公募落選日記 19 本を売るって難しい。
公募落選に関係ありそうななさそうな悩み。
今回は「本が売れない」ことについて。
公募に落ちたら本にすることで落選ショックを和らげ、それで公募を続けていることは、ここに書いた。
だから私の手元のある作品集たちは、私の公募落選の最終形態である。そういうと強そうだ。
本ができあがったら文学フリマで売る。通販でも売る。そうやってほんの少しでも誰かに読んでもらえる、それも目標にして公募作品を書いているので、いつもそれなりに気が引き締まっている。
そういうわけで公募に出した作品は無駄にしたくない。作品集に、自分的には「まあ、落ちたけど、おもろいと思うねんけどなあ」って作品は載せることにしている。
最初はそうやって集まった4作品を、ただそのまま1冊の本にした。
「群青の余生」
ジャンルがバラバラだった。時代小説、恋愛小説?、それからSF2編。私が応募している先はSFの賞かオール讀物新人賞、あと当時はまだ純文学にも勘違いして出していたから、まあ自然とバラバラにはなる。
最初だったので、1冊の本になるくらい作品が集まっただけで嬉しい。最初の文学フリマにも、参加同人誌「第九会議室」で出店したが、自分のをその1冊だけ出した。そこそこ売れた(気がする)。楽しかった。
その時の「本を作ってみた」記事はこちら。
そのときは割と成功体験を得た気がしていて、そして小説執筆二年目。
またまたあちこちに応募して落ちていたから作品が次々に集まっていた。
SF(さなコン)が何作品か、あと「幻想と怪奇」にも落ちた。それから以前に大阪文学学校の「樹林 在特号」に掲載いただいた作品(現代もの)も自分の作品として収録したかった。さらに、「豆本」を作る先輩がいて、掌編あったら豆本にしてあげる、という誘惑をいただき、じゃあ短いのん載せますわ、と、木下教室の課題作品まで載せた。
そんなわけで集まったのが掌編10作品。また作品集を作った。
さすがに時代ものはなかったが、現代ものとSFがごちゃっと入っていた。そして短い。でもその時は私の集大成くらいのつもりで作った。表紙にも凝ったし、とても良いものができたと思った。なんせ集大成、いろんなものがたくさん読めてお得。なのである。
それがこちら。「愛だの恋だの」。表紙、いい感じじゃないですか?

案内のチラシもちゃんと作った。かわいくないですか?

で、・・・売れなかった。
まだ在庫たくさんあるけど、売れない。
豆本とセット販売したりもしたのだけど「豆本だけ欲しい」と言われてそれだけ売ったりした。けっこう悲しかった。
何がいけなかったんだろう。
いろんな作品が一度に読めてお得じゃないのか?
そこで私ははたと思い至る。
いろんな作品が入ってるのがいけないんじゃないか。
私はわりとなんでも読む人だ。純文学、ミステリ、SF、時代小説、歴史小説、ファンタジー、広く浅くだいたい読んでいる。だから、なんでも書いてみようって書いてしまう。でも周りの人、読んでいる人も書いている人も見ていると、ジャンルに特化して読む人、書く人が多い。SFならSF、時代小説ならそれ。その二つを両立させている人は、読む側にはいるが書く側ではあまり聞かない気がする。
で、本を買う側としても考えてみる。だいたい短編集って「テイスト」揃ってないか。SFも時代ものもなんでも入っている短編集、なんてあんまり聞かない。なんでもありでOKなのってそれこそ筒井康隆くらいしか思いつかない。
あっても買うのか?
無名の人の「なんでもあり」作品集なんて買うのか?
「なんでも」入ってるのが一番ダメだったのだ。
ま、全部書き分けられてるわけじゃないから「どれもこれも私」なんだけど、無名のアマチュアの「なんでもありですけど、なんとなく全部私っぽいんです。」って作品が売れるわけもない。そんなもん私も買わない。
そこで、今度は作戦変更。
公募落選作品をジャンル別に分けることにした。
さすがに「なんでもあり」作品集から作品をダブらせるわけにもいかない(そしたら「なんでもあり」が本当に売れなくなる)から、新作をジャンルわけしていった。
1.SF
幸い(?)、ハヤカワSFコンテスト、創元SF短編賞にも順調に落ちているので、SF作品集はまず1冊作った。「正義の味方」
これにはハヤカワSFコンテスト落ちの二作品とさなコン落ちの最新作を入れた。かわいいけど表題作は不条理SFと思っていたが、何名かの方からいただいた感想は「ホラー」。SFちゃうやん。

