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宵眼の女王は誰なのか【ELDEN RING / 独立神人説】

最近、note上で『ELDEN RING』の宵眼の女王を扱った考察を続けて目にした。

宵眼の女王は、もともと正体考察の対象になりやすい人物である。本名も姿も、その後どうなったのかも明示されていない。
一方で「神人」「神肌」「黒炎」「運命の死」「マリケス」といった、世界設定の中枢に関わる情報だけは残されている。

空白が大きいわりに、周囲に置かれた要素は強い。そのため、既存人物の誰かと同一視する説も多い。
最近見かけただけでも、宵眼の女王を褪せ人とする説、時間遡行したミケラとする説がある。少し遡れば、トリーナ説や、ファルム・アズラの神人、さらにプラキドサクスの伴侶だったとする説もある。

仮説を立てること自体は、考察では当然の作業である。
ただ、内容を追っていくと、作中で直接確認できる情報と、そこから考察者が補った設定との境界が次第に曖昧になる例が少なくない。

そこで一度「宵眼の女王は誰だったのか」から離れ、作中で何が分かっているのか、その人物が世界史の中でどのような位置にいたのかを先に考えてみたい。

作中で確認できる宵眼の女王

宵眼の女王について直接与えられている情報は、それほど多くない。

彼女は「指に選ばれた神人」であり、神肌の使徒を率いていた。
「神狩りの剣」では、彼女がマリケスに敗れたことが語られる。神肌が扱う黒炎は、かつて神を殺す力を持っていたが、マリケスが運命の死を封じたことで、その真の力を失った。
ここでいう「運命の死」は比喩ではない。作中では死のルーンの別名として扱われている。

さらに「死王子の修復ルーン」では、黄金律が運命の死を取り除くことで始まったことが記されている。
神肌と女王の関係については「神肌のおくるみ」に、生まれたばかりの使徒が宵眼の女王に抱かれるという記述がある。
「黒炎の護り」でも、使徒たちは皆、宵眼の女王に抱かれたとされる。

「抱く」という表現が複数のテキストで使われていることから、女王と神肌との関係は、単純な指揮官と兵士以上のものとして描かれていると考えられる。
ただし、この記述だけから、女王が使徒たちの実母だった、自ら産んだ、とまでは言えない。

直接確認できる情報は限られている。それでも、世界史上の位置を考える材料はかなり残されている。

正体より先に見えるもの

宵眼の女王が活動していた時点では、神肌の黒炎には神を殺す力があった。

宵眼の女王はマリケスに敗れた。一方で、マリケスは運命の死を封じ、その封印によって黒炎は神殺しの力を失った。
そして黄金律は、運命の死を取り除くことで始まった。

ここで注意したいのは、宵眼の女王の敗北と運命の死の封印が、同じ時点で起きた一連の事件だったと明記されているわけではないことである。

私は、この二つを同じ歴史的変化の中に置いて読んでいる。

仮に両者の間に一定の時間があったとしても、神を殺し得た黒炎が、その力を失うまでの過程に関わる出来事として見る、という意味である。
そう考える理由は、宵眼の女王が神狩りの黒炎と神肌を率いる神人として描かれ、その黒炎がマリケスによる運命の死の封印によって神殺しの力を失っているからだ。

さらに、その後成立する黄金律は、運命の死そのものを取り除いている。

この関係から、私は宵眼の女王を、黄金律成立前後に「神にも運命の死が及び得る状態」の側にいた神人として捉えている。
もちろん、作中にそのままそう書かれているわけではない。ここからは複数の記述をつないだ解釈になる。

また、彼女自身が独自の律を持っていた、次代の神になろうとしていた、マリカと神位を争った、とまで言う材料もない。そこまでは分からない。

ただ「指に選ばれた神人」であったことは軽くない。
後代にはラニ、ミケラ、マレニアという複数の神人が存在する。
宵眼の女王もまた指に選ばれた神人であり、そのうえ神を殺し得る黒炎と神肌を率いていた。

この人物を単なる一反乱者として見るより、黄金律成立以前あるいは成立期の秩序形成に関わる位置にいた存在として読む余地は十分にある。
ここまでなら、彼女を別の既存人物と同一視する必要はない。

