
大学があれば、地域は元気になるのか。福山市内大学と東広島市から考える【シリーズ第4回/全5回】
大学があれば、地域は元気になるのか
福山市内大学と東広島市から考える【シリーズ第4回/全5回】
「大学があれば、地域は元気になる」
そう信じていた時期が、私にもあったかもしれません。
でも今、その前提そのものが大きく揺らぎ始めています。
先日、読売新聞オンラインで、私立大学の統廃合や定員削減に向けた検討が加速しているというニュースが報じられました。少子化により私立大学の約半数が定員割れとなる中、財務省は2040年までに少なくとも250校、学部定員にして14万人程度を減らす必要があるという数値目標を示したとされています。一方で、文部科学省側は、機械的な判断ではなく、分野や地域バランスが重要だという考えを示しています。
このニュースを見たとき、私はあらためて考えました。
地方にとって、大学とは何なのか。
若者を集める場所なのか。
地域に人材を残すための場所なのか。
企業や地域とつながり、まちの未来をつくる入口なのか。
そして、もう一つ。
大学があるだけで、本当に地域は元気になるのでしょうか。
実際、福山には複数の大学があります。
そして、毎年たくさんの学生が、福山以外の地域から集まってきています。
福山市内大学生のうち、県外から来ている学生は41%。
市外、つまり県内他地域から来ている学生は23%。
合わせると、64%が福山市外から集まっているのです。

つまり、福山には「学生を集める力」が、ちゃんとあります。
それでも、福山の人口は減り続けています。

第3回でお伝えした通り、福山市の人口は令和6年で▲3,253人の減少。
自然減▲2,846人と、社会減▲407人の両方が起きている、厳しい状況です。
一方で、同じ広島県内には、人口が増えている大学都市があります。
東広島市です。
なぜ、同じ広島県内で、これほど違いが生まれるのでしょうか。
第1回では、福山の若者の進学・就職データを見ました。
第2回では、20代女性の転出が止まらない理由を考えました。
第3回では、30代女性が福山に戻りにくくなる構造を見ました。
今回は、視点を少し変えて、福山市内の大学そのものを見ていきたいと思います。
そして、東広島市との比較から、
「大学があるから地域は元気になる」
という考え方を、丁寧に解きほぐしていきたいと思います。
今回見えてくるのは、人口増の本質は、施設そのものではなく、人が動く理由の設計にあるということです。
福山市内大学生の出身地:64%が市外から集まっている
まず、データから確認します。
福山市内の大学に通う学生の出身地は、次のようになっています。
出身地割合県外41%福山市内36%市外(県内他地域)23%

つまり、福山市内大学生の64%が、市外から集まっているということです。
これは、福山にとって大きな強みだと思います。
第1回でお伝えした通り、福山の高校生のうち、福山市内の大学に進学するのは26.6%です。
約7割の高校生は、卒業と同時に福山を離れます。
その一方で、福山市内の大学には、市外から学生が集まってきています。
つまり、福山には、
出ていく流れ
と
入ってくる流れ
の両方があるということです。
この事実は、福山には若い人が集まる力がある、ということを示しています。
でも、卒業後は地域に残らない
問題は、その先です。
福山市内大学には、市外から多くの学生が集まっています。
しかし、その学生たちが卒業後に、福山で働き、暮らし続ける流れは、十分に強いとは言えません。
福山市の資料でも、市内大学生の市内就職率や地域定着は、課題として示されています。
つまり、せっかく市外から集めた学生が、卒業と同時に福山を離れている。
ここに、福山の大学が抱える構造的な課題があるのではないかと感じています。
言い換えるなら、
「集める力」はあるのに、
「留める力」が弱い。
これが、福山市内大学をめぐる大きな論点です。
ここで、もう一つの広島県内の大学都市と比較してみます。
東広島市は、人口が増えている
東広島市には、広島県を代表する広島大学があります。
そして、東広島市は、いま人口が増えている都市です。
