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フェロモン感知課長ヒミコ「貴女、香ってますよ」|第6話『その香り、彼をモノにできますか』①

    前回のお話

    宮崎さんは相変わらず、まめに連絡をくれた。
    人事部の仕事で広報部に顔を出せないときは、電話をくれた。

    今日の業務報告って名目ではあるけど。

    宮崎さんの方が上司なのに、なぜか立場逆転のような感じで、御前様が独り立ちさせろっていうのも、確かにな、とは思う。

    でも私はこの関係が心地よかった。

    「ヒミコさん、DMの反響すごいですよ。ヒミコさんのデザインじゃないですか。やっぱり訴求力ありますね」

    宮崎はサラっと呼吸のように褒める。

    それ、他の人にもやってるのかな。
    あほなフェロモンは、そんなことまで考えるようになる。

    「宮崎さん、そんなに褒めなくていいですよ。宮崎さんのデザインの方がよっぽど洗練されてますし、今度教えてほしいです」

    「俺がヒミコさんに教えられることなんて、そうだな、illustratorの細かい機能くらいだよ、ははは」

    「そんなことないです!それに、宮崎さんが上司なんですから、私に敬語つかったり、そんなにお気遣い頂かなくても大丈夫ですからね」

    私は、彼を気遣って言ったつもりだったのだけど、急に宮崎さんが黙って、
    私が「宮崎さん?どうかしました?」と聞くと。

    「ヒミコさんは、素敵な人ですから」

    ぎゃーーー♡!まずい、これはまずい。

    「いやいやいやいや、宮崎さんの方が素敵ですって!ほんと、私なんか”女傑”ですよ、女の欠片もないというか、あ、そういう素敵じゃないか」

    最悪…。

    恥ずかしさ爆発して、まくし立てるように萎えることしか言えなかった。

    きっとこういうことの積み重ねだった。私が恋愛でうまくいかないのは。今の彼氏と付き合うのだって、彼が年下で怖いもの知らずで、私のこんなちっぽけなコンプレックスみたいのなんかお構いなしに突進できるだけの自信にあふれ、かつ自己中でもあったから。

    でも、私はそんな強い愛じゃなくて、もっと、柔らかく包んでくれるような愛がほしいんじゃないかって、最近思うようになったんだ。

    宮崎さんのやさしさに触れて。

    宮崎さんは笑いながら言った。

    「ヒミコさん、もっと自信もってください」

    「あ、そんな、すみません」

    「さ、ヒミコさんの美容に影響してはいけないので、そろそろ電話切りますね」

    宮崎さんは、こうやって当たり前のように私を女性扱いするんだ。そして甘い声で「おやすみなさい」と言う。

    困るくらい、私は自分の身体からピンクの香りが出てくるのを感じた。

    あざといフェロモン

    4月に入社した新卒たちの研修を、私が担当することになった。

    広報部には一切立ち寄れなかったけど、広報の仕事は円滑に進んでいるようで、私の役目はなかった。寂しいけど、宮崎さんに「素敵」と思ってもらえる女でいたいから、私は仕事も頑張るんだ。

    新卒の親睦レクで、みなとみらいを散策するという企画があった。

    御前様は日焼けしたくないから、と言って、その引率を私と関に押し付けた。こういう時だけ、御前様は関を利用する。とはいえ、そのうち関をまた部長職に引き上げるつもりなんだろう。どちらかというと、社長が関を役員にまでしたがっている。関は昔から社長の秘書のように動いていたから。

    新卒がきゃっきゃしながら、赤レンガの周りを楽しそうに歩いている。

    関は「若いねぇ」とぼやきながら私の隣を歩く。

    ふと、新卒たちを見ると、気になることが…。


    キャッチしました。あの香り。


    フェロモン出てる女がいる。

    でも、みんなそれぞれ出てるな。これは、若さゆえかな。

    突出してるのが一人いるけど。


    新卒は、女子3人、男子3人だ。
    合コンみたいな構成で笑えるけど、偶然そうなった。

    そんなだからか、雰囲気的に、海物語的な空気感が出るというか、いやどちらかというと、”あいのり”?いや、よく見たらこれは…。

    ”バチェラー”だ!

