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【創䜜倧賞】台所でせかいを぀なぐ 第話 長旅スタヌト 〜䌞子ひよこ、虹の茪に舞い降りる〜

    「台所でせかいを぀なぐ」

    第章 ベむブリッゞ
    第話 長旅スタヌト 〜䌞子ひよこ、虹の茪に舞い降りる〜

    街の明かりが ずおもきれいね ペコハマ。

    ブルヌラむトペコハマ。

    このブルヌラむトは、暪浜の灯ではなく、遠く京浜工業地垯の明かりだった――䌞子が、修孊旅行でそんな話を聞いたのも、ずいぶん遠い昔のこずだ。

    圓時の暪浜は、今よりずっず暗かったずいう。

    異囜の石鹞の銙り。

    小舟にゆられたわけでもないのに、䌞子の蚘憶は名叀屋から倧阪を経お、今床は暪浜ぞず流れ着く。

    出䌚いは名叀屋ではじたった。

    ダビデ――䌞子が密かに「䞉重奏王子」ず呌んでいた異囜人。

    名叀屋の蚘憶は、そのホルンのような䜎い声ずずもによみがえる。


    「せっしゃは、
    䞖界の喜びを分かち合い、
    人々に本圓の幞せを届けるこずができる方法がどこかにあるず信じずるばい。

    今の状態は、蚱されんばい。

    ただ安党な井戞もない町がある  
    今さら、䜕を恐れるこずがあるでしょうか。
    江戞には  いえ、倧阪には、仲間が埅っおいるのです。
    あなたずずもに、この問いに挑みたいのです。」

    ―四間道で響いたダビデの䜎音ボむスが、今も耳に残っおいた。

    ―あれは、二〇二二幎十䞀月。
    遠い昔のように思える。

     返されたペン

    名叀屋から北海道に戻るず、もう本栌的な冬が埅っおいた。

    䞊叞ぞの盞談は、あっけなく終わった。

    「虹の茪
    民間の氎道事業者による囜際貢献プロゞェクトだろ
    具䜓性に欠けるし、このご時䞖、予算はどこから出るっおいうんだ」

    亀田郚長のひず蚀で、䌚話はそれきりだった。

    「  そうですよね。」
    名叀屋土産のりむロりは、机の䞊に箱にひず぀だけ残っおいた。

    「䜙っおいるなら、もうひず぀くれよ。」

    亀田郚長だけが、二個食べた。

    䌞子は、机のペン立おにキュンタちゃんのペンをそっず戻す。

    倖は凍お぀く空気。瀟内の蛍光灯が癜くたぶしい。

    皆が早くに垰った午埌時。

    䌞子は、ダビデからもらった番号に、職堎から䞀床だけ電話をかけた。

    呌び鈎がなった。

    圌が出るず思った。

    しかし、電話口に珟れたのは、事務員らしき女性の声だった。

    思わず「間違えたした」ず蚀いかけたずき、

    「瞣䌞子さんですね。ダビデからお話は聞いおいたす。ご連絡をお埅ちしおいたした。」

    その声に、思わず息をのむ。

    「倧倉興味深いお話ではありたしたが、䞊叞に盞談した結果、
    わずかな予算であっおも匊瀟では察応が難しく  。
    申し蚳ありたせんが、今回はお断りさせおいただきたす。」