令和6年のデータを見てみます。

ここから見えることは、とても明確です。
福山市は、自然減も社会減も両方起きています。
自然減▲2,846人、社会減▲407人。
合わせて、人口は▲3,253人減少しています。
一方で、東広島市も自然減は起きています。
出生者数1,293人に対して、死亡者数は1,877人。
自然動態は▲584人です。

つまり、東広島市も少子高齢化の影響を受けています。
それでも、東広島市が人口増、つまり+111人になっているのは、
社会増+695人が、自然減を上回っているからです。
ここが、福山市との大きな違いです。
東広島市は、自然に人口が増えている都市ではありません。
外から人が入ってくる力によって、自然減を補っている都市なのです。
「大学があるから人口が増えている」は、本当か
ここで、よくある誤解をひとつ解きほぐしておきたいと思います。
「東広島市には広島大学があるから、人口が増えている」
そう思っている方もいるかもしれません。
これは、半分正しくて、半分は違うと感じています。
なぜなら、先ほど見たように、東広島市も自然減だからです。
東広島市の出生数は1,293人。
死亡数は1,877人。
自然動態は▲584人です。
つまり、東広島市の人口増は、
生まれる人が多いから
ではありません。
外から入ってくる人が多いから
です。
そして、ここがとても大事なポイントですが、大学があるだけでは、人口は増え続けません。
なぜなら、大学生は、
入学で転入してくる
卒業で転出していく
という、両方の動きを持っているからです。
大学があるだけなら、入ってくる学生と出ていく学生で、ある程度相殺されてしまいます。
つまり、大学は「若者を呼び込む入口」にはなります。
でも、それだけでは定着にはつながりません。
大学が地域の人口増につながるためには、卒業後も働ける場所があること。
研究者や教職員が地域に住むこと。
留学生や外国人材が地域に根づくこと。
家族で暮らせる住宅地や生活圏があること。
こうした複数の要素が必要です。
東広島市の人口増を、本当に支えているもの
では、東広島市の人口増を本当に支えているものは何でしょうか。
データを丁寧に見ていくと、複数の入口が重なっていることが見えてきます。
入口①:大学が「若者の入口」になっている
東広島市には、広島大学をはじめ複数の大学があります。
学生の存在感が大きい都市であることは間違いありません。
大学は、若者を地域に呼び込む大きな入口です。
ただし、先ほども書いた通り、大学生は卒業すれば出ていく人も多い。
だから、大学は入口ではあっても、それだけで定着の理由にはなりません。
大切なのは、大学で入ってきた若者が、その後も地域と関わり続ける理由を持てるかどうかです。
入口②:企業・産業が「働く入口」になっている
東広島市は、製造業の集積も大きい都市です。
データで見ると、次のようになります。

東広島市は、福山市よりも製造業の比率が高く、大規模事業所の存在感も大きいことが分かります。
つまり、東広島市には、
学ぶ入口
だけでなく、
働く入口
もあります。
大学で入ってきた若者や、研究者、外国人材が、地域の企業・研究・製造業と接続しやすい構造がある。
これが、社会増につながっている可能性があります。
入口③:外国人住民が、人口を支えている
外国人数のデータも、興味深い違いを示しています。
人数だけ見ると、福山市の方が外国人住民は多いです。
福山市は8,231人。
東広島市は6,626人。

しかし、人口規模に対する割合で見ると、東広島市の方が高いのです。
福山市は約1.8%。
東広島市は約3.3%。
つまり、東広島市は、人口規模に対して外国人住民の存在感が大きい都市だと言えます。
さらに、国籍別の内訳にも違いがあります。
福山市の外国人内訳、多い順では、
ベトナム:2,697人
中国:1,952人
フィリピン:1,279人
東広島市では、
中国:3,015人
ベトナム:1,280人
フィリピン:381人
となっています。
福山市はベトナムが最多です。
これは、技能実習・特定技能、そして造船・製造業などとの関係が強いことを示しています。