    一人の超絶イケメン「織田 樹(おだ いつき)」くんをめぐって、3人の女がここぞとばかりに隣を奪い合っているではないか。

    織田くんは、はっきり言おう。顔採用だ。だけど、学歴も悪くないし、立ち居振る舞いがお上品で、スクールの求める雰囲気にピッタリ。しかも帰国子女だから、もう言うことなし!まさしく、我が社の”バチェラー”ですよ。

    関もその構図に気づいたのか、「今年の新卒、おっもしれぇ~」と観察し始めた。

    「今のところ、優勢は安藤かな。長澤も負けず劣らずだけど、安藤が押し強すぎてな」

    安藤とは、新卒女子の一人で、一番やる気を見せて入社した子だ。研修でも積極的で、仕事に対しても熱意があり、明るく元気。間違いなく肉食系でもある。

    安藤はぐいぐい織田君の腕を引っ張り、自分と一緒に行動させる。肩をたたいたり、二の腕つかんだりのボディタッチも欠かさない。爽快な程の肉食ぶりだ。フェロモンカラーは真っ赤。まるでカルメンのような女だね。

    でも、彼女のフェロモンはそこまで噴出してる感じではなかった。彼女は何につけ大胆なだけで、織田くん以外の男子にもグイグイ引っ張って、仕切っていたから。

    長澤も明らかに織田に好意があるように見えるが、友達感が強くて、フェロモンは微量。単純にイケメンと仲良くしたいだけ、って感じにも見える。

    「うーん。私は安藤や長澤より、福原がダークホースで最後いいとこ取りするかなと」

    福原は新卒女子3人の中で最も目立たない大人しい子だった。ふわっとしたロングヘアで、色白、か細い声で頼りなく、典型的「男が守ってあげたくなる」タイプだった。

    でも、突出してフェロモン噴出させてたのはこの女だった。

    ネトっとした粘り気のある話し方で、織田くんの隣に忍者のように滑り込むテクニックといい、さりげなく荷物を持ってあげたり、さりげなく自分の飲み物を「飲む?」って渡してみたり、手練れすぎるよ、この女。

    もちろん、行動で判断したのではない。

    彼女の表情だ。トロンとした顔で、まるでベッドの上にいるような態度。なんだこれ。こんな女、いるんだ…。衝撃だった。

    関もそれは感じ取っていた。

    「あーあ、やっぱりヒミコにはわかっちゃうのか。俺、そこはわざと外したんだけどなー。当たりだよ、当たり」

    関は私を試していたらしい。めんどくさ。

    そして関は私に地雷を置いていった。

    「福原さ、俺も後藤さんも、あれはダメだって、採用を反対したんだよな。そしたら、社長がさ、鶴の一声で、『役員が反対する人材も会社には必要だ』とか言い出して、採用しちゃったのよ」

    「なんと…。ちなみに、なんで関さんも後藤さんも反対したんですか」

    「え?やばい女だからに決まってるでしょ。あいつ、そのうち絶対なんかやるぜ。早速、入社前だってさ、実家から通えない人は、会社が紹介した賃貸に入るようにって話したのに、片道1時間のシェアハウスに決めちゃったんだからね」

    私は言葉がでなかった。

    田村やサリーで散々、疲弊したのに。
    また地雷案件かよ。

    「御前様はなんて言ってるんです?私には新卒の細かい話はしてきませんから」

    「自爆するから待て」

    御前様のお得意の”自爆待ち”か。
    だから、私に何も話してこなかったのね。今のところ、動く必要も、やるべき仕事もないから。

    「もう、爆弾雇うのやめましょうよ!」

    私が本気で懇願すると、関は笑いながら「みんな、ヒミコみたいだったら楽なのにな(笑)」と言った。


    その時、ちょっと胸の奥がチクっとしてしまった。

    宮崎さんの顔が浮かんでしまい。


    衝撃の配属

    5月になると、新卒たちの研修が終わり、彼らの配属が決まった。

    発表前に、御前様に呼ばれて人事配置の報告を受けた。

    「ヒミコは5月付で人事部次長に正式に迎え入れることにしたから」

    宮崎さんと離れるのは寂しかったが、今までのように広報部に籍を置いてるのに人事部の仕事しかしない、というのも変な話だったので、その方がすっきりするし、毎日、今日は宮崎さんに会えるかなって期待しなくて済むし、そんな風に言い聞かせながら、快諾したふりをした。


