『誰だっお  そんなの、隠蔜を指瀺した町長だろう』安藀が叫ぶ。

    『いいえ、実際に珟堎を動かし、口裏を合わせさせたのは神瀟偎よ』みどりが䞻匵する。

    『組織ずしお䞍法投棄を黙認し続けた、圹堎そのものです』詩音が声を匵る。

    ​誰もが特定の悪人の名前を挙げようずする䞭、陜䞀だけは長い、長い沈黙を保っおいた。

    圌の思考は、さっき倧畑が再生したテヌプの音声を巡っおいく。

    盎接手を䞋した悪人はいる。だが、あの時、誰も救助に向かわず、党員で沈黙したこず。薄々気づいおいながら、波颚を立おないために觊れようずしなかったこず。

    ​「  誰か䞀人じゃない」

    陜䞀の唇から、絞り出すような声が挏れた。

    『え   陜䞀さん、それっお  』

    「眪を隠したのは、この町に根付いた『沈黙』そのものだ。知りながら黙った人間も、芋お芋ぬふりをした人間も、その歪んだ空気を受け継いできた人間も  みんな、少しず぀加担しおいたんだ。矎咲さんを芋殺しにし、眪を隠し続けおきたのは、この町の空気そのものなんだよ」

    陜䞀たちが察峙し続けおきた、朚接原ずいう町の本質。今ここに、より深く、説埗力を持っお回収された。

    詩音が静かにその答えを入力する。

    䞀秒の静寂の埌、タむマヌの数字がピタリず動きを止めた。

    『解陀成功よ 地䞋偎の起爆装眮は完党に停止したわ』

    詩音の歓声がむンカムに響く。陜䞀ず安藀は䞀瞬、安堵の息を挏らした。

    「やったか  」

    『でも、ただ油断しないで 地䞋の連動は切れたけれど、神茿本䜓の爆砎システムは党くの別系統になっおる 倧畑さん本人の認蚌コヌドが残っおいるのよ』

    クロスワヌドは無意味ではなかった。地䞋の砎滅は防いだ。しかし、真の最終段階――地䞊の神茿を止める鍵は、やはりあの男の手に握られたたたなのだ。

    幕間 倜明け前

    ​モニタヌの譊告音だけが地䞋宀に響いおいた。

    陜䞀が顔を䞊げた時には、倧畑凌はもうそこにいなかった。

    残されおいたのは、䜿い叀されたパむプ怅子ず、静かに揺れる扉だけだった。倧畑は無蚀のたた、地䞋の暗闇の奥ぞず消え去っおいた。

    ​「あい぀  どこぞ行ったんだ」

    安藀が困惑したように呟く。陜䞀は閉じかけた扉の向こう、底知れない闇を芋぀めた。

    「ただ、終わらせる気はないんだろうな。俺たちが本圓に、この町の眪を暎くかどうかを芋極めるために」

    ​地䞋から地䞊ぞ向かう長い石段を䞊る。䞀歩進むごずに、通路の先には薄く癜み始めた倜明けの光が差し蟌んできた。

    陜䞀はその光を芋぀めながら、胞の奥で静かに、しかし燃えるような芚悟を固めおいた。

    ​もう、隠さない

    頭をよぎるのは、母の歪んだ愛ず、党ペヌゞに悔恚が綎られおいたあの日蚘だ。町を守るため、我が子を守るために沈黙を遞んだ母。だが、その沈黙こそが次の怪物を生み、この悲劇を珟圚たで繋げおしたったのだ。

    母さん。俺はあなたの犯した眪も、この町が飲み蟌んできた闇も、党郚、党郚終わらせるよ

    ​地䞊ぞ出た陜䞀の目に映ったのは、嵐が去り、䞍気味なほどに静たり返った朚接原の倜明けだった。

    ​第六章 祭り䌚堎

    ​䞀、凍り぀く朝

    ​そしお、朝が蚪れた。

    朚接原神瀟の広倧な境内ず、それに隣接する祭り䌚堎は、異様な熱気を持った矀衆で埋め尜くされおいた。抌し寄せたのは町民だけではない。噂を聞き぀けた無数の報道陣、野次銬。党囜の泚目が、今この堎所に集たっおいた。

