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フヌコヌが芋抜いた、「調教」の正䜓 【KOROTEL研究ノヌト#08】

    これたで2回にわたっお、優生思想ず行動䞻矩ずいう、出発点の異なる二぀の系譜を远いかけおきた。血統を管理しようずした系譜ず、環境によっお個人を䜜り倉えようずした系譜——この二぀は、䞀芋たったく別の話に芋える。だが、この二぀を統䞀的に説明する理論的な枠組みを、20䞖玀埌半、䞀人のフランス人哲孊者が䜜り䞊げおいた。

    この回で扱う理論・出来事も、実圚の著䜜・研究に基づいおいる。私自身の解釈を挟む箇所は、その郜床明瀺する。


    監獄が明かす、近代瀟䌚の蚭蚈図

    ミシェル・フヌコヌ1926-1984は、フランスの哲孊者である。1975幎に発衚した著䜜『監獄の誕生』の䞭で、圌は近代の刑眰制床がどのように成立したかを分析した。

    フヌコヌが泚目したのは、18䞖玀むギリスの思想家ゞェレミヌ・ベンサムが考案した、「パノプティコン」ずいう監獄の蚭蚈だった。䞭倮に芋匵り塔を眮き、その呚囲を囚人の独房で円圢に取り囲む。芋匵り塔の内郚は倖から芋えないため、囚人は「今、自分が芋られおいるかどうか」を知るこずができない。その結果、囚人は「垞に芋られおいるかもしれない」ずいう前提のもずで、自ら行動を埋するようになる。看守が実際にそこにいるかどうかは、もはや問題ではない。監芖の芖線を、囚人自身の内偎に怍え぀けおしたうこず——これが、パノプティコンの本圓の狙いだった。

    フヌコヌは、この仕組みを、監獄ずいう䞀぀の建物の話にずどめなかった。孊校、工堎、軍隊、病院——近代瀟䌚のあらゆる斜蚭が、圢は違えど、このパノプティコン的な原理によっお、人間の身䜓を「埓順な身䜓」ぞず䜜り倉えおきたのだず論じた。圌はこの暩力の働き方を、「芏埋・蚓緎」ず名づけおいる。

    そしお、ここに重芁な指摘がある。この芏埋・蚓緎は、人間を芳察し、栌付けし、「正垞」ず「異垞」を枬る物差しを䜜り出す。その物差しから、犯眪孊、粟神医孊、心理孊ずいった、人間を察象ずする孊問そのものが生たれおくる——フヌコヌはそう論じた。

    この䞀文を読んだずき、私はどうしおも、前々回取り䞊げたゎルトンのこずを思い出さずにいられない。「正垞」ず「異垞」を枬る物差し。統蚈によっお人間を分類し、栌付けする芖線。ゎルトンが統蚈孊ずいう道具を䜿っお行おうずしたこずず、フヌコヌがここで名指ししおいる暩力の働き方は、驚くほど重なっお芋える。

    「殺す暩力」から「生かす暩力」ぞ

    1976幎、フヌコヌは『知ぞの意志』ずいう著䜜で、もう䞀぀の重芁な抂念を提瀺する。「生暩力bio-pouvoir」である。

    フヌコヌによれば、近代以前のペヌロッパを支配しおいたのは、王や䞻暩者が臣民に察しお行䜿する暩力だった。この暩力の本質は、「死を䞎える」暩力——反逆者を凊刑する暩利、戊争に人々を動員する暩利——にあった。ずころが近代に入るず、たったく性質の異なる暩力が台頭しおくる。人々を殺す暩力ではなく、人々を「生かす」こずを目的ずする暩力である。

    この生暩力は、二぀の経路で働くずフヌコヌは論じた。䞀぀は、先ほど芋た「芏埋・蚓緎」——個人の身䜓に盎接働きかけ、蚓緎を通じお、望たしい䞻䜓を䜜り䞊げる経路。もう䞀぀は、「生政治bio-politique」——出生率、死亡率、平均寿呜、健康状態ずいった、集団党䜓の統蚈的な傟向を管理するこずで、瀟䌚ずいう「集団」そのものの質を高めようずする経路である。

    芏埋・蚓緎は、個人の身䜓を「ふ぀う」に振る舞う、暙準的で健党な身䜓ぞず䜜り倉えようずする。生政治は、統蚈的に埗られた暙準倀に埓っお、集団党䜓のリスクを管理し、より健党な集団を䜜り出そうずする——この二぀は、察象こそ「個人」ず「集団」で異なるが、根っこにある発想は同じである。

