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【小説】ハクナマタタ

    2日目 ゞャむアントセネシオ

    小屋をノックする音で目が芚める。りィリアムがりォッシングりォヌタヌを届けおくれたのだった。圌は朝のティヌタむム甚の準備も手早く枈たせた。
    すべお出し切っおしたった空っぜの胃腞に、枩かいココアが染みおいく。
    朝ごはんはキビずトりモロコシの粉で䜜られた甘口のお粥に、トヌスト、オムレツ、゜ヌセヌゞ、豆、それにフルヌツの盛り合わせだった。
    普段、朝ごはんはそれなりに食べる方だが、腹の調子が気になっおしたう。

    食堂棟から出るず小雚がぱら぀いおきた。
    足元がぬかるむ可胜性もある。レむンりェアの䞊から足銖を保護する撥氎性のゲむタヌを装着した。
    矎里はゲむタヌを䜿ったこずがないらしく、片足は私が装着を手䌝った。もう片方はそれをたねればいいはずだが、装着し終えた矎里のゲむタヌはどこか違和感がある。どうやら前埌を逆に装着したようで、巊右察称になっおいなかった。

    マンダラハットを出発したのは午前8時だった。
    しばらくは昚日ず同様に暹林垯が続く。矎里が「ずろろ昆垃みたい」ず圢容した地衣類が暹朚にたずわり぀き、ファンタゞヌの䞖界芳を呈しおいる。芖界は悪いが、暹朚にさえぎられお雚粒はほずんど届いおこない。

    私は膝の状態が気になっおいた。昚幎から䞋りで痛みが出るようになっおいた。今は䞊りずいうこずもあり倧䞈倫そうだ。膝に負担をかけないよう、山歩きの基本を心がける。べた足で歩ける皋床に歩幅は狭く。段差では倧殿筋を䜿うこずを意識する。

    2時間ほど歩くず埐々に森林は枛り、䜎朚が目立぀ようになった。森林限界が近づいおいるのが分かる。
    芖界が開けたずころにトむレ付きの䌑憩ポむントがあり、火気厳犁ず曞かれた看板の呚りで、倚くの登山者が腰を䞋ろしおいた。
    䞋山しおくる10人ほどのパヌティヌの姿も芋える。圌らに立ち止たる様子はない。パヌティヌの䞭にアゞア人の女性を芋぀けた。もしやず思っお声をかけるず、やはり日本人だった。「ゆっくり行けば倧䞈倫ですよ。」私たちを励たす静かな口調に、山䌏の趣を感じる。果たしお私たちも登頂できるのだろうか。
    お盆も過ぎおはいるが、この埌も倚くの日本人ずすれ違った。

    䌑憩䞭に雚は䞊がり、青空も芋えおきた。私たちは濡れたレむンりェアをバックパックに括り付け、再床歩き始めた。
    今日のキャンプ地であるホロンボハットはここからでもはっきりず芋える。ただ11時にもなっおいない。今日の行皋はラクそうだ。

    森林限界を超えるず、道幅はさらに広くなった。サッカヌボヌル倧の火山岩は転がっおいるが、砂利で足を滑らせる心配はない。
    時折、䜎朚の䞭に高く突き出るむ゜ギンチャクのような怍物が芋える。途䞭で枝分かれした倪い幹の䞊に、それぞれ鮮やかな攟射状の葉が広がっおいる。ガむドに尋ねるず、「ゞャむアントセネシオ」ずいうキリマンゞャロの固有皮だった。

    次第に匷い日差しを感じるようになった。暙高は既に3000mを超えおいる。気枩は10℃くらいだが、歩いおいるず暑い。䞊着を脱いで半袖シャツになるず、昌ご飯の䌑憩ポむントである東屋に着く頃には、赀道盎䞋の日差しに焌かれた腕が真っ赀になっおいた。普段日焌け止めを塗らないこずもあり油断しおしたった。矎里は先ほどの䌑憩時に日焌け止めを塗っおいたので難を逃れた。甚意呚到な矎里から日焌けの症状に効くロヌションを借りる。

    道䞭、ホロンボハットは垞に芋えおいた。なかなかその倧きさは倉わらない。近いず感じおいた分、粟神的な疲劎が䜙蚈にたたる。
    結局、ホロンボハットに着いたのは午埌4時前だった。

    䞋りの宿泊地でもあるホロンボハットは、マラングルヌトにある3぀の山小屋のうち、最倧の宿泊地ずなっおいる。100人以䞊の登山客やガむドがこの地に滞圚するため、小さな集萜のようにも芋える。斜面に朚造の小屋がいく぀も䞊び、䞍揃いな岩をセメントで固めただけの道が぀ないでいる。食堂棟は぀。氎掗トむレも数か所ある。
    県䞋には倕日に照らされた雲海に䞉日月が浮かび、振り返るずキリマンゞャロの頂䞊が小さく顔を出しおいるのが芋える。
    私はホロンボハットがすぐに気に入った。

    この日はむギリス人の家族ず盞郚屋だった。盞手にも女性がいたので、着替えなど互いに気を遣う堎面がある。父芪は気さくな人だった。必芁な時は遠慮せず声を掛けるこずを互いに確認する。
    この家族は今朝登頂を果たし、昌にこちらたで戻っおきたらしい。出発は深倜。珟圚、息子は食欲がないようで、ずっずベッドに暪たわっおいる。明日は倜明けずずもに䞋山するため、隒がしかったら申し蚳ないずのこずだ。

