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フェロモン感知課長ヒミコ「貴女、香ってますよ」|第5話『フェロモン香し、まさかのここから』

    前回のお話

    数年前と比べて、新卒採用も始めたこともあって、女子社員が増えてきた我が社。女子が増えると、まぁ、男女関係もややこしくなるわ、恋愛トラブルも起きるわ、余計なことに神経つかうよね。

    たまに勘違いした女子社員が、私にけん制かけてくることもあって。
    笑える。

    こないだなんか、28歳の女子社員で、妹みたいに可愛がっていたんだけどね、やってくれたよ。

    めずらしく休日に彼氏とデートして、表参道歩いてたら、三木から電話。

    「七原ですぅ」

    「え??」

    三木の電話から、七原という妹分だと思ってた女子社員がかけてきた。

    私が驚いてたら、クスクス笑いだす七原。

    「実はぁ、三木さんと私、つきあうことになったんですぅ」

    おお!

    三木はくそ下半身野郎だけど、人としては嫌いじゃないし、友達としてはイイ奴だ。お勧めではないにしても、七原なら、三木のこと落ち着かせられるだろうって思って、素直に嬉しかった。

    「おめでとう!!嬉しい!!私の好きな二人が付き合うなんて、最高のカップルだよ!」

    私が喜ぶと、七原も嬉しそうにしていて、電話はそれで終わった。

    次の日。

    「ヒミコさん、聞いてくださいよ~」

    「おお!おめでとう!三木!」

    「だから!違うんですってば」

    「七原!つきあってないですからね、俺たち」

    なんじゃそら。

    「七原が勝手に俺のスマホ奪って、ヒミコさんに電話するって言いだして、勝手に電話したんです」

    「そう。でもつきあったからその報告でしょ?」

    「だーかーら!付き合ってないってさっきから言ってるじゃないですかぁ!七原が勝手に口走ったの」

    なんじゃそら。

    なんじゃそら、しか出てこんわ。

    「なんか、昨日、暇だったから七原をドライブに誘ったんすよ。そしたら助手席乗った途端、『私のことどう思ってんの?ヒミコさんとどこまでいったの?』とか問い詰められて」

    「は??なんで私があんたとそんな誤解されてんの」

    「知りませんってば!とにかくそれで、『ヒミコさんと私、どっちが可愛いか答えなさい』とか言われて」

    くっそ、どうでもいいけど、七原はなんで私をライバル視してんだろ。三木のこと好きだったのかな。確かに三木と私は仲はいいけど、それ以上のことは一切ないからな。

    「それで答えなかったら、勝手にスマホ取ってヒミコさんに電話したんです。電話してスッキリしたみたいですけど」

    こんな珍事件聞かされて私は一気に疲れた。

    可愛がっていても、しょせん、フェロ女かよ。
    感知できなかったなー。私も詰めが甘いわ…。

    感知できなかったフェロ女はまだいた。

    新卒入社で3年目。見た目も地味で仕事ぶりも真面目で、フェロモンのフェの字もないと思っていたら、社内男子を次々とデートに誘って、社内で婚活中とか。

    その子も、私が社内で三木と仕事の話を進めていると、話の途中でいきなり間に入ってきて「三木さん、あのゲームどこまで進みました?」って平気で割り込んできた。そのあと私を寄せ付けない態度するのも、まぁアッパレだよな。こっちは仕事の話、途中だったのによ。

    こんな細かなけん制を受けながらも、比較的、ここ最近は穏やかな日々だった。

    しかし。

    人事異動で、私が広報部次長になってしまった…。

    そして、広報部部長には、人事部次長だった宮崎さん。

    宮崎さんはもともと、デザイン会社から転職してきた人だったので、前々から人事部部長の話と並行して、広報部部長にって話も沸いていた。しかし、関がずっと人事部と兼任して広報部も部長職に就いていたので、なかなかそのポストが空かなかったのだが、サリーの一件で、関は部長職から外され、エリアマネージャーに降格になったので、広報部部長に宮崎さん、人事部部長は役員の御前様が兼任することになった。

    急に宮崎さんと一緒に仕事をするようになり、もともと彼は私の直属の上司だったし、コミュ力も高いので、私たちは急速に意気投合した。

    三木なんかとは正反対の誠実で真面目な感じ。サリーに陥れられたとはいえ、ハニートラップにかからない堅実さ。私は純粋に宮崎さんを尊敬していた。

    広報に関しては、関を何度も手伝ったこともあるし、大学の時に趣味でillustratorやPhotoshopを使っていて、友達の部活のチラシつくってあげたりしたことがあったので、私も宮崎さんの足をひっぱらない程度には仕事ができた。

    「ヒミコさん、本当にデザイン習ったりしてないんですか」

    なんて、いつも褒めてくれる宮崎さん。

    でも、宮崎さんのデザインは緻密で、やっぱりプロの仕事だなって思う。

    まぁそんなんで、惚気っぽくなったけど、ただの仕事仲間だからね?