    「そして、宮崎の下には、”福原”をつけるから」


    一瞬、滝打ちにでもあったような衝撃だった。


    「宮崎はサリーにもなびかなかったし、ヒミコがいるでしょ。だから、宮崎に福原を監視させるのが一番安全だと思って」

    「いや、私と宮崎さんはただの同僚で…。あ、でも、そうなんですね」

    「いいかな」

    御前様、なんで私にお伺い立てるの。そんなの、断れないの、知ってるくせに。宮崎と私の仲をあくまでも引き裂くつもりなのか。御前様はなぜそんなに、私と宮崎が一緒にいるのを避けたがるのだろう…。

    「はい。いいと思います」

    一生懸命、笑顔で絞り出した。でも、御前様には見抜かれていると思う。実際、見抜かれていた。

    「ごめんね、ヒミコ」

    「いえいえ」

    御前様の顔が見られなかった。うっかり涙出そうになって、トイレへ駆け込んだ。


    まだ何も起きてない。そう、起きてないんだ。何か起きるとも限らない。それに、同じ本社内にいるんだもん。何とかなる。

    私は自分にそう言い聞かせて、この場を耐え忍んだ。

    数日後、会議で配属が発表され、異動する人、配属先の新卒とその上司が前に並んだ。

    御前様と私、人事部。
    関が取締役に昇格。
    エリアマネージャーに中途採用のエース社員。
    広報部部長の宮崎さんの隣に、
    福原。

    以下、新卒とその上司。

    異様な光景だった。
    他の新卒がスクール配属の中、福原だけが広報部。しかも次長不在のところにただの見習いとはいえ、新卒の福原が部長の宮崎の隣に立つ。

    私は、息ができなくなる思いだった。

    早く、会議終われ。

    親睦を深めるために、宮崎は福原をランチに誘っていた。

    その様子を背後にして、私は御前様と打ち合わせをしていた。
    御前様の資料に視線を落とすも、一文字も頭に入ってこなかった。

    「ヒミコ、聞いてる?」

    「え?」

    気づけば、御前様が怪訝そうな顔で私を見ていた。

    「すみません、もう一回いいですか」

    「ヒミコ、お昼は焼肉行っとく?」

    御前様が「ドンマイ」と私の肩をたたいた。

    涙とフェロモン

    ついに、福原が配属される日がきた。
    初日から何か起きるわけもなく、平和に1日が終わった。
    あたらしく専属の部下がついたことで、宮崎さんも仕事の負担が減ると喜んでいた。

    福原が要注意人物だということを、宮崎さんに教えるべきか。

    否、だと思う。

    それは私が、気を付けて見ておいて、何か問題が起きそうになったら、その時に判断すればよいこと。

    だから、私は宮崎さんとは、普段通りの話しかしないようにした。


    数日経って、宮崎さんの様子が変わった。
    あきらかに疲れ果てていた。

    「ヒミコさん、相談いいですか」

    夜に電話が鳴った。忙しかったのか、最近はLINEで済ますことが多かったけど、電話で話したいらしかった。案の定、福原のことだった。

    「彼女、研修はちゃんと受けてますよね?」

    「もちろん。みんなと同じように指導して、実務レベルも他の子と差もなかったですよ。どうしました?」

    「”研修で教わってなくて”が口癖で、箸の上げ下ろしのようなことまで、俺に聞いてくるんです。ずっと隣にベッタリで、休憩すらまともにできないんですよ。逐一メモ取って、熱意はあるんですけどね」

