公募落選日記 17 SFへの憧れ
最近は公募落選体験から少し離れていたが、戻ろうと思う。
今からは「さなコン」応募について。
通称「さなコン」は、日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト。
私が一番最初に応募してビギナーズラックをもらって調子に乗った公募先であることは、最初に書いた。
そのあとも応募は毎年続けている。
私はSFが好きである。
なんせ筆名は筒井康隆先生にあやかってつけたくらいだ。中学の頃に塾の先生に「おまえ絶対筒井康隆好きやから読んでみ」と言われてすっかりはまってしまい、私の読書人生は大きく変わった。というのはよく書いていることだが、私のSFスタートはその前だ。「ズッコケ時間漂流記」を小学校の頃に読んだ、そこまで遡れる。そのあと中学で筒井康隆より先にハマったのが手塚治虫の「火の鳥」である。そういうわけでタイムトラベルが大好物だ。
SFはたくさん読んできている。3巨匠は小松左京はあまり読めていないけれど筒井康隆、星新一はかなり読んだし、大人になってからも、最近の日本のSF、伊藤計劃、円城塔、飛浩隆など、SFばかり読んでいた時期もある。最近ではテッド・チャンにケン・リュウ。翻訳ものが苦手だった時期が長かったのもあり、あまり海外の名作古典は通っていないのだけど、コニー・ウイルスはけっこう読んだ。あと何故か(いや何故かってこともないが)「銀河ヒッチハイク・ガイド」は全部読んだ。
ただ、正直に言うと、昔のSFは読んでいてもだいたいわかった。ついていけた。しかし最近のSFを読んでいても「わかんない」ことが増えた。今どんなシーンで何が行われているのか、想像しきれていないまま読んでいることが増えた。でも面白いことに、そんな状態でも「理解しきれてはいないが、めちゃくちゃ面白い」って作品が多くて、だから平気で読んでいた。わからないほど、楽しく読んだ。私の発想や想像力のはるか彼方に飛んでいってる作品たちに凄みを感じて、そこにハマった。
さて、いろいろあって、そんな私も小説を書くこととなった。
SFの賞に初めて応募してビギナーズラックで最終選考まで行くことができたから、次の年からもさなコンには楽しく出していた。
でも私は薄々気づいていた。私が大好きなSFの「凄み」は、私じゃ理解できないからこその凄みであることに。私はもちろん、自分で分かる範囲の想像力でしか書けないし、自分のかちかちに固まった脳みそから一歩も踏み出せないまま、SF小説を書くことになるのだ。
まあ、もちろん満足いくものは書けない。ただ、楽しい。
さなコン、最初は世界の滅亡とパラレルワールドを書いた。ありがちだ。
二回目はコールドスリープして500年後に目覚めているのでタイムトラベルに近い。「ロビタ」と呼ばれるロボットを開発した主人公とロビタの一体が旅をするロードムービーを書いた。
ロビタ、分かる人には分かると思う。「火の鳥」未来編その他で出てくるロボットだ。ちなみに「銀河ヒッチハイク・ガイド」に出てくるロボット、マーヴィンの影響も受けている。コールドスリープも映画「マトリックス」の影響だ。
楽しく書いて応募した。二次選考まで残ったので、簡単な講評をいただける。ドキドキしながら読んだ。そしてショックを受ける。
「好き嫌いは結構分かれる作品だと思います。ロボットの感情、科学者が本当に望んだものなど、価値観や発想が比較的古いからです。しかし、好きな人の心には沁みる話でもあるので、好きなことを貫いた良作と言っていいのではないでしょうか。」
古いからです。
古い。
古い。
・・・。
もうすぐ五十歳にもなろうという頃だ(当時だ、今はもう過ぎた)、この「古い」という単語が脳内にブッ刺さり、息も絶え絶えになった。
SFで「古い」と言われるというのはもう終焉に近い。私がすごいすごいと思って読んできたSFはずっと、私にとって、とても新しかったのだ。
私のSFは古い。もうだめだ。
でも何故か、私はそこではたと前向きになった。
ネタが古くても一次に残してくれたんやし。小説としては成り立ってたってことかな。と、どちらかというと褒められたととらえた。
わりとアホであるが、そんな気持ちだったのでまるでめげずにまた応募した。
(今読むと、講評は「好きな人の心には沁みる」とあるので、これを書いた方はあまりお好きではなかったようであるが、そこも気にしなかった)
3回目は、(テレビドラマでやっていた)タイムリープネタ。人生を97回やって、同じ女の子とつきあうために頑張ってる男の話。自分的にはあほらしくて好きなやつだが、タイムリープもまあタイムトラベルの一ジャンルだろう。
それからもう1つ、タイムトラベルツアーで幕末の龍馬の元に行くカップルの話を書いた。今度はど直球タイムトラベル。どちらも一次選考通過で評もいただいたが、「98回目の男」の方には熱い評がつき、龍馬のものは確か数行だった。まあ、龍馬ものは自分でもあんまりだったなと最終的に思ったので納得した。
「98回目の男」のほうはいろんな人に読んでもらえた。よかったら読んでみてください。
4回目はやっとちょっと新しいネタで勝負。腸内フローラで人格が変わってしまった男のひと騒動を書いた。これはいまだに私の中ではさなコン最高傑作だ。こちらもリンク貼るのでよかったら読んでみてください。
新しい??ことに挑戦できた気がするのだがどうだろうか。少なくともタイムトラベルはしていない。
4回目からは最終選考通過作しか発表されなくなり、残らなかったので、どのあたりにいたかはわからない。
でもこれは正直自信あったけどなー。
5回目はまたもやタイムトラベル。
懲りろよ、と思うのだけど、思いつくのがそれしかないのだ。今度は他人になって人生を生き直すタイプのものにした。年表も書いて凝った作りにした。凝り過ぎて読みづらかったかもしれない。こちらも最終には残らずだからどこで止まったかはわからないのだが、読んでいただいて多くの感想がいただけた。これもこちらで読めます。
と、例年懲りずに出していて例年落ちているが、特に気にせず来年も出す予定。またタイムトラベルするんだろうなあ。
「古い」問題については、何年か書くうちに全然気にならなくなって、開き直りみたいな気持ちになった。
古くて何が悪いんだ。私が小さい時から吸収し続けて、大好きな、自分が「わかる」SFを自分で書いてる。
別に、誰がなんと言おうと、書けばいいんじゃない?と思ったのだ。
まあこの時点でSFで賞を取るつもりはないと言われても仕方がないのだが、私は自分の書くSFに「昭和SF」「ノスタルジーSF」と勝手に名前をつけて、楽しく書いているのだった。おばちゃんは強いのだ。
次はハヤカワSFと創元SFへの挑戦について書きます。
さなコンで落ちまくった作品群は紙の冊子にも収録済み。BOOTHで販売しています。「愛だの恋だの」には三作品収録、「正義の味方」にも最新のものを掲載済みです。紙で読みたい方がもしおられましたら。