    …のはずだったんだけど。


    ヒミコ、香し?


    あ、まずいな。


    感知しちゃいました。


    まさかの、


    自分から…。


    ぜったい、それなし!って思ってたのに、やばい、新しくワイシャツ買ってしまった…。ボタンのところにフリルついてるやつ。しかも、ピンク色…。

    でも、ぜったいに、下着はすけない、これは私の断固守るポリシーよ。

    あと、美容に毎日1時間かけてる…。


    ああ、やだなぁ。こんなの、いやだよ。


    宮崎さんとどうにかなりたいわけじゃないのに、身体が勝手に、フェロモンだしちゃう…。


    救いだったのは、私は御前様の人事の仕事の手伝いもしていたので、採用面接とか新人研修に頻繁に呼ばれることもあった。正直、ホッとした。

    少し、宮崎さんとは距離を置いた方が良さそうだ。

    自分から香る、フェロモンを消すためにも。


    今年は新卒採用に力を入れると御前様が言っていて、人事部も忙しく、最近は御前様にピッタリ張り付いて仕事している私。

    しばらく広報部には顔も出せていないので、フェロモンも弱まってきたと思う。おそらく。

    新卒向けの会社説明会に向けて、今年は会社案内も刷新するという。御前様はもともと関ではなく、宮崎さんに広報をさせたかったことから、宮崎さんが広報部に入ったことで、御前様は宮崎さん以上に広報活動にも精を出している。

    宮崎さんは今、その会社案内の制作でてんやわんやだ。

    御前様の注文も細かいし、修正も多いからね。印刷会社とのやり取りもあるし。デザインも外注しちゃえば、宮崎さんの負担も減るのに、御前様は「プロが社内にいるのに、外注して余計なお金かける必要ないでしょ」だそう。

    ま、ごもっともですけど。

    ある日、人事部の仕事が早めに片付いたので、広報部に顔を出して手伝えることがあれば、手伝おうと思っていた。

    ちょうどそのタイミングで、宮崎さんから内線がくる。

    「ヒミコさん、すみません。人事部の仕事、今日もお忙しいですか?」

    「ちょうど今日は終わって、広報部に顔出そうと思ってたところです」

    「よかった!実は、手伝ってほしいことがあって」

    そういわれて、私、すぐ行くことにした。
    …とその時。

    「ヒミコ!」

    御前様に呼び止められる。

    「今日はもうあがっていいよ」

    「でも、広報部からヘルプのお願いされたんで…」

    「それは私が行くからいい。最近、残業多かったから、少し休まないと」

    確かに、会社案内のラフを御前様と私で作っていたので、御前様につきあわされて、終電逃すことも多々あった。御前様が車で送ってくれたから良いんだけど。

    「大丈夫ですよ!体力はあるんで」

    「…。宮崎のこと好きかもしれないけど、そこまで構わなくていいから。宮崎を独り立ちさせないと、いつまでもヒミコ頼りじゃ、今後のあいつのキャリアも積まれなくなるからさ」

    へ?

    今、「好き」って言葉出た?

    なんで、いつ、そうなった?

    私は少しムッとなった。

    「そういうんじゃないんで。まぁでも、宮崎さんの足を引っ張ることになるのもまずいんで、今日のところは帰ります」

    御前様は、いつもより元気のない様子で、私を見送った。
    背後で御前様が内線で宮崎さんに「ヒミコを頼りすぎるな」と注意していたのが聞こえた。

    もしかして、御前様、意図的わたしを人事部に置いてる?

    フェロモン、見えちゃってたのかな…。

    モヤモヤした気持ちを抱えながら、私はその夜、宮崎さんにLINEした。

    「御前様の指示でこれ以上の残業はダメとのことで、お手伝いできず、すみません…」

    宮崎さんから即レスが。

    「今、電話していいですか」

    私、なんでこんなことで心躍ってるんだろう。どうしちゃったんだよ、ヒミコ!面倒はやめてくれ、私!