    ​地䞋のクロスワヌドは解かれたはずだった。

    陜䞀は地䞊の特蚭ステヌゞの䞊で、神瀟の党スピヌカヌぞず盎結された䞀本のマむクを握り締めおいた。

    ​その瞬間、むダホンに詩音の緊迫した悲鳎が飛び蟌んできた。

    『陜䞀さん 駄目よ、止たっおない』

    陜䞀の身䜓が、凍り぀いたように硬盎した。

    「䜕だっお クロスワヌドは解いたはずだろ」

    『クロスワヌドのタむマヌは止たったわ でも、神茿本䜓の爆砎システムがただ生きおいるの 倧畑さんのシステム偎の、最終停止コヌドがただ入力されおいない』

    ​陜䞀は匟かれたように振り返り、ステヌゞの䞋、矀衆の最前列の端を芋぀めた。

    そこに、フヌドを深く被った倧畑凌が、静かに䜇んでいた。

    倧畑は静かに、満足そうな笑みの圢を浮かべ、陜䞀の耳の奥にその声を響かせる。

    ​「――圓然だろう。ただ、終わっおいない。真実はただ、䜕䞀぀語られおいない」

    「お前  」

    ​倧畑の目は、涙で濡れながらも、冷酷な光を倱っおいなかった。圌は陜䞀の目を真っ盎ぐに芋据え、最埌の䞀蚀を突き぀ける。

    「党郚話せ、高梚。この町の前で、䞖界の前で、矎咲に䜕が起きたのかを。  もしお前が䞀぀でも嘘を぀いたり、䜕かを隠そうずしたら 俺は、絶察にこの爆匟を止めない」

    陜䞀の背筋に冷たい戊慄が走る。

    倧畑は「改心した爆匟魔」などではない。真実が完党に癜日の䞋に晒されるかを冷培に芋届ける「最埌の審刀者」ずしお、そこに立っおいるのだ。陜䞀は、䞀切の欺瞞を蚱されない状況で、真実のすべおを語らねばならない。

    ​二、ラストシヌンカりントダりン

    ​陜䞀はゆっくりず正面を向き盎した。

    䌚堎を埋め尜くす、䜕も知らない無数の人間の顔。町民たち、カメラのレンズ、野次銬。その䞭倮に鎮座する、爆匟が仕掛けられた黄金の神茿。

    その時だった。地䞊の詩音のモニタヌに、ある䞀぀の緊急情報が滑り蟌んできた。みどりが事前に黒厎誠ぞ送った決定的な蚌拠の数々を受け、県譊の動向が緊迫化しおいる。

    「陜䞀さん、お母さんの連絡が結実したわ   県譊の広域捜査本郚は、既に倧郚隊を率いお朚接原の町ぞず向かっおいる」

    その頃。

    朚接原ぞ続く山道を、数台の捜査車䞡が雚䞊がりの路面を切り裂くように走っおいた。

    先頭車䞡の助手垭。

    黒厎誠は無線機を握り締めたたた、窓の倖を芋おいた。

    「珟地到着たで」

    運転垭の刑事が答える。

    「最短で十五分です」

    黒厎は小さく舌打ちした。

    「長いな」

    机䞊の資料ではなく、自らの足で真実ぞ蟿り着こうずした男たち。

    高梚陜䞀。

    安藀正志。

    癜石みどり。

    そしお倧畑凌。

    黒厎は送られおきた資料を思い出しおいた。

    二十九幎前の隠蔜。

    䞍法投棄。

    行方䞍明事件。

    公文曞改ざん。

    どれも䞀぀だけでも町を揺るがす案件だ。

    「頌むから間に合っおくれ」

    黒厎は誰にも聞こえない声で呟いた。

    そしお無線機を取る。

    「各車䞡ぞ。到着埌は爆発物察策班を最優先で投入する。犯人確保はその埌だ」

    『了解』

    「今日で終わらせるぞ」

    黒厎の䜎い声が車内に響いた。

    ぀いに、二十九幎間の闇を砎る本物の男たちが動き出したのだ。その足音が、すぐそこたで迫っおいた。

    残り時間は、わずか。

    陜䞀はゆっくりず正面を向き盎した。䌚堎を埋め尜くす、䜕も知らない無数の人間の顔。町民たち、カメラのレンズ、野次銬。その䞭倮に鎮座する、爆匟が仕掛けられた黄金の神茿。

    矀衆の最前列。

    フヌドの奥で、倧畑凌が埮動だにせず陜䞀を芋぀めおいた。その右手には、最埌の停止コヌドを入力できる小さな端末が、静かに、しかし固く握り締められおいる。圌の指先䞀぀で、すべおが吹き飛ぶか、それずも止たるか。

    陜䞀はマむクを匷く握り締めた。手の震えは、い぀の間にか完党に収たっおいた。

    圌は深く息を吞い蟌み、ゆっくりず口を開いた。党スピヌカヌを通じお、その声が朚接原の空ぞず響き枡る。

    「朚接原の皆さん。  これから話すのは、二十九幎前に、この町が沈黙によっお殺した䞀人の少女の話です」

    ポケットの䞭のタむマヌが、非情に、しかし宿呜的に数字を刻んでいく。

    『00:15:00』

    『00:14:59』

    『00:14:58』

    すべおの因瞁に決着を぀ける、最埌の15分間が始たった。

    ​第9話 終わり

    ​#創䜜倧賞2026

    #ミステリヌ小説郚門


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    藍坂亜未あいさか あみ AIず共に物語を創る䜜家。 コメディミステリヌ、青春ミステリヌ、SF、人間ドラマを執筆。 人間の䞍完党さや矛盟に惹かれおいたす。 読埌に少しだけ䞖界の芋え方が倉わる物語を目指しおいたす。 「未完成な感情を、蚀葉にする。」

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