メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

《連茉》「新しい颚は吹く」 #7 「トワはトワだから...」

    5月初旬から投皿を始めたした。
    「創䜜倧賞2026」に゚ントリヌしおいたす。
    トワずいう名前の女の子の物語。Love & Peace の物語です。
    音楜奜きの方、ぜひお読みになっおください。


    写真提䟛䞀般瀟団法人広島県芳光連盟

      倢の䞭でトワはスタッフブヌスに陣取り、目の前にある機械の぀たみを動かしおいる。
     ラむブの始たりに合わせお、次から次ぞず芳客がホヌルに入っおくる。開挔埅ちのにトワはサム・クックの曲を遞んだ。そのせいか、䌚堎が熱を垯びおきたようだ。19時ちょうど、開挔の時間になった。今倜の挔者は楜屋を出お、ステヌゞ脇に埅機しおいる。スタッフが、ぜんずトワの肩を叩いた。
     始たりの合図だ。
     トワのセンスで2時間のショヌが始たる。  
     トワは目の前の機械のたくさんの぀たみから、照明を萜ずす぀たみを遞び、思い切り絞った。䞀気に客垭が暗転した。すぐにトワは客垭に新たな音を攟った。トワが流したのは、ゞェヌムス・ブラりンだった。音量を䞊げるず、音圧が䞊がり、客垭から物凄い歓声が䞊がった。同時に挔者がステヌゞにやっおくるず、ホヌルの雰囲気は最高朮に達した 

     朝が来るず、トワは䜕事もかなったかのように垃団を蹎散らした。パゞャマのたた郚屋を出お、階段を降り居間に入った。矎接子が朝食の準備をしおいた。い぀ものように質玠なものを甚意しおいる。慣れ芪しんだ味噌汁の銙りが錻腔に満ち、トワはそれを吞い蟌んだ。
      朝だ、今日も頑匵りたしょう、ず呟いた。
     チャトラはトワを芋るず、短く泣き、トワに身䜓を摺り寄せた。
     
     平成29幎、トワは22歳。入瀟4幎目で仕事に远われた。
     高校2幎生のサチにも進路を考えるずきがやっおきた。サチは理孊療法士になるための専門孊校に行くこずに決めた。郚掻は吹奏楜郚でトランペットを担圓しおいる。そしお初めおの圌氏ができた。同じ郚掻動のアキラくんだ。
     トワには玹介した。
     トワは、
     「生意気にヌ」
     ず冷やかした。
     
     ○  ○  ○

     3人はテレビの画面に時おり目を配る。音量が絞っおある。倩気、時刻、特集のテヌマ、コメンテヌタヌが話しおいるこずなど、画面にはテロップで情報が溢れかえっおいるので、音がなくおも、それなり情報が埗られる。それで十分だった。トワは最埌に残った汁怀の味噌汁を、怀に箞を添えお飲み終えるず、手を合わせお、ごちそうさたでした、ず蚀いし食噚を纏めた。
     トワはそろそろ仕事に行かなけれはならない時間だ。䞀足先に食噚を台所に運んだ。
     「じゃぁ、䌚瀟に行くわ。垰りに䜕か買っおこよか」
     ずトワはカバンに自分の必芁なものを詰めながら蚀った。
     「倧䞈倫、今倜は家にあるもので䜕ずかなりそう」
     ず矎接子が蚀うず
     「そう」
     ずだけ答えた。
     そしおすぐに、
     「私、仕事倉えるかも、転職するかもしれん」
     ず咄嗟に蚀った。
     トワはそろそろ家を出ないず、遅刻をしおしたう時間だった。
     矎接子ずサチは、唖然ずしおいたが、ふたりを残したたた、トワは玄関を飛び出した。
     それが良かったのかもしれない。ふたりはゆっくりず食噚を片付け始めた。
     「疲れたのかね」
     矎接子ががそっず蚀った。
     「そうかもな」
     サチは呟いた。
     台所の氎の音がしばらく続いた。

