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【創䜜倧賞2026】台所でせかいを぀なぐ 第話 ダビデずりむロり旅のむントロ

    䌞子が、名叀屋駅の人䞊みに抌し流されるように入った「コメダ珈琲店」。
    初めおの䞀人旅、名叀屋のモヌニングを楜しむ――はずだった。

    けれど䌞子は、芋慣れたコメダのカップを前に、異囜の男性ず向かい合っお座っおいた。

    䞉重奏王子

    䌞子は、心の䞭で、そう名付けた。

    どうしお、こんなこずになったのか。

    それは――
    ペンがなかったからだ。

    䌞子は、倧事な“キュンタちゃんのペン”を芋぀からないたた、圌から差し出されたペンを借りた。


    

    「ダビデ」ず印字されたペンだった。

    䞀瞬で消えたかず思うず、突然、暪に来お蚀った。
    “May I sit with you? 
Dameだめ?”

    「YES」

    ――同垭はだめ、ず蚀った぀もりだった。けれど圌は、最初からそうするこずが決たっおいたかのように、ペンを貞しおいた。気づけば䌞子の向かいに座り、たるで昔からの知り合いのように埮笑んでいる。

    ダビデは、昚日の氎道資料通で圌女を芋かけたこず、バスの時刻衚の前でペンを萜ずしたこず、今朝コメダの前にいたこず、そしおそのペンがずおも“キュヌト”だったこずを、途切れなく流暢な英語で語り始めた。

    けれど䌞子に届いたのは、

    「゜ヌリヌ」
    「ミュヌゞアム」
    「バス」
    「ペン」
    「キュヌト」

    それだけだった。

    “Sorry for surprising you
”

      ゜ヌリヌず、OKしか、わからない

    なんで謝るの
     ペンを借りたのは私なのに

    玉朚先生  助けお

    䞭孊䞀幎の英語の先生の顔が、なぜか浮かんだ。

    「ワンモア、プリヌズ」
    ペンペンペンっお、昔のギャグ

      あ。ペン、返さなくちゃ
    䌞子は、小孊生の暗唱倧䌚みたいに、はきはきず蚀った。

    「サンキュヌ ゞス・むズ・キュヌトペン」

    ダビデの名入りペンを差し出す。

    ――これで終わり。
    胞をなでおろす  はずだった。

    なのに。

    ダビデは受け取ったペンを、ゆっくりず䌞子の目の前に、おいた。
    そしお、䌞子に芖線う぀すず、なんずも䞍思議なむントネヌションで、぀ぶやく。

    「こたったな〜」

    え
     どこが
     返したよね!?

    たるで、次のセリフ埅ち。

    思わず口から出た。

    「HELP Yourself.」

    ご自分でなんずかしおください、の぀もり

    でも、“ご自由にどうぞ”にも聞こえる

    䜎音のホルンみたいな声で、
    ずおもゆっくりず

    「いいんですか」

    そしお、手を取られお。

    「あ・り・が・ず・う」

      䜕そのスタヌ挚拶

    ――どんなずきでも、がくはスタヌずしおは合栌だ。
    そんな「ありがずう」。

    䌞子が蚀葉を倱ったたた固たるその腕の間から、ダビデのペンがするりず滑り萜ち、テヌブルの䞊を転がっおいった。

    もう、さっぱりわからない。
     早く出よう

    「グッドバむ」ず蚀っお立ち䞊がった、その瞬間。

    「お忘れですよ。
     倧事なiPadでしょう」

    今床は――

    流ちょうな日本語で。

      なんで急に

    あずから聞いた話では、
    ダビデは日本のドラマ、特に時代劇が倧奜きで、
    セリフを䞞暗蚘しおいるらしい。

    

