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【創䜜倧賞2026】台所でせかいを぀なぐ 第話 䟍ダビデ、りむロりを買いに行く旅のむントロ 第章 最終話

    第話 䟍ダビデ、りむロりを買いに行く

    䌞子は、手にしたカップのコヌヒヌを䞀口も飲むこずなく、窓の倖の癜い庭をみ぀める。
    コヌヒヌの湯気ず銙りが、あの日の名叀屋の日を鮮明に雪の䞊に描く。

    ◇
    長い長い旅のむントロも、ただ続いおいる。
    䌞子の初めおの䞀人旅の朝。

    コメダ珈琲店。

    ペンがないこずが、すべおのはじたりだった。

    異囜のむケメン――䞉重奏王子ず名付けた圌。

    その出䌚いが、䌞子の運呜を少しず぀倉えおいく。

    䞉重奏王子・ダビデ。

    異囜の人だが、どこの囜から来たのかはわからない。

    そもそも「ダビデ」ずいう名すら、本名か怪しかった。

    英語にたじっお片蚀の日本語を䜿うが、ずきどき流暢な䟍蚀葉を話す。

    日本の史実をすらすら語り、坂本韍銬の倧ファンだずいう。

    むケメンにはたるで興味がない䌞子だが、圌はかなりのむケメンである。

    笑顔もいい。声も、すこぶるいい。

    心の䞭で、䌞子は圌を「䞉重奏王子」ず名付けた。

    そんな圌が、初察面の私に蚀った。

    「あなたの仕事ぶりを、もう少し芋せおほしい。」

      たったく意味がわからなかった。

    けれども、気づけばりむロりを買いに行くこずになっおいた。

    ダビデはようちゃんず䞀緒に、AずBを誘った。

    AずBは、たたたた珈琲店に居合わせた二人。

    そう仕向けたのは䌞子本人だったが、結局、自分も同行するこずになった。

    コンサヌトグッズを持ったAずBは、息子の進路に぀いお語っおいた。

    隣の垭でピヌチク母芪䌚談をしおいる二人に、

    䞉重奏王子の盞手を抌し付けお去る぀もりだったのに――。

    結果、五人で「四間道しけみち」ぞ寄るこずになった。

    四間道は、江戞時代の面圱を残す叀い街䞊み。

    か぀お堀川沿いの問屋街ずしお栄えた商人の町だずいう。

    けれども、ふずした拍子に五人は路地ぞ迷い蟌んでしたった。

    そこで出くわしたのは、苔むした叀井戞だった。

    氎面に空が映り、雲がゆらめく。

    たるで底にもうひず぀の倩空があるようだった。

    ──実は、䌞子は昚日もこの井戞を芋かけおいた。

    倜のコンサヌトの前、名叀屋芋物に蚪れた四間道。

    この井戞を芋お、どうしおも“仕事がら”氎道資料通に行きたくなったのだ。

    ふたたび、この奇劙なメンバヌで、昚日ず同じ堎所にた぀。

    「倢でも芋おいるのかしら」

    そんな感芚が胞にふっずよみがえった。

    「道、間違っおない」

    もじゃもじゃ頭のようちゃんが蚀う。

    だが、ダビデの足取りはしっかりしおいた。

    「心配無甚。歊士の端くれずしお、自らの道を芋極めおきたのだ。」

    そのひずこずで、ようちゃんは笑みを浮かべる。

    「なんでそんなに歊士っぜいの やっぱり韍銬ファン

    もしかしお  本気で䟍になりたいの」

    ようちゃんは腕を組み、芝居がかった声を匵り䞊げた。

    「倧矩に埓い、埳川家のために戊おう

    新たな時代を築くため、呜を賭けようじゃないか」

    たるで舞台圹者のような即興芝居だった。

    その堎の空気が、ほんのり倉わった。

    ようちゃんの挔技力も芋事だったが、

    ダビデの韍銬っぷりは、それ以䞊にサマになっおいた。

    「埳川のために戊う蚀うがやけんど、その先に䜕があるぜよ

    幕府がなくなっおも、この囜は続くがじゃき。

    おんしらの剣は、未来を切り拓くためにあるがじゃろう」

    ──完璧な土䜐匁ふう。

    ようちゃんは感心しお、薩摩こずばぞず乗り換えた。

    「そうじゃなあ。ほら、りむロり姫は、どげんずするばい」

    AずBに聞く。

    尟匵藩から薩摩藩、そしお突然の女性軍。

    芝居は颚たかせのように自由に広がっおいく。

    AずBも自然ずその流れに匕き蟌たれおいった。

    タオルを手にしたAは涙を浮かべ、切なげに蚀った。

    「行かぬでおくれ。あなたはりむロりの蚱嫁。

    私はずっずその前から  お慕い申し䞊げおおりたした。」

    バッゞを぀けたBは苊しげに銖を振る。

    「りむロりずは  行っおはならぬ。もう埳川は  」

    ──この二人、なにもの

    䌞子は思わず心の䞭で぀ぶやいた。

    AはBの手をぎゅっず握りしめ、Bは淡々ず語る。

    「そう。時代は倉わるもの。

    時の人になっお、捚おる呜などひず぀もありたせぬ。

    それが、い぀ものおなごの思うずころ。

    ならば、倉わらぬりむロりのもずに  たいりたしょう。」

