公募落選日記 13 リサイクルその2
公募に落ちた作品をリサイクルをした話、その2である。
2年前、オール読物新人賞で2次選考まで残った作品があった話は、以下に書いた。
なぜか残してもらえたけどなんでかよくわからないくらい、いろいろとツッコミどころがあった作品だった。
・額縁構造(とある人物Bがインタビューを受けるシーンからはじまる)
・しかし本編では(三人称ではあるが)BとCの二人の視点で描かれている
・私として設定した主人公はAであり、BもCもAのことを語るという形式
私のなかではこうだったのだけど、あとで合評会で読んでもらったら、皆さん「え、主人公、Bでしょ?」って話になった。さらにやはり額縁のなかに他の人の視点を入れたら、フェアじゃないよね、という評価もいただいた。三人称だしいいかな、書きたいし、と書いてしまったものだったが、やはりであった。
戦後すぐのジャズの話、ほぼ全部架空の設定ではあったけれど、戦中の時代考証の甘さもいろいろと指摘された。自分のなかでも戦争を書く覚悟みたいなのがどれだけあったかというと、甘かったと思う。それは今でも思う。
ただ、二次選考まで残れたので、何かいいところもあるんだろうと思った。私は楽器を吹いているので、演奏シーンの臨場感は自分の経験で書けたし、たぶんそれだけが売りなんだろうなとは思った。
そのあと、なにかの席で、木下先生が言ってくださった。
「そんなにAのことを語りたいんだったら、もっと登場人物増やして連作短編にしたら?」
なるほど。それで構想は膨らんだ。
Aは特攻隊の生き残りだった。
特攻隊での友達としてDの像を立ち上げてみた。それで、特攻隊への慰問演奏にEという歌手が来てくれたことにした。(このあたりは朝ドラ「ブギウギ」の、淡谷のり子さんのエピソードを参考にした)
ここに、もともと書いていたBとCのエピソードを頭の中で加えていくと、どんどん話が膨らんでいった。いける。長編にできそうだ。A以外の4人(B、C、D、E)を主役に、連作短編にして、最終的に長編になるようにしてみよう。
応募先を探した。オール読物新人賞と同じ文藝春秋が主催している松本清張賞に応募してみようと決めた。ただ、原稿用紙の枚数は、40字×30行で100枚以上200枚以下。現在あるオール読物新人賞落選原稿は同じ設定で33枚。枚数を3倍にしなければならなかった。もちろん現在の原稿もそのままではほとんど使えない。
そして、ここまでの構想に至るまでにかなりかかっていて、その時、松本清張賞の締切は1か月後に迫っていた。
間に合う?とは思ったけど、あほやからそこは深く考えない。書き始めた。
毎日Xに進捗を書いていったらなぜか「いいね」もいただけたので励みになって書き進められた。その節はありがとうございました。
A以外の4人を主役に、1章ずつ書いていったのが結果的に良かったと思う。私はそもそもプロットも作らないタイプだし長編を書ききる体力気力ともに足りていないけれど、短編4つだったから、書き進められた。
DやEの章は新しく書いた。
B、Cのエピソードは過去の応募作をベースに書き加えて、特にCはかなり書き換えた。オール読物では短くて書けなかったところも膨らませて書いていったら、登場人物に対して、「なるほど、あんた、こんなこと考えてあの時そんなことをしたのね。悪い奴ではなかったのね」なんて思うことが、自分で考えているくせにたくさん出てきて、なんだかとても面白い執筆だった。
あと、Cはジャズ喫茶のウエイトレスなんだけど、最初の作品では、時代や状況に流される弱い女子として書いていた。けれど、Cが主役の部分を書いていくうちに、なんか、負けてほしくないな、という気持ちが芽生えた。時代に流されては行くけど、最後は踏みとどまってほしくなった。結果、そうした。「当時の女子がそんな風に生きて行けたのかな」というリアリティは無視して、ただ、Cがやりたいようにやらせてあげた。
長いことかけて作品を書いていくと、登場人物にだんだん「いいよ、やっちまいな」という気持ちになる。整合性はこっちで取るから、好きにしていいよ、の気持ち。そして整合性取れなくなったりするが。人が日々生きていろんな決断をするのに、合理的な理由なんかないですよね。という開き直りで書いてる。
ずっとA視点では書かないと思って書いていたけど、だんだん、Aも何かしゃべりたいんじゃないかな、という気持ちになり、話の流れ的にも必要だったから、Aのパートも少しだけ書いた。最初のコンセプトとずれたやん、と思ったけど気にしなかった。小説って書いているとどんどん動いていくもんだなあ、と長編を書いてすごく思った。
面白いですね、書くのって。
やっと書き終えた。結局、オールに応募したのが2年前、長くして書き終えたのが1年前。1年も同じ登場人物たちとこうやって関わっていくことはなかったから、そう思うと感慨深くて、「みんなよくがんばったね」という気持ちと、彼らをもう少しちゃんと描けてよかったな、という満足感があった。バッドエンドは苦手なこともあり、今回は特に最後は全員集合の大団円。ちょっとやりすぎたくらい。でもまあいっか、楽しかったし。みんなありがとうね。でももうちょっと頑張ってきて、という気持ちで、松本清張賞に応募した。
そして、松本清張賞、一次選考通過発表に、名前がなかった。
まあ、そんなもんか。とは思ったけど、当時、ちょっとだけ落ち込んだ。
だってオール讀物新人賞二次通過のものが、絶対によくなったと、そこは確信もっていえるわけなので。長編にしたからかなあ、とか、ぐずぐずと思った。賞ってわからんわ、と思った。
諦めきれなかったので、落選作品を拾ってくれるというコンセプト?の、日本ドラフト文学賞に再応募。松本清張賞からの書き直しは、小さい矛盾点を1つ修正しただけ、つまりほぼそのまま再応募した。
まあ、落ちるから、自分の作品集にしよう、文学フリマ大阪で売ろう、と思って、計画を立てていた。のだけど。
日本ドラフト文学賞の一次選考通過作品に名前があった。840作品中、40作品に選ばれている。
よっしゃ!みんな頑張ったね!
という気持ちになった。とてもうれしかった。
作品集製作は一旦保留にして様子を見ていたら、二次選考は通過しなかった。ま、さすがにここまでだろうと思い、なので文学フリマ大阪には間に合わなかった冊子を、文学フリマ東京で販売します!
(結局は宣伝かよと言われそうですみませんが、そのとおりです)
この話の教訓があるとすれば、
・全面改稿っておもろいし、いいこともある
・応募先変えればいいこともある
この2つでしょうか。思い入れのある作品は、ちょっとあがいてもいいかな、と思いました。
そんな作品、「いつか、あの日のスウィングを」試し読みはこちら。