一方、東広島市は中国籍が突出して多い。
これは、大学・研究・企業・留学生などとの関係を考える上で、重要な示唆があります。
ここは断定ではなく、あくまでデータから見える傾向として整理したいと思います。
福山市の外国人構造は、製造業・技能実習・特定技能との関係が強く見える。
一方で、東広島市は、中国籍の多さから、大学・研究・企業・留学生などとの関係も示唆される。
この違いは、同じ「外国人住民」と言っても、地域との関わり方や定着の仕組みが異なる可能性を示しています。
入口④:市街地・生活圏が「住む入口」になっている
もう一つ大きな違いは、人口集中地区、いわゆるDIDの動きです。

福山市の人口集中地区は、ほぼ横ばいです。
▲817人、増減率は▲0.3%。
中心市街地の人口集積は、大きく崩れていません。
一方、東広島市は、+31.5%という大幅な増加です。
これは、東広島市では市街地・生活圏そのものが拡大していることを示しています。
つまり、東広島市は、単に人口が少し増えただけではありません。
人が住むエリアそのものが広がっているのです。
大学で来る。
企業で来る。
外国人材として来る。
住宅地に住む。
家族で暮らす。
こうした複数の入口が重なり、市街地・生活圏が広がっていると考えられます。
「大学があるまち」から「大学を軸に生活圏が成熟したまち」へ
ここまでをまとめると、東広島市の人口増は、大学があるから自動的に起きているのではありません。
大学を軸に、企業、研究、外国人、住宅地、生活サービスが重なり、人が入ってくる理由が複数になっているからだと考えられます。
つまり、東広島市は、
大学で学ぶ入口
企業・産業で働く入口
研究機関で研究する入口
外国人として暮らす入口
住宅地で家族と住む入口
広島市方面と行き来する入口
これらが複層的に重なる都市になっているのです。
言い換えるなら、
「大学があるまち」から、
「大学を軸に、生活圏が成熟したまち」へ変わってきた。
ここに、東広島市の社会増の背景があるのだと思います。
福山市との違いは、「大学の有無」ではない
ここが、福山市の議論にとって、とても大事なポイントです。
東広島市が人口増になっている理由を、
大学があるから
だけで説明してしまうと、福山市への示唆を間違えます。
なぜなら、
福山市にも、大学はあります
福山市にも、産業はあります
福山市にも、企業はあります
福山市にも、外国人材はいます
人口規模は、東広島市より大きいです
それでも、福山市の社会動態は▲407人。
自然減を補うほどの流入は、起きていません。
つまり、違いは「大学があるかどうか」ではありません。
違いは、
大学・企業・地域・住宅・外国人材が、人口流入の構造としてつながっているかどうか
なのだと思います。
ただし、もっと根本的な要因がある:資本投資という土台
ここまで「入口の設計」の話をしてきました。
でも、ある方から、こんな指摘をいただきました。
東広島の人口増の正体は「マイクロンによる数兆円規模の巨額投資」ですよね。どれだけ大学があっても若者が稼げる最先端の食い扶持がなければ人は残りません。やはり経済の基本は資本投資。
— 薬剤師 ダンス 筋トレ 【薬剤師独立支援】 (@ZxUIlo33VUHfbY5) May 16, 2026
これは、まさにその通りだと思います。
実際、東広島市には、米半導体大手マイクロンの工場があります。報道によると、1兆5000億円規模の巨額投資を行い、AI向けの次世代メモリー半導体を量産する計画です。国も、数千億円規模で補助するとされています。
これは、「入口の設計」という話の、さらに土台にあるものだと思います。
いくら入口を設計しても、その先に「若者が稼げる、成長できる仕事」がなければ、人は留まりません。やはり、経済の基本は資本投資であり、付加価値の高い産業が、人を地域に留める力の源泉です。
その意味で、東広島市の人口増は、「大学がある」ことや「入口が複層的」なことだけではなく、マイクロンという『稼げる食い扶持』を生む巨大な資本投資が、根底にあると見るべきだと思います。
