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創䜜倧賞2026【AI小説】『最埌ノ爪⑪』第話衆目裏

    画像

     䌑憩時間になるず、若い女性はリュックの暪に぀いた癜いぬいぐるみを持ち䞊げた。

    「これ、かわいいですよね」

     怜奈が芋おいたこずに気づいたのかもしれない。

     癜い垃にくるたれた、小さな䞞いキャラクタヌだった。黒い靎だけが、劙に现かく䜜られおいる。

    「ミむラヌです」
     圌女は少し埗意そうに蚀った。

    「流行っおるんですか」
     怜奈が聞いた。

    「流行っおたす。ステッカヌ貌っおる子もいるし、アむコンにしおる子もいるし。ガチ勢もいたす」

    「ガチ勢」

    「はい。考察勢っおいうか。牧野さんの投皿ずか、斜蚭の写真ずか、ずっず远っおる人たちです」

    「牧野さん」
     矢代が、そこで初めお口を開いた。

     若い女性は、少しだけ衚情を倉えた。
    「ホットアむルの預蚀者っお呌ぶの、ほんずは倱瀌だず思っおたす」

     若い女性は、ぬいぐるみの頭を指で抌した。

    「でも、名前で呌ぶず本圓になりすぎるんです」

    「ニュヌスずか事件ずか、ちゃんず芋るず重いじゃないですか。死んだ人の名前ずか」

     圌女は、画面の方ぞ目を戻した。

    「だから、みんな半分ネタにしおたす。半分だけ」

     矢代は黙っおいた。

     怜奈も、すぐには答えなかった。

    「ミむラヌっお、別に死にたいずかじゃないんです。たぶん」

     圌女は少し笑った。

    「止たりたい、の方が近いです」

     画面の右端では、小さな円がただ回っおいた。

    远加候補を探玢しおいたす。

    「AIに聞けば、進路も、ESも、恋愛盞談も、それっぜく返っおくるじゃないですか。次の候補が出る。次の問いが出る。次の遞択肢が出る」

     圌女はぬいぐるみをリュックに戻した。

    「こっちは、もうどっちでもいいですっお思っおるずきもあるのに」

     䌚堎の別のテヌブルでは、誰かが笑っおいた。

    「倉ですよね」
     若い女性が蚀った。

    「いいえ」
     怜奈は答えた。

     矢代も静かに頷いた。
    「ネタだけでは、ないんですね」

     若い女性は、少し困った顔をした。

    「消費は、しおるず思いたす」

     正盎な声だった。

    「でも、それだけじゃないです」

         

    「グルヌプ発衚では、出おきた結果をそのたた出さないでください」

     ルヌトが䌚堎を歩きながら蚀った。

     䌑憩が終わる少し前、青いシャツの男が垭を立った。氎を取りに行くような自然な動きだった。

     怜奈は、目だけで远った。

     男は䌚堎の埌方ぞ向かった。そこには、スタッフ甚の小さなテヌブルがあり、予備の資料ず延長コヌドず、䜿われおいない名札が眮かれおいた。

     ルヌトが、ちょうどそこぞ戻っおきた。

     二人は短く蚀葉を亀わした。

     声は聞こえなかった。ルヌトは男のPC画面ではなく、手元のメモを芋た。青いシャツの男は、䜕かを指で瀺した。ルヌトは䞀床だけ頷いた。

     打ち合わせにも芋えたし、質問にも芋えた。ただの参加者が講垫に確認しおいるだけにも芋えた。けれど、怜奈には、二人の距離が少し近すぎるように芋えた。

    「矢代さん」

    「はい」
     矢代は、怜奈より先に蚀った。

     青いシャツの男は、䜕事もなかったように垭ぞ戻っおきた。

     若い女性が顔を䞊げる。

    「質問ですか」

    「確認です」
     男はそう答えた。

     若い女性は玍埗したように頷いた。
     
     矢代は䜕も蚀わなかった。
     怜奈は、男の手元のメモを芋た。さっきより、折り目が䞀぀増えおいる。

    「AIの出力は、ただ材料です。ここから、人間が業務で䜿える圢にしたす。リスクを䞉぀に絞る。根拠を䞀぀添える。明日から䜕に䜿えるかを䞀文で曞く。この䞉点でたずめおください」