褪せ人説では、既知設定そのものが変わっている

この説の問題点:解釈の飛躍以前に、既知設定の読み違いが複数ある。
「運命の死」の意味「神人」と「デミゴッド」の関係「褪せ人」とゴッドフレイの血統という、既存設定の三か所を別の意味へ読み替えている。
とくに、褪せ人がデミゴッドへ死をもたらすという比喩的な類似から、「褪せ人=運命の死」という設定上の同一性へ進んでいる点に飛躍がある。

この説では、デミゴッドを数多く倒す褪せ人を「運命の死」とみなし、そこから宵眼の女王と褪せ人を結びつけている。

しかし、この説には象徴解釈以前に、作中設定の扱いでいくつか問題があるようだ。

まず「運命の死」である。

運命の死は「デミゴッドを殺す者」という一般名称ではない。作中では死のルーンの別名として扱われている。

褪せ人が結果として多くのデミゴッドへ死をもたらすことから、比喩として「褪せ人は運命の死のような存在だ」と表現することはできる。

しかし、その比喩を設定上の同一性に置き換えることはできない。

「褪せ人は運命の死のような存在である」から「運命の死=褪せ人」さらに「宵眼の女王=褪せ人」まで進むには、別の根拠が必要になる。

次に「神人」と「デミゴッド」の関係がある。

同説では、ゴッドウィンが最初に死んだデミゴッドであることとの関係から、宵眼の女王は神人なのでデミゴッドとは別である、という処理が行われている。
しかし、ラニ、ミケラ、マレニアはデミゴッドであると同時に神人でもある。神人とデミゴッドは排他的な分類ではない。

さらに、その前提になっている「宵眼の女王はゴッドウィンより先に死んだ」という時系列も確定していない。
作中にあるのは、宵眼の女王がマリケスに「敗れた」という記述である。「死亡した」とは書かれていない。

敗北を死亡として扱ったうえで時系列を組み、さらに神人とデミゴッドを別カテゴリーとして処理しているため、二段階で作中情報から離れている。

もう一つは、褪せ人とゴッドフレイの血統である。

同説では、宵眼の女王を褪せ人とした後「褪せ人である以上、ゴッドフレイの子孫」と進み、父親をゴッドフレイとする。
しかし、マリカが祝福を奪った対象はゴッドフレイ一人ではない。ゴッドフレイと、その戦士たちが祝福を失い、狭間の地を追われた。

したがって、褪せ人であることからゴッドフレイの血族であることは導けない。

仮に「宵眼の女王=褪せ人」という前半を認めても、その先の父親説は成立しない。

この説では
「運命の死」の定義
「神人」と「デミゴッド」の関係
「褪せ人」とゴッドフレイの血統

という三つの既知設定が、それぞれ別の意味へ置き換えられている。

一方で「宵眼」と、祝福を失った者の瞳が色褪せることに意味上の近さを見ること自体は可能だと思う。

「宵」「光を失った瞳」「褪せる」といったモチーフには近さがある。
ただし、その近さから、宵眼の女王も祝福を失った、褪せ人になった、ゴッドフレイの血族だった、と進むには、それぞれ別の根拠が必要になる。

類似は仮説を思いつく材料にはなるが、それだけで人物の同一性までは示せない。

時間遡行ミケラ説では、能力そのものが追加される

この説の問題点:考察というよりかなり設定創作寄り。
まず「ミケラは時の神性を持つ」という作中で確認できない能力を置き、その前提から時間遡行、宵眼の女王化、さらに別の人物へと続く経歴を構築している。
最初の能力設定を外すと、その後の推論の大部分も成立しにくくなる。

こちらは、褪せ人説とは性質が違う。

冒頭でまず「ミケラは時の神性を宿して生まれた」と置かれる。
しかし、ミケラが「時の神性」を持つという設定自体が、作中では確認できない。

根拠の一つとして、ファルム・アズラの特殊な時間状態とミケラの針が挙げられている。確かにミケラの針には「時の狭間、嵐の中心」でなければ使用できないという特殊な条件がある。

ただし、時の狭間で使用する必要があることと、針が褪せ人の時間を巻き戻していること、さらにミケラ本人が時間を操作できることは、それぞれ別の話である。

記事ではさらに、ラダーンの三連撃について、一撃の後に時間を巻き戻して再度攻撃しているように見える、と説明している。
ここでは作中テキストから能力を導いているわけではない。戦闘モーションを見て、時間操作という能力設定を追加している。