    間をずるために、坂本韍銬の話をしたら、たすたすこのダビデのペヌスになっお、頭がたっしろになった。

    たたたたそこに居合わせたようちゃんの助けで、䌚話はなんずか普通に回り出した。

    倚分。

    けれど。

    たた、ダビデが蚀う。

    「僕も、りむロり買いに行きたいです。
     䞀緒に。あなたず。」

    もじゃもじゃ頭のようちゃんが、にやにやする。

    「いいんじゃない。行っおきなよ。」

    二人で

      もういい。
    䞀人旅は、もう十分だ。
    ――倱瀌な。
    もう、英語はやめだ。

    「郷に入っおは郷に埓え」

    そう心で぀ぶやき、日本語できっぱり断る。
      ぀もりだった。

    「ごめんなさい。せっかくのお誘いだけど、今日は氎道資料通に行っおから北海道に垰らなければならないんです。
    りむロりは空枯で買いたす。あなたは名叀屋の老舗で。だれかに聞けば、きっず教えおくれたすよ。」

    完璧。

    幌児でも聞き取れるスピヌドの日本語のはず。
    こちらの様子をうかがっおいるコメダ母芪䌚談䞭のAずBに芖線をやった。

    ──うたく断れたな。バトンを枡せた。

    AずBも、たんざらでもない顔をしおいた。
    ようちゃんも、「君、なかなかやるね」ず蚀いたげに笑っおいる。――ずころが。

    ダビデが、ゆっくりうなづいお蚀った。

    「氎道資料通、今日、閉たっずるばい。」

    ――倧河ドラマの韍銬が、癜シャツを着お、そこにいるようだった。

    ゆったりずした時代劇颚の日本語が、コメダのコヌヒヌの銙りずずもに店内に挂った。

      

    せっかく日本語で堂々ず断ったのに、着地に倱敗。

    「プリヌズ・リサヌチ。」
    ず、ダビデ。

    たた、ピ゚ロだ。

    ようちゃんがスマホを芋お蚀った。

    「ほんずだ。今日は䌑み。」

    そしお远い打ち。

    「あなた、本圓に日本人」

    ──たったく倱瀌だ。

    たるで亀田郚長。

    仕事はできるが、ずけずけずものを蚀う。

    いなきゃ困るけど、近くにいるのは  いやだ。

    コメダのコヌヒヌを飲むずきは、別のテヌブルに座っおほしい。

    そこぞAが声をかけおきた。

    「りむロりのお店、案内したしょうか」
    もういい。ピ゚ロでいい。バトンを枡そう。垭を立ずう。
    するず、

    「ありがずう。さようなら。」

    䌞子が「グッバむ」ず蚀おうずしたそのずき。

    「お忘れですよ。倧事なiPad。」

    ──たた、あの蚀葉がリフレむンする。

    目の前の状況にびっくりしお、テヌブルの角に足をぶ぀けた。
    「いたい。」
    そしお、顔を䞊げた瞬間、

    ダビデが、あの“キュンタちゃんのペン”を手に持ち、ワむパヌのように振っおいる。

    䌞子が探しおたペンに間違えなかった。

    どうしお、ダビデがキュンタちゃんのペンを持っおいる

    なぜ、なぜ、なぜ

    ──すべおのものを優しさで包む、さわやかで屈蚗のない笑顔。
    癜いシャツがよく䌌合う。
    異囜の石けんみたいな、初めお知る銙り。

    そしお、
    ダビデの手元には、䌞子のキュンタちゃんのペン。

    䌞子の頭の䞭は、ダビデの笑顔、ペン、癜いシャツ、すべおが入り混じっお、混乱の枊。

    そしお、ダビデが、静かに尋ねる。

    「倧䞈倫ですか」

    もう、倧䞈倫じゃない。

    「私、お手掗いに行っおきたす。」

    バッグもiPadもテヌブルに眮いたたた、さっきのトむレぞ。

    鏡をのぞく。

    再びバレッタをはずし、髪をおろす。
    朝の自分ず倉わらない顔が映っおいた。
    「ふう  」

    深呌吞。スマホを取り出す。

    そしお──あのペン。
    どうしおダビデが持っおいるの
    どう敎理しおもわからない。
    英語で聞くなら、どう蚀えばいい
    考えた瞬間、たた自問迷路に入っおしたう。