文フリでの反応を見ると、ダイレクトにSF読みやSF書きの方々に刺さったようなのと、「SFあまり読まないけど・・」と買ってくださった方もいた。
文学フリマ東京では、「「さなコン」の審査員です」と名乗られた大物SF作家さんに「これ、さなコン落ちた作品も入ってるのでよかったら読んでください!」と勧めてみたら、なんと買ってくださった。大阪のおばちゃんの図々しさがこんなところで発揮できて大変よかったが、ほんま図々しすぎるので、あまり真似しない方がいい。
2.音楽小説
オール讀物新人賞落選作も溜まってきていた。4年連続で4作。
うち1作は長編に仕立て直して他の賞に応募して落ちたので、それでまず1冊作った。「いつか、あの日のスウィングを」(試し読み)
戦後のジャズがテーマで、音楽好きな人には刺さると信じて作る。たくさん書き直したし。作品についてはこちらの記事で書きました。
これは音楽関係者が買いに来てくださったが、正直にいうと本業の方に読まれるのが、一番感想が怖かったりする。
あと、「ジャズとかわからないけど読んでみたくなって」と、普段他ジャンルを読んでいる方も手に取ってくださった。こういうふうにテーマがはっきりしていると、やはり挑戦という形でも手に取りやすいのだなと思う。
3.時代小説
オール讀物新人賞落選の残り3作品を1冊にまとめて「時代小説」縛りとした。
「北斎幽女」(試し読み)

こちらは本当に幸いにも、一作品(表題作)がなんと最終選考まで残ってくれたので、とても宣伝しやすくなった。
私には時代ものの引き出しがほとんどないので、だいたい似たような時代の似たような作品が揃ってしまい、どっちも北斎出てくるしどっちがどっち?ってなる作品が2つ入っている。いいのか悪いのかわからないけど、テイスト的にはとても揃ってて、1冊にまとめるにはちょうどいいのでは、と思った。
作った中では、やはり一番売れた。やはり最終選考という肩書きは強い。それによって「それなりに読めるものなんだろう」と思っていただけるのだろうと思うとたいへんありがたい。
時代ものは読んだことないけど、と言いながら挑戦してくださる方もいた。私のは選評でも「現代小説っぽい」と言われていたらしいので、良くも悪くも時代小説初心者におすすめだ。
4.大阪弁もの
そこまで分けても残る、雑多な作品群があった。現代ものだ。全部大阪弁で集めてみたら五つくらいあったから、じゃあ大阪弁作品集にしようと思った。「紋次郎の家」

これは売れなさそうな気がしたので困った時の柴犬を表紙にしてあざとかわいさを出し、大阪では「大阪土産にどうですか」と言ったり、東京では「大阪から来ました」感を出したりしているが、どっちでもそんなに売れていない。おもろいとおもうねんけどなあ。しらんけど。
ここまで書いて思ったが、やはり本を買うときにはまず「ジャンル」をみているな、ということがわかる。まずは「この本はSF(時代小説/現代小説/純文学)なんだな」とジャンルを確認し、普段自分が読むジャンルかどうかを判断する。で、「よく読むジャンル」だから買ってくれた方と、「あまり読まないジャンルだけど」ちょっと頑張ってみようかな、と買ってくれた方がいて、どちらも「ジャンル」からセレクトしていっている。
私はなんでも読むのでそこはあまり意識してなかったけど、「なんでもあり作品集」を選ぶのではなくて、いつも読んでいる「SF」「時代小説」「現代小説」を選んで買っているのだから、やはりジャンル特化は重要なのだ。
なんでもありではダメなのだ。
と、こんな当たり前のことに気づくのにこれだけの文字数を費やしてしまった。
読んでわかると思いますが、もちろん、作品の宣伝も兼ねています!
文学フリマでいろいろ販売するので、よかったら見に来てくださいませね。
特に「愛だの恋だの」は売れ残ってるので是非お願いします!
「愛だの恋だの」表題作、試し読みはこちらから。
あと、ここの記事に書いた作品はだいたい載せています。