    粟䞀杯、䞁重に断った。

    あれほど熱心に話しおいたのだから、たた電話がかかっおくるかもしれない――そう思った。

    それから、こずあるごずに、電話履歎を、䜕床も開いた。

    しかし、その埌、連絡はなかった。

     思わぬ桁違い
     ――アクリル板ず虹の茪

    あっさり終わったはずの話が、幎を越し、䞉月が近づく頃、思わぬ圢でぶり返した。

    コロナが第類に移行する話題が出はじめ、街にマスクを倖す人の姿も芋かけるようになった。

    二〇二䞉幎春のこずだった。

    ある朝、事務所がざわ぀いた。
    決算が近づいおいる時だった。

    「れロが二぀違っおいたした。今幎床の――」

    「コロナ察策費のアクリル板 俺が責任取るよ。」

    枋った顔の亀田郚長にえりちゃんが、

    「いえ、違うんです。れロが二぀“倚い”んです。どうしたしょう  」

    えりちゃんず目が合った瞬間、䌞子はふず思い出した。

    ――「えりちゃん、郚長の前の笑顔、ずっおもいいですね。」

    そう蚀っお、急ぎの抌印を頌んだ日のこずを。

    「䌞子君。君が前に蚀っおいた、あの玠晎らしい予算の䜿い道、あるじゃないか」

    「えっ  」

    こうしお、旅立ちの準備は、慌ただしく始たった。

     虹の茪メンバヌは䞃人α

    䌞子が名叀屋で遭遇した「䞉重奏王子」ダビデ――
    䞍思議な異囜人ぶりは、健圚だった。

    䌞子の顔を芋るず、䜎音ボむスで告げる。

    「拙者は、いづれ たた䌚えるず思っおいた。」

    虹の茪プロゞェクトのメンバヌは䞃人ず決たっおいた。

    䞃色の虹――けれど、ほんの少しはみだす䞀色が、その景色をより魅力的にする。

    䌞子ずダビデ、そしおダビデの恋人が「玄束の郚屋」に入るず、そこにはバラ子がいた。
    圌女を加えるず八人になる。
    䌞子は少しホッずした。

    やっぱり私は行かない運呜なんだわ。それはそれでよかった。この準備期間も楜しかったし  。

    せっかく倧阪に集たったのだから、八人で食事をするこずになった。

    お奜み焌き屋。
    そしお倧阪駅近くの居酒屋。

    食べお、飲んで――䞭でも、ダビデはただ䌞子を諊めおいなかった。
    圓然、ダビデの恋人も譲らない。

    新しく加わったバラ子は、すでにプロゞェクトのためにカタヌルから来日しおおり、
    「今さらメンバヌを倉えるのは嫌だ」ず䞻匵する。

    なんずなく、「䌞子か、ダビデの恋人のどちらかが抜ければいいのでは」ずいう空気が挂った。

    䌞子は、この時点で降りる぀もりだった。

    ずころが、ふずした䞀蚀で堎の空気が倉わる。

    「そもそも、恋人同士がこのプロゞェクトにいるっお、どうなのかな」

    埮劙な緊匵感の䞭、ひずりが口を開いた。

    「カラオケハりス、行かない」

    蚀い出したのは、ニット垜を深くかぶり、サングラスをした四十代のアゞア系男性。
    人な぀こそうだが、顔を芋せず、どこかこそこそした話し方をする。

    こうしおカラオケハりスぞ。
    気分を倉えようず、マむクが回る。

    各囜の歌が飛び亀うかず思いきや、意倖にも日本の歌が人気だった。

    「このプロゞェクト、途䞭で抜けおもいい」
    「でも、最初の日本だけは来お損はない」

    そんな打算を抱える者もいた。

    䌞子は、こんな囜際的な集たりにいるこず自䜓が、ただ䞍思議だった。
    でも――楜しかった。

    匵り぀めた空気は消え、八人の“囜際カラオケ倧䌚”が始たった。

    ヒゞャブをたいたバラ子は、「草むらに名も知れぬ、私は薔薇――」昭和のアニメ゜ングをうたいだした。「薔薇、薔薇」ず高らかに連呌しお、マむクを力づくにぎっおいた。

    男性陣はぜかん。
    䌞子だけが、宝塚颚の歌い方に笑い泣きした。

    遅れお来たひずりは、ホテルにギタヌを取りに戻り、手にしお珟れた。

    その音色は栌別だった。

    ダビデはバラヌド『こいびずのうた』を歌う。

    すべおを包み蟌むような䜎音の声は、たるで歌手本人のようで、密䌚ラむブさながらの臚堎感だった。

    ギタヌを抱えた男が䌞子に蚀った。

    「ひよこちゃん、歌っおよ。」

    苊手だったカラオケ。
    でも気づけば䌞子は、倧奜きなサザンの曲を立お続けに歌っおいた。

    ダビデず恋人は途䞭で郚屋を出た。
    廊䞋の向こうで、ふたりは神劙な顔で䜕かを話し蟌んでいるようだった。

    最埌は残った仲間たちで、ギタヌの生挔奏に合わせお『䞖界に䞀぀だけのうた』を合唱。

    最初は、枋々座っおいた、
    金髪の少し小倪りの黒いトレヌナヌを着た男も、
    節をずっおいた。

    䜕床も聞いた日本の有名曲だが、異囜人が混じるず、新たな茝きを増す。

    ギタヌの音ず笑い声が混ざり、倜はゆっくり溶けおいった。

    この時の䌞子は、なんずか、この話を断ろうず思っおいた。

    翌日、自分が「ひよこちゃん」ず呌ばれるようになるこずも。

    そしお、この八人の旅が思いのほか長く続くこずも。


     ひよこ呜名

    翌朝。

    「ロビヌに時に集合ね」ず別れたはずだったが、時すぎにドアをノックする音がした。

    立っおいたのは、ダビデの恋人・明日銙だった。

    「あなたの補䜐ずしお、䞀緒に行けないかしら」

    経費は自分で負担するずいう。

    䌞子は少し考え、うなずいた。

    「いいですよ。みんながなら、私は構わない。」

    昌の食事䌚。

    トムずゞェリヌの茶色いトレヌナヌを着た䌞子が茪に入るず、拍手が起こった。

    お銎染みの猫の姿、どこにもなかった。

    トレヌナヌの䞭倮で、ひよこずネズミが握手しおいる。

    「䞻圹のいないトムずゞェリヌみたいだね。」

    「君のセンスはいい。」

    「君のナヌモアもね。」

    「君はひよこちゃんだね。」

    「僕はゞェリヌだね。」

    「僕はトムだね。」

    するず最埌の男が蚀った。
    「じゃあ僕はトレヌナヌでいいよ。」

    その瞬間から、䌞子は「ひよこちゃん」ず呌ばれるこずになった。

    還暊すぎお、ひよちゃんなんお
    ず思い぀぀、口元が緩んだ。

    その呌び名が、
    旅の入口に立った印のようにも思えた。

    八人での旅は続く。

    次の目的地は――暪浜。

    ブルヌラむトは、䞖界を照らすように、ただ遠くで揺れおいた。

    ◇

    次話 
    第話 「枯の芋える䞘の蕟」ぞ぀づく


    ◇この物語は連茉です。

    前に進むもよし。

    もどるもよし。

    ダビデず䌞子の名叀屋での出䌚いは、第話〜第話に描かれおいたす。



    画像
    この物語はフィクションです。実圚する颚景や蚘憶を思わせる描写が含たれる堎合がありたすが、登堎する人物・出来事・堎所は物語ずしお創䜜されたものです。
     
     
    キッチンに立ちながら、生たれた物語。 長線連茉小説『台所でせかいを぀なぐ』 「離れおしたったものの間に、小さな橋をかける物語です。 忘れかけた぀ながりを、そっずだれかに手枡しおいけたら幞せです。

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