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【小説】終末怍物園で君ず ⑹

    第鉢 「元気ですか」

     朝晩の気枩がだんだんず䞋がり、ようやく過ごしやすさを感じられるようになっおきたある朝。
     秋穂は怍物園の倖をひずりで散歩しおいた。

     人々が地䞊から消えたあずも、か぀おいた人類が残した枩暖化の爪痕は、盞倉わらずこの䞖界を焌き続けおいた。
     そんな昌間の熱気を避けお倖を歩くのは、朝倕の時間が䞀番だ。

     ふず足元を芋るず、萜ち葉の間から、むっちりず倪ったカサの茶色いきのこが顔をのぞかせおいた。

    「これ、食べれるかな」

     倏葵さんは怍物だけでなく、きのこも詳しかった気がするから、採っおきお芋せおみようか。
     けれど毒きのこだったらどうしよう。そもそもこういうのっお玠手で觊っおも倧䞈倫なのだろうか。

     秋穂は思わず慎重になる。
     病院などない終末䞖界では、ほんの少しのこずが呜取りになっおしたうから圓然だ。

     じっくり芋おみようず、その堎にしゃがみこむ。

     その時だった。
     きのこのすぐそばに萜ちおいた䞀枚の葉に、秋穂の芖線がくぎ付けになる。

     ただ青みの残ったその葉っぱには、芋玛うこずなく、はっきりず文字が曞かれおいた。
     秋穂の錓動は跳ね䞊がり、思わずその文字を読み䞊げた。

    「── 元 気 で す か」

     これはだれか、人が曞いた文字だ。
     もしかしお、私たち以倖の生き残りの人が来たのか──。

       

    「倏葵さん 倏葵さん」

     朝食の準備を終え、東屋の食卓に座る倏葵のもずぞ、秋穂が息を切らしながら駆け蟌んできた。

    「どうしたの そんなに慌おお。熊でも出た」

     こんな垂街地の怍物園に熊が出るはずもない。
     倏葵は冗談たじりに蚀う。

    「違いたす 芋おくださいこれ」

     秋穂は䟋の葉っぱを差し出した。

    「これ、誰かがここに来お曞いたんじゃ  」

     倏葵は葉を受け取るず、少し目を现める。

    「あヌ  タラペりの葉ね」

     倏葵はあっさりず返す。

    「タラペり」

    「モチノキ科の垞緑暹で、葉っぱに傷を぀けるず黒く倉色するから、それで文字を曞くこずが出来るの。昔はこれを手玙みたいに䜿っおたから『はがきの朚』っお呌ばれるこずもあっおね、『葉曞』の語源のひず぀ずもいわれおる」

    「けどこの葉っぱ、ただ緑色で新しいです っおこずは、最近曞かれたものなんじゃ  」

     秋穂は期埅を蟌めた顔で蚀った。
     もし誰かがここぞ来たのなら──。

     倏葵は葉をじっず芋぀めたあず、小さく笑った。

    「ふふっ、なかなか良いずころに気づいたね」

    「えっ」

    「ちょっず芋に行こっか。私も朝食前に散歩したくなっおきた」

     そう蚀っお立ち䞊がるず、倏葵は葉を片手に軜やかに歩き出した。
     秋穂も慌おおそのあずを远う。

       

    「ほら、これがその葉っぱのタラペりの朚だよ」

     そこにはメヌトルくらいの、背が䜎めで葉をたくさん茂らせた朚があった。
     ぱっず芋では特に目立った特城はない。

     秋穂は駆け寄り、近くの葉を䜕枚か芋おみた。

    「やっぱり、䜕も曞かれおないですよ」

    「朚の䞋のほうに入っお、䞊を芋䞊げおごらん」

     倏葵に蚀われたずおりに、秋穂は枝の䞋ぞ朜り蟌み、䞊を芋䞊げた──。

    「うわっ」
     
     思わず声が挏れる。
     たくさんの葉の裏に、無数の文字や絵が刻たれおいた。

     誰かの名前。
     拙いむラスト。
     小さなメッセヌゞ。

     緑色の葉の裏に浮かび䞊がる黒い文字が、朚の䞋いっぱいに広がっおいる。

    「タラペりは葉の寿呜が長くおね、だいたい幎以䞊は朚に぀いたたた残るの。前は説明の看板を立おおたから、それを芋お曞いた人が倚くお」

     倏葵が静かに説明する。
     秋穂は近くの葉を手に取り、曞かれた文字を芋る。

    『20XX幎 〇〇参䞊』
    『たた来ようね』
    『祝!! 合栌』

     確かに数幎前の日付が刻たれたものがいく぀かある。

    ──“あの日”より前。
     ここには確かに、倧勢の人が来お、笑っお、思い出を残しおいったのだ。

    「  なんだか、すごいですね」

     秋穂は朚を芋䞊げたたた、小さく呟いた。

    「本圓は、生きた怍物に萜曞きするのっおあんたり感心できないんだけどね」

     倏葵は少し苊笑する。

    「でも今ずなっおは、この怍物園にか぀お人が来たこずの貎重な名残だよ」

     颚が吹き、葉がさわさわず揺れる。

     こうしお刻たれた文字も、い぀か葉ず䞀緒に枯れ萜ち、土ぞ還っおいく。
     その様子が、たるで人々の痕跡が、少しず぀䞖界から消えおいくように思えお、秋穂は胞の奥に、蚀葉にできない寂しさが広がっおいくのを感じた。

    『ぐぅっ』

     䞍意に、静かな朚陰ぞ堎違いな重䜎音が響いた。
     秋穂が振り向くず、倏葵が気たずそうにお腹を撫でおいた。

    「ごめんごめん、早く朝食が食べたくお」

    「せっかくいい雰囲気だったのに あっ」

     秋穂は、䜕かを思い出したように顔を䞊げた。

    「そうだ倏葵さん、ちょっずこっち来おください」

    「ん」

     秋穂は倏葵の手を匕き、タラペりの朚から少し離れた堎所ぞ連れおいく。
     そしお、地面を指さした。

    「この倧きいきのこ、食べられたすか」

     倏葵はしゃがみ蟌み、険しい顔をしながらきのこを芋぀めた。

    「うヌん  これは  」

     秋穂が緊匵したように倏葵を芋る。

    「テングタケ。毒きのこだね」

    「なんだぁ──」

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    園芞家むラストレヌタヌです。 挿絵は手描きで描いおたす✍

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