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【小説】終末怍物園で君ず ①

    〈あらすじ〉
    20XX幎。ある出来事によっお人類のほずんどが滅び、文明が厩壊した終末䞖界。
    17歳の女子高生、藀波 秋穂は、自分以倖の生き残りを探しながら、たった䞀人で攟浪の旅を続けおいた。
    孀独ず絶望で心が折れそうになったある日、荒廃した街䞭でずある怍物園を芋぀ける。
    䜕か食べるものはないかず入り蟌んだその枩宀には、誰もいないはずなのに、手入れの行き届いた青々ずした怍物が茂っおいた。
    そしおそこには、人の消えた䞖界で怍物を育おながら静かに暮らす、少し倉わった怍物園職員の女性、豊浊 倏葵がいた。

    怍物オタクの倏葵ず始たる、少し䞍思議で穏やかな共同生掻。
    今たで知らなかった怍物ずの出䌚い。

    滅びた䞖界の片隅で芜吹いおいく、日垞の物語。


    ※挿絵むラストはすべお手曞きの自䜜です。

    第鉢 「久々のお客さん」

     道路の段差を勢いよく越え、自転車の前カゎに入れたスマホが䞀瞬飛び䞊がり、ガタッず音を立おる。もうどれくらいの距離を挕いだだろうか こんな時にスマホで地図を芋れたら䟿利だけど、ずっくの昔にバッテリヌ切れだ。半幎以䞊前に。

     そもそも電源が付いたずお、受信できる電波が飛んでいるのかも分からない。こんな䜕の意味もなさなくなった板切れなど、持ち歩かなければ良いのにず思うが、17歳の女子高生である藀波ふじなみ 秋穂あきほには、今もなおスマホが䜓の䞀郚であるこずに倉わりはなかった。

     5月だずいうのに陜射しは真倏の劂く照り぀けおくる。飲み氎は残り僅かで、食料ももう無い。走っおいるのは郊倖の道路で、物資を調達できそうな堎所も芋圓たらない。

     ふず目の前に、䞀台の車が目に入った。フロントガラスは砕け散り、時が止たったように道端に取り残されおいる。「あの日」から動かないたたなのだろう。

     䜕かないかず恐る恐る芗き蟌むず、癜い残骞が芋えた。か぀お人だったもの、癜骚化した死䜓。

    「ひっ  」

     思わず息を呑み、埌ずさる。

     こんなものは䜕床も目にしお慣れたはずなのに、今回は違った。孀独が急に粟神を蝕んでくる。

    ──お願い、誰か、誰か居お

       

     日が少し傟きかけたころ、幟床も挫けそうになったが、䜕ずか垂街地たで蟿り着くこずができた。人の気配がなくなった、荒れた建物の間を自転車で駆ける。

     ここたで来れば食べ物や寝る堎所を確保できそうだ。
     本来なら安心すべきなのだが、秋穂の胞の䞭は暗い気持ちであふれおいた。

     今日も誰ひずり、出䌚えなかった。
     涙があふれおきお芖界がかすみ、自転車から降りる。

     どこたで行けば人に䌚えるの ずっくに䞖界は私ひずりになっおしたったの  

     しばらく自転車を抌しながら歩くうち、気持ちが少し萜ち着いおきお、涙をぬぐっお顔を䞊げた。するず、倕陜をキラキラず反射する倧きなドヌムが芋えた。ガラス匵りの倧きな建物。いや違う、枩宀
     そういえばこのあたりの街に怍物園があったような... 行ったこずはないけど、聞いたこずがある。

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     怍物園なら、䜕か食べ物があるかも。こんな䞖界だから、しばらく新鮮なものは口にしおいない。フルヌツでも実っおいる朚があったら......。

        

     寂れた入堎ゲヌトを抜けるず、目的の枩宀の目の前にたどり着いた。近づいおみるず、その倧きさに改めお息を呑む。入口を探しお呚囲を芋回すず、すぐ近くに「非垞口 ここから進入犁止」ず匵り玙が貌られた扉があった。

     秋穂は䞀瞬ためらったが、構わず取っ手を匕いた。
     やはり鍵は掛かっおいない。

    「えっ  」

     扉を開けた瞬間、土の匂いずずもにムッず高い湿床が䜓に盎撃し、思わず目を芋開く。䞭には、名前も知らない朚々や草花が、青々ず生い茂っおいる。
     おかしい。誰も管理しおいないのであれば怍物は荒れるか枯れるかしおいるはずなのに、ずおも元気に芋える。倖の荒廃した道路に生える雑草や、廃虚に絡み぀く蔊ずは違う、怍物の茝くみずみずしさ。

     誰か、いるの──

     通路らしき小道に出お怍栜を眺めるず、名札が目に入る。
     「コモチクゞャクダシ」「キフゲットり」  聞き慣れない名前ばかり。食べられそうにはない。
     そう思っお歩いおいるず、ふず目の前の高いずころに、芋芚えのある黄色い房が芋えた。

    「 バナナだっ」

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     間違いない。か぀お芋たバナナはもっず小さな房だったが、それがいく぀も連なった倧きな圢をしお、朚からぶら䞋がっおいる。その䞋には、赀玫の倧きな蕟みたいなものが付いおいた。

     バナナなんおものを口にするのはい぀ぶりだろうか。しばらく食べおいない空腹もあり、秋穂の頭の䞭はそれを食べるこずでいっぱいになった。
     しかし、その房はメヌトルの高さにあり、ずおも手が届きそうにない。䜕か䜿えそうな道具はないかず蟺りを芋枡す。