     参加者たちは、再び画面に向き盎るず、䌚堎はさらに䞀段熱を垯びおいった。

    「すごいですね」
    「䟿利」
    「これ、そのたた䌁画曞に入れられそう」
    「いや、少し盎した方がいいでしょ」

     そういう声が、テヌブルの間を行き来した。

     怜奈たちの画面では、AI゚ヌゞェントが倖郚委蚗業務を分類しおいた。

     蚭備保守。譊備。枅掃。搬入。倜間察応。短期契玄。寮あり。契玄終了。

     若い女性が、それをスラむド甚の箇条曞きに敎えようずした。

    「これ、倚くないですか」

    「倚いですね」

     矢代が答えた。

     青いシャツの男が、そこで画面を閉じた。

    「十分だず思いたす」

    「え、ただ結果出おたすよ」
     若い女性が驚いた。

    「発衚には倚すぎたす」
     男はそう蚀っお、手元のメモに䜕かを曞いた。

     矢代はその手元を芋おいた。怜奈も芋た。だが、文字たでは読めなかった。

     閉じられた画面の端に、ほんの䞀瞬だけ衚瀺が残った。

    远加候補を探玢しおいたす。

     それから、消えた。

     本圓に止たったのかは、わからなかった。

         

     グルヌプ発衚の時間になった。ルヌトは、チヌムごずに成果を共有させた。物流倉庫。病院。自治䜓斜蚭。デヌタセンタヌ。

     どの発衚も、前向きだった。業務改善。リスク把握。営業提案。資料䜜成の効率化。

     参加者は笑い、頷き、写真を撮った。

    「いいですね」
     ルヌトは蚀った。

    「AI゚ヌゞェントは、みなさんの仕事を奪うものではありたせん。みなさんの芖野を広げるものです。今日の挔習を、ぜひ明日からの業務に持ち垰っおください」

     拍手が起きた。
     最埌たで、普通のセミナヌだった。

     青いシャツの男は、玙の資料を鞄にしたっおいた。名札はもう倖され、ノヌトPCの䞊に裏返しで眮かれおいる。若い女性は、ミむラヌのぬいぐるみを揺らしながら、他の参加者ずSNSを亀換しおいた。

     怜奈は䌚堎を芋枡した。

    「䞉枝さん」
     矢代が小さく蚀った。

    「䜕も出たせんでしたね」

    「出おいたした」

    「䜕が」

    「䜕も出ないように装う仕組みです」

     矢代は少しだけ考えた。

    「それは、困りたす」

         

    「すみたせん、Renaさん、Yashさん」

     出口ぞ向かおうずしたずき、受付の若い女性スタッフが小走りで近づいおきた。

     怜奈は足を止めた。矢代も止たった。

    「アンケヌトの送信がただでしたので。こちら、QRコヌドからでも倧䞈倫です」

     手枡された玙の䞊には、参加者名が印字されおいた。テヌブル番号。挔習ログID。

    「ログも参加者ごずに分かれおいるんですか」
     矢代が聞いた。

    「はい。埩習甚に、あずでご自身の䜜業を芋返せるようになっおいたす」
     スタッフはにこやかに答えた。

    「チヌムで共有したものは、チヌム単䜍でも確認できたす」

    「䟿利ですね」
     矢代が蚀った。

    「はい。皆さん、喜ばれたす」
     スタッフはそう蚀っお、次の参加者の方ぞ戻っおいった。

     怜奈は、玙を折った。

    「芋られおいたしたね」

    「少なくずも、ログには」

    「私たちが同じテヌブルだったこずも」

    「はい」

     矢代は目の前の出口の方を芋た。

     青いシャツの男は、もういなかった。

    「バレおいたず思いたすか」

    「䜕が、ですか」

    「私たちが、普通の参加者ではないこず」

     矢代はすぐには答えなかった。

    「わかりたせん」

    「刑事の答えですね」

    「今回は、本圓にわかりたせん」

     怜奈は出口に向けられた監芖カメラず目が合ったような気がした。

         

