公募落選日記 9 ゴシック体と残念合評会
ここからオール讀物新人賞落選特集。
私は四年連続4回応募している。
一回目の経緯はこちらに書いた。
今回は2回目のこと、つまり二年前である。
2回目を書きはじめたのは、6月20日締め切りなのに、6月に入ってからだった。実働3週間。腱鞘炎になりそうになりながら仕上げて、20日ギリギリに完成させて応募してから、事後報告で木下先生に読んでいただき、「ま、前回はよかったけど、今回はちょっとどうかな。おつかれさん」(かなり意訳)的な厳しい感想をもらい、自分でも「そうっすよね・・」と思っていた。
オール讀物新人賞発表の号が本屋に並ぶ日、私はコロナで寝込んでいて本屋に行くどころではなかった。回復途上でオンライン合評会があり、私はこの作品を出していた。するとその会の人が「筒井さん、オールの中間発表に載ってるで」と教えてくれた。マジですか。小さい画面で目を凝らしたら、ゴシック体で載っている。ゴシック体!!二次選考通過しとるがな。と、コロナも吹き飛ぶ勢いで喜んだ(吹き飛ばなかったけど)。
でもそのあとの合評ではまあまあいろいろ言われたけれど、「そうっすよね」と思いながらも、ご機嫌だったしコロナだったしわりと聞き流した。
で、落ちた。まあ、それはいい。
最終選考に残った方が知り合いの知り合いでいた。おおお、となっていたら、いつしか「オール讀物残念合評会」が企画されていた。最終選考にいったその方の作品と、二次までいった私の作品も、何人かの方に読んでもらったらいいんじゃない、ということで、なんと木下先生が主力で企画してくれた。ありがたやありがたや。
そこで集まったのは手練の「読み手」たちであった。文学学校のチューターの方もおられたし、歴史小説書きの方々もおられたし、私も同人誌から来ていただいた人たちも読むのがうまい人たちばかりだった。緊張の場だ。
そもそも私は何を書いたのか。
音楽が題材、戦後のジャズの話を書いた。朝ドラのカムカムエブリバディの影響をもろに受けていたが、自分もジャズをやっているから、セッションのシーンは臨場感があったと思う(今でもそこは思う)。
額縁構造(って言うのはあとで知った)で書いた、主人公の回想からはじまって本編がはじまるやつ、にもかかわらず別視点が出てきた。それが一番のマイナスポイントだった。今となっては昔の自分を体育館裏に呼び出して「なにしとんねん」と問い詰めたいくらいだ。もっと書きようがあったよね。
それに、「主人公」設定が違った。「主人公」を周りの人が語る形式を自分はとったつもりだったけど、だいたいの読み手はそう読まなかった。語り手を主人公として、ほぼ全員が読んでいた。
それから主人公の不幸てんこもり具合がすごくて、戦中とはいえ不幸すぎ、そしてそこの時代考証はすごく雑だった。
てなもんである。
よく二次通ったなあ、オール讀物新人賞は私に優しい・・・。
って作品だったのもあって、合評会ではけちょんけちょんだった。
みなさん上記のような意見もちゃんとくれるし、「8月15日当日に飛んだ特攻隊員はいない」と時代考証のおかしさを指摘されたり、「この女性はよくわからない、あまり好きじゃない」みたいなことを女性に言われたり、「街が描かれていない」と言われたり。
全部、なんつうか、刺さることばかりで。針の筵でした。
ちょっとピントを外した感想にはダメージを受けないんだけど、手練の読み手の「的確な批評」は全部刺さるから、みなさん優しくてもダメージは大きかった。
「えー、私二次まで通ったけどこんなにボコられるのすごいなー」と思い、凹むのを通り越してむしろ面白くなったくらいだった。
(たまには褒めてもいただいたけど、あまり覚えてはいないけど、ありがとうございました)
(でも私も最終選考の方にけっこういろいろ言ったのは覚えていて、すみませんでした)
あの時があって私がおります。当時はありがとうございました。
ボコられた作品、ダメだったところは全部反省して書き直した(その話はのちほど)だけど、私が不思議だったのは「なんでこんなのが二次に通ったのか」だった。本当にわからなくてずっと悩んでいた。せっかく通ったのだから、いいところは見つけたいし、そこ抽出して伸ばしつつ、弱いところをぶっ潰したら、最強になるんじゃないの。と思ったので。
でもいまだにわからない。
時代もの限定のオール讀物で昭和を書いて浮いていたんだろうとは思うけど、良い意味で浮いてくれたのかなというのが一つ。でもそれだけでは残らないはずで、やっぱり得意分野で書いたことが功を奏したのかな、しか言えない。楽器のことや、セッションシーンは間違いなく自分の経験が入ってるし、そこはやった人しか書けないはず。それがうまく伝わったのだろう、としか、思いつくところはない。
だからといって音楽の話ばかり書くわけにもいかない。経験をいかに小説に落とし込むか、なのかなあ、と漠然と思ったりしている。
難しいですね、小説って。
書き直して完成させた小説は「いつか、あの日のスウィングを」というタイトルで、文学フリマ東京でお披露目予定です。