私が第4回でお伝えしたかった「入口の設計」は、この「稼げる産業という土台」と対立するものではなく、両輪だと考えています。
• いい仕事(稼げる産業)があっても、その存在が若者に伝わる入口がなければ、選ばれない。
• 逆に、入口だけ作っても、その先に魅力的な仕事がなければ、意味がない。
この両方が、必要なのだと思います。
では、福山はどうか:2つの方向
では、福山はどうでしょうか。
福山にも、鉄鋼、造船、機械など、資本集約型の基幹産業があります。これは、福山の大きな強みです。
その上で、これからの福山に必要なのは、2つの方向があるのだと思います。
1. 今ある企業が、「選ばれる企業」になる
福山には、すでに多くの優良企業があります。
問題は、
• その企業が、若者にとって「稼げる・専門性を活かせる・成長できる」と見えているか
• 福山の基幹産業に、次世代の付加価値を生む新しい投資(DX、GX、新事業展開)が入ってきているか
• 「重厚長大で、変わらない」というイメージのままになっていないか
ということだと思います。
第2回・第3回でお伝えした、働き方の柔軟性、組織文化、キャリアの見通し。これらを変えていくことで、今ある企業が「選ばれる企業」へと変わっていくことができるはずです。
2. 「選びたくなる企業」に、来てもらう
そしてもう一つ。福山が「選びたくなる企業」を、外から呼び込むことも、同じくらい大切だと思います。
福山市にも、企業誘致を進める部署があり、産業団地の整備や、企業立地への支援、スタートアップへの支援などの取り組みが進んでいます。
東広島市のマイクロンのような、巨大な資本投資をすぐに福山に呼べるわけではないかもしれません。でも、
• 福山の産業基盤(ものづくり)と相性のいい、新しい技術を持つ企業
• 若者が「ここで働きたい」と思える、成長分野のスタートアップ
• 福山の課題解決につながる事業を持つ企業
こうした「選びたくなる企業」に来てもらうことが、新しい「稼げる入口」をつくることにつながります。
つまり、福山に必要なのは、
今ある企業が「選ばれる企業」になること。
そして、「選びたくなる企業」に来てもらうこと。
この両方なのだと思います。
そして、その両方を支えるのが、第4回で書いてきた「入口の設計」なのです。
東広島市を真似ればよい、という話ではない
ただし、ここで大切なのは、東広島市をそのまま真似ればよい、という話ではないことです。
東広島市には東広島市の歴史があります。
広島大学を中心とした都市形成があります。
研究機関や製造業、住宅地の広がりがあります。
福山市には福山市の歴史があります。
備後圏域の中核都市としての役割があります。
製造業、商業、医療・福祉、交通結節点としての機能があります。
鞆の浦や福山城などの地域資源もあります。
だから、福山市が東広島市をコピーする必要はありません。
学ぶべきなのは、形ではなく、構造です。
東広島市の形を真似るのではなく、
人が入ってくる理由が複数あるという構造に学ぶこと。
福山には、福山の入口のつくり方があるはずです。
「学生を集める力」と「地域に留める力」のミスマッチ
福山市内大学には、毎年、県外から41%、市外から23%の学生が集まってきます。
合わせて64%が市外出身者です。
これは、福山にとって大きな可能性です。
でも、その学生たちは、卒業後に市外へ出ていくことが多い。
福山の地元企業との接点が少ない。
福山で働く大人を知らない。
福山で暮らす未来を描く機会が少ない。
福山で「働きたい」「住みたい」と思える理由が、十分に届いていない。
つまり、
学生を集める力はある。
でも、地域に留める力が弱い。
ここに、福山市内大学と地域の大きなミスマッチがあります。
そしてこれは、第2回・第3回でお伝えしてきた構造的課題とも、根っこは同じです。
専門性を活かせる仕事が見えにくい
柔軟な働き方が十分に広がっていない
通勤手段の問題がある
組織文化や人間関係への不安がある
「ここで生きたい」と思える文化が十分に届いていない
これらが、4年間福山で学んだ学生たちにとって、卒業後の選択肢として福山が選ばれにくい理由になっているのではないかと感じています。