その後も、ミケラには時の神性がある、時間遡行できる、宵眼の女王になる、プラキドサクスの伴侶になる、マリケスに敗れ、雪魔女になる、という経歴が順次追加される。

さらに、過去に遡ったミケラと後代に生まれたミケラの間で「時の神性」が移動するという仕組みまで設定される。

この説では、作中にある空白を既存情報から補うというより、説を成立させるために必要な能力と世界法則を用意し、その設定で別の現象を説明している。

最初の「時の神性」を外すと、その後の経歴の大部分も支えを失う。

「流紋文字=魂」から始まる等号の連鎖

この説の問題点:素材自体は細かく拾っているけれど、関係があることと同一であることを混同している。
「文字によって魂を固着させた」という記述を「文字=魂」と読み替え、そこから皺、指紋、脳、樹皮などを同じ体系へ接続している。
さらに、現実世界における「針」と皺の連想を、ミケラの針のゲーム内作用へ持ち込んでおり、等号の連鎖が説の土台になっている。

こちらは多くのアイテムテキストを使っているため、一見するとかなり細かく作中情報を追っているように見える。

出発点は「鍛冶術のタリスマン」である。

そこには、古い鍛冶師が溶鋼の皺に文字を見出し、武器の魂を固着させたとある。
記事では、そこから文字自体が魂を表す、あるいは創造すると考え「流紋文字=魂」と置いている。

しかし、原文が示しているのは、文字を用いて魂を固着させたことまでである。
文字が魂を扱う手段であることと、文字そのものが魂であることは同じではない。

この最初の等号を起点に、英雄譚、追憶、指紋、脳の皺、樹皮の皺まで、同じ流紋文字と魂の体系へまとめられていく。

とくに分かりやすいのが、ミケラの針の説明である。
記事では、現実の針が布の皺を伸ばしたり、美容で皺を目立たなくしたりすることから、ミケラの針も指紋という皺を伸ばし、そこに固着した魂や使命を取り除いているのではないか、とする。

作中には、ミケラの針が皺を伸ばすという記述はない。
ここでは、現実世界の「針」という一般名詞から得られた連想が、そのままゲーム内の作用原理として使われている。

宵眼の女王の議論でも同じ方法が続く。
「神肌のおくるみ」にある、使徒が宵眼の女王に抱かれるという記述と、三本指が褪せ人を抱いて指紋を残す場面を対応させ、女王も使徒に皺を刻み、流紋文字によって魂を固着させ、眷属を生み出したと推論する。

「抱く」という動作が共通していることと、同じ作用が起きていることは別である。

その後、神狩りの剣の螺旋、神肌とトリーナに見られる紫色、トリーナの灯火に描かれた姿、神肌に対する睡眠の有効性などが集められ「トリーナが宵眼の女王である可能性が高い」とされる。

個々の相似を観察することはできる。ただ、それらが同一人物を意味するためには、別の接続が必要になる。

さらに後半では、過去の記事で立てた「マリカは蛇と木の精霊のハーフ」「トリーナも木の精霊」といった仮説が前提として再利用され、それによってトリーナが皺を刻める理由まで説明されている。

この説で確認すべきなのは、引用されているアイテムテキストの量より、引用と引用の間に置かれた等号の方だと思う。

作中で関係が示されていることと、二つの概念が同じものであることは区別する必要がある。

自説から作った人物像を、自説の検証に使う

この説の問題点:検証ではなく、自説が自説を支えている状態。
先に「ウル王の娘=宵眼の女王」という自説を置き、そこから色白、閉じた目、狼などの人物条件を作る。
その条件に合う像をファルム・アズラで見つけ、今度はその一致を元の自説の証明に戻しているため、検証が循環している。

この記事では、前提として「ウル王の最初の娘が宵眼の女王」という過去の自説が置かれている。

そこから、ウル王はしろがね人第0世代、その娘である宵眼の女王は第1世代であり、第1世代なら色白で歩行できず、狼を伴うはずだ、という人物像が作られる。

さらに「宵眼」を死の幻視を宿した青い目と定義し、そうした目は閉じるか封印する必要があると推測する。

こうして作られた条件をもとに、目を閉じ、色白で、狼を伴うように見えるファルム・アズラの少女像を見つけ「この3要件を満たせば、もう宵眼の女王確定」とする。

ここでは、自説から宵眼の女王の特徴を作り、その特徴に合う対象を見つけ、見つかった対象を自説の証明に戻している。

プロフィール自体が最初の自説から生成されている以上、そのプロフィールとの一致は独立した検証にはならない。

さらに「神狩りの剣」にある「マリケスに敗れた」という記述から、敗北した場所をファルム・アズラ最奥とし、そこで運命の死を奪われたという出来事まで補っている。

作中テキストが示すのは、宵眼の女王がマリケスに敗れたことまでであり、敗北の場所は明示されていない。
その後、宵眼の女王をファルム・アズラの神人、さらにプラキドサクスの伴侶とする。