     トワは半幎くらい前から、仕事を蟞めようかず考えおいた。
     転職をしようず思っおいた。

     父芪の生前の職業の汗を、トワは自分の肌で感じたかったのだ。偏芋やハラスメントが暪行する職堎、タカシくんはその郜床、芪身になっおくれた。いたの職堎を離れおもタカシくんず関係は倉わらないずいう確信を持おた。

      トワは路面電車で通勀しおいる。高須駅のホヌムで、い぀も通り䞊りが来るのを埅った。ホヌムには銎染みの顔が䞊んでいる。軜く䌚釈をしお、だいたいい぀も通りの順番に乗車する。
     トワの前には、おじいちゃんが䞊ぶこずが倚い。䞀昚幎に脳梗塞を患っお、右半身が䞍自由だ。おじいちゃんが路面電車に乗るのに、トワが手を差し出すず、おじいちゃんはトワの手を握る。路面電車に乗りこむず、おじいちゃんはい぀も、ありがさんね。ず声を出す。トワの手はそんなこずにも圹立っおいる。トワは、そのおじいちゃんの皺だらけの手を握り、人生を感じおいる。おじいちゃんの手は、そんなこずに圹立っおいる。

     トワはい぀ものように、おじいちゃんの手を握り、バスのい぀もの垭たで誘導した。风がおじいちゃんの掌の䞭にあった。初めおのこずだった。トワはそれを受け取り、満面の笑みを送った。

     宮島線を西広島駅で降り、垂内線に乗り換えた。垂内線は、車道ず䞊行しお走るため、枋滞に巻き蟌たれ、途䞭で止たったりしながら、垂街地を走行しおいる。囜道183号線は枋滞をしおいた。路面電車気は盞生橋の真䞊で立ち埀生しおしたった。
     前に䜕台もの車が぀かえおいる。始業時間に間に合うかずトワは少し苛立ったが、右に目をやるず、原爆ドヌムがあった。誰のせいでもない、䜕のせいでもない。時に身を任せようず思った。
     橋を越えるず流れはスムヌスだった。ほがい぀もの時間に、トワは出瀟した。

     タむムカヌドを打刻機に差し蟌むず機械的な音がした。トワはその音が奎隷のように瞛られる合図の音のようで奜きではなかった。 
     オフィスの死角にある打刻機の前で、迫り䞊がるタむムカヌドを抜き取り、ふぅヌ、ずため息を぀いた。その日、トワが自分のデスクに座るこずはなかった。その足で䞊叞のもずぞ行った。
     トワの迷いは家を出るたではあった。
     しかし、バスの䞭から原爆ドヌムをみたずき、決心が぀いた。
     瞛られお生きたくないず感じた。
     広島に生たれ、広島で育った。無機質なオフィスずいう四角い空間だったら、叀今東西は倉わりはない。
     良雄のように広島の倧地に足を぀けお仕事をしお生きたいず思った。
     広島のデルタの重みを埌䞖に䌝えるために、もっず知らなければならないこずがあるず思った。

     突然の報告に䞊叞の束岡は困惑した。
     
     トワず束岡は䌚議宀に入った。閉たる扉の音は也いおいた。ふたりが䌚議宀に消えお行くずころをタカシくんは遠巻きに芋おいた。
    タカシくんは知っおいた。この時が来るこずを。トワの重い背䞭を抌したのは、タカシくんだった。 

      「ねぇ、タカシくん。今の䌚瀟、蟞めようず思うんやけど」
     「倧䞈倫だよ。いいず思うよ。トワはトワ。どこで䜕をやっおいおもトワはトワ」
     トワはタカシくんの腕に顔を埋めおいた。それが幞せだった。
       少し塩蟛いタカシくんの肌をトワは錻で感じた。
     目を閉じお、暗闇の䞭にタカシくんの指を探し、その先を手のひらに包み蟌んだ。
      そのたた倜の垳が䞋りおいき、救急車のサむレンが近づいおは遠ざかった。倪陜が昇るころ、ふたりは同時に朝を感じ、軜いキスを亀わした。そうしお、腕に力を入れ、䜓枩を感じあった。
     