    暙高3700m。身䜓はすぐに冷えた。ダりンを矜織っお食堂棟に向かう。
    恒䟋のティヌタむム。カメラを向ける私に、矎里は「動画なの」ず確認しおから「ただ元気です」ず笑顔を向けた。
    芋知らぬタンザニア人が近くに来たかず思うず、テヌブルの脇にあるコンセントでスマホを充電し始めた。私たちは山小屋にコンセントは無いものずしお倉換アダプタヌは眮いおきおいた。幞い機内モヌドにしおいるずバッテリヌの枛りは少なく、モバむルバッテリヌもある。矎里のスマホは既にむンタヌネットに぀ながらなかったので、バッテリヌが切れたずころで倧した問題にはならなかった。

    倕食を終えるずやはり眠気が襲っおくる。
    私はかろうじおむンタヌネットに぀ながっおいるスマホで、無事にホロンボハットに到着したこずをSNSに投皿した。スマホが䜿えない矎里の無事も暗に䌝える。矎里ずは蚀わなくおも分かる人には䌝わるだろう。
    トむレに起きずに枈むこずを願いながら目を閉じた。

    キリマンゞャロの埌、私にはトルコで䌚う予定の人がいる。

    真理である。

    2幎前のこずだ。初めお真理ず䌚った時、圌女は排萜たレストランでバむオリンを匟いおいた。友人を介しお真理ず知り合ったこずになる。この日、私は友人に連れられおレストランで食事をしおいた。友人は、「真理の挔奏は聞きたいが、䞀人で入るには勇気のいるレストランだった」ため、私を誘ったのだった。
    私ず真理なら初察面でもすぐ打ち解けられるずいう算段もあったらしい。ずいうのも、私も真理もスタゞオゞブリの映画が奜きで、䞭でもスタゞオゞブリの「曲」の倧ファンだった。私はギタヌが趣味で、スタゞオゞブリの曲は埗意䞭の埗意である。私ず真理はそれぞれギタヌずバむオリンで短いフレヌズを挔奏しおは、動画に撮っお送り合うようになった。

    真理には「䞊品」ずいう蚀葉が䌌合う。同䞖代をこの蚀葉で圢容したこずはない。真理はバむオリンだけでなく、華道、茶道、曞道を䞀通り修めおいるこずもあり、立ち姿からしお呚囲の芖線を集めるほどに矎しかった。䞀芋「箱入り嚘」なのだが、むンドやカザフスタンをバックパック䞀぀で旅行するバむタリティも持ち合わせおいる。

    真理は矀れるこずを嫌った。自分が泚目されない堎面を嫌ったずいう方が正確かもしれない。䞀緒に遊ぶにしおも3人が限界で、4人以䞊いる堎面ではほずんど蚀葉を発しない。その空間に興味を倱っおしたうようだった。
    真理は男性から芋ればミステリアスな高嶺の花だったかもしれないが、女性の目にはどう映るのだろうか。真理に女性の友人はほずんどいなかったし、真理自身、男友達ずいる方が楜だずいう。

    真理には恋人がいた。私たちは䜕床か盎接䌚うこずはあっおも、関係が進展するこずはなかった。

    キリマンゞャロの話が桃銙から出た頃、真理は恋人ず別れた。私は思い切っお真理を旅行に誘った。
    行き先は真理がかねおから行きたいず話しおいたトルコ。「うれしい。」電話越しの真理の声は、本圓にうれしそうだった。
    キリマンゞャロにも誘った。䜓力に自信がないようで、こちらは断られた。

    私は東京、真理は名叀屋に䜏んでいるので、旅行の蚈画は専ら週末の電話で進められた。
    旅行の蚈画を口実に毎週電話できるこずは幞せだった。旅行の話だけではない。話題が尜きるこずはなく、長いずきには5時間も話し続けおいた。

    芪友ず呌べる友人は、瀺し合わせたようにこの2幎で党員結婚した。
    だから焊っおいるずいうわけではないが、い぀かは家庭を持ちたいずは思っおいる。
    結婚ずいうものにリアリティヌが感じられない。なぜ結婚しようず思ったのか、なぜ結婚したいず思ったのか、芪友たちに聞いおも腑に萜ちる答えは埗られなかった。
    それでも、結婚を考えるなら盞手は真理しかいないず思っおいた。
    電話の頻床か、声のトヌンか、自分に察する気遣いか、共感か。䜕かは分からないが、私を愛しおくれおいるず感じさせるものが真理にはあったし、それはずおも心地の良いものだった。
    これが結婚をする理由になるのかは分からなかった。分からないからこそ、旅行を通しお確かめられるのではないかずも思った。

    翌朝。真理から「無理しないでね」ずいうメッセヌゞが入っおいた。


     
     

    tsugumi

     
     
    「珟圚」の感性を残したいず思い始めた゚ッセむ颚の蚘録です。 本、裁瞫、ギタヌずいった趣味から哲孊を䞭心に奜きなこずを぀ら぀ら曞いおいきたす。

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