しかし、少女像が宵眼の女王であること、少女像がファルム・アズラの神人を表すこと、その神人がプラキドサクスの失われた神であることは、それぞれ別の命題である。

宵眼の女王について直接分かっているのは「神人」であったことだが、神人であることと、すでに神になっていたことも同じではない。

後半では、ウル王が原初黄金樹となり、宵眼の女王が父の分け木をファルム・アズラへ運び、そこへエルデの獣を宿らせたという経歴まで加わる。

さらに、しろがね人と狼との交配から獣人、牛との交配から祖霊の民、古竜との交配から竜人、蛇との交配から神肌が生まれたという独自の系統も提示される。

神肌に蛇的な造形や挙動が多いという観察自体は興味深い。
しかし、神肌に蛇的特徴があることから、祖先が蛇であること、しろがね人との混血であること、宵眼の女王が蛇との間に産んだことまで進むには、それぞれ別の根拠が必要になる。

この記事自身、終盤では「そんなことテキストにはどこにも書かれていない」とし「水面下にあるかもしれない、隠されたストーリー」と位置づけている。
その認識であれば、創作的な仮説として読むことはできる。

ただ、その少し前では「間違いない」「確定」といった表現も使われている。同じ記事の中で、仮説としての確度が一定していない。

四つの説で、問題の起き方は違う

ここまでの四説は、同じ理由で成立しにくいわけではない。

既知設定の意味を変えているもの、
作中にない能力を追加しているもの、
複数の相似を等号でつないでいるもの、
先行する自説から作った条件を自説の検証に戻しているもの
と、推論の進み方はそれぞれ違う。

共通して確認したいのは、推論が入っていること自体ではなく、その一段を何によって渡ったのかという点である。

符合の数は、そのまま証拠の数にはならない

『ELDEN RING』の考察では、色、目、炎、螺旋、装飾、地理、台詞、敵配置など、多数の符合が使われる。
そうした観察は考察の入口として有効である。

ただし、仮説を立てた後、その仮説に合うものを探していけば、符合はいくらでも増やせる。

重要なのは数より、その符合がどのように得られたかだと思う。

仮説を立てる以前から、その情報だけで一定の意味を持つのか。
仮説とは独立した情報なのか。
それとも、先に立てた仮説を通して見たときだけ関係するように見えるのか。

たとえば、別々の場所から青色、閉じた目、狼、螺旋が見つかったとしても、それらを同じ人物に関係する情報として選んだ理由が、すでに立てた同一人物説に依存しているなら「独立した証拠が四つある」ことにはならない。

また、自説から人物の特徴を作り、その特徴に合うものを探して見つけても、それだけでは強い予測の的中とは言いにくい。

事前に予測した特徴が、自説とは独立した資料から確認された場合とは条件が違う。

符合の数だけでなく、その符合が事前予測だったのか、後から選ばれたものなのかを見る必要がある。

自分の解釈にも同じ基準を置く

ここまで他説の根拠を見てきた以上、自分の読みについても同じことを確認しておきたい。

私は、宵眼の女王を「黄金律成立前後に、神にも運命の死が及び得る側にいた神人」と捉えている。

これは作中にそのまま書かれている事実ではない。

「マリケスに敗れた」ことと運命の死の封印を同じ歴史的変化の中に置いている時点で解釈が入っている。
また「神にも運命の死が及び得る側」というまとめ方も、複数の記述を一つの構造として読んだ結果である。

したがって、この読みも検証の対象になる。
ただし「宵眼の女王=トリーナ」「宵眼の女王=褪せ人」のような人物同一説とは、必要になる根拠の種類が異なる。
人物同一説では、二つの人物を同一人物とする接続が必要になる。