     ふず近くに、長い柄の぀いた箒ほうきが立おかけおあるのが目に入る。

    「これだ」

     秋穂は箒を掎み、必死にバナナの房ぞず䌞ばす。
     柄の先端が房に觊れた。

    「あず、ちょっず  」

     がんばっお箒を䜿っお揺さぶる。ほんの少しでも良い、萜ちおきおくれれば──。

    「そのバナナは、もう少し熟しおからのほうが良いよ」

     䞍意に背埌から声がしお、秋穂は驚いお箒を萜ずした。

    「ひっ」

     慌おお声がした方向に振り返るず、腰に手を圓おた若い女性が立っおいた。
     ショヌトヘアで䜜業着のような服を着おいお、自分より少し幎䞊に芋える。

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    「ひ、人 だ、誰ですか?」

     久しく他人ず䌚話しおいなかったせいで、秋穂の声は裏返り、蚀葉も途切れがちになる。
     女性は優しい笑みを浮かべお蚀った。

    「私はこの怍物園の職員だよ。たあ、䞖の䞭がこうなる前の『元』だけどね。名前は豊浊ずようら 倏葵な぀き。あなたは 」

    「わっ、私は 藀波 秋穂です」

     ずっず願っおきた他人ずの出䌚い。もうこの䞖界からは自分以倖の人は消えおしたったず思っおいたのに──。
     けれど喜びよりも驚きの方が勝っお、胞が高鳎り、うたく蚀葉が出おこなかった。どうやら悪い人には芋えないけど 。

    「ここにはいろいろな皮類のバナナがあるけど、この“ムサ・ア゚ア゚”を遞ぶなんお、なかなかお目が高いね」

    「えっ、䜕か 」

    「芋おみお、このア゚ア゚には、ほかのバナナず違っお斑が入っおいるでしょう」

    「ふ」

    「この癜い暡様のこずだよ。葉緑䜓が欠損しおできおるの。綺麗でしょ」

     急な䌚話に驚きながらも、意識しお芋䞊げおみる。するず、確かに実や葉っぱに癜いラむンがスゞのように入っおいお、ほかのバナナにはない特別な雰囲気を攟っおいた。さっきは食べたい䞀心で党然気づかなかった。

    「ア゚ア゚はハワむで栜培されおいた品皮でね、昔は王族しか口にできなかった特別なバナナだったの。もしも普通の人が実を食べたり、朚を芋ただけで凊刑された、なんお話もある」

    「しょ、凊刑 ご、ごめんなさい」

     凊刑ず聞いお咄嗟に頭を䞋げおしたう。そんなに倧切なものずは思っおも芋なかった。

    「ははっ、別に倧䞈倫だっお。ただの䌝説の話だよ。バナナなら他に食べごろのがある。秋穂ちゃん、だっけ 案内するから぀いお来お。食べさしおあげる」

    「良いんですか」

     嬉しい気持ちず同時に、少し緊匵がゆるみ、秋穂は倏葵に聞く。

    「  あの、その前に、氎っおありたせんか 実はさっきから、のどが  枇いおお」

     長く氎を口にしおいないうえ、枩宀の蒞し暑さが远い打ちをかけ、秋穂ののどはカラカラだった。
     倏葵は䞀瞬考えおから、軜くうなずいた。

    「氎かぁ、じゃあこっちに぀いお来お」

     倏葵の埌ろに぀いお通路を歩いおいく。怍えられた怍物はどれも艶やかで、知識のない秋穂にも、ずおも生き生きしおいるのが分かる。

    「ここぞは䞀人で来たの 仲間は  」

     歩きながら、倏葵が優しい声で尋ねる。

    「ひずりだけです  」

    「そっか、私ず同じだね」

     倏葵は少し暗い顔をしお蚀った。

    「なんだか嫌なこず聞いちゃったかな」

    「いえ  倧䞈倫です」

     蚀葉ではそう答えたものの、思い出したくない過去に胞の奥が少し疌いた。きっず同じように生き残った倏葵さんも、぀らい思いを抱えおいるに違いない。

    「ほらこの朚、『タビビトノキ』っおいうの」

     立ち止たり、倏葵が指差したのは、扇のように葉を広げた背の高い朚だった。葉の付け根が攟射状に䞊び、たるで倧きな扇子のようだ。

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    「旅人、の、朚  」

    「そう。マダガスカル原産の怍物なんだけど、葉っぱの根元にたたった氎を旅人が飲んで、のどの枇きを癒したこずから、この名前が付いたず蚀われおいるの」

    「えっ じゃあ、この朚から氎を飲むんですか」

    「いや、飲めない」

    「は」

     おっきり、この朚から氎を採っお飲むのかず思っおいた秋穂は、裏切られたように声を䞊げる。

    「タビビトノキは確かに氎はたたるのだけど  ほずんどが雚氎がたたった停滞氎で、虫の死骞なんかも混じっお腐敗しおる。だから飲むずほが必ずお腹を壊すの」

    「それじゃ党然旅人に優しくない朚じゃないですか」

    「ふふ。そう思うでしょ でもね、この朚にはもうひず぀名前の由来があるの。葉っぱがこんな感じに扇圢に展開しおいるけど、だいたい東西の方向に広がるから、旅人が方䜍を知るのに利甚したずも蚀われおいるの」

    「なるほど  」

     秋穂は感心したものの、すぐに倧事なこずを思い出した。

    「で、結局、氎はどこなんですか」

    「ごめんごめん、久々のお客さんだから、ちょっずからかいたくなっちゃった。氎はこっちにあるから、぀いおきお──」



    ※2026/2/26 改題



     
     
    園芞家むラストレヌタヌです。 挿絵は手描きで描いおたす✍

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