    ──“郷に入っおは郷に埓え”。
    「  でたずこ勝負だわ。」

    敎理も぀かないたた垭ぞ戻る。

    䌞子の垭は、あいたたた。
    けれどダビデの隣には、Aが座っおいた。

    「いっしょにりむロり買いに行きたしょう。これも瞁ですから。iPad、貞しおくださる」

    断れず、「どうぞ」ず差し出す。
    “NOBUKO”ず入った嚘アレンゞのカバヌ。
    桜の暡様が家王のように品よく描かれおいる。

    「のぶこさんっおいうの」

    「はい。」

    「玠敵なカバヌ。」

    「嚘が䜜ったんです。」

    「たぁ、玠敵。工芞家」

    「いえ、幌皚園の先生です。」

    ようちゃんが、わざわざ通蚳しおいる。
    ダビデが蚀う。
    「䌞子の嚘さんは幌皚園の先生なんだね。」

    ──はい、ず蚀えばいいのに、「む゚ス」ず答えおしたう。

    たたダビデのペヌスだ。
    案の定、䌚話に入っおきお。

    「䌞子のファミリヌはすごい。幌皚園の先生なら、ダむアナ劃ず䞀緒だ。」
    ず、笑みをうかべお、ダビデが蚀う。

    随分叀い話をもちだすず、䌞子はおもったけれど、Bがふず思い出すように蚀った。

    「そうだったわ。ただ17、18のころ。きれいな女王の写真、憧れおた。」
    AもBも、䌞子も、思い出の䞭ぞ。

    「よく芚えおるな、女子は。」
    ようちゃんが぀ぶやく。

    

    結局。

    「行くの 行かないの」

    ようちゃんが仕切った。

    ダビデは、さりげなく䌞子のキュンタちゃんのペンを自分のポケットに入れた。䌞子はそれに気づいたが、蚀葉にできなかった。

    ようちゃんはその様子に気づくこずもなく、テヌブルの䌝祚を集めおレゞに向かう。

    「はい、決たり。みんな行く。ここは、僕におごらせお」

    「領収曞曞いおね。名叀屋店っおいれお。出匵だから。」

    やっぱり、亀田郚長みたいだ。こんな喫茶店代たで経費で萜ずさないでよ。それよりも  

    ――ダビデの手に、
    キュンタちゃんのペンがある。

      なぜ

    屈蚗のない笑顔。
    癜いシャツから醞し出す銙りは、やっぱり未知の囜の石けんの銙り。

    「倧䞈倫ですか」

    倧䞈倫じゃない

    ペンの謎。
    りむロりの旅。
    それは、ただ小さい旅。
    けれど、長い旅の序章。

    AずBも加わり、五人は、名叀屋の四間道に迷い蟌む。

    石垣の䞊に建぀土蔵、
    现い石畳の道、
    癜壁ず黒い栌子。

    江戞時代の空気が、ただよう四間道。

    小さなドラマは、ようやく幕を開ける。

    䞀本のペンで始たったこのドラマは、
    䌞子を地球の裏偎たで、誘うずは
    この時誰も知らなかった。

    ◇ ◇ 

    この話は連茉です。
    次話 第章 癜い庭からの名叀屋のリフレむン 最終話

    第話 䟍ダビデ、りむロりを買いに行く旅のむントロ 


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    この物語はフィクションです。実圚する颚景や蚘憶を思わせる描写が含たれる堎合がありたすが、登堎する人物・出来事・堎所は物語ずしお創䜜されたものです。
     
     
    キッチンに立ちながら、生たれた物語。 長線連茉小説『台所でせかいを぀なぐ』 「離れおしたったものの間に、小さな橋をかける物語です。 忘れかけた぀ながりを、そっずだれかに手枡しおいけたら幞せです。

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