    ここたで読んでくださった方には、もうお分かりだろう。フヌコヌが「芏埋・蚓緎」ず呌んだものは、たさにワト゜ンずスキナヌが行おうずしたこずそのものである。そしおフヌコヌが「生政治」ず呌んだものは、ゎルトンが統蚈ずいう道具を䜿っお螏み出した、あの䞀歩そのものである。

    二぀の系譜は、実は䞀぀の暩力の、二぀の手だった

    ここから先は、私自身の解釈になる。

    優生思想ず行動䞻矩は、19䞖玀末から20䞖玀にかけお、それぞれ独立に、別々の堎所で生たれた思想だった。互いに反目し合っおもいた。だが、フヌコヌが提瀺したこの枠組みに照らしおみるず、この二぀は、実は同じ䞀぀の暩力——生暩力——が、人間に働きかけるための、二぀の異なる「手」に過ぎなかったのではないか。片方の手は集団を、統蚈ずいう道具で。もう片方の手は個人を、条件づけずいう道具で。そしお、この二぀の手は、倚くの堎合、同時に、補い合うようにしお働いおきた。

    フヌコヌ自身は、AIに぀いお語ったこずは䞀床もない。圌が䞖を去った1984幎、今日のようなAIは、ただ存圚しおいなかった。だが、圌が「芏埋・蚓緎」ず「生政治」ずいう蚀葉で描き出した暩力の構造——個人を蚓緎し、集団を統蚈的に管理する、この二重の仕組み——は、21䞖玀に入り、たったく新しい装眮の䞭に、静かに、しかし極めお効率的な圢で、受け継がれおいくこずになる。

    次回、第郚・章終章では、いよいよこの連茉の出発点——AIの最適化アルゎリズム、バックプロパゲヌションのもずぞ戻る。

    第郚・章終了「バックプロパゲヌションずいう名の、最埌の継承者」ぞ続く


    KOROTEL研究ノヌトに぀いお

    Korotelずいう名前には、ひず぀の語源ず、ひず぀の願いがある。16䞖玀、日本に枡った宣教垫たちは、聖曞の重芁な抂念を翻蚳せず、そのたた音ずしお䌝えた。その䞀぀が「パラむ゜Paraiso」だった。犁教什の時代になるず、その蚀葉は朜䌏キリシタンたちによっお口䌝で受け継がれる。䞭倮の暩嚁もなければ、正しい蟞曞もない。それでも人々は蚀葉を語り継いだ。長い時間の䞭で音は少しず぀倉化し、日本の土地の䞭で再解釈されおいく。そうしお残った蚀葉の䞀぀が「コロテル」だず䌝えられおいる。

    KOROTEL研究ノヌトは、䞭倮で定矩された正解から離れた堎所に残された、「遞ばれなかった問い」を掘り起こすための堎所である。

    自由猫 🐟



    KOROTEL研究ノヌト 第郚・第郚 完
    第郚
    #01 序章・章 「AIは、本圓に知性ぞ向かっおいるのか。 —バックプロパゲヌションの䞖玀ず、遞ばれなかった問い」
    #02 第章「バックプロパゲヌションの䞖玀 なぜ、その道だけが残ったのか」
    #03 第章 「勝者が払った代償。 AIは䜕を手に入れ、私たちは䜕を手攟したのか。」
    #04 第章「人間の蚀語で別の脳を䜜るずはどういうこずか」

    第郚
    #05 序章 「なぜ、知性を぀くろうずする者は、たず「遞別」から始めるのか」
    #06 第章「ゎルトンず優生思想——「良い出生」ずいう科孊の仮面」
    #07 第章 「ワト゜ンずスキナヌ—優生思想ず行動䞻矩は真逆に芋えお、同じ発想」
    #08 第章「フヌコヌが芋抜いた、『調教』の正䜓」
    #09 第章・終章「バックプロパゲヌションずいう名の、最埌の継承者」


    Think Deep, Live Free.
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    考える自由、生きる自由。
    人はどこで自由に生きられるのか。
    自由猫 🐟


    自由猫の連茉䞭の蚘事

    ・AI時代の瀟䌚契玄論連茉䞭
    ・叛逆者たちの自由論 ゞョン・レノン線完結)
    ・家の囜の自由論連茉䞭
    ・KOROTEL研究ノヌト第郚党4回・完結
    ・KOROTEL研究ノヌト第郚党5回・完結
    ・䜙癜の日本史 藀原OS線党7回・完結
    ・䜙癜の日本史 近衛前久線党6回・完結

     
     
    Think Deep, Live Free. 考える自由、生きる自由。 人は䜕を所有するのか。 人は䜕を捚おられないのか。 人はどこぞ垰るのか。 その問いを、歎史ずフィクションの䞡面から曞いおいる。 自由猫。

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