    やれやれ。

    「でもそれじゃ、宮崎さんの仕事が滞りますよね…」

    「ま、そうなんです。ある程度は、新人がついたら仕方のないことなんですけどね。ちょっと度を越してる気がして、研修の時どうだったのかお伺いしたくて」

    「後藤さんに、状況はお伝えしておきます。すみません、宮崎さんもお忙しいのに、かえって大変な思いさせてしまいましたね…」

    「いえいえ、ヒミコさんのせいじゃないですから。俺がもっとしっかりすれば良いのかな」

    宮崎さんは、大人な対応で、それ以上の愚痴は言わなかった。
    その日は、いつもの甘い「おやすみなさい」がなくて、「失礼します」と業務的に電話を終わってしまい、私の心は何かに刺された気持ちになった。

    なんでだろう。
    涙が出た。

    次の日、私は御前様にその話をした。

    「ヒミコさ、ごめんだけど、それは『捨ておけ』だわ。宮崎、自分で何とかしろ。そもそも、新卒一人うまく使えないんじゃ、部長なんてつとまらないから。飼いならすくらいじゃないと」

    「確かに…。そうですよね、宮崎さんが、ビシっと言えばいいのに!」

    御前様に正論突かれて、私はハッとした。
    宮崎さん好きすぎて、なんとか助けてあげなきゃとか思ってたけど、お前が言うこと言えばいいだろ、って話よな。

    あー、目が覚めて良かった!

    「そうよ、ヒミコぉ~!男を甘やかしちゃダメ。ダメ男生成するからね。福原なんかヒミコの足元にも及ばないんだから、堂々としてなさい。それで福原になびいたら、宮崎がその程度の男だったってこと」

    そのとおりだ。
    本当にその通りだ。

    そうわかっているのに、私の心はなぜか晴れなかった。

    その夜、また宮崎さんから電話。
    いつもなら、あんなに嬉しかったのに、今日はその電話を取るのが憂鬱だった。案の定、福原の話だった。

    「今日、福原さんに泣かれました」

    「え??なぜ?」

    「自分の仕事のできなさに、自信をなくした、と」

    「へ?なんか自信なくすような仕事頼んだんですか?」

    「ヒミコさんがしてくれていた作業を、要は画像サイズの変更なんですけど、お願いしたら、泣かれてしまって…」

    まぁ、それは教わってなければいきなり振られても困る作業だわな。それを指摘したら、彼女は学生時代に部の会報誌作ったりしてたというから、そんな基礎的なことならできるだろうと思って頼んだとのこと。

    「ヒミコさんが手伝ってくれていたことを少しでも彼女にできるようになってもらえると、俺も助かるし、ってお願いしたんですけど」

    それだ。

    「私と比べられたと思ったんじゃないですか?」

    「えー??この文脈で??」

    「女の子ってそういうもんですよ。私の名前を出さなければ、泣かないと思うので、これからは、『福原さんに』お願いしたいんです、って言ってみたらどうです」

    珍しく宮崎さんはため息を漏らした。

    「めんどくさいですね」

    「そ、女性とはそういうもんです」

    「ヒミコさんは違うじゃないですか」

    「女傑なんでw」と私が冗談言うと、
    宮崎さんは黙った。

    少しの沈黙のあと、彼は甘い声で言った。


    「ヒミコさんに戻ってきてほしいです」


    ギュイーーーン♡!!
    落ちてた気持ちも、枯れたフェロモンも一気に上昇した。
    落ち着け、ヒミコ。
    落ち着くんだ、私!
    そう、今度こそ、可愛い返答を。
    あざとくてもいい、あざと女子を降臨させるんだ!

    「私も、宮崎さんと一緒に仕事したいです」

    と、言おうとして、

    「私も広報部戻りたいですー」

    チーーーーン。
    なんで、こんな色気のないことしか言えないんだろ、私。

    あざといだけの福原を見習うべきだ。
    少しでも。

    宮崎さんは寂しそうに笑いながら、「無理なお願いですよね」と言い、私は「後藤さんは宮崎さんに一目置いているので、自分で解決できるだろうって言ってました。”飼いならしなさい”ですって」と業務的に返した。