一方、私が行っているのは、
宵眼の女王が神人であること、
神肌を率いたこと、
黒炎が神を殺し得たこと、
マリケスに敗れたこと、
運命の死が封じられたこと、
黄金律が運命の死を取り除くことで始まったこと
を、一つの歴史的変化としてどう読むかという問題である。

ここで問われるのは、新しい人物関係を立証できるかではなく、既存の情報をどう関係づけるかである。
自説だけを検証の外へ置く理由はない。

ただし、宵眼の女王を既存人物とは別の独立した人物として扱うことにも前提はある。
既存人物との接続が確認できない現状で、作中の主語をそのまま受け取っているというだけであり「既知の誰でもない」こと自体を証明したわけではない。
この点については、正体を考える段階で改めて扱う。

それでも、正体について考える

そのうえで、宵眼の女王の正体についても考えてみたい。

現時点で私は、宵眼の女王をメリナ、ミケラ、トリーナ、ラニなど、既知の主要人物の別名とは考えていない。
作中で「宵眼の女王」と呼ばれている、独立した神人が存在したと読む。

前述した通り、これは「既知の誰でもない」と証明したという意味ではない。
既存人物と直接結びつける情報が確認できない現在では、作中で与えられた主語を、そのまま一人の人物として扱うという暫定的な読みである。

独立した神人として読む理由

この読みには二つの理由がある。
一つは、神人という資格は、一時代に一人に限られるものではないことである。

ラニ、ミケラ、マレニアは同時代にそれぞれ神人として存在していた。
この例だけで、マリカと宵眼の女王も同じ時代に神人として並立していた、と証明できるわけではない。後代の構図をそのまま過去へ当てはめることはできない。

ただ、少なくとも「指に選ばれた神人なのだから、既知の神人の誰かでなければならない」という前提は必要ない。
複数の独立した神人が同時に存在できること自体は、作中ですでに示されている。

これは独立人物説を積極的に証明する根拠というより、独立人物として扱うことを妨げる設定上の問題がないことを示す並行例になる。

より重要なのは、もう一つの理由である。

宵眼の女王については、すでに彼女自身を主語とする情報が一まとまりになっている。

彼女は指に選ばれた神人であり、神肌の使徒を率いていた。
生まれたばかりの使徒は彼女に抱かれ、神狩りの黒炎はその勢力と結びついている。
そしてマリケスに敗れた。

情報量そのものは多くない。

ただ、これらはすべて「宵眼の女王」という主語のままで成立している。

ここをメリナやトリーナ、ミケラなどの既存人物と同一視する場合には、「宵眼の女王」という主語をその人物へ読み替えなければならない。

すると、その人物が神肌を率いていたこと、神狩りの黒炎に関係していたこと、マリケスに敗れたことなども、その人物の未記載の経歴として追加する必要が出てくる。
独立人物として読む場合、その操作は必要ない。

これは「追加設定が少ない方が必ず正しい」という話ではない。
既存人物説には、宵眼の女王とその人物を結ぶ情報が別途必要になる、という立証上の違いである。

現状では、その接続を確認できないため、宵眼の女王について直接記された情報を、まず宵眼の女王自身の経歴として扱っている。

『ELDEN RING』には別名や別の側面を持つ人物も存在するため「宵眼の女王」という別称で呼ばれていること自体は同一人物説への反証にはならない。

ただし、既知人物の別名であるとするなら、その人物と宵眼の女王を結ぶ材料は必要になる。

マリカとどのような関係にあったのか

独立した神人だったとしても、宵眼の女王の時代や、マリカとの具体的な関係は分からない。

私が重視しているのは、人物関係そのものより、宵眼の女王と運命の死について残された記述の位置関係である。

神肌の黒炎は、かつて神を殺し得た。
宵眼の女王はマリケスに敗れた。

一方で、マリケスは運命の死を封じ、その結果、黒炎は神殺しの力を失った。黄金律は、運命の死を取り除くことで始まった。

前述した通り、宵眼の女王の敗北と運命の死の封印が、同じ時点で起きた一連の事件だったと明記されているわけではない。

私は、仮に両者の間にある程度の時間があったとしても、神狩りの黒炎から神殺しの力が失われるまでの歴史的変化の中に、両方を置いて読んでいる。

ただし、これは解釈である。

宵眼の女王の敗北から、ただちに運命の死が封印されたと断定することはできない。両者の間に別の出来事があった可能性も残る。

また、マリカが宵眼の女王の討伐を命じたとは書かれていない。
二人が神位を争ったとも、宵眼の女王がマリカへ反乱したとも書かれていない。

そのため「マリカの宿敵」「神位を争った競争相手」とまでは置かない。

マリカの影従であるマリケスに敗れ、運命の死と結びついた神狩りの黒炎がその後に力を失っている。
その位置関係から、黄金律が成立していく過程で、マリカ側と両立しなかった神人だったのではないか、と考えている。