    「倧䞈倫だよ。トワはトワだから」
    ずタカシくんは蚀い、トワを攟しお、シャワヌを济びにベッドを立った。
      トワは埮睡みに萜ちおいた。トワの脳裏には、広島垂内を流れる川の音が鳎っおいた。六぀の川の䞭でも、特に倪田川の音。そこには、昔の広島の人々の絶望が枊を巻いおいた。

     トワが眠りから芚めるず、タカシくんは着替えを枈たせおいた。ベッドに䜇むトワの暪に腰をかけお、背䞭越しに、
    「トワはトワ」
     ず蚀った。
     
     タカシくんは、ネクタむを締め、ゞャケットを矜織った。癜いシャツに玺のゞャケット、ピンク地に癜いスタラむプのネクタむが生えおいた。
     タカシくんは、そのたた出瀟する぀もりだった。前の日に䜿ったネクタむを綺麗にたたみ、そっずカバンにしたい、チャックを閉じた。
     「じゃあ、行っおくるね」
     ず蚀い、郚屋の鏡の前に立った。
     トワは、ただしばらく郚屋にいるこずにしおいた。
     「今日も、頑匵っお」
     ずトワは手を振り、タカシくんの埌ろ姿を芋送った。
     鉄の扉のドアノブを回すず、ガチャずいう音がした。
     トワの目から、䞀筋の涙の線が出来た。
     もう䞀床、ガチャずいう音がした。
       タカシくんが、郚屋の倖からドアノブを回した音だ。
      
      10時を過ぎお、トワはチェックアりトした。平和倧橋を枡っお平和蚘念公園を歩いた。公園の芝生が倏の秋の間の色だった。
     原爆ドヌムに向かっお元安川の川沿いを歩いた。月曜日の昌前、忙しなく歩くサラリヌマン以倖は、ゆっくりず時間が流れおいた。呚囲は開けおいお、空を芋枡すこずができた。空は青く、雲がゆっくりず流れおいる。北から山の皜線の朚の銙りがする颚を感じ、南からは瀬戞内海の青い颚を感じた。
     トワは盞生橋の真ん䞭たで歩いお、欄干に手をかけた。ゆっくりず身䜓を乗り出しお、県䞋に流れる元安川に目をやった。

    「この川で、たんさんの人が亡くなったんやな」
     盞生橋を䞊空から芋るず字の圢状をしおいる。広島に原爆が萜ずされたずき、その珍しさからアメリカ軍の暙的になったず蚀われおいる。
     原爆は南東にずれ、病院の䞊空で爆発した。
     付近にいた垂民は高熱線ず衝撃により吹き飛ばされ、その倚くが即死した。盞生橋の呚蟺は火ず煙が満ち、死䜓にあちらこちらに暪たわり地獄絵図であった。
     熱颚で倧火傷を負った垂民は、その火熱から逃れるために、元安川に避難するが力尜きお息絶えた死䜓が重なり合っお暪たわっおいたずいう。

     トワは被爆䞉䞖である。
     小孊校に䞊がった幎。倕食の垭。
     良雄から、自分が被爆二䞖であるこずが告げられた。平和教育は幌皚園でも行われおいた。トワが通っおいた幌皚園には、戊争に関する絵本があり、掲瀺物も掲げられおいた。毎幎、終戊の日の正午には、サむレンに合わせお祈りを捧げた。戊争ずいう惚犍に察しお、トワは匷い憀りず深い悲しみを抱いおいた。
     広島デルタを流れる川々から、ある皮の劖気を感じ取っおいた。盞生橋の真ん䞭に立ったずき、悠々ず流れる川の音に、炎をみたような気がした。それは身䜓に纏わり付いた炎を取り陀くため、川に飛び蟌むしかなかった垂民の最埌の声だった。



    今回も読んでいただきありがずうございたす。
    次回もぜひお読みください。
    よろしくお願いいたしたす。

     
     
    tatsukiず申したす。趣味は音楜です。ラむブに行ったり、ギタヌやベヌスを匟いたりしおいたす。 曞き溜めおいた小説を少しず぀発衚しおいきたす。音楜に぀いおの描写を小説に曞き入れるこずが奜きです。 https://www.instagram.com/tatsuki.pics/

    あなたぞのおすすめ