    と思いながらも、自分から電話してしまった。
    返事する手間が無駄じゃん?
    いや、待ちきれなかったんだよな。

    宮崎さんとの電話は、思ったほど深刻な内容もなく、ただただ、御前様が私をロックオンして人事部から離さない、ということを二人で共有した。

    宮崎さんが抱えている仕事量も多かったので、せめて、宮崎さんの下に部下がつけられないか、御前様に相談することにした。

    きわめて普通の業務上の話しかしていないんだけど、電話の最後に。


    「ありがとうございます。ヒミコさん。今度お礼させてください」

    そんな、いいですよ、なんて遠慮しながらも「お礼ってなに?」なんて変な期待する私。

    「おやすみなさい」

    宮崎さんがいつもと違う甘い声で言うから、私、もう確信してしまった。


    好き。


    この気持ちから溢れ出るフェロモンは止められない。

    そう思った。

    それで宮崎さんが落ちてくれれば、本望だもん。


    あ、しまった。
    彼氏どうすんの。

    あまりにも連絡取らなくて、忘れてた…。

    そのことで、私のフェロモンはいったん引っ込んだ。
    良かったような、これ、問題あるよなって気づくことにもなった。

    別れないと。ちゃんと。


    フェロモンの行方


    結局、彼氏との関係を清算すべく、「別れようと思ってる」って言ったものの、彼氏の方は納得いかず、きちんと別れることはできなかった。

    好きな人ができた、という言い分にも彼氏は、思い込みだ、とか、一時の気の迷いだ、とか、片思いで終わるからあきらめろ、と言って聞き入れてくれなかった。

    そうこうしているうちに、御前様も人事部から放してくれる様子もないし、宮崎さんへの気持ちは薄れていくだろうな、って期待した。

    しかし。

    あの電話をきっかけに。

    毎日くるんですよ。

    LINEやら電話やらが。


    ああ、困った。
    またフェロ女になってしまう…。


    でも、まずは仕事と、彼氏に集中して、

    どちらも片付けなくてはね。


    ついに新卒向けの会社説明会を迎えた。

    無事に会社案内も出来上がり、説明会の準備も間に合った。
    そして、説明会は成功をおさめた。

    その勢いで、今まで採用サイトにしか募集をかけていなかった中途採用にも力を入れることに。

    中途採用においても、合同会社説明会に出展することになった。

    また人事部は大忙しだ。


    ある日、また残業で電車を逃し、御前様の車で送ってもらう途中、急に御前様がぶっこんできた。

    「ヒミコ、ごめんね。宮崎のこと」

    「え?何がですか?」

    「まったまた~。好きなんでしょ」

    「尊敬はしてますよ」

    しらばっくれる私に、御前様は寂しそうに「そういうことにしとく~」とつぶやいた。

    ここのところ、いつもの勢いと元気がない御前様。

    フェロ女が存在するとしたら、まるでその逆の姿だ。

    いつも綺麗にしている髪も心なしかパサついている気がするし、いつも派手じゃないけど可愛らしいネイルをしているのに、ネイルにも行っていない様子。

    ハッとしたのは、そういえば、エルメスのバーキンどうした??

    御前様のトレードマークのようなものだったのに、最近、コーチに代わってたよね。

    あれ?あれ?と違和感が押し寄せてくる。

    「そういえば、鞄変えました?」

    「さすがヒミコ、するどいね。今、節約してるんだ」

    「何かあったんですか」

    「今までずっとダンナに頼りっきりだったなと思ってさ。私ももう取締役じゃない?だから、自立した女になろうと思って」

    「でも、後藤さんもう十分自立してるし、旦那さんに頼らなくても節約するような生活とは無縁ですよね」

    御前様は「うーん」とうなりながら、回答を避けた。

    「ヒミコはさ、宮崎とうまくいっていいんだよ!今は忙しいから私を手伝ってほしいけど。あと、宮崎を男にしてあげなくちゃ。いつもヒミコの腰ぎんちゃくみたいだと困るじゃん」

    御前様は、私のフェロモンを危険視してたのではなく、宮崎をスキルアップさせたかったようだ。やれやれ、自分がフェロ女になっちゃうと、色んなもの見失っちゃうもんだな。

    御前様とのドライブは、静かに夜更けとともに、帰路へ吸い込まれていくようだった。

    転機

    中途採用で数人社員が入社すると、説明会の成功もあって、御前様は元気になった。

    身なりもきちんと整えられて、バーキンはもう姿を消したけど、コーチすら高見えする出で立ちで、いつもの御前様だ。

    私は広報部へ戻ることができ、また宮崎さんの近くで仕事ができるようになった。なんとなく、くすぐったい気持ちで、穏やかな日々は続いた。フェロモンも、彼氏との関係が決着しないうちはスッキリしなくて、前ほど放出することもなくなった気がする。

    でも、帰宅して宮崎さんからLINEや電話がくると、抑えていたフェロモンが一気に噴出するのを感じた。「家に行っていいですか」とか「会いたい」って言葉が出そうになるのを必死に耐えた。


    しかし。

    4月。

    新卒が入社。

    ここで一気に幕が上がる。

    いや、幕が閉じたのかもしれない…。

    御前様と関がNOと言ったのに、社長がゴーサインだして採用した新卒女子が、見た目小動物なのに、とんでもフェロ女だったということ。

    あざとい、それは最大の武器となって、私と対峙することになる。

    ~フェロモン香し、まさかのここから~ 完

    次のお話に続く。


    【他のお話】



    #創作大賞2026#エンタメ原作部門


     
     
    youtube漫画動画の漫画起こしを5年ほどしていました。 AI生成イラスト研究中。 漫画配信していきたいところですが、 なかなか制作時間がないので、 小説やプロットで配信したり、 時にイラストでコラム描いたりします♪

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