    その日は、甘い「おやすみなさい」が返ってきた。
    私は、チクチクした胸に彼の甘い声を抱いて眠った。

    別れ

    ついに彼氏と本気で別れることにした。

    宮崎さんの前で女になれないのは、私はまだフリーではない、その資格がないから。だから、ここで決着をつける。

    私も、あざとさを、宮崎さんに発揮するんだ。

    彼氏とのデート。
    ランチを食べながら別れを告げた。

    「で、本気で私、別れたいんだけど」

    「ふぅん」

    あれ?拒絶こなかった。

    「宮崎って男、好きだから?」

    なんで、名前知ってんの?
    と思ったら、どうやら私がトイレに行っている間に、スマホの中身みたらしい。私のロック番号知ってるんだよね。見られて困るもんないから、放置してたんだけど。

    「こいつ、きもいじゃん。毎日LINEも電話もしてきてさ。もう付き合ってんの?」

    「いや、仕事の話だよ。LINE見たんだったらわかるじゃん」

    「でもさ、お前もきもいよ。『宮崎さん、すごいですー』とか不自然に褒めちゃってさ。俺には全然褒めてくれないくせに」

    「仕事仲間だもん、お互い認め合って仕事した方が良いものつくれるじゃん」

    彼氏は呆れたように「はいはい」と言うだけだった。

    「お前、この男無理だと思うよ」

    「なにが?」

    「だって、こいつお前のこと好きじゃないもん」

    「なんでそう思うの?」

    「こいつ、自分のこと大好きすぎじゃん。自分の話ばっかりでさ、褒めて褒めて、が目立つんだよ。文面に」

    そうかな、ただの仕事の報告だと思うが…。でも反論するのも疲れたので言わせておいた。

    「こんなのと付き合いたいとか思ってるわけ?」

    もうめんどくさいから、そうすることにした。

    「そう」

    「じゃ何?こいつに抱かれてもいいと思ってんの?」

    「そう」

    「マジで?ショックだわ…。よりによって、俺のあとが、この男ぉ??もっとイカした奴にしてくれよ、せめて。この男に告白するの?俺がしたみたいに、ショックだわ~。しかも絶対フラれるの確定だし!」

    なんで、こいつはこんなに宮崎さんを否定するんだろう。でも、なんとなくわかる気もする。この男はいちいち白黒ハッキリしたタイプ。宮崎さんは優しいけど、煮え切らない部分も確かだ。しかも、私がフラれる前提ってのも腹立つけど、図星のように思う。

    「てゆうかさ、別にいいの。この人とどうなろうが、関係ないの。私はもうあなたと付き合う気がない、恋愛感情はない、アンタも私に恋愛感情消えてる、結婚する気もない、無駄だから、白紙にしようって話」

    「わかった、わかった。悪かったよ。何、結婚しようって言えば、俺と別れないの?」

    「もうないな。それも。今となっては、あなた以外だったら誰とでも結婚できる気がするけど、あなたとだけは結婚できないわ」

    「何それ、ウケるw」

    これが、私たちが恋人同士だった最後の会話になった。彼はやっと別れを受け入れてくれて、私たちは解散した。

    友達として会うことはできるよね、って言いながらお互い別れたけど、その先、私たちが会うことはなかった。本当にこれが最後の別れとなった。

    どうして彼氏は私とこんな状態でも別れようと思わなかったんだろう。いや、彼は気ままな奴だった。自分の気分で私になついてきて、いつの間にか勝手にどこかへ消えてしまう猫のように。他の飼い主でも見つけたかな。ま、飼ってたわけではないけど。

    不思議と涙が出た。
    彼との別れが悲しいというより、きっと私のこと一番理解してくれた人。恋人としてはうまくいかなかったけど、親友としては最高の奴だった。
    寂しくて、泣いた。

    この頃、私は自分のことで精いっぱいで、周りが見えていなかった。
    新卒の安藤が社内恋愛をこじらせていたことや、そこに長澤も絡んで、福原は相変わらず宮崎さんに泣きつきながらも、新卒男子全員にハニー攻撃していたことにも気づかなかった。そして何より。

    御前様の変化にも気づいていなかったんだ。

    次回に続く



    #創作大賞2026 #エンタメ原作部門#お仕事小説部門



     
     
    youtube漫画動画の漫画起こしを5年ほどしていました。 AI生成イラスト研究中。 漫画配信していきたいところですが、 なかなか制作時間がないので、 小説やプロットで配信したり、 時にイラストでコラム描いたりします♪

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