     垰り道、二人は駅たで歩いた。

     倕方の歩道は人で混んでいた。再開発ビルのガラスには、西日の色が薄く映っおいる。

     青いシャツの男の姿は芋えない。若い女性は、駅前で友人らしい参加者ず笑っおいた。ミむラヌのぬいぐるみが、バッグの暪で揺れおいる。

    「あの人たちは、衚の人ですね」
     怜奈が蚀った。

    「はい」
     矢代は答えた。
    「少なくずも、今日芋えた範囲では」

     怜奈は歩道の信号を芋た。赀だった。

    「AI゚ヌゞェントは、止たっおいるんでしょうか」

     信号が青に倉わった。

         

     その倜、怜奈は実家の客間でノヌトPCを開いた。

     母はもう寝おいた。

     庭の方から、现い虫の声が聞こえる。冷蔵庫の音。遠くの車。倜の家の音が、順番に戻っおくる。

     怜奈は、出口で枡されたアンケヌト甚玙の右䞋に、QRコヌドを芋た。

    『埩習甚ログはこちら。』

     そう曞かれおいた。怜奈はしばらく、その四角い暡様を芋おいた。

     ただの埩習ペヌゞかもしれない。ただのアンケヌトかもしれない。

     けれど、芋なければわからない。

     申し蟌みに䜿った監査甚スマホでQRコヌドを読み取るず、ブラりザが開いた。

    挔習ログを読み蟌み䞭です。

     数秒埌、昌間の画面が衚瀺された。
     画面の端に、芋芚えのある小さな衚瀺が残っおいた。

    远加候補を探玢しおいたす。

     怜奈は指を止めた。やはり終わっおいなかった。
     AI゚ヌゞェントは、ただ動いおいる。

     そのずき、スマヌトフォンが短く震えた

    閲芧履歎を同期したした。

     圓然だ。芋たこずも、開いたこずも、残る。

     止たっおいないものを確認するために入った自分も、その䞀郚になった。

         

     その盎埌、匿名アカりントが動いた。
     灰色の円。蚘号のような英数字。投皿は、䞀行だった。

    衆の目は、閉じおもなお芋る。

     怜奈は息を止めた。
     添付画像が件。怜奈は、少しだけためらっおから開いた。

     日本地図だった。

     癜い背景には、いく぀かの点が打たれおいる。新東京第五。北陜クラりドパヌク。西浜デヌタセンタヌ。そしお、ただ名前のない点が二぀。

     点ず点のあいだには、现い線が匕かれおいた。線の暪には、求人祚、議事録、保守蚘録、SNS投皿、ずいう小さな文字が䞊んでいる。

     その䞋に、短い語が䞊んでいた。

     蚭備保守補助。倜間察応。短期契玄。寮あり。契玄終了。連絡䞍胜。入通蚘録なし。

     これは、䞀人が䜜った図ではなかった。昌間の䌚堎で、䞉十人が別々に投げた問い。それぞれが芋た公開情報。それぞれが面癜がっお投皿した断片。そしお、運営偎の画面に䞀瞬だけ出た蚀葉。それらが、䞀枚に瞫い合わされおいた。

     矢代からメッセヌゞが来た。
    芋おいたす

     続けお、もう䞀通。
    参加者は、おそらく知らない

     怜奈は返信した。
    AIがただ動いおいる

     しばらくしお、矢代から返事が来た。
    衆の目は人間ではない

     怜奈は、日本地図の端を芋た。

     ただ呌ばれおいない堎所。

     そこに、次の釘が打たれおいるように芋えた。


    第1話垃状廃棄物
    第2話也いた預蚀者
    第3話正芏入通蚘録
    第4話最埌の爪
    第5話実家
    第6話勝手口
    第7話飛び火
    第8話槜の底
    第9話バディ
    第10話衆目ヌ衚


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