福山に必要なのは、「新しい箱」ではなく「入口の設計」
ここから、福山市が学ぶべきことは何でしょうか。
東広島市の人口増を見て、
「福山も大学を増やそう」
「大きな施設をつくろう」
「新しい産業団地をつくろう」
「人を呼び込む箱をつくろう」
という発想に走るのは、おそらく違うと思います。
なぜなら、東広島市の強さは「箱」そのものではなく、人が入ってくる理由が複数あることだからです。
そして、福山市にはすでに、たくさんの資源があります。
複数の大学
製造業を中心とした産業基盤
約8,000人の外国人住民
約44万人の人口規模
JR福山駅という交通結節点
地域活動の蓄積
高校生・大学生との接点
地元企業の多様性
足りないのは、それらをつなぐ入口の設計だと思います。

箱をつくれば、人が集まる時代ではありません。
担い手が減り、税収も限られていく中で、ニーズが十分に見えていないまま新しい施設をつくることは、次世代に維持管理の負担を残すリスクがあります。
必要なのは、大きな箱ではなく、すでにある人・場所・仕事・文化をつなぎ直すこと。

若者が地域を知る入口。
企業と出会う入口。
地域で挑戦する入口。
離れても関わり続ける入口。
戻ってきてもいいと思える入口。
福山に必要なのは、施設ではなく、人が動く理由の設計なのだと思います。
具体的に、何をつなぐべきか
第1回〜第3回でお伝えしてきた論点を、ここで統合してみます。
1. 大学と地域企業をつなぐ
福山市内大学生の64%が市外出身です。
その学生たちに、福山の地元企業の魅力を、4年間でどう伝えていくか。
地元企業の名前を知っているか。
どんな人が働いているかを知っているか。
どんな仕事があるかを知っているか。
自分の専門性や関心と、福山の企業がどうつながるかを知っているか。
ここが大切です。
ピッチマッチのような直接的な接点づくりは、ここで効いてきます。
2. 高校生と地域企業をつなぐ
進学で福山を離れる前に、地元企業を知る機会を、どれだけつくれているか。
これは第1回の論点ともつながります。
福山の高校生の多くは、進学時に福山を離れます。
でも、離れる前に、福山の企業や地域の大人と出会っているかどうかで、将来の選択肢は変わります。
知らなければ、選べない。
これは、ここにも当てはまります。
3. 福山出身者と地元をつなぎ続ける
第3回で書いた「介入ウィンドウ」の発想です。
一度福山を離れた人と、地域は、どれだけ接点を持ち続けているでしょうか。
進学で離れる。
就職で離れる。
結婚で生活圏が変わる。
子育てで戻りにくくなる。
住宅購入でさらに戻りにくくなる。
この流れの中で、地域との接点が完全に切れてしまうと、福山は選択肢から消えていきます。
だからこそ、離れても関わり続けられる入口が必要です。
4. 外国人材と地域コミュニティをつなぐ
福山市の外国人住民は8,231人です。
福山の場合、技能実習・特定技能で来ている方が多い構造があります。
この方たちが、地域の中で孤立せず、安心して暮らし、働き、関わることができる環境があるか。
ここも重要です。
技能実習から特定技能に移行すると、同じ業種内で勤務先を選べるようになります。
つまり、「選べる」ようになったときに、福山が選ばれる地域であるかどうかが問われます。
これは、若者の流出構造とも重なります。
5. 女性・子育て世代と働く場をつなぐ
第2回・第3回でお伝えした、女性のキャリアと地域の関係です。
専門性を活かせる仕事があるか。
柔軟な働き方があるか。
子育てと両立できる文化があるか。
夫婦のキャリアを同時に考えられる地域か。
地域の空気が、多様な生き方を受け止めているか。
これらが揃ったときに、女性が「ここに住み続けたい」と思える地域になります。
人口減少を考えるとき、女性の選択を軽く見ることはできません。
6. 若者の挑戦と地域をつなぐ
「福山で何かをやりたい」と思う若者が、その挑戦を歓迎される場があるか。
ここも、とても大切です。
若者に対して、
「最近の若者は」
「地元を出ていくのは仕方ない」
「どうせ戻ってこない」
と言うだけでは、何も変わりません。
