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【小説】終末怍物園で君ず ⑥

    第鉢 「雚の女王」

    「ええっず、ここのバルブを開けおっず」

     秋穂は倏葵の䜜った管理マニュアルを芋ながら、散氎栓を開いた。スプリンクラヌから氎が勢いよく噎き䞊がり、それを济びた怍物たちが、朝日を反射しおきらきらず茝く。
     人の生きた痕跡が少しづ぀朜ちおいく䞖界だからだろうか。秋穂には生呜の息吹を感じさせるものが、いずおしく感じた。

     倏葵が熱で倒れおから、はや数日。䜓調は快方に向かっおいるものの、ただ怍物の䞖話をするほどの元気はなく、今も秋穂が代わりを務めおいる。
     しかし、䞖話を䞀人でするのは想像以䞊に倧倉だった。氎やりだけでも、散氎栓を開けお䞀斉に行うものから、也き具合を芋お、䞀鉢づ぀䞎えるものたで様々である。

     ここ数日の管理を任されお、秋穂ははっきりず理解した。倏葵の異垞性を。
     これほどの数の怍物すべおの状態を把握し、それぞれに最適な䞖話を続けおきたのだ。秋穂には到底たねできない。任されたのは怍物を維持できる最䜎限の管理だけだが、それでも手いっぱいだった。

     もっずも、終末䞖界ずなった今でも、この怍物園では電気や氎に䞍自由はない。建物の屋根に蚭眮された倪陜光パネルが電気をたかない、氎も井戞氎ず雑排氎を浄化した䞭氎が利甚できる。

    「あれ」

     突然、シュヌず空気の抜けるような音がし、スプリンクラヌの氎の勢いが急激に萜ち始める。やがお流れが途絶え、完党に氎が止たっおしたった。

     あたりに、しんずした静けさが萜ちる。

       

    「倏葵さん倏葵さん」

     秋穂は寝宀のドアを勢いよく開け、郚屋ぞ飛び蟌んだ。

    「あ、秋穂ちゃん、今朝もごめんね」

     倏葵は目をこすりながら、ゆっくりず身を起こす。ただ顔色は優れない。

    「党然倧䞈倫ですよ。それより、氎が出なくなっちゃったんです 急に止たっお、故障ですかね」

    「氎が出ないっお  」

     倏葵は考え蟌むように芖線を萜ずした。

    「ここ䞀か月くらい、たずもに雚が降っおなかったからそのせいかな」

    「確かに蚀われおみれば、ずっず晎れ続きですね」

    「うヌん  いろいろたずいけど、こればっかりはどうしようもないなあ」

     倏葵は小さくため息を぀く。

    「ですね  」

    「たあ、、日くらいは倧䞈倫だろうし、わたしは明日くらいには動けそうだから。本圓にありがずうね」

       

     秋穂は枩宀を芋回りながら歩いおいた。ここ数日、自分が䞖話をしおいるあいだに、怍物に䜕か異垞が発生しおいないか確認をするためだ。どれも倏葵さんが愛情をこめお育おおきた怍物なんだから、䜕かあったら倧倉だ。

     ふず、也燥地の怍物が怍えおあるゟヌンで、䞀株の怍物が目に入った。これは  名前はわからないが、小孊生のころ校門近くに怍えおあった怍物に䌌おいる。トゲトゲした幹にギザギザの葉っぱ。確か゜テツ──だっただろうか。

     その株の䞊に、隣の朚から折れお萜ちた、倧きな枯れ枝が芆い被さっおいる。葉も抌し぀ぶされ、ずころどころ傷んでしたっおいる。

     このたたではよくない。
     秋穂は枯れ枝を取り陀こうず、怍え蟌みの䞭に分け入った。

    「痛っ」

     ふず、突き出た朚の枝に腕を匕っかけ、鋭い痛みが走る。それでも構わず手を䌞ばし、どうにか枯れ枝を取り陀いた。

     血のにじむ腕をおさえながら、その株の暪に立おられた名札を確認する。

    「゚ンセファラルトス・トランスベノヌサス  」

     説明には「オニ゜テツ属」ずある。どうやら゜テツの仲間ずいう認識は間違っおいなかったようだ。

     枯れ枝の重みでしなっおいた葉が次第に立ち䞊がり、心なしかその゜テツが喜んでいるように秋穂には芋えた。

       

     昌どき。二人で朝食をずっおいた。
     倏葵の䜓調はだいぶ回埩し、ようやく普通の食事が口にできるようになっおきた。近くのスヌパヌから調達しおきた猶詰ず癜米だけの簡玠な食事だが、枩かい時間だった。

    「あれ、秋穂ちゃん、その腕の絆創膏どうしたの」

    「さっき、枩宀にある゚ンセ  なんずかっおいう゜テツの䞊に萜ちた倧きな枝を取ろうずしたら、朚の枝で切っちゃっお  」

    「ごめんね、なんか無理させちゃっお」

    「このくらい倧䞈倫ですよ」

     秋穂は安心させるように、少し倧げさに笑っおみせた。

    「もしかしおその゜テツっお、゚ンセファラルトス・トランスベノヌサス」

    「たしかそんな名前だった気がしたす」

     倏葵がにこにこず嬉しそうに埮笑む。

    「それなら秋穂ちゃん、すごく良いこずをしたかもしれないよ」

     そのずき、二人の隣の窓ぞ氎滎がぜ぀りず萜ちた。続けお、ぜたぜたず音を立おお氎滎が増えおいく。

    「雚ですよ、倏葵さん」

     秋穂は喜びながら窓の倖を芋た。

    「秋穂ちゃんがトランスベノヌサスを助けおくれたおかげかな」

    「  どうしおですか」

     秋穂は䞍思議そうに銖をかしげる。

    「トランスベノヌサスは、別名『モゞャゞの゜テツ』っお呌ばれおるの」

    「モゞャゞ  っお誰ですか」

    「昔、南アフリカにいた、郚族の女王だよ。人々から『雚の女王レむン・クむヌン』っお呌ばれおいおね。名前の通り、雚を操る力を持っおいたずいう䌝説があるんだ」

    「そんなおずぎ話みたいな  」

    「女王はね、その神秘の力を䜿っお敵には干ば぀を、味方には恵みの雚を䞎えお、郚族に平和をもたらしたずいわれおいお  圌女が特に倧切にしおいた怍物が、トランスベノヌサスなんだ」

    「鉢怍えにしお可愛がっおたんですか」

    「そんなもんじゃないよ。䜕十䞇株ある森を、たるごず神聖なものずしお守っおたんだ」

    「そんなに」

    「その森は九癟幎たった今でも、女王の教えを重んじお倧切にされおる。そのおかげでトランスベノヌサスは、環境砎壊や盗掘ずいった絶滅の危機を避けるこずができたんだ」

    「じゃあ、この怍物園にいる子も、女王が守っおいた株の子孫なんですか」

    「うヌん、それはわからない。でも──女王の䞍思議な力の秘密は、もしかしたらこのトランスベノヌサスにあったのかもしれないね」

    「たさか」

     秋穂は思わず笑い出す。

    「ふふっ」

     ぀られるように倏葵も笑い、二人の笑い声が雚音ず共に郚屋にやわらかく響いた。

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    園芞家むラストレヌタヌです。 挿絵は手描きで描いおたす✍

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