メリナについてはどう考えるか

それでも、狂い火の王エンドにおけるメリナの演出は、宵眼の女王を考えるうえで無視しにくい。
閉じていた瞳が開き、メリナは狂い火の王となった褪せ人に「運命の死」をもたらすと告げる。

ただし、この場面から、メリナが解放された死のルーンそのものを直接行使しているとまでは言えない。
それがメリナ固有の力なのか、別の形で運命の死と関係しているのかも分からない。

確認できるのは、マリケスが倒され、封じられていた運命の死が解放された後の世界で、メリナ自身が「運命の死をもたらす」と宣言することまでである。
この点では、かつて神肌と黒炎を通じて神へ死を及ぼしていた宵眼の女王と、機能上の近さがある。

しかし、その近さから、メリナと宵眼の女王が同一人物であるとも、血縁関係にあるとも、権能を継承したとも言えない。

現時点では、異なる時代に、どちらも「運命の死を他者にもたらす側」に位置しているように見える、というところまでにとどめたい。

この読みが成立しなくなる条件

この独立神人説も、確定した設定ではない。

まず、宵眼の女王と既存人物を直接つなぐ情報が確認できれば、独立人物として扱う前提は見直す必要がある。

たとえば、メリナ、トリーナ、ミケラなど既存人物について、神肌を率いたこと、神狩りの黒炎を扱ったこと、マリケスに敗れたことのいずれかを直接結びつける記述が確認できれば、現在の読みは大きく修正する必要がある。

また、宵眼の女王の敗北と運命の死の封印が、時系列上まったく別の時代に属し、神狩りの黒炎が力を失うまでの変化として結びつけられないことが確認できれば、両者を同じ歴史的過程に置く読みは弱くなる。

同様に、マリケスが宵眼の女王を倒した事情が、マリカの秩序形成や運命の死とは別の理由によるものだと確認できれば「黄金律成立の過程でマリカ側と両立しなかった神人」という部分も外す必要がある。

私の読みのうち、作中で直接確認できるのは、宵眼の女王が指に選ばれた神人であり、神肌を率い、マリケスに敗れたこと、そして神肌の黒炎が運命の死の封印によって神殺しの力を失ったことまでである。

そこから先は、これらをどのような歴史的関係として読むかという解釈になる。

現時点での宵眼の女王像

現時点で私は、宵眼の女王を既知の主要人物の別名ではなく、独立した神人だったと考えている。

作中では複数の神人が同時に存在し得ることが確認できる。
また、宵眼の女王についても、神肌を率い、彼らを抱き、神狩りの黒炎と結びつき、マリケスに敗れたという情報が、宵眼の女王自身を主語として残されている。

既存人物と同一視するなら、その人物と宵眼の女王を結ぶ根拠が別途必要になる。現状、私はその接続を確認できていない。

また、宵眼の女王が神を殺し得る黒炎の側にいたことと、黄金律が運命の死を取り除くことで始まったことから、彼女を黄金律成立前後の死の扱いと関わる神人として読んでいる。

彼女の敗北と運命の死の封印が、一続きの事件だったとまでは断定しない。ただ、神狩りの黒炎が神殺しの力を失うまでの変化の中で、両者は無関係ではなかったと考えている。

誰の娘だったのか。マリカと直接何を争ったのか。マリケスとの戦いがどこで行われたのか。その後どうなったのか。

そこはまだ分からない。

現時点での私の仮説は、宵眼の女王とは、黄金律成立前後に存在し、神を殺し得る死の側にいた、既知人物とは別の独立した神人だったというところまでである。

正体についてはこのように考えている。
そのうえで次に残るのが、運命の死が再び解放された後、メリナが見せる瞳と「運命の死をもたらす」という言葉を、この古い神人とどこまで結びつけてよいのか、という問題である。


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