変わるべきは、若者だけではありません。
受け入れる側の大人、企業、地域、私たち自身も変わる必要があります。
若者が地域に関わる入口をつくること。
挑戦を応援すること。
失敗しても戻れる関係性をつくること。
それが、福山の未来につながっていくと思います。
「人が動く理由の設計」という発想
ここまでをまとめると、私が大切だと感じているのは、
人口増の本質は、「施設」ではなく、「人が動く理由の設計」にある
ということです。
新しい大学をつくることでもありません。
新しい工場を誘致することだけでもありません。
観光地を整備することだけでもありません。
福山にすでにある人・場所・仕事・文化を、つなぎ直すこと。
そして、
若者が「ここで挑戦したい」と思う入口。
卒業後に「ここで働き続けたい」と思う入口。
離れた人が「戻ってきてもいい」と思う入口。
外から来た人が「住み続けたい」と思う入口。
これらの入口を、地域として丁寧に設計していくこと。
それが、これからの福山に求められていることだと思います。
ここから、どんな問いが立ち上がるか
このデータから、次のような問いが立ち上がります。
福山市内大学に集まる市外出身の学生64%に、福山の魅力をどう届けているか。
4年間という貴重な時間に、地域として何ができるか。
大学・企業・地域は、本当に「つながっている」と言えるか。
点在しているだけではなく、構造としてつながっているか。
東広島市の「複層的な入口」を、福山はどう設計できるか。
模倣ではなく、福山らしい形で考えられるか。
「学生を集める力」と「地域に留める力」のギャップを、どう埋めるか。
集める力はある。
では、留める力をどうつくるか。
福山にすでにある資源を、どうつなぎ直すか。
新しいものをつくるより、いまあるものを活かす発想を持てるか。
若者、外国人材、離れた福山出身者、それぞれに、福山はどんな入口を用意できるか。
多様な人が、自分らしく選択できる地域になれるか。
そして、
人が動く理由を、地域として、どう設計するか。
これらの問いは、簡単に答えが出るものではありません。
だからこそ、立場を超えて、一緒に考えていけたらと思っています。
次回予告:シリーズ最終回
第5回は、いよいよシリーズの最終回です。
第1回〜第4回で見てきたデータを統合して、福山の若者と、福山に来ている技能実習生・外国人労働者が、実は驚くほど似た構造の中にいるということを、お伝えしたいと思います。
「選べない期間」にその場所で育ち、
「選べるようになった瞬間」に別の場所を選ぶ。
若者も、外国人労働者も、同じ構造の中にいる。
このシリーズの集大成として、次の世代に選ばれる福山のビジョンを、一緒に描いていけたらと思っています。
このシリーズが、福山に関わる方々が、それぞれの立場で考えるきっかけになれば嬉しいです。
角田千鶴(つのだ・ちづる)/地域若者共創プロデューサー
有限会社山陽不動産 取締役副社長
一般社団法人ミライゴト 代表理事
山陽管理株式会社 代表取締役。
広島県福山市出身。東証1部上場企業勤務を経て2004年にUターン。家業の不動産会社を15年連続増益増収へ導く。2019年から高校生・大学生向け創業体験プログラム「Sta-sh」を立ち上げ、7年間で370名以上が参加。経済産業省中小企業庁創業機運醸成賞受賞。2024年10月、一般社団法人ミライゴトを設立し代表理事就任。若者とアスリートのキャリア支援を通じた地域創生に取り組む。
出典・参考
福山市公表資料「福山市のリアルな数字」(2026年3月)
福山市「高校生進学先調査」(2024年8月)
広島県統計年鑑(令和6年版)
10 世帯数及び人口の推移
13 市町別常住地又は従業地・通学地による人口
14 市町別人口集中地区人口、人口増減、面積及び人口密度
15 人口動態及び推計人口(市町別、社会動態・自然動態)
19 国籍別外国人数(市町別)
厚生労働省広島労働局「外国人雇用状況の届出状況」(令和6年10月末時点)
経済センサス・活動調査(令和3年)
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