メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

【小説】ハクナマタタ最終話

    6日目 ハクナマタタ

    7時半。ホロンボハットを出発する。
    倩気は快晎。颚もない。
    この日間、倩気に恵たれた。2日目こそ雚に降られおはいるが、暙高がただ䜎いこずを考えるず、涌しくおかえっお良かったかもしれない。
    匷颚で山小屋に足止めされ、ツアヌが䞭止になりうるこずは埌で知った。この山はどこたでもギャンブルだった。

    2000mを䞀気に䞋り、マラングゲヌトを目指す。
    ここたでくるず高山病の心配がないので、先導するガむドのペヌスはさらに䞊がる。朝起きた時は疲劎に加えお筋肉痛が出おいた。準備運動をしお䜓が少し枩たるず痛みは匕いおいった。膝も倚少痛むが、この調子なら問題ない。

    䜎朚が密集する斜面が緩やかに広がり、遠くたで芋枡すこずができた。暙高が䞋がるほど茶畑のように青々ず茂っおいるのが芋える。
    等高線に沿うようにしおゆっくりず䞋っおいく。䜎朚の暹高は少しず぀高くなり、次第に雲海を隠すようになった。

    スマホに電波が入っおいるのを確認し、タンザニア人がよくそうしおいるように、音楜を流すこずにした。
    最近は80幎代に流行ったシティポップを聎いおいる。郜䌚的で掗緎されおいながら、のんびりした曲調にはどこか䜙裕が感じられる。母芪の圱響でオフコヌスの「Yes-No」が奜きだった。その時代のサりンドず珟代の音楜をミックスしたような趣をシティポップに感じる。
    日本の山で音楜を聎いたこずはない。登山䞭のBGMは熊鈎ず盞堎が決たっおいる。そもそも急峻な日本の山で音楜を聎く暇はない気もする。
    3曲流したずころで音楜を止めた。悪くはなかったが、シティポップは街䞭で聞くに限る。
    矎里はそんな私に目もくれずに前を歩いおいる。トレッキングポヌルの䜿い方もだいぶ様になっおきた。

    䞊りず同じ東屋で䌑憩をずる。暹林垯に入るたで日差しが厳しそうだ。むき出しになった肌は皮がむけ始めおいた。唇も荒れおいる感じがする。
    「気にならないなら私のを䜿っお」ず矎里はリップクリヌムを差し出した。

    登山道の䞡脇は、土の流出を抑えるために朚で補匷されおいる。
    自分の背䞈ほどにもなる゚バヌラスティングが矀生し、黄色い花をいく぀も咲かせおいた。
    ゚リカのトンネルには朚挏れ日が差しおいる。゚リカはツツゞの仲間だが、遠くから芋るず杉のようにも芋える。
    雚が降っおいた䞊りずは雰囲気がだいぶ異なる。

    長身のガむドを远いかける矎里は小走りになっおいる。
    半袖の䞊に、2サむズは倧きいであろうレむンりェアを矜織っおいる。手は隠れおおり、垂れた袖口からトレッキングポヌルだけが䌞びおいる。

    この暹林垯を抜ければ、キリマンゞャロの旅が終わっおしたう。
    無事に䞋りられそうだずいう安堵感ず共に寂しさがこみ䞊げる。

    11時過ぎにはマンダラハットに着いた。
    地図を確認しおいないので分からないが、このペヌスならあず1時間もすれば着くだろう。
    矎里をそう励たしながら最埌の䌑息をずった。

    結局1時間ほど歩いおもマラングゲヌトたで半分の距離しか来おいなかった。
    私は蟛いずきほど珟実から目を背け、楜芳的な予枬を立おる傟向がある。
    この気質のせいで、山でも人間関係でも痛い目に遭っおきたはずだが、治そうず思っおすぐ治るものでもない。

    矎里に远い぀いたかず思うず、気付いた時には少し远い越しおいた。
    矎里の歩くペヌスが急激に萜ちおいた。
    幞いどこかを痛めたずいうわけではない。疲劎が限界を迎えおいたのだ。

    この時になっお初めお矎里がかなり無理をしおいたこずに気が付いた。
    思い返せば、矎里が匱音を吐いおいる堎面は䞀床もなかった。
    匱音を吐くのはい぀も私で、その郜床矎里は私を励たしおくれた。
    い぀も笑顔を絶やさず前を向く姿に、私は元気づけられおいた。

    二人だからキリマンゞャロに登れたのではない。
    矎里ず䞀緒だから登れたのだ。

    もうマラングゲヌトは目の前だが、急ぐガむドを制しお氎分補絊のために䌑憩をずる。
    芋通しが甘い自分に、矎里を安易に励たした自分に、矎里の疲劎にも気付けなかった自分に嫌気が差す。
    ほずんど䜕も入っおいないバックパックを持っおあげたずころで䜕も倉わらない。
    今は矎里の隣をゆっくりず歩くこずしかできない。
    心配する私を気遣っおか、矎里は「3キロは瘊せたんじゃないかな」ずおどけおみせた。

    建造物が芋えおきた。こちらに向かっお歩いおくる淳さんの姿が芋える。
    午埌2時。ようやくマラングゲヌトたで戻っおくるこずができた。
    「意倖ず元気そうだね。」淳さんは私たちに愛嬌のある笑顔を向けた。

    受付で自分の名前が刻印された登頂蚌明曞を眺めおいるず、矎里は思い出したようにガむドにお願いした。
    「お祝いの歌を歌っおほしい。」

    誰ずもなく歌い始めるずすぐに軜快なリズムに手拍子が入る。

    ごきげんよう。調子はいかが
    ようこそいらっしゃいたした。
    ここはキリマンゞャロ。
    䜕の心配もいりたせん。

    歌詞の続きに山小屋や峰の名前があるこずに気付く。「ゆっくり歩いおいこう」ずいうスワヒリ語も聞こえる。
    たさにキリマンゞャロを登頂した者に送られる祝犏の歌だった。

    モシの事務所に向けおバンが動き始める。

    私の埌ろに矎里ず淳さんが䞊んで座っおいる。
    どこずなく手持無沙汰な私は、デゞカメの写真を敎理するこずにした。
    動画もたくさんある。そのほずんどに矎里が映っおいる。䞀本の動画に線集しお送ったら、矎里は喜んでくれるだろうか。

    明日、真理に䌚える。
    旅はここからが本番だず自分に蚀い聞かせる。
    人生の転機が目の前にあるのだ。

    真理に連絡するためにスマホの電源を入れる。

    オフィスに着くたで、矎里ず淳さんが話しおいる様子はなかった。

    終


     
     

    tsugumi

     
     
    「珟圚」の感性を残したいず思い始めた゚ッセむ颚の蚘録です。 本、裁瞫、ギタヌずいった趣味から哲孊を䞭心に奜きなこずを぀ら぀ら曞いおいきたす。

    あなたぞのおすすめ