    芝居は、笑いを誘うどころか、真剣さを垯びおいった。

    女性陣はどうやら本気で、

    「りむロり」ず「ダビデ」を結び぀けたがっおいるようだった。

    そんな䞭、ダビデはふず䌞子の方を振り向く。

    その目は真剣そのもの。

    「䌞子殿、実は拙者  お前ず共に道を歩みたいず思っおおった。」

    ──えっ

    思わぬ展開に、䌞子の心にブレヌキがかかる。

    これは、もしや  ロマンス詐欺

    胞の奥で、譊戒の火花がぱちりず匟けた。

    AずBが、芝居の続きなのか珟実なのか分からぬ声で蚀う。

    「行きたしょう。りむロりのもずぞ。埳川は、もう  あきらめるしかないわ。」

    「䌞子さん、私たちも䞀緒に行くから、心配しないで。」

      みんな、グルかもしれない。

    譊報が鳎り響く。

    ──これは、はじめおの䞀人旅。倖囜に来たも同然なのだ。

    ダビデが静かに口調を戻した。

    「拙者は、氎道管どころか、井戞のこずを知らぬ子䟛がおるこずを知っおしたいたした。」

    ダビデは、井戞の瞁を芋぀めた。

    「蛇口をひねれば氎が出る――それが奇跡でないこずすら、誰にも知られおおらぬ土地があるのです。」

    そしお静かに続けた。

    「拙者は、䞖界の喜びを分かち合い、平穏な人々に本圓の幞せを届けられるず信じおいたす。

    その方法を、どうかあなたに教えおいただきたいのです。」

    䌞子は戞惑いながらも耳を傟けた。

    「この井戞が今の圢になるたでの経緯を知りたいのです。

    ただ安党な井戞もない町がある  そんな状態は、蚱されたせん。

    今さら、䜕を恐れるこずがあるでしょうか。

    江戞には  いえ、倧阪には、仲間が埅っおいるのです。

    あなたずずもに、この問いに挑みたいのです。」

    䌞子はしばらく黙ったたた、氎面を芋぀めた。

    「それは  もちろん興味はあるわ。だけれども  」

    そこでようちゃんが胞を匵り、声を匵り䞊げた。

    「拙者、芪方ず申すは――

    お立合いのうちに、ご存じのお方もござりたしょうが

    お江戞を発っお二十里䞊方、盞州小田原、

    䞀子盞䌝なる倖郎売りでござる」

    AずBが顔を芋合わせ、すぐに調子を合わせる。

    「さおこの薬、第䞀の奇劙には――

    舌のたわるこずが銭独楜、そらそら、舌がたわっおきたわ  」

    ようちゃんは勢いづき、さらに叫んだ。

    「生麊生米生卵

    瓜売りが瓜売りに来お、瓜売り残し、売り残し」

    その堎にいる党員の顔がほころぶ。

    䌞子は思った。

    こんな口䞊たで披露する詐欺垫なんお、いるはずない。

    ならば――ず、小さくうなずいた。

    緊匵がふっず解けた瞬間だった。

    りむロりを䞀緒に買いに行くこずにした。

    その埌、改めおダビデず話をした。

    圌の蚀葉には誠意があり、少なくずも嘘は感じなかった。

    キュンタちゃんのペンも、圌が返しおくれた。

    昚日、氎道資料通のバス停で萜ずしたものを拟っおいたのだ。

    むンタヌネットで泚文すれば、賌入できるず教えるず、
    ようちゃんに入力させお、その堎で泚文しおいた。

    「䜕セット」

    「十二ダヌス。」

    六本入りを十二ダヌス。぀たり癟四十四本。
      䞀䜓、どんな蚈算をしおいるのやら。

    名刺を受け取った。そこには「虹の茪」ずいう名前が印字されおいた。

    「北広嶋の事務所に戻ったら、䞊叞に盞談しおみよう。」

    そう思ったずき、りむロりの甘さがただ舌の奥に残っおいるこずに気づいた。

    その味に、嘘はなかった。

    庭の倖の癜いゆきをみ぀めながら、
    䌞子は冷めたコヌヒヌを䞀気にのみほし、キッチンの皿の暪に眮いた。
    䞀床は掗ったその皿の感觊を確かめながら、数を数えた。

    ◇

    第章癜い庭からの名叀屋にリフレむン 

    完

     


    第章 雪の䞋の地䞋歩道空間ず地䞋金庫 ぞ぀づく

    この話は、連茉です。

    ◇
    次話

    第章 雪の䞋の地䞋歩道空間ず地䞋金庫 
    第話 昭和ゟンビの新幎䌚


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    この物語はフィクションです。実圚する颚景や蚘憶を思わせる描写が含たれる堎合がありたすが、登堎する人物・出来事・堎所は物語ずしお創䜜されたものです。
     
     
    キッチンに立ちながら、生たれた物語。 長線連茉小説『台所でせかいを぀なぐ』 「離れおしたったものの間に、小さな橋をかける物語です。 忘れかけた぀ながりを、そっずだれかに手枡しおいけたら幞せです。

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